堕ちし記憶の森は

雪原るい

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6話「夢明の悲劇」

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めい国の王都・夢明むめい――この地にある飛行艇の港。
まだ日が昇らぬ早朝の為か、港には利用する人の姿はない。

警備する軍人達とひとりの白衣を着た人物以外は……

「何故、出張から戻ってすぐ……しかも早朝からアイツに呼び出されないといけないんだ?」

納得いかないように、ひとり愚痴るように呟いたのは黒髪に金色の瞳をした白衣の男だ。
彼は着ていた白衣を脱ぐと腕にかけ、不機嫌そうに近くの軍人に声をかけた。

「おい、アイツ…夕馬ゆうまから連絡があったら教えろ。俺は、そこの喫茶店で休んでくる」
「わかりました…夕馬ゆうま隊長から連絡があり次第、お知らせいたします」

頷いて答えた軍人に、この場を任せた男は喫茶店へ向かって歩きはじめる。

(ったく…早朝でなければ、ここを閉鎖できなかったぞ。葎名りつな様も無茶な事を頼んでくる…ん?)

早朝でもやっている港内の喫茶店へ向かう途中、すれ違った2人の少女に気づいて歩みを止めた。
この2人は同じ顔をしており、ひとりは腰まである黒髪……もうひとりは黒いショートボブ――そして、2人共に紫色の瞳をしている双子の姉妹のようだ。

男が歩みを止めた理由は双子の姉妹が珍しかったわけではなく、彼女らが着ている服にあった。
姉妹が着ている服は、『学舎』と呼ばれている学園の女子制服だったからだ。

「…何故、こんな早朝に?そこの2人、ちょっと待て!」
「はい!」

異口同音で、姉妹は振り返って答える。
そして、何かに気づいたように慌てて言葉を続けた。

「ぁ、塑亜そあ先生…おはようございます!あの…何故、先生がこちらに?」
「お前達こそ…何をしている?今、港は封鎖されているんだぞ」

黒髪の男・塑亜そあは姉妹に、簡単に…尚且つ、詳細は伏せて港が封鎖されている事を告げる。
それと、抜け出してきただろう姉妹に寮へ戻るように…と。

どうやら、この双子の姉妹は寮の決まりを破った自覚はあるらしく…顔を伏せながら口を開いた。

「ごめんなさい、先生…抜け出した事の反省文は、後で書きますから…今回だけは、見逃してください」
「先生…これから飛行艇が着くんですよね?玖苑くおんにいる従妹が無事なのか…どうしても心配で、迎えに来たんです」

すがりつくような様子の姉妹に、塑亜そあは大きくため息をついて再び諭すように説得をはじめた。


***
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