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4話「赦されざる咎人」
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「………」
気を失っている倉世を診察した杜詠は、安心したように小さく息をついた。
そして、持ってきていた診察鞄から薬瓶とアルミケースを取りだす。
アルミケースを開けて空の注射器を出すと、薬を吸い入れた。
「…あまり効かないかもしれないが、これでしばらくは保つだろう……」
小さく呟いて注射器の中にある空気を出す為に指で弾きながら、ゆっくりと押し出していく。
薬が針の先から少し出たのを確認した杜詠は、倉世の腕に注射器の針を刺すとゆっくり入れていった。
注射器の中にあった薬をすべて入れ終えた頃、何処かへ行っていたらしい右穂が戻ってきた。
「倉世様の具合はどうですか?」
右穂は心配そうに倉世を見つめながら、杜詠に訊ねる。
あまり具合が悪くない事は、倉世の顔色を見てわかっていた右穂だったが…どのような状態であるのか、気になっているようだ。
その事を十分わかっている杜詠は使用した注射器を別のケースに入れ、薬瓶と共に鞄へ片付けながら答える。
「あまり良い状態、とは言えないが…まぁ、まだマシという程度だ」
「そうですか…やはり、記憶が戻らぬ限りこの方は――」
そう言うと、右穂は眠っている倉世を静かに見つめた。
その表情は、どこか悲しげだ……
道具を鞄に片付け終えた杜詠は、呟くように言う。
「…詳細な資料などがあれば、私でもどうにかできるかもしれないんだがな……」
「私が持ち出せたものが少なかったばかりに…織葉さんにも……申しわけないです」
深く頭を下げた右穂に、杜詠は首を横にふった。
「いや…私も倉世と同じ立場だからな。それに、織葉は――あれは、十数年前に息子を奪われて以来、ずっと塞ぎ込んでいるんだ…」
遠くを見つめて、呟く。
そして、腕時計で時間を確認すると言葉を続けた。
「…七弥隊長が何を隠し、何を考えているのかはわからないが…このままでは、誰も救われない事態になるだろう」
「さり気なく、七弥隊長や希衣沙に探りを入れてみたのですが…なかなか、掴めませんでしたし」
そう言った右穂が腕を組みながら、眉を顰めた。
――そして、希衣沙なら、軽く痛めつければ吐くと思ったんですが……と呟いたのを聞いて、杜詠は思わず苦笑する。
「やったのか…そういえば、あの青年は?」
「青年…あぁ、白季様は『気分転換に、ちょっと散歩をしてくる』と言って、船内をウロウロされているかと思いますが…」
周囲を見回している杜詠に、30分前に会った白季の言動を伝えた右穂は訊ねた。
「何か…御用がありましたか?」
「いや、そういうわけではないのだが……」
少しガッカリした様子の杜詠は、首を横にふる。
「私は、もう戻るが…また容態が急変したら呼んでくれ」
そう言うと、杜詠は部屋を退出した。
右穂は扉が閉まるまで、深く頭を下げているのだった……
***
気を失っている倉世を診察した杜詠は、安心したように小さく息をついた。
そして、持ってきていた診察鞄から薬瓶とアルミケースを取りだす。
アルミケースを開けて空の注射器を出すと、薬を吸い入れた。
「…あまり効かないかもしれないが、これでしばらくは保つだろう……」
小さく呟いて注射器の中にある空気を出す為に指で弾きながら、ゆっくりと押し出していく。
薬が針の先から少し出たのを確認した杜詠は、倉世の腕に注射器の針を刺すとゆっくり入れていった。
注射器の中にあった薬をすべて入れ終えた頃、何処かへ行っていたらしい右穂が戻ってきた。
「倉世様の具合はどうですか?」
右穂は心配そうに倉世を見つめながら、杜詠に訊ねる。
あまり具合が悪くない事は、倉世の顔色を見てわかっていた右穂だったが…どのような状態であるのか、気になっているようだ。
その事を十分わかっている杜詠は使用した注射器を別のケースに入れ、薬瓶と共に鞄へ片付けながら答える。
「あまり良い状態、とは言えないが…まぁ、まだマシという程度だ」
「そうですか…やはり、記憶が戻らぬ限りこの方は――」
そう言うと、右穂は眠っている倉世を静かに見つめた。
その表情は、どこか悲しげだ……
道具を鞄に片付け終えた杜詠は、呟くように言う。
「…詳細な資料などがあれば、私でもどうにかできるかもしれないんだがな……」
「私が持ち出せたものが少なかったばかりに…織葉さんにも……申しわけないです」
深く頭を下げた右穂に、杜詠は首を横にふった。
「いや…私も倉世と同じ立場だからな。それに、織葉は――あれは、十数年前に息子を奪われて以来、ずっと塞ぎ込んでいるんだ…」
遠くを見つめて、呟く。
そして、腕時計で時間を確認すると言葉を続けた。
「…七弥隊長が何を隠し、何を考えているのかはわからないが…このままでは、誰も救われない事態になるだろう」
「さり気なく、七弥隊長や希衣沙に探りを入れてみたのですが…なかなか、掴めませんでしたし」
そう言った右穂が腕を組みながら、眉を顰めた。
――そして、希衣沙なら、軽く痛めつければ吐くと思ったんですが……と呟いたのを聞いて、杜詠は思わず苦笑する。
「やったのか…そういえば、あの青年は?」
「青年…あぁ、白季様は『気分転換に、ちょっと散歩をしてくる』と言って、船内をウロウロされているかと思いますが…」
周囲を見回している杜詠に、30分前に会った白季の言動を伝えた右穂は訊ねた。
「何か…御用がありましたか?」
「いや、そういうわけではないのだが……」
少しガッカリした様子の杜詠は、首を横にふる。
「私は、もう戻るが…また容態が急変したら呼んでくれ」
そう言うと、杜詠は部屋を退出した。
右穂は扉が閉まるまで、深く頭を下げているのだった……
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