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何に使うの。
しおりを挟む「すみません、子様は何やらお忙しいために、『誰も入れるな』とおっしゃっています」
子の研究所に着くなり、部下らしき構成員にそう告げられた。 丑と寅は怪我を癒すために、自室で養生中だとか。
×
「……はぁ」
そのまま自分の持ち場まで着いたので、卯はそのまま仕事を始める事にした。
『幹部らしい威厳』とは何だ。 どうすれば魔法少女や妖精共から話しかけられないで済むだろうか。
「……(どうせなら、出来る限りの権力を使って色々調べてみようかしら)」
いつも手元にいるはずの『ねこ』はツンと澄ました顔で情報棟入り口のカウンターに鎮座していた。
×
「……やっぱり、権力って良いわ」
最上位幹部のみの閲覧が許可されている資料を手に取る。 中身は『仮の面』以外の、他の敵組織の内部情報等の資料だった。 何処の組織にどんな奴が居て、性格はこう、戦闘スタイルはこう、『仮の面』にとって脅威となり得るか。 そしてその理由は、等、プライバシーに疑問を持つようなかなり細かい情報が記載されている。
やはり、大抵の女性幹部は、大人の姿をしている。 それもそうか。 魔法少女になれそうなぐらいの年齢の少女ならば、まず妖精に引き抜かれるだろうし。 あと精神的にも、そこまで組織に忠誠は誓わないだろう。
女性幹部だけではなく、男性幹部、下級の戦闘員等、様々な組織の資料を見る。 敵組織の建物の形状だとか、かなり内部に入り込めないと知り得ないような情報が事細かに記載されている。 こんなに細かい資料なんて、どうやって取ってくるのだろうか。
意外と興味深い資料の内容に、思わずのめり込んでしまう。
「ねぇねぇ。 君が持ってるその資料みたいなやつ、他にも色々あると思うんだけどさ、それ、貸してくれないかな?」
「ひゃっ?!」
思いの外近い所からの声に思わず跳ねてしまった。 誰も入って来ない筈だ、と思っていたのに。
「そこまで驚かれるとは思いもしなかったよ」
笑う酉を睨み付け
「……許可が無いと入れない筈なのだけど」
そう訊くと、酉は
「あの子に許可して貰ったよ?」
と、胡散臭い笑みをそのままに、酉は少し首を傾げる。 長身の胡散臭い男やっても、ただただ怖いだけだ。 『ねこ』の方を見遣ると、ほっぺたを膨らませて何かを味わっている。 ……食い物で買収されたか。
「あんまり熱心に読んでるものだから、声をかけるのを少し憚っちゃったけど、オレ今あんまり時間ないから声掛けさせて貰ったよ」
ごめんね、と胡散臭い笑みを浮かべる酉から距離を取ろうとして一歩後ろに下がると、資料室の壁に背がぶつかった。
「そんなに怯えなくていいのに」
酉は大袈裟に溜息を吐くが、卯の耳には「もっと虐めたくなるじゃないか」とかいうとんでもない発言がはっきりと聞こえた。 やはり録でもない奴のようだ。
「勝手に取るけど、手続きはちゃんとするから」
そう言い酉は、卯の身長では台に乗らなければ届かないような箇所の資料を容易にいくつか抜き出す。 嫌味だろうか(被害妄想)。
「あと、」
酉は卯の方を向くと、近づいて来た。 吐息がかかりそうなくらい近づいて――
「――これ。 借りて良いかな?」
卯の頭のすぐ近くにあった資料を抜きだし、卯に見せる。
「……良いけど、それ何に使うの」
資料の題名は『ドキドキ♡女の子の攻略本』だった。
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