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0話「終焉の街」
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「はぁ…マジかぁ」
思わず深いため息をついたのは、軍帽を被ったまま寝そべっている夕馬だ。
先ほど理矩より聞かされた『影の者』からの、ある報告に頭を抱えていた。
「はい。『影の者』が確認したそうですが、どうやら完全に包囲されているようです…」
頷いて答えた理矩の右手には通信機を持っているようで、おそらく通信機の向こうにいるのが『影の者』なのだろう……
彼らがいるのは医院の、普段立ち入り禁止にされている屋上だった。
普段から誰もいないので、日中はここでふたり揃って休憩しているのだ。
今日もいつも通り休憩をとっていたところ、『影の者』から連絡があったというわけである。
もう一度、深いため息をついた夕馬は起き上がると口を開いた。
「それって、完全に秘密警察トップである俺達もろとも…って事だろう?」
「おそらくは…短期間に秘密警察のトップへ上がったので、各方面の恨みでも買ったのでしょう」
首を少しかしげて答えた理矩に、思わず苦笑した声が聞こえてくる…声の主は、通信機の向こうにいる『影の者』のようだ。
彼らふたりは、わずか2年で秘密警察のトップに登りつめて完全に掌握した実力者である。
しかも、最年少での大出世にやっかみを受けてしまったのだろう…それが、今回の裏切りに繋がっているのだとしたら笑えなかった。
…そもそも、前任者は日和見過ぎたのが失脚の原因だというのに。
「仕方ない…『影の者』は王都に報告へ、残りで迎え撃つしかないだろうなぁ」
「そもそも『影の者』は戦闘に不向きですからね…人手は減りますが、それも仕方ないでしょう」
基本的に『影の者』は情報収集に特化した存在なので、護身術はできても戦闘向きでないのだ。
『…わかりました。では、我らは先に王都へ帰還し…真宮様と鈴亜殿下に現状をご報告いたします。夕馬隊長、理矩副隊長…ご武運を――』
ふたりの言葉に、そう答えた『影の者』は通信機を切る。
通信が切れたのを確認した理矩が、彼にしては珍しく表情を変えて深いため息をつく。
「こちらは警備に必要な人数しかいませんので、どこまで抵抗できるかわかりませんね」
「まぁ、なぁ…秘密警察からだけじゃなく、鈴亜殿下から一隊を借りたおかげで警備は無理ない範囲でできたが――戦闘になると、話は変わるしなぁ」
この街全体を包囲している、という事はあちらは一般人も攻撃対象なのだろう…医院だけでなく、街までも護るとなると完全に無理な話だ。
という事は最終的に優先すべきものを決めて、他を切り捨てなければならない。
「援軍が間に合えば、話は変わるがなぁ…」
この事態は予想の範疇を越えていると、夕馬は思わず悲しげに呟いた。
最悪、この闘いで自分達は生命を落としたとしても戻れるので良いが…巻き込まれる一般人はそうではない。
夕馬の心情に気づいた理矩は、これ以上言及せず静かに空を見上げる…これから何かが起こるとは、まったく予期させない綺麗な青色が広がっていた。
***
思わず深いため息をついたのは、軍帽を被ったまま寝そべっている夕馬だ。
先ほど理矩より聞かされた『影の者』からの、ある報告に頭を抱えていた。
「はい。『影の者』が確認したそうですが、どうやら完全に包囲されているようです…」
頷いて答えた理矩の右手には通信機を持っているようで、おそらく通信機の向こうにいるのが『影の者』なのだろう……
彼らがいるのは医院の、普段立ち入り禁止にされている屋上だった。
普段から誰もいないので、日中はここでふたり揃って休憩しているのだ。
今日もいつも通り休憩をとっていたところ、『影の者』から連絡があったというわけである。
もう一度、深いため息をついた夕馬は起き上がると口を開いた。
「それって、完全に秘密警察トップである俺達もろとも…って事だろう?」
「おそらくは…短期間に秘密警察のトップへ上がったので、各方面の恨みでも買ったのでしょう」
首を少しかしげて答えた理矩に、思わず苦笑した声が聞こえてくる…声の主は、通信機の向こうにいる『影の者』のようだ。
彼らふたりは、わずか2年で秘密警察のトップに登りつめて完全に掌握した実力者である。
しかも、最年少での大出世にやっかみを受けてしまったのだろう…それが、今回の裏切りに繋がっているのだとしたら笑えなかった。
…そもそも、前任者は日和見過ぎたのが失脚の原因だというのに。
「仕方ない…『影の者』は王都に報告へ、残りで迎え撃つしかないだろうなぁ」
「そもそも『影の者』は戦闘に不向きですからね…人手は減りますが、それも仕方ないでしょう」
基本的に『影の者』は情報収集に特化した存在なので、護身術はできても戦闘向きでないのだ。
『…わかりました。では、我らは先に王都へ帰還し…真宮様と鈴亜殿下に現状をご報告いたします。夕馬隊長、理矩副隊長…ご武運を――』
ふたりの言葉に、そう答えた『影の者』は通信機を切る。
通信が切れたのを確認した理矩が、彼にしては珍しく表情を変えて深いため息をつく。
「こちらは警備に必要な人数しかいませんので、どこまで抵抗できるかわかりませんね」
「まぁ、なぁ…秘密警察からだけじゃなく、鈴亜殿下から一隊を借りたおかげで警備は無理ない範囲でできたが――戦闘になると、話は変わるしなぁ」
この街全体を包囲している、という事はあちらは一般人も攻撃対象なのだろう…医院だけでなく、街までも護るとなると完全に無理な話だ。
という事は最終的に優先すべきものを決めて、他を切り捨てなければならない。
「援軍が間に合えば、話は変わるがなぁ…」
この事態は予想の範疇を越えていると、夕馬は思わず悲しげに呟いた。
最悪、この闘いで自分達は生命を落としたとしても戻れるので良いが…巻き込まれる一般人はそうではない。
夕馬の心情に気づいた理矩は、これ以上言及せず静かに空を見上げる…これから何かが起こるとは、まったく予期させない綺麗な青色が広がっていた。
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