153 / 200
同棲生活
153:いどころ。
しおりを挟む
家に着いた後はラファエラは自身の荷物を移動させたり、まとめたりしていた。それは今日からこの部屋に住むためだ。一先ずは睡眠と着替え、移動とができるように場所を空けた。細かいことはまた明日以降にしようとラファエラは考えている。なぜなら、明日以降もこの部屋で過ごすことがわかりきっていたから。
「えへへ。明日からも、ずっと」
頬を抑え、彼女はにまにまと締まりのない顔をしていた。『ずっと一緒に居られる』そう思うだけで、なんだか表情が緩んでしまう。やっぱり好きだからかな、と思い恥ずかしくなった。
そして、フォラクスが夕食の用意ができたと呼ぶ。
「あ、はーい」
にやける顔をどうにか元の顔に戻し、ラファエラは彼の下へ向かった。
×
夕食は遭難後に初めて泊まった時のように美味しく、なんだか胸がいっぱいになる。
「作ってくれてありがとう。きみの作るご飯、おいしいし味付けも好きなんだ」
そう、にこにことラファエラはフォラクスに告げた。すると彼は少し目を見開いた後、視線を逸らす。
「……お気に召されたようで。其れはよかった」
顔色は変わっていないがどうやら照れているらしい、とラファエラは直感的に感じた。それを可愛らしく思いながらも、指摘はしないで置く。
「……其れで」
「うん」
夕食を終えた後、フォラクスはラファエラに問いかける。
「早速ですが、『お試し期間』とやらを何時から開始を致しますか?」
いよいよ、本格的に相性結婚の制度と向き合わねばならなくなった。それをようやく自覚し、緊張からかラファエラの背筋が少し伸びる。
「えっと、手続きとかが必要なんだっけ?」
「はい。其れと居住地の変更等の手続きも発生しますね」
「んー、そうだった」
住居の移動についても、お試し期間を始めるためには書き換えや変更手続きが必要になる。だが、お試し期間や色々で必要な書類は顔合わせをした時にまとめてもらっていたので、書類を貰いに役所などにいく必要はない。
要は書類の記入と提出さえ行えば、いつでもお試し期間を始められる状態だ。
「では。折角なので、年度が切り替わる秋の頃に始めますか?」
「うん。それがいいかも」
「成らば。日付の部分だけは除いて、他の内容の記入だけはしておきましょうか」
そうして、お試し期間の手続きや入居の手続きの書類など、相性結婚に関係する書類を記入した。
フォラクスが宮廷の者だからか、思いの外早く手続きの記入などが終わる。
「色々、手伝ってくれてありがと」
「いいえ。造作も無い事なので気にせず」
ラファエラが礼を言うと、彼は緩く首を振った。
「そう?」
「其れに。私が居なくなれば全てを御自身で行う事になるのですからね、アザレア」
そして、彼女に言い聞かせるようにそう告げる。
「……なんで、そんな寂しいこと言うのかな」
不満そうにラファエラが呟くも、
「何事にも、『絶対』『永遠』等無いでしょう?」
と、フォラクスは答えた。
×
「(……なんだかなぁ)」
寝る準備を済ませ、ラファエラは自分のものとなった部屋のベッドに横たわる。空っぽだった部屋は、すっかり本棚や薬品棚が置かれたり、ラファエラの服が複数かけられていたりと、生活感がうっすら生まれ初めていた。
次は、床に置かれている薬草の鉢植え達をどうにかしなければならない。
「(そういえば、初めて会った時に『鞍替えしてもいい』とか、『良い方が出来れば逢瀬するなりしても構わない』とか言ってた)」
すっかり忘れていたが、ラファエラはフォラクス自身から好意らしき言葉をもらったことがないと今さらながら気が付いた。
「(……)」
ぎゅ、と、ねこのぬいぐるみを抱きしめて寝返りを打った。
プレゼントを送ってもあまり嫌がらない、お返しをくれる、迎えにきてくれる。
「(くっついても、嫌がらない)」
嫌ってはいないだろう。
どちらかと言えば、好ましく思ってくれているのではないだろうか。
「(そうだったら、嬉しい)」
そう思いながら、ラファエラは眠りに就いた。
「えへへ。明日からも、ずっと」
頬を抑え、彼女はにまにまと締まりのない顔をしていた。『ずっと一緒に居られる』そう思うだけで、なんだか表情が緩んでしまう。やっぱり好きだからかな、と思い恥ずかしくなった。
そして、フォラクスが夕食の用意ができたと呼ぶ。
「あ、はーい」
にやける顔をどうにか元の顔に戻し、ラファエラは彼の下へ向かった。
×
夕食は遭難後に初めて泊まった時のように美味しく、なんだか胸がいっぱいになる。
「作ってくれてありがとう。きみの作るご飯、おいしいし味付けも好きなんだ」
そう、にこにことラファエラはフォラクスに告げた。すると彼は少し目を見開いた後、視線を逸らす。
「……お気に召されたようで。其れはよかった」
顔色は変わっていないがどうやら照れているらしい、とラファエラは直感的に感じた。それを可愛らしく思いながらも、指摘はしないで置く。
「……其れで」
「うん」
夕食を終えた後、フォラクスはラファエラに問いかける。
「早速ですが、『お試し期間』とやらを何時から開始を致しますか?」
いよいよ、本格的に相性結婚の制度と向き合わねばならなくなった。それをようやく自覚し、緊張からかラファエラの背筋が少し伸びる。
「えっと、手続きとかが必要なんだっけ?」
「はい。其れと居住地の変更等の手続きも発生しますね」
「んー、そうだった」
住居の移動についても、お試し期間を始めるためには書き換えや変更手続きが必要になる。だが、お試し期間や色々で必要な書類は顔合わせをした時にまとめてもらっていたので、書類を貰いに役所などにいく必要はない。
要は書類の記入と提出さえ行えば、いつでもお試し期間を始められる状態だ。
「では。折角なので、年度が切り替わる秋の頃に始めますか?」
「うん。それがいいかも」
「成らば。日付の部分だけは除いて、他の内容の記入だけはしておきましょうか」
そうして、お試し期間の手続きや入居の手続きの書類など、相性結婚に関係する書類を記入した。
フォラクスが宮廷の者だからか、思いの外早く手続きの記入などが終わる。
「色々、手伝ってくれてありがと」
「いいえ。造作も無い事なので気にせず」
ラファエラが礼を言うと、彼は緩く首を振った。
「そう?」
「其れに。私が居なくなれば全てを御自身で行う事になるのですからね、アザレア」
そして、彼女に言い聞かせるようにそう告げる。
「……なんで、そんな寂しいこと言うのかな」
不満そうにラファエラが呟くも、
「何事にも、『絶対』『永遠』等無いでしょう?」
と、フォラクスは答えた。
×
「(……なんだかなぁ)」
寝る準備を済ませ、ラファエラは自分のものとなった部屋のベッドに横たわる。空っぽだった部屋は、すっかり本棚や薬品棚が置かれたり、ラファエラの服が複数かけられていたりと、生活感がうっすら生まれ初めていた。
次は、床に置かれている薬草の鉢植え達をどうにかしなければならない。
「(そういえば、初めて会った時に『鞍替えしてもいい』とか、『良い方が出来れば逢瀬するなりしても構わない』とか言ってた)」
すっかり忘れていたが、ラファエラはフォラクス自身から好意らしき言葉をもらったことがないと今さらながら気が付いた。
「(……)」
ぎゅ、と、ねこのぬいぐるみを抱きしめて寝返りを打った。
プレゼントを送ってもあまり嫌がらない、お返しをくれる、迎えにきてくれる。
「(くっついても、嫌がらない)」
嫌ってはいないだろう。
どちらかと言えば、好ましく思ってくれているのではないだろうか。
「(そうだったら、嬉しい)」
そう思いながら、ラファエラは眠りに就いた。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる