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4話「禁断の墓標」
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真那加が診察室を去った後、十紀はため息をついてから口を開く。
「傍観者に徹してくれるのではなかったのか…?」
「おや、貴方達の意志を尊重して彼女に警告を発しただけですよ」
きょとんとした表情のまま、天宮が答えた。
これから、何が起こってしまうのか……
どういう状況になってしまうのか……
まったく予想できないのだから、一応警告をしただけだと――
確かに予想できない事態が起こっている事を理解している十紀は、これ以上何も言えなかった。
――霧は、確かな狂気を見せたのだから……
「それよりも、だ…天宮、お前は大丈夫なのか?」
「…?」
十紀の不意な言葉に、天宮は不思議そうに首をかしげる。
少しして、何を指している言葉なのか理解して口を開いた。
「あぁ…まぁ、良いとは言えませんが――まだ大丈夫だと思いますよ」
「…お前まで倒れたら、どうしようもなくなるからな」
苦笑して言った十紀は、診察室の隣の部屋へ姿を消す。
少しして戻ってきた彼の手には、小さな茶色の小瓶が握られていた。
それを天宮に手渡すと、言葉を続ける。
「とりあえず、栄養ドリンクでも飲んで休んでいろ…どうせ、もう少ししたら忙しくなる」
「おや…珍しいですね、貴方が私を気遣ってくれるとは――明日は、雨が降りそうですねぇ」
少しだけ意地の悪そうな笑みを浮かべた天宮が言うと、十紀は「そうかもな」とおかしそうに笑った。
そんなやり取りの合間に、受け取ったドリンク剤の蓋を開けようとする天宮から八守が取ると蓋を開けてから再び天宮に手渡す。
「ありがとう…でも、八守。自分で開けられますよ、これくらい」
「お話に、夢中になっておられたので…」
少し困った表情を浮かべた天宮に、八守は無感情に答えて傍に控えるように立った。
何か言おうとしている天宮に向けて、十紀は苦笑すると声をかける。
「…相変わらずの過保護ぶりだな、八守は――」
「まったく…あの時の事を、いつまでも根に持っているんですよ」
呆れたように呟いた天宮の言葉に、十紀は密かに思う…それはそうだろう、と。
――あの、悪夢のような出来事を忘れる事はできないのだから…自分達は。
***
「傍観者に徹してくれるのではなかったのか…?」
「おや、貴方達の意志を尊重して彼女に警告を発しただけですよ」
きょとんとした表情のまま、天宮が答えた。
これから、何が起こってしまうのか……
どういう状況になってしまうのか……
まったく予想できないのだから、一応警告をしただけだと――
確かに予想できない事態が起こっている事を理解している十紀は、これ以上何も言えなかった。
――霧は、確かな狂気を見せたのだから……
「それよりも、だ…天宮、お前は大丈夫なのか?」
「…?」
十紀の不意な言葉に、天宮は不思議そうに首をかしげる。
少しして、何を指している言葉なのか理解して口を開いた。
「あぁ…まぁ、良いとは言えませんが――まだ大丈夫だと思いますよ」
「…お前まで倒れたら、どうしようもなくなるからな」
苦笑して言った十紀は、診察室の隣の部屋へ姿を消す。
少しして戻ってきた彼の手には、小さな茶色の小瓶が握られていた。
それを天宮に手渡すと、言葉を続ける。
「とりあえず、栄養ドリンクでも飲んで休んでいろ…どうせ、もう少ししたら忙しくなる」
「おや…珍しいですね、貴方が私を気遣ってくれるとは――明日は、雨が降りそうですねぇ」
少しだけ意地の悪そうな笑みを浮かべた天宮が言うと、十紀は「そうかもな」とおかしそうに笑った。
そんなやり取りの合間に、受け取ったドリンク剤の蓋を開けようとする天宮から八守が取ると蓋を開けてから再び天宮に手渡す。
「ありがとう…でも、八守。自分で開けられますよ、これくらい」
「お話に、夢中になっておられたので…」
少し困った表情を浮かべた天宮に、八守は無感情に答えて傍に控えるように立った。
何か言おうとしている天宮に向けて、十紀は苦笑すると声をかける。
「…相変わらずの過保護ぶりだな、八守は――」
「まったく…あの時の事を、いつまでも根に持っているんですよ」
呆れたように呟いた天宮の言葉に、十紀は密かに思う…それはそうだろう、と。
――あの、悪夢のような出来事を忘れる事はできないのだから…自分達は。
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