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12話「永久の闇への旅路」
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――しばらく道なりに行くと、昨日訪れた建物前に無事辿り着いた。
建物の入り口前に止められた車から降りる時、朔人から声をかけられる。
「…しばらくあちこち走り周って相手方をかく乱してあげるから、その間にこの国を出るようにね」
「ありがとう、ここまで送ってくれた上に時間稼ぎまで…感謝します」
俺が頭を下げると、朔人は頭を横にふった。
「いや、気にしなくていいよ…こっちもお前を巻き込んだようなものだろうし、こういう事は年長者に任せておけばいいんだよ」
年長者……彼は、俺とあまり年齢が変わらないようにも見えるんだが?
首をかしげていると朔人にドアを閉めるよう言われ、急いで後ろのドアを閉めた。
――そして、こちらに向けて軽く手を上げた朔人は車で走り去っていくのを見送った俺は誰かに見られる前に建物の中へと移動する。
「……は?」
昨日、知治に通された事務所に入ると部下達と知治……そして、何故かソファーに座っている音瑠の姿があった。
思っていなかった人物の姿に、驚きのあまり素で声をだしてしまったわけだ。
驚いて固まる俺に、知治は笑いながら状況を説明してくれた。
「ドッキリ大成功、ってね!いや、母親の方は昨日のうちに哉糸国の牢屋に送っておいたんだけどさ?でも、この子…君に話があるって言うからさー」
「すみません…どうしても聞いて欲しい話があるの」
ピースサインをしている知治に、ソファーに座るよう勧められた俺は訳が分からないまま腰かける。
…というか、樟菜を哉糸国の牢屋に送ったのか――他国なら安全だろうが、何の罪で入れた?
それに、音瑠は一体何を話したいのか…?
まったく想像できない俺は、彼女の話に耳を傾けた。
「私…あの日、婚約者の男性に暴行されかけたの」
玖苑の街で起こった事件当日の朝……その日は、親同士が決めた婚約者に会う何度目かの日だったという。
婚約者はこの婚約が気に入らず、その腹いせにいつも暴言を2人だけの時を見計らって言われていたらしい。
それがいつもの流れだったけど、その日は我慢の限界が訪れた音瑠が言い返し…売り言葉に買い言葉で、もみ合いになった。
その時――一階だったので窓から相手をなんとか押し出し、再び掴みかかってこないよう閉めだしたのだそうだ。
そのまま諦めて何処かへ行くだろう…と考えていたのだが、数十分後に窓を破壊して入ってきた。
何故か、白目を剥いて歪に笑いながら……
「彼は私に外へ放りだされた後、正気を失った人達に襲われたみたいで……彼、頭から血が流れていたもの」
歪に笑いながら自分を辱めようとしてきたので、怪我を負う婚約者の頭を狙い……傍にあった椅子で強かに殴りつけたらしい。
そのまま横に倒れ動かなくなった、その隙をついて外に逃げたそうだ。
「まー、それなら正当防衛だよねー?『薬』でおかしくなっていたとはいえ、相手が悪いんだし…」
知治が頬に手をつきながら音瑠に言う…そもそも相手は、前々からそういう事をしてやろうと考えていたんだろうと。
どういう意味なのかを訊ねると、『薬』で前頭葉が破壊されて普段理性で抑えられていた部分が表面化したのだと教えてくれた。
……つまり、その婚約者は近い将来そういう事をしでかす可能性が高かったらしい。
「そう、かも…しれません。いつも、様子や視線がおかしかったですから……」
音瑠も心当たりがあったのか、知治の言葉に頷いて同意した。
相手がどういうつもりだったのか…それはわからないが、人を殺めてしまったのだと彼女は考えていた。
誰にも言えず……飛行艇に乗って夢明へ向かっている最中、彼女は自分の罪に苛まれていたのだろう。
母親の様子からわかるが、多分…彼女も償いたいと言いだしそうな雰囲気なのは薄々わかった。
それを知ってか知らずか…何故か、わくわくした様子の知治が俺に訊ねてくる。
「…ねーねー、どうすんのー?」
――どうすんのー?じゃない。
何故、俺に判断を委ねようとしているんだ…お前も考えろ、と少しだけ思った。
というか…何故、知治はわくわくしているんだ?何が楽しみなのか、まったくわからん。
わからないが、彼女が何を考えているのかはわかる。
つまり、俺達に協力したい…だ。
危険だとやんわり断ると、彼女は何かを決意した顔で立ち上がる。
理解してくれたか、と俺は内心安堵するが…そうじゃなかった。
手招きで知治を呼び寄せた音瑠が、首をかしげる彼をいきなり投げ飛ばしてしまう。
目を丸くさせ伸びている知治と、にっこりと笑みを浮かべる音瑠の姿を見て俺は説得を……諦めた。
***
建物の入り口前に止められた車から降りる時、朔人から声をかけられる。
「…しばらくあちこち走り周って相手方をかく乱してあげるから、その間にこの国を出るようにね」
「ありがとう、ここまで送ってくれた上に時間稼ぎまで…感謝します」
俺が頭を下げると、朔人は頭を横にふった。
「いや、気にしなくていいよ…こっちもお前を巻き込んだようなものだろうし、こういう事は年長者に任せておけばいいんだよ」
年長者……彼は、俺とあまり年齢が変わらないようにも見えるんだが?
首をかしげていると朔人にドアを閉めるよう言われ、急いで後ろのドアを閉めた。
――そして、こちらに向けて軽く手を上げた朔人は車で走り去っていくのを見送った俺は誰かに見られる前に建物の中へと移動する。
「……は?」
昨日、知治に通された事務所に入ると部下達と知治……そして、何故かソファーに座っている音瑠の姿があった。
思っていなかった人物の姿に、驚きのあまり素で声をだしてしまったわけだ。
驚いて固まる俺に、知治は笑いながら状況を説明してくれた。
「ドッキリ大成功、ってね!いや、母親の方は昨日のうちに哉糸国の牢屋に送っておいたんだけどさ?でも、この子…君に話があるって言うからさー」
「すみません…どうしても聞いて欲しい話があるの」
ピースサインをしている知治に、ソファーに座るよう勧められた俺は訳が分からないまま腰かける。
…というか、樟菜を哉糸国の牢屋に送ったのか――他国なら安全だろうが、何の罪で入れた?
それに、音瑠は一体何を話したいのか…?
まったく想像できない俺は、彼女の話に耳を傾けた。
「私…あの日、婚約者の男性に暴行されかけたの」
玖苑の街で起こった事件当日の朝……その日は、親同士が決めた婚約者に会う何度目かの日だったという。
婚約者はこの婚約が気に入らず、その腹いせにいつも暴言を2人だけの時を見計らって言われていたらしい。
それがいつもの流れだったけど、その日は我慢の限界が訪れた音瑠が言い返し…売り言葉に買い言葉で、もみ合いになった。
その時――一階だったので窓から相手をなんとか押し出し、再び掴みかかってこないよう閉めだしたのだそうだ。
そのまま諦めて何処かへ行くだろう…と考えていたのだが、数十分後に窓を破壊して入ってきた。
何故か、白目を剥いて歪に笑いながら……
「彼は私に外へ放りだされた後、正気を失った人達に襲われたみたいで……彼、頭から血が流れていたもの」
歪に笑いながら自分を辱めようとしてきたので、怪我を負う婚約者の頭を狙い……傍にあった椅子で強かに殴りつけたらしい。
そのまま横に倒れ動かなくなった、その隙をついて外に逃げたそうだ。
「まー、それなら正当防衛だよねー?『薬』でおかしくなっていたとはいえ、相手が悪いんだし…」
知治が頬に手をつきながら音瑠に言う…そもそも相手は、前々からそういう事をしてやろうと考えていたんだろうと。
どういう意味なのかを訊ねると、『薬』で前頭葉が破壊されて普段理性で抑えられていた部分が表面化したのだと教えてくれた。
……つまり、その婚約者は近い将来そういう事をしでかす可能性が高かったらしい。
「そう、かも…しれません。いつも、様子や視線がおかしかったですから……」
音瑠も心当たりがあったのか、知治の言葉に頷いて同意した。
相手がどういうつもりだったのか…それはわからないが、人を殺めてしまったのだと彼女は考えていた。
誰にも言えず……飛行艇に乗って夢明へ向かっている最中、彼女は自分の罪に苛まれていたのだろう。
母親の様子からわかるが、多分…彼女も償いたいと言いだしそうな雰囲気なのは薄々わかった。
それを知ってか知らずか…何故か、わくわくした様子の知治が俺に訊ねてくる。
「…ねーねー、どうすんのー?」
――どうすんのー?じゃない。
何故、俺に判断を委ねようとしているんだ…お前も考えろ、と少しだけ思った。
というか…何故、知治はわくわくしているんだ?何が楽しみなのか、まったくわからん。
わからないが、彼女が何を考えているのかはわかる。
つまり、俺達に協力したい…だ。
危険だとやんわり断ると、彼女は何かを決意した顔で立ち上がる。
理解してくれたか、と俺は内心安堵するが…そうじゃなかった。
手招きで知治を呼び寄せた音瑠が、首をかしげる彼をいきなり投げ飛ばしてしまう。
目を丸くさせ伸びている知治と、にっこりと笑みを浮かべる音瑠の姿を見て俺は説得を……諦めた。
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