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第2章 忍の章
28話 肉栽培
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「淫魔の……種ねぇ」
――ナツキがタケヤンとスネ吉に陵辱されているのと時を同じくして、オネエこと服部が、聞き直すように呟いた。
尋ねた相手は、奇襲に成功して拘束にも成功した茂である。
その茂の上ではエリナが跨がって身動きを封じている。
「そー、淫魔の種♥ 凄いでしょ♥」
肉栽培。それが茂の持つ淫魔の能力だった。
淫魔の種を食べさせた人間を淫魔にして、あげく取り込めると言うのだ。
同じ淫魔と言っても、金田樽男の肉分裂とは似て非なる力だ。
(その力を使って、榎本は目の前で取り込まれた……。くっそー……)
心の中で舌打ちしたエリナは、疲れ混じりに吐いた。
「身体を半分に分けてどっちも意思を持つ金田樽男も厄介……。だけどー、あんたの方が質が悪い。樽男もお前が作ったようなものなんだから当然か」
地上と海底を非科学的な力で繋げて牢獄代わりに使っている。
こんなぶっとんだ牢獄のことさえほったらかしにしてしまうほど、茂の話はぶっ飛んでいる。
「ボクの肉片を自らの意思で食べた人には、もれなく淫魔の力をプレゼント♥ 君達も食べるー? もっと強くなれるよー?♥」
その力を使って目の前で榎本を殺しておいて、良くそんなことが聞ける。
思ったときには、エリナの指が茂の首を締め上げていた。
「まってエリナちゃん。――ねぇ茂。その肉の種って、忍びだったとしても淫魔の力を得られるのかしら?」
「なっ、服部! あんたまだ強くなりたいの!? やめたほうがいいよ! 最終的に身体の一部にされるんだよ!? 知らないの!?」
「忍びの力と淫魔の力って相反するじゃなぁい? 現に淫魔になった子って全員忍びの力が無かったし。どうなのかしらぁ~って思って」
(ほ、ほんとだ……。榎本も、あの3人も力がない。……偶然?)
「さぁねー?♥ 想像に任せるよー♥」
「あら変ね。力を得られるかも分からないのに誘ったのかしら? 種を食べさせたら無限に栽培出来るのかも聞きたいんだけど。――樽男みたいに際限無しに増えられるのか教えてもらえないかしら?」
無限……。金田樽男が分裂出来るのは知っていたけど、無限なの?
その気になれば金田樽男は日本を埋め尽くすことも可能?
やばい、やばすぎ……。
おじさん、いや、茂の肉の種……も誰にでも食べさせられるの?
学校給食に混ぜられたらこの国の未来が茂の一部にされない?
そ、それどころじゃない!
「こ、米農家を乗っ取られたら……そんなことで済まないよ! は、服部!! まずいよ! 交渉の余地なんてないよ! ナツキと取引するのやめてこいつを始末した方がいい!!」
「――エリナちゃん……。あなたバカなの?」
「どっちが!? この危機的な状況が分からないの!? あんたの方がよっぽどバカでしょ! この淫魔男までこの地獄のような状況を楽しんで笑いを堪えてニヤニヤしているっ……。――良いよもう説明したげる。どれだけまずい状況なのかを」
「はぁ……。出来ないわよ。……いえ、出来なかったんでしょ。多分、茂が淫魔の力を手に入れたのはわりと最近。古賀を乗っ取る少し前ってところかしら? ――だから力を掌握し切れていない。おそらく自分の意思ってところがキモね」
「さすが服部だねぇ♥ 淫魔の種を植えるには条件があるんだよ。――淫魔になるって知ってて、それでいてなりたくて食べる。これがボクの淫魔の種が植えられる条件♥ 危なかったね♥」
恥かかされたっ……。よくもっ……。
だとしたらはっきり言って危なくもなんともない。
忍者をやっていれば、わざわざ魔に堕ちようとは思わない。
エリナの誤算は、榎本が力を得るときに、茂との間で行われた1対1のやり取りを許してしまったこと。
力を得たら、淫魔化すると聞いたのが淫魔になった後であること。
ただ、それでも止められたかは分からない。
忍びの素質を持たずに忍びの家系に生まれた者にとって忍術の素質は、淫魔の力を使ってでも欲しいものかも知れない。
ノビ、タケ、スネの3人も夢を見ていたに違いない。
「はぁ……、でもほんと嫌になるわねぇ。最近食べたものにあなたの肉片が混入していた可能性を考えると吐き気がするわ……」
「え……、あ、そうか……服部どんま…………え!? うぇえええええええええええええええっ、おぇえええええっ! うぇええええええっ!!!」
食べさせられているに決まっている。
古賀の忍者は実験がてら絶対食べさせられている。
古賀忍軍が乗っ取られた日。なぜ頭領になったにもかかわらず、突然茂が配膳を始めたのかその理由を知って、エリナは吐き気が止まらなかった。
「不労で種を大量に撒いて育ったところで回収。樽男先生より厄介かもと思ったけど、種を植え込む条件がかなり厳しいわね。――そして分かったことがあるわ」
――あなた、種を植えた人達の間を自由に行き来できるわね?
服部が急に女の眼を、女豹のように妖しくそれでいて鋭い眼差しへと変えて問いかけた。問うと言うより確信を口にしたような物言いだった。
「服部……。どういう……こと??」
「知っている限りだとしたら榎本君。彼を自らの一部に取り込んだでしょ? 逆も出来たんじゃないかしら。榎本君を本体にすることも可能だった。違うかしら?」
「服部。ほんとについて行けないんだけど、わかりやすく説明して」
「種を植えた人らを破棄することも、逆に本体にすることも可能だったじゃないかって睨んでるのよ。樽男も似たようなことが出来るのよね。そして茂は、樽男を作った大元で、それでいて肉分裂より条件も厳しい。出来ない筈がない」
金田樽男に言いようにされているだけ、と思っていたら服部はかなり深いところまで辿り着いているようだった。
伊賀を潰されたのだから当然か。
「種があれば花は咲く。元は一本の木。風に折られても新たな花を咲かせる。無限に。燃やされ炭クズにでもならなければ、何度も何度も花を咲かせる♥」
「……やっぱりね。待ち合わせするつもりなんて端から無かったってこと。その気になればいつ本体が変わってもおかしくないわよ。――ナツキちゃんが大変なことになるかも知れないわ」
「もう遅いよ♥ 3人のうちの誰かがナツキちゃんを淫魔にすグャヂャア!?」
茂を破滅させて、オネエとエリナはナツキの元へと急ぐのであった。
――ナツキがタケヤンとスネ吉に陵辱されているのと時を同じくして、オネエこと服部が、聞き直すように呟いた。
尋ねた相手は、奇襲に成功して拘束にも成功した茂である。
その茂の上ではエリナが跨がって身動きを封じている。
「そー、淫魔の種♥ 凄いでしょ♥」
肉栽培。それが茂の持つ淫魔の能力だった。
淫魔の種を食べさせた人間を淫魔にして、あげく取り込めると言うのだ。
同じ淫魔と言っても、金田樽男の肉分裂とは似て非なる力だ。
(その力を使って、榎本は目の前で取り込まれた……。くっそー……)
心の中で舌打ちしたエリナは、疲れ混じりに吐いた。
「身体を半分に分けてどっちも意思を持つ金田樽男も厄介……。だけどー、あんたの方が質が悪い。樽男もお前が作ったようなものなんだから当然か」
地上と海底を非科学的な力で繋げて牢獄代わりに使っている。
こんなぶっとんだ牢獄のことさえほったらかしにしてしまうほど、茂の話はぶっ飛んでいる。
「ボクの肉片を自らの意思で食べた人には、もれなく淫魔の力をプレゼント♥ 君達も食べるー? もっと強くなれるよー?♥」
その力を使って目の前で榎本を殺しておいて、良くそんなことが聞ける。
思ったときには、エリナの指が茂の首を締め上げていた。
「まってエリナちゃん。――ねぇ茂。その肉の種って、忍びだったとしても淫魔の力を得られるのかしら?」
「なっ、服部! あんたまだ強くなりたいの!? やめたほうがいいよ! 最終的に身体の一部にされるんだよ!? 知らないの!?」
「忍びの力と淫魔の力って相反するじゃなぁい? 現に淫魔になった子って全員忍びの力が無かったし。どうなのかしらぁ~って思って」
(ほ、ほんとだ……。榎本も、あの3人も力がない。……偶然?)
「さぁねー?♥ 想像に任せるよー♥」
「あら変ね。力を得られるかも分からないのに誘ったのかしら? 種を食べさせたら無限に栽培出来るのかも聞きたいんだけど。――樽男みたいに際限無しに増えられるのか教えてもらえないかしら?」
無限……。金田樽男が分裂出来るのは知っていたけど、無限なの?
その気になれば金田樽男は日本を埋め尽くすことも可能?
やばい、やばすぎ……。
おじさん、いや、茂の肉の種……も誰にでも食べさせられるの?
学校給食に混ぜられたらこの国の未来が茂の一部にされない?
そ、それどころじゃない!
「こ、米農家を乗っ取られたら……そんなことで済まないよ! は、服部!! まずいよ! 交渉の余地なんてないよ! ナツキと取引するのやめてこいつを始末した方がいい!!」
「――エリナちゃん……。あなたバカなの?」
「どっちが!? この危機的な状況が分からないの!? あんたの方がよっぽどバカでしょ! この淫魔男までこの地獄のような状況を楽しんで笑いを堪えてニヤニヤしているっ……。――良いよもう説明したげる。どれだけまずい状況なのかを」
「はぁ……。出来ないわよ。……いえ、出来なかったんでしょ。多分、茂が淫魔の力を手に入れたのはわりと最近。古賀を乗っ取る少し前ってところかしら? ――だから力を掌握し切れていない。おそらく自分の意思ってところがキモね」
「さすが服部だねぇ♥ 淫魔の種を植えるには条件があるんだよ。――淫魔になるって知ってて、それでいてなりたくて食べる。これがボクの淫魔の種が植えられる条件♥ 危なかったね♥」
恥かかされたっ……。よくもっ……。
だとしたらはっきり言って危なくもなんともない。
忍者をやっていれば、わざわざ魔に堕ちようとは思わない。
エリナの誤算は、榎本が力を得るときに、茂との間で行われた1対1のやり取りを許してしまったこと。
力を得たら、淫魔化すると聞いたのが淫魔になった後であること。
ただ、それでも止められたかは分からない。
忍びの素質を持たずに忍びの家系に生まれた者にとって忍術の素質は、淫魔の力を使ってでも欲しいものかも知れない。
ノビ、タケ、スネの3人も夢を見ていたに違いない。
「はぁ……、でもほんと嫌になるわねぇ。最近食べたものにあなたの肉片が混入していた可能性を考えると吐き気がするわ……」
「え……、あ、そうか……服部どんま…………え!? うぇえええええええええええええええっ、おぇえええええっ! うぇええええええっ!!!」
食べさせられているに決まっている。
古賀の忍者は実験がてら絶対食べさせられている。
古賀忍軍が乗っ取られた日。なぜ頭領になったにもかかわらず、突然茂が配膳を始めたのかその理由を知って、エリナは吐き気が止まらなかった。
「不労で種を大量に撒いて育ったところで回収。樽男先生より厄介かもと思ったけど、種を植え込む条件がかなり厳しいわね。――そして分かったことがあるわ」
――あなた、種を植えた人達の間を自由に行き来できるわね?
服部が急に女の眼を、女豹のように妖しくそれでいて鋭い眼差しへと変えて問いかけた。問うと言うより確信を口にしたような物言いだった。
「服部……。どういう……こと??」
「知っている限りだとしたら榎本君。彼を自らの一部に取り込んだでしょ? 逆も出来たんじゃないかしら。榎本君を本体にすることも可能だった。違うかしら?」
「服部。ほんとについて行けないんだけど、わかりやすく説明して」
「種を植えた人らを破棄することも、逆に本体にすることも可能だったじゃないかって睨んでるのよ。樽男も似たようなことが出来るのよね。そして茂は、樽男を作った大元で、それでいて肉分裂より条件も厳しい。出来ない筈がない」
金田樽男に言いようにされているだけ、と思っていたら服部はかなり深いところまで辿り着いているようだった。
伊賀を潰されたのだから当然か。
「種があれば花は咲く。元は一本の木。風に折られても新たな花を咲かせる。無限に。燃やされ炭クズにでもならなければ、何度も何度も花を咲かせる♥」
「……やっぱりね。待ち合わせするつもりなんて端から無かったってこと。その気になればいつ本体が変わってもおかしくないわよ。――ナツキちゃんが大変なことになるかも知れないわ」
「もう遅いよ♥ 3人のうちの誰かがナツキちゃんを淫魔にすグャヂャア!?」
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