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三年目
105:相手がどう思っているかなんて分かるわけがない。
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「……」
頬杖を突き、アザレアはぼんやりと授業を受けていた。なんとなく、胸がいっぱいになった気がしてそれを溢すように溜息を吐く。
「ちょっと。……授業、ちゃんと聞いてる?」
横で授業を聞いていた友人Aが、アザレアに少し顔を寄せ、問いかける。
「…………え?」
「もう。……どうしちゃったのよ」
惚けた返事に、友人Aは困り果てた様子で眉をひそめた。
「えぇっと……」
理由を答えようとして、アザレアはなぜか頬が熱くなるのを感じた。
「……ああ。もう、分かったわ」
友人Aは苦笑いをした。
「あなたの婚約者の人の事ね?」
「っ! ……なんで、」
驚くアザレアに、友人Aは優しく微笑んだ。
「ばかね。一体何年一緒にいると思ってるのよ」
初等部より前から一緒の友人Aには、色々とお見通しだったらしい。
×
それから授業が終わり、休み時間になった。アザレアと友人Aは次の教室に移動しながら、先程の話の続きをする。その最中で、アザレアは相性結婚の相手との間に何があったのか、彼女自身の抱く感覚を話せる分を話した。
「……つまり、『本当に好きか分からない』って事よね」
一通り話を聞いた友人Aは、確認するようにアザレアに訊く。
「…………うん」
やや頬を赤く染めたアザレアの様子に「(確かめるまでもないじゃないの)」と呆れながらも、友人Aは提案をする。その反応が面白いからだ。
「たとえば……。ほら、その人に近付いたり、触ったりしても大丈夫か確かめるとか?」
ちら、とアザレアを見ながら友人Aが言葉を投げかけると、
「……」
「あら。もう試したの?」
アザレアはきゅっと口を結んだ。その様子でなんとなく答えがわかる。意外と関係が進んでいるのかしら、と友人Aは内心で首を傾げた。
実際はほぼ触れ合いすらしたことのない、純真な愛どころかほぼ他人や知り合いの距離感である。それが突然、偶然とはいえ先日触れ合う羽目になっただけだ。
「…………ちょっとだけ。手が触れるくらいだけど」
「へぇ。……そうねぇ……」
それじゃあ、と友人Aは少し思考を巡らせ、
「あ。あなた達、『相性結婚』なんでしょ?」
と思い出し、アザレアに訊く。
「うん」
「確かめてみれば。その相性ってやつ」
「えっ」
驚くアザレアは、みるみるうちに耳まで真っ赤になった。
「……ってのは冗談だけれど」
「うん」
まだ色々と遠そうね、と内心で溜息を吐く。
「…………どちらかといえば、あなたよりも向こうの人があなたをどう思っているかの問題のような……」
そもそも、アザレアが顔や色々に興味を持っていた時点で、こうなるだろうことは友人A(と友人B)には予想済みだったのだ。
「そう?」
「そうでしょう? だって、あなたがどんなに好きでも向こうが『別に興味ない』って感じだったらすごく悲しいでしょ?」
「……うん……」
それを想像したのか、アザレアが落ち込んだ。
「……なんか、『亡くなった後に残る財政を全て譲れるくらいには情がある』らしいのは聞いた」
そして、ぽつりと呟いた。
「遺書もある」
「え、重い」
やや引いた様子で友人Aは反射的に零した。
「そう? 結婚するなら相続の結果でそうなると思うけど」
友人Aの反応に、アザレアは首を傾げた。
「……まあ、確かにそうね」
よく分からないアザレアとその婚約者との距離感に、友人Aは首を捻る。
「学芸祭で見た限りは、大丈夫なんじゃない?」
とりあえず、友人Aは自身で感じたことをアザレアに伝えた。
「……だったらいいな」
頬杖を突き、アザレアはぼんやりと授業を受けていた。なんとなく、胸がいっぱいになった気がしてそれを溢すように溜息を吐く。
「ちょっと。……授業、ちゃんと聞いてる?」
横で授業を聞いていた友人Aが、アザレアに少し顔を寄せ、問いかける。
「…………え?」
「もう。……どうしちゃったのよ」
惚けた返事に、友人Aは困り果てた様子で眉をひそめた。
「えぇっと……」
理由を答えようとして、アザレアはなぜか頬が熱くなるのを感じた。
「……ああ。もう、分かったわ」
友人Aは苦笑いをした。
「あなたの婚約者の人の事ね?」
「っ! ……なんで、」
驚くアザレアに、友人Aは優しく微笑んだ。
「ばかね。一体何年一緒にいると思ってるのよ」
初等部より前から一緒の友人Aには、色々とお見通しだったらしい。
×
それから授業が終わり、休み時間になった。アザレアと友人Aは次の教室に移動しながら、先程の話の続きをする。その最中で、アザレアは相性結婚の相手との間に何があったのか、彼女自身の抱く感覚を話せる分を話した。
「……つまり、『本当に好きか分からない』って事よね」
一通り話を聞いた友人Aは、確認するようにアザレアに訊く。
「…………うん」
やや頬を赤く染めたアザレアの様子に「(確かめるまでもないじゃないの)」と呆れながらも、友人Aは提案をする。その反応が面白いからだ。
「たとえば……。ほら、その人に近付いたり、触ったりしても大丈夫か確かめるとか?」
ちら、とアザレアを見ながら友人Aが言葉を投げかけると、
「……」
「あら。もう試したの?」
アザレアはきゅっと口を結んだ。その様子でなんとなく答えがわかる。意外と関係が進んでいるのかしら、と友人Aは内心で首を傾げた。
実際はほぼ触れ合いすらしたことのない、純真な愛どころかほぼ他人や知り合いの距離感である。それが突然、偶然とはいえ先日触れ合う羽目になっただけだ。
「…………ちょっとだけ。手が触れるくらいだけど」
「へぇ。……そうねぇ……」
それじゃあ、と友人Aは少し思考を巡らせ、
「あ。あなた達、『相性結婚』なんでしょ?」
と思い出し、アザレアに訊く。
「うん」
「確かめてみれば。その相性ってやつ」
「えっ」
驚くアザレアは、みるみるうちに耳まで真っ赤になった。
「……ってのは冗談だけれど」
「うん」
まだ色々と遠そうね、と内心で溜息を吐く。
「…………どちらかといえば、あなたよりも向こうの人があなたをどう思っているかの問題のような……」
そもそも、アザレアが顔や色々に興味を持っていた時点で、こうなるだろうことは友人A(と友人B)には予想済みだったのだ。
「そう?」
「そうでしょう? だって、あなたがどんなに好きでも向こうが『別に興味ない』って感じだったらすごく悲しいでしょ?」
「……うん……」
それを想像したのか、アザレアが落ち込んだ。
「……なんか、『亡くなった後に残る財政を全て譲れるくらいには情がある』らしいのは聞いた」
そして、ぽつりと呟いた。
「遺書もある」
「え、重い」
やや引いた様子で友人Aは反射的に零した。
「そう? 結婚するなら相続の結果でそうなると思うけど」
友人Aの反応に、アザレアは首を傾げた。
「……まあ、確かにそうね」
よく分からないアザレアとその婚約者との距離感に、友人Aは首を捻る。
「学芸祭で見た限りは、大丈夫なんじゃない?」
とりあえず、友人Aは自身で感じたことをアザレアに伝えた。
「……だったらいいな」
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