仮の面はどう足掻いても。

しの

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気付く量産品。

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「このオレが『穢れ』かどうか何ざ、信じなくてもどうでもいいが」

 目の前に立つ派手な敵が、黄金色のその目で、まっすぐ睨みつける。

「大分、めちゃくちゃな事言ってんの分かんねぇの?」

 まっすぐに見つめるその目にどうしようもなく恐怖を感じ、『こいつを今すぐに消さなければ』という気持ちに駆られた。

「そんなの関係ない! アイツらを倒して、魔法少女!」


×


「クソ、『強制撤退』だ!」

 そう毒づいて、デカい奴は派手な奴を抱えて消えてしまった。 悪い奴らにとどめを刺す前に、逃げられてしまった。 途中で、デカいやつが何かを拾って行った気がしたが、まあ問題はないだろう。

 リミッターを解除した魔法少女達達は間違いなく、強くなった。 動きが早いし、力も上がっているし。 だから、最上位幹部相手に、パワーアップアイテム無しで互角以上に戦えた。

「…………ねぇ。 ……私達、強くなってるんだよ、ね?」

「……なんだか、気分が良い……かも」

「この調子で、もっと、たくさん倒さなきゃ……」

魔法少女達の声が聞こえる。 ……魔法少女達が激しく消耗している?

 さっきの派手な悪い奴が言っていた事を思い出す。


「やっぱり、何かが……おかしい」


薄々気がついていた。

もしかすると、間違っているのかもしれない、と。


なんで、こうなったのだろう。

どうしたら、こうならなかったのだろう。


 魔法少女たちと別れて、最近来るようになった廃墟に戻った。

「あれ、」

 ……なんで、ここに来るようになったんだっけ?


×


『リミッター解除は、魔法少女の夢を削る方法なのだろう』

アイツらに言われたことばが、くり返される。


「そんなこと、」


……でも、どうして『仮の面アイツら』が、そんなことを知っていたのだろうか。


「きっと、仲間を脅して聞き出したんだ」


きっと、そうだ。


「でも、なんで、『リミッター外し』なんて、おもいついたんだっけ」


こえがいったんだ。


『リミッターを外せば、強くなる』って。


だけどそれなら《》のいしじゃないよね?

「じゃあだれの意思なの」


そんなのどうだっていいじゃない。

《》は、リミッターを解除をすると、あのこたち魔法少女達がどうなるってならったの?


「――『まほうしょうじょは、つよくなります』」


ほんとにそれだけ?


――本当は、知っていたんでしょう?


魔法少女が、すごく傷ついて、疲れちゃって、


「壊れてしまうって」


×


「――だれ?」

 《》が、此方の存在に気が付いたように、声を上げた。

「あ、気付かれちゃった」

 が驚いて目を見開く。

「干渉しすぎたんだよバカ」

 が若い女に悪態をつく。

「精神揺さぶって壊そうしたの! やりやすいように!」

「気付かれたのなら仕方ないでしょ?」

女の甲高い金切り声を受け流して子供は無邪気に笑う。

「……お前たちの、所為で」

 魔法少女たちが。

 絞りだした声は、酷く掠れていた。

「でも、」

と、無邪気に笑う子供が目を細めて、圧を放った。

「魔法少女達をあんなにしたのは、《》だよね?」


どうしよう。

今更、後には戻れない。 魔法少女達のリミッターを再びかけるなんて、もうできない。


「目が覚めなければ、楽だったかもしれないのに」


「仕方ない。 もう少し、多めに飲ませよう」
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