(未定)

1章

1章-1

 ふと目を開けると、真っ白な壁があった。いや、天井か。
 どうやら私は眠っていたようだ。毛布を自分の体から剥がし、起き上がる。しかし、頭痛がして、もう一度寝転んだ。
 何か夢を見た気がする。頭の痛さに耐えながら思い出そうとした。すると、遠く懐かしい、切ない感情が心を襲った。久々の夢は、どうも酷い悪夢だったらしい。
 ここ数年、見ることはなかった。夜、目を閉じて、開けば朝が来る。空っぽの私には丁度良い睡眠だった。
  隣で寝息を立てている男。彼は私が目覚めたことに気付いていないようだ。力を振り絞り、頭痛薬を取りに行くため洗面所に向かった。
  驚いた。私は泣いているのか。ぽたぽたと目から溢れ出る涙は私を戸惑わせた。私は呆れて、自分を笑った。哀れで可哀そうな自分。しかし、何故か、なかなか涙が止まらない。呼吸が苦しいほど泣いている。私は頭痛を忘れて苦しくなり、しゃがみ込んだ。
 落ち着きを取り戻し、眠っている彼の元へ戻った。
 ねえ聞いて、私、とっても苦しかったのよ。と心の中で教えた。彼は起きなかった。そう、私の心の声なんて誰も知らないわ。知られたくもないし。私は出かける準備をした。
 今日は久しぶりに地元へ帰るのだ。