薬術の魔女の結婚事情【リメイク】

しの

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二年目

76:兆候

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「バリオスの野郎が本国を固めてくれているから、まだ何とかなっている。あんなクソみたいな親父でも、一応は感謝しないとな」

「だが、それも限界だぜ。どうする? お兄ちゃん」

「……仕方ない。この平野は放棄する。そうすれば、時間を稼げるはずだ」

「放棄するだけじゃせいぜい1週間ぐらいしか稼げねぇんじゃないか? せめて2週間ぐらい稼げれば、ルーシーの姉御が出産を終えられるかもだが……」

「2週間か。それぐらいなら問題ないさ。こうすればいい」

 そう言うと、ライルはスキルの力を開放した。
 そして、彼は竜の姿となる。

「グルオオオォッ! ――【溶岩流星群(ドラゴン・ダイブ】!!」

 ライルが咆哮する。
 そして、空から溶岩の隕石を降り注がせた。
 それは瞬く間に聖国と蛮族の兵士たちを飲み込んでゆく。
 少なくない人数が犠牲になった。
 さらに、草原が溶岩の池と化す。
 これなら、ライルが言った通り2週間以上の時間を稼ぐことができるだろう。

「……どうだ? なかなかのものだろう? ――ぐっ!?」

「む、無理すんなよ! 暴走しねぇうちにさっさと戻れ、お兄ちゃん!」

「あ、ああ……」

 ライルが元の人間の姿に戻る。
 そして、彼はその場に倒れ伏した。

「はぁ……はぁ……」

「ちっ! 世話の焼けるお兄ちゃんだぜ」

 ガルドがライルに肩を貸す。
 2人は戦場から離脱した。
 もちろん、サテラやその他の兵士たちも一緒だ。

「はぁ、はぁ……」

「ライル様……」

「心配するな、サテラ。この一瞬じゃ、大して竜化は進行していないさ」

「でも……」

「これで時間を稼げるだろう。しばらくはゆっくりできる。……そうだ、ルーシーの出産にも立ち会おうかな。確か、双子だったよな?」

「はい。男の子と女の子だと聞いています」

「そうか……。楽しみだな」

 ライルが笑う。
 こうして、ライルたちは戦争の最前線から一時撤退したのだった。
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