131 / 200
三年目
131:純粋だった
しおりを挟む5月11日(水)
『clover_fieldさんがライブ配信を開始しました。リアルタイムで視聴しよう!』
待ち望んでいた通知が、スマホの画面に表示されたのを確認し、画面の上の部分にあらわれた通知バーをタップする。
四・七インチのディスプレイでは、彼女が信奉していると言っても良い、ひとつ年上の女子が微笑んでいた。
「はぁ~、ヨツバちゃん、今日も可愛いべな~」
そんな独り言をつぶやくと、画面の中の白草四葉が笑顔で語りだす。
「みんな、おはよう! クローバー・フィールドの白草四葉です。『メイクとヘアで大変身! 隠れた魅力を引き出して、いままでの自分から変身ちゃおう!』が合い言葉!」
「わたしは、人間にとって、いちばん大事なのは、中身だと思う。でも、他人が最初に見るのは、やっぱり外見なのよね(苦笑)」
「昨夜は、美容に大切な八時間睡眠ができなかった……勉強と……放課後に、学校でちょっと刺激的なことがあったから、気持ちが落ち着かなかったんだ」
「だから――――――今朝は、いつもと違うルーティンをしようと思ってるの!……って、スゴイ! もう、こんなにコメントと質問が来ちゃった」
スマートフォンの画面の中には、次々に視聴者からのコメントや質問が表示される。
ribbon_cat1101:おはよう! ヨツバちゃん今日も楽しみにしてるよ。
golden_pudding0416:今日は、どんなルーティンを紹介してくれるの?
chocolat_rollO9:夜ふかしした次の朝のモーニング・ルーティンを教えて
「それじゃ、さっそく、答えて行くね! まずは――――――chocolat_rollO9さん、うん! カワイイ名前ね! 『夜ふかしした次の朝のモーニング・ルーティンを教えて』」
「とっても、良い質問ね、chocolat! このバリー・ベノムのリバイバル・アイ・パッチは、目の隈に効果バツグン!」
#バリー・ベノム
#リバイバル・アイ・パッチ
「コーヒーを飲んあとは、お肌が水分不足気味。だから、アノのグロウオイルを塗るの! お肌がツヤツヤになるよ。それから、クリームブラシをちょこっと」
#アノ
#グロウオイル
「つぎは、snow_fieldちゃん! いつも、ありがとう。『明日は、証明写真の撮影があるのに、ニキビができてしまったべ……ヨツバちゃんなら、どうやって対処するか教えてほしいべ』」
「!」
snow_fieldの名前が呼ばれた瞬間、彼女は、スマホを両手で固く握りしめて、つぶやく。
「今日も、わたすのコメントを拾ってくれた……ありがとう、ヨツバちゃん……」
彼女が、両手で握ったスマホを胸のあたりに押し当てながら、感慨にふけっている間にも、画面の中のインフルエンサーは、語り続ける。
「ニキビの対処法ルールその1! 絶対に指で潰すのはダメ! 対処法ルールその2! どうしても、早く治したい場合は、トイレット・ペーパーにハミガキ粉を染み込ませて、ニキビの部分に当ててみて。そのまま、一晩寝たあと、翌朝にぬるま湯で洗い流すとバッチリだよ! ただし、ハミガキ粉は、ホワイトニング成分の入っていないものと白一色のクリーム状のものを選んでね」
自分の質問に答えているヨツバの言葉を聞き漏らすまいと、再びスマホの画面に目を向けた彼女は、食い入るように、自身が、カリスマと崇める相手の姿を見つめる。
画面の向こうの彼女は、ライブ配信の締めに入っている。
「――――――と、いうことで、今朝のライブ配信は、ここまで! 今夜のライブでは、初心者向けのフットネイルを紹介させてもらうね。シールタイプだから、とっても簡単にフィットさせられるし……なにより、女子だけなく、男の子の目も釘付けだった、ってことをわたし自身が体験しちゃったから……今夜の配信も楽しみにしていてね。それじゃ、また、夜に! バイバイ!」
(はぁ~。今日もありがとう、ヨツバちゃん。こんなヒトと同じ学校に通えているなんて奇跡だべ……)
クローバー・フィールドの配信が終わったあとも、余韻にひたりながら、再びスマホを両手で抱きしめて、胸にあてた。
そうして、彼女は決意を固める。
(ヨツバちゃんが関わっている広報部に、わたすも入部するべ……)
『clover_fieldさんがライブ配信を開始しました。リアルタイムで視聴しよう!』
待ち望んでいた通知が、スマホの画面に表示されたのを確認し、画面の上の部分にあらわれた通知バーをタップする。
四・七インチのディスプレイでは、彼女が信奉していると言っても良い、ひとつ年上の女子が微笑んでいた。
「はぁ~、ヨツバちゃん、今日も可愛いべな~」
そんな独り言をつぶやくと、画面の中の白草四葉が笑顔で語りだす。
「みんな、おはよう! クローバー・フィールドの白草四葉です。『メイクとヘアで大変身! 隠れた魅力を引き出して、いままでの自分から変身ちゃおう!』が合い言葉!」
「わたしは、人間にとって、いちばん大事なのは、中身だと思う。でも、他人が最初に見るのは、やっぱり外見なのよね(苦笑)」
「昨夜は、美容に大切な八時間睡眠ができなかった……勉強と……放課後に、学校でちょっと刺激的なことがあったから、気持ちが落ち着かなかったんだ」
「だから――――――今朝は、いつもと違うルーティンをしようと思ってるの!……って、スゴイ! もう、こんなにコメントと質問が来ちゃった」
スマートフォンの画面の中には、次々に視聴者からのコメントや質問が表示される。
ribbon_cat1101:おはよう! ヨツバちゃん今日も楽しみにしてるよ。
golden_pudding0416:今日は、どんなルーティンを紹介してくれるの?
chocolat_rollO9:夜ふかしした次の朝のモーニング・ルーティンを教えて
「それじゃ、さっそく、答えて行くね! まずは――――――chocolat_rollO9さん、うん! カワイイ名前ね! 『夜ふかしした次の朝のモーニング・ルーティンを教えて』」
「とっても、良い質問ね、chocolat! このバリー・ベノムのリバイバル・アイ・パッチは、目の隈に効果バツグン!」
#バリー・ベノム
#リバイバル・アイ・パッチ
「コーヒーを飲んあとは、お肌が水分不足気味。だから、アノのグロウオイルを塗るの! お肌がツヤツヤになるよ。それから、クリームブラシをちょこっと」
#アノ
#グロウオイル
「つぎは、snow_fieldちゃん! いつも、ありがとう。『明日は、証明写真の撮影があるのに、ニキビができてしまったべ……ヨツバちゃんなら、どうやって対処するか教えてほしいべ』」
「!」
snow_fieldの名前が呼ばれた瞬間、彼女は、スマホを両手で固く握りしめて、つぶやく。
「今日も、わたすのコメントを拾ってくれた……ありがとう、ヨツバちゃん……」
彼女が、両手で握ったスマホを胸のあたりに押し当てながら、感慨にふけっている間にも、画面の中のインフルエンサーは、語り続ける。
「ニキビの対処法ルールその1! 絶対に指で潰すのはダメ! 対処法ルールその2! どうしても、早く治したい場合は、トイレット・ペーパーにハミガキ粉を染み込ませて、ニキビの部分に当ててみて。そのまま、一晩寝たあと、翌朝にぬるま湯で洗い流すとバッチリだよ! ただし、ハミガキ粉は、ホワイトニング成分の入っていないものと白一色のクリーム状のものを選んでね」
自分の質問に答えているヨツバの言葉を聞き漏らすまいと、再びスマホの画面に目を向けた彼女は、食い入るように、自身が、カリスマと崇める相手の姿を見つめる。
画面の向こうの彼女は、ライブ配信の締めに入っている。
「――――――と、いうことで、今朝のライブ配信は、ここまで! 今夜のライブでは、初心者向けのフットネイルを紹介させてもらうね。シールタイプだから、とっても簡単にフィットさせられるし……なにより、女子だけなく、男の子の目も釘付けだった、ってことをわたし自身が体験しちゃったから……今夜の配信も楽しみにしていてね。それじゃ、また、夜に! バイバイ!」
(はぁ~。今日もありがとう、ヨツバちゃん。こんなヒトと同じ学校に通えているなんて奇跡だべ……)
クローバー・フィールドの配信が終わったあとも、余韻にひたりながら、再びスマホを両手で抱きしめて、胸にあてた。
そうして、彼女は決意を固める。
(ヨツバちゃんが関わっている広報部に、わたすも入部するべ……)
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる