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第3章 淫武御前トーナメントの章

38話 オネエに惚れた男を、手コキで去なすナツキ♥

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 38話 オネエに惚れた男を、手コキで去なすナツキ♥

「ワタシを殺してくれ。ナツキ少年」

 ドMを超越した発言だった。――見かけによらず……。
 いや、社長みたいな普段叩かれないような人が、無性にべんを浴びたくなるようだからおかしな話ではないか……。
 こんな筋肉馬鹿に殴り掛かる人間、まずこの世にいないだろうし。

「はぁ……。どういうつもり?」

「また他の男に翔子くんを抱かせることになる……。それも翔子くんが負けてもいない奴にだ。――それも無条件で」
 
「……なるほどね。またオネエを操ってしまいそうだから、そうならないようにこの世から逃げだしたいの?」

「……あぁ、そうだ。――頼む。……ナツキ少年」

「なんで私? 大体その少年って呼ぶのやめてよ。男の子じゃないんだから」

「あぁ……。すまない」

「オネエからは、キミを殺せなんてお願いされていないよ。――オネエはキミの支配下に置かれていることを後悔していないんじゃない?」

「どういうことだ?」
  
「やろうと思えば、私もエリナもいつでもキミを消せる。少なくともキミが協力的なら確実に。――それでもオネエからはキミを殺せなんてお願いされていない」
 
「し、しかし……」

「くだらないこと考えていないで、他の方法考えたら?」

 ――またあの2人に一杯食わされた。
 マーラを殺せばオネエが契約で縛られることがなくなるって、あの2人は知っていたのだろう。だからオネエもエリナもマーラと2人きりになることを避けた。
 こんなしょくたくさつじんを依頼されたらたまったものではないだろうし。

「はぁ……」
 
 凄く重たいため息が出た。
 ――マーラもマーラで、オネエもエリナも協力しないと察して、私が部屋から出るタイミングを見計らってお願いに来たんではなないだろうか……。

「キミにしかお願いできないんだ」

 ほらやっぱり。
 追い打つように頭を下げられて、がっくりさせられた。 
 どういうわけか血も涙も無い人間だと勘違いされている。

「言っとくけど、私は嫌だよ。オネエがその判断をしていないんだから、私はキミを殺さない。キミが死んだらオネエは悲しむし、殺したのが私ってなったら――」

 ――また刃をぶつけ合うことになる。

「しかしこのままだと翔子くんは――」

「ボロボロになるね。誰に何させられるかも分からないね。あんなオネエもう見たくない」

「ワタシもだ!」
 
「でもキミが死んで悲しむオネエも見たくない。殺したのが私って知ったときの顔はもっと見たくない」

「しかしっ!」
 
「出来る範囲で手伝うから他の方法考えたら?」

 恋のライバルが消えてくれたら助かるんだけど、死なれたら後味悪くなる。
 それに死んだ人は永遠に美化され続けるから、一生追い抜けないなんて事さえ起きかねない。それは困る。凄く困る。
 思いながら去ろうと背を向けた瞬間だった。

「うッ!?」

 つんのめって転げてしまいそうになった。
 それほどまでの禍々しい気に、ナツキは背中を押されたのだ。

 ――本気、……ですか。

 振り向いて、遊び心一切無い筋肉の膨張を見せ付けられて、失笑が漏れた。
 マーラの顔の筋肉がガチガチに強張こわばって、鬼のような形相になっている。
 変顔とも取れる顔のせいで笑いが漏れてしまった。
 力を漲らせた顔に皮膚が引っ張られて、ゾワッ、とライオンの鬣みたいに髪の毛まで逆立っている。
 その癖して、表情とは裏腹に怒っているわけではないのを知っているものだから、余計に笑いがこみ上げてきて、無理に我慢して身体まで震えてしまう。

「笑いが堪えられないだろう? くノ一としての血が騒ぐんだろう? 強者を前にした武者震いもあるだろう?」
  
 ――勘違い。

「ナツキくん。キミは優れたくノ一だ。翔子くんや、エリナくんとは違う。――キミなら殺せるだろう? この状況でも血が滾ってにやけてしまうキミなら」

「……いや」
 
「その癖して、さっきキミに抉られたクナイには一切の躊躇いがなかった。感情さえなかった。まるで肉を捌く加工業者のようだった。人肉を生き物と思っていない。――キミが3人の中で一番くノ一らしいくノ一だ」

 そんなことはない。現にマーラの風貌に凄く困らせられている。
 般若のように猛り狂った表情とは似合わぬ落ち着いた声にでは無い。
 どんなに怒り狂った表情でも、マーラのなりは、この世で最も厄介な容姿なのだ。

 ――オネエなんだよね、結局。
 それも初めて交わったときのオネエ。
 加減したら一気に飲まれてしまうかも知れない。

「殺してしまうかもしれないから覚悟して」

「望むところだ!」


 剥き出しの心臓のように、ドックンドックン跳ね回る生きた筋肉の鎧。
 硬さだけではなく柔軟さも兼ね揃えている。
 その筋肉量はざっと見積もってもナツキの10倍はあるだろう。
 その巨体が、漆黒の四面を跳ね回った。
 ゴルフカップの中でカタカタンッ! と硬質ボールが暴れるかの勢いだ。

 ロビーでは狭すぎて戦えない。
 そう判断して、ナツキはマーラを影の世界へと誘ったのだ。
 誘われるなり空間の広さを身体で覚えようと跳ねたマーラの残像がナツキに迫る。

 ――早い。

 筋肉による瞬発力は、ナツキを遥かに凌駕する。しかし、ここはナツキが作った仮想空間。ナツキは飛び交う巨体を難なく避けていた。
 そして一足遅れて闇の中を加速する。
 マーラの目の前に残像を作り、軽々と背後を取る。
 ナツキのほうが一歩も二歩も先行く素早さだった。
 影による移動を織り混ざているのも大きい。それ以上に無駄がなかった。

「う゛ッ!!?」

 マーラの口から驚愕を潰したような声が漏れた。
 突然として、ナツキがマーラの膝元に跪いたのだ。
 
 戦っていたばかりの少女が、突如堂々と目の前で跪いたのだから、マーラが驚くのも無理はなかった。
 戦いの最中とは思えない大胆な行動。
 これ以上はないと思えるまでの無防備な体勢だった。

「ぐっ!! 見くびられたものッウ!?」

 目の前に屈むくノ一目掛けて、シュンッ! マーラの拳がジャブの如き伸びた。
 が、しかし、その手の平が少女を捉えることはなかった。
 影縫い――!? しかし掠める手前までは腕が動いたのだ。

 巨漢の男は困惑する。
 そして一瞬前のナツキの仕草を思い出す。
 パサッと髪の毛を靡かせた仕草を。

 ――髪の毛が影に差し込まれたのか!?

 神技以外の何ものでもなかった。
 影縫い。影にクナイを刺して動きを封じ込める忍術。
 影を踏まれると動けない。と、対象者にどれだけ深く思い込ませるかが成功の鍵を握る。しかし、思い込むも何も、影縫いに嵌められたことさえ気付けなかった。

 ――どういう……ことだ……?

 疑心が疑心を強める。
 マーラはくノ一の術に呑み込まれていた。

 翔子と対峙してから300年の時を過ごすも、暗示の一点に於いては翔子に勝る者はいないと思っていた。
 だが、ナツキの忍術はそれ以上の素質と言わざるを得ない。
 表情の変化が乏しい分、ミステリアスな世界に引き込まれてしまう。

 これならひと思いに逝ける。そう思いながら、マーラはビリビリと膝丈からスパッツを破っていくナツキを感慨深く見下ろしていた。

「殺しはしない。――んっ……」

 なぜだ!? そう声を荒らげようとしたものの、マーラは影縫いによって発声さえ許してもらえなかった。
 叫ぶことさえ許されぬままのマーラ。
 その肉棒を睨むナツキの目蓋がぴくっ、と震えた。肉棒を握り締めた手の平までもが、まるで静電気に弾かれたようにピクンッと開いた。その上、見上げてくるネコ科を思わせる大きな瞳が涙を溜めこみ始めたのだ。
 まるで初心うぶをアピールするかのように。

 相手はくノ一。万に一つも初心である筈が無い。しかし、見上げてくるその幼さは、くノ一であることさえ忘れてしまうほどあどけない。
 なんと狡猾……、あからさまが過ぎる演技。
 いくらそう思っても、目から入り込む情報のほうが思考よりも余っ程速く、肉棒は否応無しに反応してしまう。
 いくら理性で全て演技と考えても、それらを新たな視覚情報がうち消してくる。

 女を甚振った分だけ黒さを増し続けた赤胴色の肉棒に、それとは相対する穢れの知らない蒼白い指先が、搦め捕るように巻き付く。
 見てくれは余っ程凶悪な肉棒が、軽々と去なされていた。
 親指と人差し指で作られたリングに、グニイッと亀頭冠を潜らされる。
 痛みと快楽のちょうど狭間へと輪のサイズが弛んだ。

「うぅ゛……」

 犯すことを考えて淫気を膨れ上がらせただけあって、肉棒は毒々しく張り詰めていて、ナツキのひんやりと鋭い手コキが妙に心地良い。
 残っている三本の指が器用に裏筋を擽ってくるのも大きいかも知れない。
 ぐちゆっ、ぐちゆっ、と窮屈な音とサシュサシュサシュッ、と笹の靡く音が混ざり合い、その中に――「…………はぁ……、……はぁ……」といやに熱っぽいナツキの吐息が時折混じる。

 影縫いによって、マーラが声を出せないせいで、静まり返った漆黒空間にナツキ湿った吐声だけが小さく木霊する。
 吐息の度にぷるんっ、と小さく揺れる唇が妙に色っぽい。
 微かに開かれていく唇から漏れる吐息は熱を増して、亀頭を生ぬるく撫でた。
 上と下の唇が少しずつ、唾液の糸を引いて離れていき、そこからピンク色の舌が顔を覗かせ始めていた。

「んっ……、はぁ、っ、はぁ……っ……」

 まるで欲情しているかの様子に、刺激はそれほどでないにもかかわらず、いつ暴発してもおかしくないほど張り詰めていた。
 演出だと思っていた初心うぶさも、演技では無く本気で欲情していたのではないか? そう思ってしまうくらいに、ナツキの頬は、まるで炎天下の中眠ってしまったかのように赤く染まっていた。
 もともと肌が雪のように白いだけに異様なくらいに赤く見える。
 そんな赤味を増した指で、覚束ない手淫が繰り返されていく。

 己の肉棒に欲情しているとしか思えなくなった時には、マーラの射精欲求もピークを迎えていた。
 今にも欲情汁が吹き出しそうなくらいに張り詰めた肉棒の表面を、ナツキの手の平がぬちゅーーっ、ぬちゅーーっ、と舐めるように滑る。
 硬質を撫で回る柔らかい指使いに、肉棒が極限まで快感を溜め込んでいき、

 ――ドブッドビュルルルリュリュウッ!! 鈴口から精液が迸った。

 ビチャビチャンッ! とその精液の塊がナツキの頬をビンタする。
 あまりの衝撃に、ここに来てようやく惚けていたナツキの目が驚きでパチッパチッと大きな瞬きを繰り返した。

「あ、…………、はぁ、はぁ…………。――お、終わり……。もう終わり。……逝ったんだから、いいでしょ?」

「……な、何!? ナツキくんなぜだ!? キミなら殺せるだろう!?」

「終わりって、言ってるでしょ。殺さないって……言った通り」

「ど、どういう、どういうつもりだっ……」

「終わりって言ったら終わり! キミの負け。……ここから出るよ」

 精液を頬につけたまま立ち上がったナツキがマーラに背を向け、見えざる壁になっている黒面に触れた。
 パンッ――。
 湿った音と一緒に光りが生まれる。

「……っ…………」
 
 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、デジタルなタンバリンで叩くようにナツキが壁を叩くと、手拍子に合わせて湿気った音と光が何度も繰り返した。

 ワープゲートからの退室が入室に対して酷く難しいものなのか、ナツキの表情は優れない。
 退室を避けたいマーラでさえ声を掛けられない緊張感を伴っていた。
 手の平だけではなく、爪で引っ掻いたり、膝で叩くものだからとばっちりの心配さえしてしまう。
 そんな中で突然と振り向いてくるナツキ。

「……ごめん。ここから出られなくなった」

「なに!?」
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