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6話「夢明の悲劇」
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(まさか、これをすべて…――)
検死を終えた黒髪の軍医は、誰にも聞かれぬように深いため息をついた。
あまり考えたくはないが――犯人が誰なのか、わかってしまったからだ……
(…自分の側仕えだった者達をあえて狙ったのか?それとも、ただの偶然か…?)
殺害された2人は、『彼女』に仕えていた護衛だった。
たまたまあの街に滞在しており、七弥の部隊と合流して飛行艇に乗っていただけだったのだが……
『彼女』は飛行艇に乗った時、あの2人の存在には気づいていない…いや、忘れてしまってるようだった。
だから、2人には不安定な『彼女』に不要な接触をせぬよう注意していたが――
(あの2人が、約束を違えるはずはない…という事は――)
『彼女』の方から、という事になる。
しかし、何故…残酷な方法で殺害されたのだろうか?
あの2人が『彼女』を裏切る事は、絶対にないというのに……
(しかし…唯一の救いは一般人である、あの少女を傷つけなかった事だな…)
もしかすると、少女は『彼女』に会っていないのかもしれない。
しかし、一歩間違えれば…あの少女も『彼女』に殺されていたかもしれないのだから。
確かに、『彼女』の様子がたった数時間のうちに変化し続けていた。
抑制する薬を投与してはいたが、誰かに何かされたのか…だんだんと効かなくなっていた。
(――目を離すべきではなかったか…)
密かに後悔している軍医は、もう一度ため息をつく。
そして、七弥と共にいる少女に声をかけた。
「怖い思いをさせてしまい…すまなかった」
「ぃ、いえ…大丈夫です。ただ…その、少し驚いてしまっただけですから…」
少女は首を横にふって答える…が、その顔色は真っ青だ。
このような惨劇の現場を見れば、誰だってそうなってしまうだろう。
軍医は、ちらりと窓の外に目を向けると七弥に声をかけた。
「七弥隊長…どうやら、夢明の港に着いたようだ」
「…そのようですね。音瑠さん、大丈夫ですか…樟菜さんの元に案内するので、しばらくラウンジで待機していてください」
まだ足元がふらふらしている少女・音瑠の肩を支えて、七弥は言った。
そして、軍医に向けて言葉を続ける。
「杜詠殿…申し訳ないのですが、ここをお願いします」
「わかった…2人の亡骸は、秘密裏に運び出せるよう手配しよう」
黒髪の軍医・杜詠が、小さく頷いて答えた。
それを聞いた七弥は音瑠を支えながら、樟菜のいるラウンジへと向かう。
七弥達を見送った杜詠は、再び亡くなった軍人2人に黙とうを捧げた。
(すまなかった、私が織葉から目を離したばかりに……)
後悔ばかりが、頭を駆け巡る……
黙とうを終えた杜詠は、近くにいた数人の軍人に手配を頼むと窓の外を見た。
――これ以上、犠牲が出る前に彼女を止めなければ。
きっと…どこかに残っているであろう『彼女』の本当の心も、そう願っているだろうから……
***
検死を終えた黒髪の軍医は、誰にも聞かれぬように深いため息をついた。
あまり考えたくはないが――犯人が誰なのか、わかってしまったからだ……
(…自分の側仕えだった者達をあえて狙ったのか?それとも、ただの偶然か…?)
殺害された2人は、『彼女』に仕えていた護衛だった。
たまたまあの街に滞在しており、七弥の部隊と合流して飛行艇に乗っていただけだったのだが……
『彼女』は飛行艇に乗った時、あの2人の存在には気づいていない…いや、忘れてしまってるようだった。
だから、2人には不安定な『彼女』に不要な接触をせぬよう注意していたが――
(あの2人が、約束を違えるはずはない…という事は――)
『彼女』の方から、という事になる。
しかし、何故…残酷な方法で殺害されたのだろうか?
あの2人が『彼女』を裏切る事は、絶対にないというのに……
(しかし…唯一の救いは一般人である、あの少女を傷つけなかった事だな…)
もしかすると、少女は『彼女』に会っていないのかもしれない。
しかし、一歩間違えれば…あの少女も『彼女』に殺されていたかもしれないのだから。
確かに、『彼女』の様子がたった数時間のうちに変化し続けていた。
抑制する薬を投与してはいたが、誰かに何かされたのか…だんだんと効かなくなっていた。
(――目を離すべきではなかったか…)
密かに後悔している軍医は、もう一度ため息をつく。
そして、七弥と共にいる少女に声をかけた。
「怖い思いをさせてしまい…すまなかった」
「ぃ、いえ…大丈夫です。ただ…その、少し驚いてしまっただけですから…」
少女は首を横にふって答える…が、その顔色は真っ青だ。
このような惨劇の現場を見れば、誰だってそうなってしまうだろう。
軍医は、ちらりと窓の外に目を向けると七弥に声をかけた。
「七弥隊長…どうやら、夢明の港に着いたようだ」
「…そのようですね。音瑠さん、大丈夫ですか…樟菜さんの元に案内するので、しばらくラウンジで待機していてください」
まだ足元がふらふらしている少女・音瑠の肩を支えて、七弥は言った。
そして、軍医に向けて言葉を続ける。
「杜詠殿…申し訳ないのですが、ここをお願いします」
「わかった…2人の亡骸は、秘密裏に運び出せるよう手配しよう」
黒髪の軍医・杜詠が、小さく頷いて答えた。
それを聞いた七弥は音瑠を支えながら、樟菜のいるラウンジへと向かう。
七弥達を見送った杜詠は、再び亡くなった軍人2人に黙とうを捧げた。
(すまなかった、私が織葉から目を離したばかりに……)
後悔ばかりが、頭を駆け巡る……
黙とうを終えた杜詠は、近くにいた数人の軍人に手配を頼むと窓の外を見た。
――これ以上、犠牲が出る前に彼女を止めなければ。
きっと…どこかに残っているであろう『彼女』の本当の心も、そう願っているだろうから……
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