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第3章 淫武御前トーナメントの章
31話 マーラの過去♥(自慰)
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31話 マーラの過去♥(自慰)
「あなたがここら一帯を縄張りにしてる西洋人ね?」
明治中期――。古物商を営んでいたマーラの元へとやってきた1人の女。
日傘を差していて口元しか見えない怪しげな女。
それがマーラが持った翔子への第一印象だった。
「君は、誰かな? ふぅ――……。うん。キミ、いい体をしているね。肉体労働は得意かな? 女らしく身体を使う肉体労働だ。奥でビジネスの話をしよう」
顔を見せられない理由はともかくとして、良い身体だ。窮屈な和服で締め上げているにもかかわらず凹凸のはっきりとしたスタイルは金になる。
女郎にするにはもったいないくらいにね。
翔子を応接室へと案内しながら、マーラは銭勘定をする。
不老の肉体を持っていても、それを生かすも殺すも己次第。そして己を生かすには、金があるに越したことはない。それが当時のマーラの考えであった。
「ビジネスねぇ……。淫魔の自覚があってのことかしら?」
事務所兼応接室に連れ込んですぐ、翔子から問い質された。
ピクンッ、とコースターを滑らせているマーラの指が跳ねた。
媚香の湯気を立たせた煎茶が、2人のあいだで往生する。
――正体を知られている。
このような尋問を受けたのは始めてのことだった。
解消しても解消しても無限に沸いてくる欲求、性への渇望。人間と同じ環境で育つも、マーラは人間との違いに気付き、あるとき友人に相談した。
現代の言葉を借りるならば、思春期、中二病散々な言われようだったが、それとは明らかに違う。
骨折しても次日には完治するのだから。
マーラ、そして他の淫魔たちも、特別組織に入っているでもなく、わざわざ教えらるでもなくなんとなく気付くのだ。
自分が特別な存在である、と。
「淫魔、か……。特別な存在であるとは自覚している。女を前にすると止めようのない欲求が沸き上がる。それがこの世界では淫魔と呼ばれていることも知っている」
「正直ねぇ。他の淫魔と同じようにね」
「隠す必要がない。口封じが必要ないからね」
「あらやだ。物騒じゃない?」
「淫魔の前に現れたんだ。これから自分がどういう目に遭うか分かるだろう?」
「どんな目に遭わされるのかしら?」
「君は犯される。もちろんそれだけで終わらせるつもりはないがね。――肉体労働してもらうよ。女にしか出来ない肉体労働だ。古物商なんてちんけな商売を本業にしているわけじゃないんだ」
「正当防衛成立ねぇ。過剰防衛でも、防衛と認められなかったとしても殺すけど。――違うわねぇ。消すの間違いね。犬畜生にももとる悪魔。お主らは生き物でもない。物以下の存在よ」
女狐が隠しきれない本性を現していくように、声色が鋭く変貌していった。まったりとした口調から射貫くような鋭いものへと。
だからといってマーラが怖じ気付くことは無い。
淫魔の正体を知られていたとしてもだ。
「――口上はもういいかい? いくら息巻いていても女である以上、そして淫魔を前にした以上、全てを…………肉欲で……埋め尽くされる……まで……この事務所から……は出られ、ないよ……」
肺のサイズが半分になってしまったように息苦しい。喋っている途中で何度も息継ぎが必要になって、言葉と言葉が隙間だらけになってしまう。
媚薬を入れた茶を……吸い込んだ……からか……?
「どうしたのかしらぁ? 何か言いたげだけどぉお? ズズズズズッ……」
「な…………、あ………………」
3度吸い込むだけで発情する媚香の原液を、あろうことか女は啜り飲んでいる。
混乱と危機感が同時にやってくる中、それ以上の窮地に立たされていると知らしめられる。
「うふふっ……。アタシの色気にあてられるとみーんなまともに立つことさえ出来なくなっちゃうのよねぇ? その癖して下半身だけが立派に立っちゃうのよ。それを使うことしか頭から消えてしまうみたいねぇ。喋るどころか、犯すことすら忘れちゃうのよねぇ。それを使うことしか」
「あ、ぁ、……あ、…………あ……」
「竿を使うことしか頭になくて、他の思考が全て消えてしまうのよ。……うふふっ」
苛んでくる性への渇望は、――淫魔を自覚した頃より、――性欲の処理方法を知った頃より遙かに大きく思考が占拠されていく。
目の前の艶女に脳内を占拠されていく中――パサッ。
和紙で出来た傘を、女は一本に閉じた。
露わになった顔は、歌舞伎役者からあくだけを取り除いたような妖艶な女だった。
10代後半の若々しい色気から、40歳近い諄い色気さえ持ち合わせている。
年齢さえも不詳だった。
シュルシュルル――。
圧倒されている中、宝塚歌劇団のステージでストリップでも始めたような、そんな常識外れな肌の露出をさせ始めたのだ。
身に付けていたものが一本の帯だったかのように、艶女の纏った着物が、波打つ水面のように円を描いて足元へと広がっていった。
にもかかわらず一本に束ねられた傘に、蕾と花弁は隠されてしまっている。
その光景に見入ってしまい、マーラの口の中では唾液が湯水のように沸いて、ごくごくと喉を上下させた。
お茶の置かれたテーブルを挟んで座る裸女に向かって手を伸ばしていた。
しかし切れ長な目を尖らせられただけで、その手を引っこめてしまう。
抱いた傘を右へ左へ転がされて、視線を泳がされてしまう。
ハンドルを支えていた指先が空にねっとり文字を書くように遊び始めて、それを追いかけていると涎が零れていってしまい、それが艶女の唇に吸い込まされてヌチュッ、と濡れた音が鳴ったと同時に、下半身が跳ねていた。
「お…………ぉ、お」
唾液の糸を引いた指先が、喉を滑りながら女らしい丸みを帯びた乳丘へと這い、ピンクの頂へと登っていく。
「んっ……、あ♥」
クチュクチュと音が鳴る、乳首を転がしている音なのは間違いない。
しかし、傘が邪魔をしてその様子を見ることが出来ない。
クチュクチュコリコリ鳴らしながら喘がれても、肝心の乳首を拝めない。
「あっ♥ あっ♥ ……あそこまで濡れてきたわぁ……」
グンッ! 訓練された兵隊のような勢いで妖女の股間を急ぎ見た。
グッうぅ……。しかし、傘を間に挟まれて、また覗き見ることを許されなかった。
「あっ、あっ♥ あっ、あっ♥ 見られるのっ、凄いわっ、見られながら慰めるのたまらないっ♥ あっ、あっ、いぃいっ♥」
完全に翻弄されていた。淫女の手淫にあわせて呼吸を荒らげていた。
妖女以上に荒らげていた。
「一緒に、しましょ? んっ、あっ、あっ♥ 見せてあなたのっ逞しいモノっ……」
限界だった。
爆発寸前の時限爆弾を解除するかのような勢いで、マーラはガチャガチャガチャガチャベルトを外して、オナニーを始めてしまう。
欲求、それも性欲の強さを逆手に取られて猿のように竿を擦った。
ビュルッビュルッビュルッ! と指示されるがまま射精していた。
何度も何度も竿がすり切れんばかりにだ。
ビュルビュルビュルッ!! ひたすらに精液の鉄砲を妖女にぶつけていた。
「んっ、はあ、すごいっ、臭いっ…………はぁ、はぁ……」
空になった湯飲み茶碗、そしてテーブルを白濁塗れにしていた。
妖女に精液をぶつけるために、妖女を穢すためにひたすらに扱いていた。
「あぁあっ! あぁあっ! あぁあっ!!」
精液の湯船に浸かったように塗れた妖女。カチカチ鳴り始めた蛍光灯が、自ら銀色の光を放つ女神へと妖女の姿を変貌させた。
すっからかんになって放心している中。
――ぬちゅ……。
傘の骨に隠れていた愛液で糸を引いた指が、身体に纏った精液との絡まり合いを見せつけてくる。
親指と人差し指で、愛蜜と精液の絡み液を見せ付けてきて、その二指を唇に運ばれて、マーラは最後の一回になるであろうこれまでにない勃起をさせられた。
立ち上がった妖女。このとき始めて一糸まとわぬ裸体を拝んだのだ。
この女とやったら死ぬ。不老とかそんな些細なこと関係なしに死ぬ。
しかし寄られても死への恐怖はなかった。
ただただひたすらな肉欲の解消のことしか考えられなかった。
……やれるなら死んでもいい。
しかし――しかし現実は甘くなかったのだ。
「うわ……、あ、あ、あ……あ、あ、あ……」
寄ってきた妖女の体積が増していったのだ。
ダイエットモニターのビフォーアフターの様子を逆再生されているような、得体の知れない変化。それも筋肉がボッコリと膨らんでまるでボディービルダー。
しまいに、ボンッ、としけった花火のような音と共に、マーラ自身の顔が現れた。
「じゃ、やりましょうか♪」
「や、やめてくれやめてくれっ、やめ、やぁああぁあああアアアアアアアアッ!」
悪い夢を見させられているようだった。自分のオナニーを見てオナニーしていた。これまで培ってきた価値観、存在感が崩れ去っていく。
「ウワアアアアアッ!! ワァアッ! ワァアアッ!」
淫魔の象徴が力を失っていき、それが消え入りそうになったところで意識を失った。そのあとの記憶は定かでは無い。
失神していたのだろうが――。
だとしたら、犯されそうになり失神してしまったのか。それとも自分自身に犯された記憶は、頭が処理できずに消されてしまったのだろうか。
――分からない。
マーラは身体が燃やされていく中目覚め、そんなことをぼんやり考えていた。
あれは誰だったんだ、あの女はいったい……。人間離れした、現実離れした女。
それでも確かに存在する妖女だと、悪夢から覚めた今なら分かる。
肉体の消滅を悟っても、恐怖よりもひたすらな女への好奇心が勝っていた。
「――翔子。オレの妹だ。対魔の家系で、家族惨殺されてからはくノ一なんてやってやがる」
肉体を燃やす炎のカーテンを隔てて、男からそう言われた。
「ああ見えて400年以上生きている女だ。お前らじゃ相手にもならねぇなぁ。不死身くらいじゃ相手にならねぇな」
400歳……ロリばばあと呼ばれるタイプの、いやロリとも違うな。
ばばあとも違うが……。今となっては後の祭りだが。
「何をとち狂ったか、不老不死の淫魔を根絶やしにしようと400年間も彷徨ってやがる」
「淫魔を根絶やしに……?」
「ゾンビってああいう奴を言うんだぜ? 人間食べようとする本能よりもたち悪いだろ。お腹いっぱいにならねぇだろうからな」
少し翔子のことを知った。
少し知ってもっと知りたい――そう思ってしまった。だから死にたくない。
いくら思っても後の祭りだが。
「身体とか元に戻してやってるけど、間違えても翔子とは戦うなよ」
「戻す……? ワタシは助かるのか?」
「あぁ。ただ、淫魔が蘇りまくってるのばれると面倒だからな。今はまだそのときじゃない。わかんだろ?」
「あ、あぁ。分かった。分かったぞ青年。恩に着るぞ!」
こうしてマーラは、翔子の兄、そして自身の実の父でもある男・龍司と対面したのであった。
「あなたがここら一帯を縄張りにしてる西洋人ね?」
明治中期――。古物商を営んでいたマーラの元へとやってきた1人の女。
日傘を差していて口元しか見えない怪しげな女。
それがマーラが持った翔子への第一印象だった。
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顔を見せられない理由はともかくとして、良い身体だ。窮屈な和服で締め上げているにもかかわらず凹凸のはっきりとしたスタイルは金になる。
女郎にするにはもったいないくらいにね。
翔子を応接室へと案内しながら、マーラは銭勘定をする。
不老の肉体を持っていても、それを生かすも殺すも己次第。そして己を生かすには、金があるに越したことはない。それが当時のマーラの考えであった。
「ビジネスねぇ……。淫魔の自覚があってのことかしら?」
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ピクンッ、とコースターを滑らせているマーラの指が跳ねた。
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現代の言葉を借りるならば、思春期、中二病散々な言われようだったが、それとは明らかに違う。
骨折しても次日には完治するのだから。
マーラ、そして他の淫魔たちも、特別組織に入っているでもなく、わざわざ教えらるでもなくなんとなく気付くのだ。
自分が特別な存在である、と。
「淫魔、か……。特別な存在であるとは自覚している。女を前にすると止めようのない欲求が沸き上がる。それがこの世界では淫魔と呼ばれていることも知っている」
「正直ねぇ。他の淫魔と同じようにね」
「隠す必要がない。口封じが必要ないからね」
「あらやだ。物騒じゃない?」
「淫魔の前に現れたんだ。これから自分がどういう目に遭うか分かるだろう?」
「どんな目に遭わされるのかしら?」
「君は犯される。もちろんそれだけで終わらせるつもりはないがね。――肉体労働してもらうよ。女にしか出来ない肉体労働だ。古物商なんてちんけな商売を本業にしているわけじゃないんだ」
「正当防衛成立ねぇ。過剰防衛でも、防衛と認められなかったとしても殺すけど。――違うわねぇ。消すの間違いね。犬畜生にももとる悪魔。お主らは生き物でもない。物以下の存在よ」
女狐が隠しきれない本性を現していくように、声色が鋭く変貌していった。まったりとした口調から射貫くような鋭いものへと。
だからといってマーラが怖じ気付くことは無い。
淫魔の正体を知られていたとしてもだ。
「――口上はもういいかい? いくら息巻いていても女である以上、そして淫魔を前にした以上、全てを…………肉欲で……埋め尽くされる……まで……この事務所から……は出られ、ないよ……」
肺のサイズが半分になってしまったように息苦しい。喋っている途中で何度も息継ぎが必要になって、言葉と言葉が隙間だらけになってしまう。
媚薬を入れた茶を……吸い込んだ……からか……?
「どうしたのかしらぁ? 何か言いたげだけどぉお? ズズズズズッ……」
「な…………、あ………………」
3度吸い込むだけで発情する媚香の原液を、あろうことか女は啜り飲んでいる。
混乱と危機感が同時にやってくる中、それ以上の窮地に立たされていると知らしめられる。
「うふふっ……。アタシの色気にあてられるとみーんなまともに立つことさえ出来なくなっちゃうのよねぇ? その癖して下半身だけが立派に立っちゃうのよ。それを使うことしか頭から消えてしまうみたいねぇ。喋るどころか、犯すことすら忘れちゃうのよねぇ。それを使うことしか」
「あ、ぁ、……あ、…………あ……」
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和紙で出来た傘を、女は一本に閉じた。
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10代後半の若々しい色気から、40歳近い諄い色気さえ持ち合わせている。
年齢さえも不詳だった。
シュルシュルル――。
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身に付けていたものが一本の帯だったかのように、艶女の纏った着物が、波打つ水面のように円を描いて足元へと広がっていった。
にもかかわらず一本に束ねられた傘に、蕾と花弁は隠されてしまっている。
その光景に見入ってしまい、マーラの口の中では唾液が湯水のように沸いて、ごくごくと喉を上下させた。
お茶の置かれたテーブルを挟んで座る裸女に向かって手を伸ばしていた。
しかし切れ長な目を尖らせられただけで、その手を引っこめてしまう。
抱いた傘を右へ左へ転がされて、視線を泳がされてしまう。
ハンドルを支えていた指先が空にねっとり文字を書くように遊び始めて、それを追いかけていると涎が零れていってしまい、それが艶女の唇に吸い込まされてヌチュッ、と濡れた音が鳴ったと同時に、下半身が跳ねていた。
「お…………ぉ、お」
唾液の糸を引いた指先が、喉を滑りながら女らしい丸みを帯びた乳丘へと這い、ピンクの頂へと登っていく。
「んっ……、あ♥」
クチュクチュと音が鳴る、乳首を転がしている音なのは間違いない。
しかし、傘が邪魔をしてその様子を見ることが出来ない。
クチュクチュコリコリ鳴らしながら喘がれても、肝心の乳首を拝めない。
「あっ♥ あっ♥ ……あそこまで濡れてきたわぁ……」
グンッ! 訓練された兵隊のような勢いで妖女の股間を急ぎ見た。
グッうぅ……。しかし、傘を間に挟まれて、また覗き見ることを許されなかった。
「あっ、あっ♥ あっ、あっ♥ 見られるのっ、凄いわっ、見られながら慰めるのたまらないっ♥ あっ、あっ、いぃいっ♥」
完全に翻弄されていた。淫女の手淫にあわせて呼吸を荒らげていた。
妖女以上に荒らげていた。
「一緒に、しましょ? んっ、あっ、あっ♥ 見せてあなたのっ逞しいモノっ……」
限界だった。
爆発寸前の時限爆弾を解除するかのような勢いで、マーラはガチャガチャガチャガチャベルトを外して、オナニーを始めてしまう。
欲求、それも性欲の強さを逆手に取られて猿のように竿を擦った。
ビュルッビュルッビュルッ! と指示されるがまま射精していた。
何度も何度も竿がすり切れんばかりにだ。
ビュルビュルビュルッ!! ひたすらに精液の鉄砲を妖女にぶつけていた。
「んっ、はあ、すごいっ、臭いっ…………はぁ、はぁ……」
空になった湯飲み茶碗、そしてテーブルを白濁塗れにしていた。
妖女に精液をぶつけるために、妖女を穢すためにひたすらに扱いていた。
「あぁあっ! あぁあっ! あぁあっ!!」
精液の湯船に浸かったように塗れた妖女。カチカチ鳴り始めた蛍光灯が、自ら銀色の光を放つ女神へと妖女の姿を変貌させた。
すっからかんになって放心している中。
――ぬちゅ……。
傘の骨に隠れていた愛液で糸を引いた指が、身体に纏った精液との絡まり合いを見せつけてくる。
親指と人差し指で、愛蜜と精液の絡み液を見せ付けてきて、その二指を唇に運ばれて、マーラは最後の一回になるであろうこれまでにない勃起をさせられた。
立ち上がった妖女。このとき始めて一糸まとわぬ裸体を拝んだのだ。
この女とやったら死ぬ。不老とかそんな些細なこと関係なしに死ぬ。
しかし寄られても死への恐怖はなかった。
ただただひたすらな肉欲の解消のことしか考えられなかった。
……やれるなら死んでもいい。
しかし――しかし現実は甘くなかったのだ。
「うわ……、あ、あ、あ……あ、あ、あ……」
寄ってきた妖女の体積が増していったのだ。
ダイエットモニターのビフォーアフターの様子を逆再生されているような、得体の知れない変化。それも筋肉がボッコリと膨らんでまるでボディービルダー。
しまいに、ボンッ、としけった花火のような音と共に、マーラ自身の顔が現れた。
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「や、やめてくれやめてくれっ、やめ、やぁああぁあああアアアアアアアアッ!」
悪い夢を見させられているようだった。自分のオナニーを見てオナニーしていた。これまで培ってきた価値観、存在感が崩れ去っていく。
「ウワアアアアアッ!! ワァアッ! ワァアアッ!」
淫魔の象徴が力を失っていき、それが消え入りそうになったところで意識を失った。そのあとの記憶は定かでは無い。
失神していたのだろうが――。
だとしたら、犯されそうになり失神してしまったのか。それとも自分自身に犯された記憶は、頭が処理できずに消されてしまったのだろうか。
――分からない。
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あれは誰だったんだ、あの女はいったい……。人間離れした、現実離れした女。
それでも確かに存在する妖女だと、悪夢から覚めた今なら分かる。
肉体の消滅を悟っても、恐怖よりもひたすらな女への好奇心が勝っていた。
「――翔子。オレの妹だ。対魔の家系で、家族惨殺されてからはくノ一なんてやってやがる」
肉体を燃やす炎のカーテンを隔てて、男からそう言われた。
「ああ見えて400年以上生きている女だ。お前らじゃ相手にもならねぇなぁ。不死身くらいじゃ相手にならねぇな」
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ばばあとも違うが……。今となっては後の祭りだが。
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「ゾンビってああいう奴を言うんだぜ? 人間食べようとする本能よりもたち悪いだろ。お腹いっぱいにならねぇだろうからな」
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少し知ってもっと知りたい――そう思ってしまった。だから死にたくない。
いくら思っても後の祭りだが。
「身体とか元に戻してやってるけど、間違えても翔子とは戦うなよ」
「戻す……? ワタシは助かるのか?」
「あぁ。ただ、淫魔が蘇りまくってるのばれると面倒だからな。今はまだそのときじゃない。わかんだろ?」
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