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妖精の魔法ってウイルスみたいなもんなの?
しおりを挟む「寅が、かなり危険な状態だ」
それは珍しく焦った、丑の声だった。
×
子の研究所になだれ込むように現れた丑と寅は、体が酷く傷付いていた。 現れた瞬間に周囲に血の臭いが広がり、異世界間転移装置で緊急移動したらしく、到着した瞬間に石が砕け散った。
研究所に着いたのを確認して安心したのか、丑は深く溜息を吐いた。 丑は寅を仰向けに床へ寝かせた後、ゆっくりと立ち上がる。 寅の方は呼吸はしているもののそれは浅く、かなり重症であることが直ぐに分かり、研究所の主であり丑と寅とよく共にいる子は二人に近寄ろうとした。
「待って。 変な魔法がかかってる」
子を制止したのは、丁度、子に調査について相談を持ち掛けていた酉だった。 酉は持っていた書類をクロークの下にしまい込み、自身に耐妖精・魔法少女用の魔法をかけ特殊な手袋をはめて寅に触れる。 寅にかかっている魔法を分析する為だ。
「多分、妖精の魔法。 直接触れるのは、危ない」
「わかった」
短く返事した子は研究所の防護服を掛けてある棚から対妖精用の防護服を取り出し、すぐさま着替える。 酉は後ろに下がった。
寅は身体の殆どに鬱血の痕や切った痕があり、酷く腫れている。 腹部には何かが貫通したかのような痕もあり、出血がかなり酷い。
「逆上した妖精と、魔法少女達にやられた」
淡々と丑は言う。 その丑の身体にも、所々に怪我の跡があった。 寅を抱えていなかった方の腕は動かないらしく、ただ胴体から下がっているような状態だった。
「寅を、護れなかった。 ……動きを封じられて動けなかった」
いつもは感情の感じられない丑の声に少し、悔しそうな声色が混ざる。
「それは仕方ないねん。 浄化技は?」
寅の体を診ながら子は聞いた。
「殆ど使わなかった」
丑は苦しそうに顔を歪める。
「それと……魔法少女の粉をあまり回収出来なかった」
すまない、と丑は頭を垂れる。
「こんな時にそっちは気にするんじゃないよん」
「……そう、か」
どっかの酉が毎回大量に持って帰るから、と返事する子に丑は安堵の息を吐く。 だが、叙々に丑の顔色も悪くなっていく。
「キミも何か食らったの」
顔色の変化に気付いた子は丑に問う。
「妖精の、魔法を」
絞り出すように、丑は言った。
「……あと、これだ…」
丑は何かを子に渡した後力尽き、膝から崩れ落ちた。
「これは……空の瓶、だね」
酉は手袋をはめた手で、それを子から受け取り、呟く。
「よくやったよ、」
子は、意識のない丑と寅を労った。
×
「さて、酉っち。 調査、よろしくねん」
「分かってるよ」
子は自身の直属の部下達を呼び集め、自身と同じ防護服を身に着けるよう指示する。
「でもねぇ、まず行かなきゃいけないところあるよね」
酉は、着替え終わった部下達に二人をストレッチャーに乗せるよう指示する子に訊く。
「証拠は揃ってるから自由にしてよん、もう」
子は鬱陶しそうに、虚空から取り出した書類を酉に渡す。
「準備がいいねぇ」
「良いからさっさと行って」
「はいはい。 君ってば丑クンや寅クンのことになると結構、周囲を邪険にするよねぇ」
言ってろ! と叫ぶ子を後にして手袋を外し魔法を解いた酉は、これからの調査について計画を立てる。
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