仮の面はどう足掻いても。

しの

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 ぺち、と柔らかいものが頬に当たり、目を覚ました。 折角の休みを台無しにされ、恨む気持ち半分でジトっと睨み付けると、枕元にある手紙に気が付いた。 起こしてやったぞとばかりに、どやぁ、とキメ顔のそれを無視して手紙を拾い上げる。

 シンプルな封筒は、よく見れば質の良い紙が使われており、組織のエンブレムで封蝋されていた。 封蝋は最上位幹部達のみしか使えない純黒の色をしていたので、きっと本物だろう。

 上から直接手紙が届くなんて、私は何かをやらかしてしまったのだろうか。 

 寝起きにこの緊張は心臓に辛いと思いながら、私を起こしたそれをペーパーナイフへと変えてやって封を切り、これまた質の良い紙でできた手紙を引っ張り出す。

 緊張で手が震えてしまう。 心配そうに肩へ登ってきたそれと共に、展げた手紙に目を向けると


 『貴女を“卯”の役職へ任命します。』


ただそれしか書かれていなかった。 思わず顔を見合わせる。

 仮面を付けようとして自身の仮面を手に取れば、仮面が『卯』足る、兎の面に変化している。



 唐突に、この間出会った人が組織に入る時に出会った女性だと気が付いた。
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