31 / 92
4話「禁断の墓標」
9
しおりを挟む
入る事を禁じられた霧深き森の中、神代と古夜の2人は周囲を探りながら歩いていた。
たまに見つかる血痕や足跡などを頼りに進んでいるのだが、一向に無事な行方不明者を見つけられず。
不意に立ち止まった神代は、ゆっくりと息をつくと呟いた。
「…まずいですね、このまま行けばアレに飲み込まれた隣の集落にたどり着いてしまう」
「時間的な事を考えますと、もう…神代様、一度戻りましょう。このままでは、貴方にまで――」
周囲を警戒したままの古夜は、主である神代の体調を気遣うように言った。
捜索に出る前、古夜は天宮に耳打ちされていた…神代の体調がよくない様子である、と。
霧の狂気を抑える為に力を使った反動が、まだダメージとして神代の身体に残っていると教えられたのだ。
神代が無理をしようとしたら、首根っこ引っぱってでも戻るように…と、天宮が言っていた。
後ろ髪を引かれている様子の神代を、半ば強引に連れ帰ろうとする古夜は何かに気づきいて動きを止める。
小さくではあるが、10時方向からこちらに向かってくるような…ゆっくりとした足音が聞こえてきたからだ。
神代も異変に気づき、古夜と共にそちらを警戒しつつ様子をうかがう。
しばらくして姿を現したのは、ところどころ血の付いたボロボロなピンク色のワンピースを身につけた…黒く長い髪をふたつに結った15、6歳くらいの少女であった。
少女は靴を履いておらず裸足で、虚ろな表情のまま…ゆっくりとした歩みで前に進んでいる。
ふと歩みを止めた少女は神代と古夜の存在に気づいたのだろう、2人の顔を交互に見て小さく口を開いた。
微かに紡がれた言葉に、神代と古夜の顔色を悪くさせる……
そして、少女はゆっくりと前に倒れ…慌てた様子で神代と古夜が、彼女の身体を受け止めた。
少女がやって来た方向を複雑そうに見た神代と古夜は、少女と共に千森へ戻る選択をする。
――ふふふ、ざぁんねんでしたぁ…私のかーち!
何処からか聞こえてくる笑い声に、老若男女の笑い声が重なり…霧は、その濃さを更に深めていった――
***
たまに見つかる血痕や足跡などを頼りに進んでいるのだが、一向に無事な行方不明者を見つけられず。
不意に立ち止まった神代は、ゆっくりと息をつくと呟いた。
「…まずいですね、このまま行けばアレに飲み込まれた隣の集落にたどり着いてしまう」
「時間的な事を考えますと、もう…神代様、一度戻りましょう。このままでは、貴方にまで――」
周囲を警戒したままの古夜は、主である神代の体調を気遣うように言った。
捜索に出る前、古夜は天宮に耳打ちされていた…神代の体調がよくない様子である、と。
霧の狂気を抑える為に力を使った反動が、まだダメージとして神代の身体に残っていると教えられたのだ。
神代が無理をしようとしたら、首根っこ引っぱってでも戻るように…と、天宮が言っていた。
後ろ髪を引かれている様子の神代を、半ば強引に連れ帰ろうとする古夜は何かに気づきいて動きを止める。
小さくではあるが、10時方向からこちらに向かってくるような…ゆっくりとした足音が聞こえてきたからだ。
神代も異変に気づき、古夜と共にそちらを警戒しつつ様子をうかがう。
しばらくして姿を現したのは、ところどころ血の付いたボロボロなピンク色のワンピースを身につけた…黒く長い髪をふたつに結った15、6歳くらいの少女であった。
少女は靴を履いておらず裸足で、虚ろな表情のまま…ゆっくりとした歩みで前に進んでいる。
ふと歩みを止めた少女は神代と古夜の存在に気づいたのだろう、2人の顔を交互に見て小さく口を開いた。
微かに紡がれた言葉に、神代と古夜の顔色を悪くさせる……
そして、少女はゆっくりと前に倒れ…慌てた様子で神代と古夜が、彼女の身体を受け止めた。
少女がやって来た方向を複雑そうに見た神代と古夜は、少女と共に千森へ戻る選択をする。
――ふふふ、ざぁんねんでしたぁ…私のかーち!
何処からか聞こえてくる笑い声に、老若男女の笑い声が重なり…霧は、その濃さを更に深めていった――
***
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる