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4話「赦されざる咎人」
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――…熱い。
赤く…燃えているのだろうか?
よくわからないが、俺は何処かの通路に立っているようだ。
煙で周りがよく見えない…
だが、足元には何人かが倒れているのはわかった……
あぁ…そうだ。
俺は、逃げている最中だったんだ…
ひとりではなく、誰かと……
その誰かは、俺の近くにいるのは気配でわかった。
『――このまま真っ直ぐ駆け抜ければ、外に出られる』
確か、俺がその誰かに言ったんだ……
その同行者は、俺を押し退けると外へ向かい――
そして、その影は……突然、倒れた。
「っ!?はぁはぁ…」
…そこで、目が覚めた。
ゆっくりと見回してみても、燃え上がる炎や視界を遮るような煙は見当たらない。
いや…それ以前に、何処だかわからない通路に立ってもいないし…謎の同行者もいない。
ここは…そうだ、〈隠者の船〉の中だ。
そして、今いる部屋は…白季に割り当てられた部屋だったな。
――今、右穂や白季は部屋にいないようだ。
少しの間、眠っていただけだというのに汗がすごい。
まだ少し頭が痛い。
あんな夢を見たから、だろうか?
いや、あれは夢ではなく……
「失われた記憶の断片…なのか?」
俺は額を押さえながら、ゆっくりと襟元のボタンを外して緩めるが…まだ呼吸が落ち着かない。
ベッドに横になったまま、真っ白な天井に目を向ける。
あぁ、そういえば…あそこの壁や天井も真っ白だったよな。
そんな他愛ない事を思い出しそうになった…が、鈍い頭の痛みでそれ以上は思い出せないでいた。
「…まったく、何故思い出せないんだ?」
不甲斐ない自分に呆れて、何故か笑いたくなってしまった。
――コンコンコン。
突然、ドアをノックする音がした。
誰だろうか…?
返事をするべきか悩んでいると、訪問者は扉を開けて入ってきた。
「…大丈夫か?」
そう言って入室してきた訪問者は、杜詠だった。
――何故、ここにいるのがわかったのだろうか…?
杜詠にそう訊ねると、右穂と白季から俺が体調を崩しているようだから…と頼まれたらしい。
あと…自分も気になっていた、とも言っていたな。
「やはり…熱が出ているな。まぁ、疲労が一番の原因だろう…今は、ゆっくりと休んだ方がいい」
俺の脈や体温を計った後で、杜詠は言う。
記憶を無理に取ろ戻そうとした事も、熱が上がった原因である…と注意を受けた。
確かに…熱がある以上、無理はできないだろう。
だが、このまま寝ているわけにはいかない……
このまま夢明の港に着いたら、訳が分からない状態のまま捕らわれる可能性しかない。
…いや、捕まえなければならないのは……
この飛行艇で目覚める前に見た夢に出てきた、白衣を着たあの男――
「くっ……」
そう思った瞬間、頭が割れそうなほどの痛みに襲われた。
意識が……徐々に遠のいていくのがわかった。
遠くで、杜詠が俺の名前を呼ぶ声がするのだが…返事をするのが、とても億劫だ。
――そして、そのまま…俺の意識は、深い闇に飲まれていった。
***
赤く…燃えているのだろうか?
よくわからないが、俺は何処かの通路に立っているようだ。
煙で周りがよく見えない…
だが、足元には何人かが倒れているのはわかった……
あぁ…そうだ。
俺は、逃げている最中だったんだ…
ひとりではなく、誰かと……
その誰かは、俺の近くにいるのは気配でわかった。
『――このまま真っ直ぐ駆け抜ければ、外に出られる』
確か、俺がその誰かに言ったんだ……
その同行者は、俺を押し退けると外へ向かい――
そして、その影は……突然、倒れた。
「っ!?はぁはぁ…」
…そこで、目が覚めた。
ゆっくりと見回してみても、燃え上がる炎や視界を遮るような煙は見当たらない。
いや…それ以前に、何処だかわからない通路に立ってもいないし…謎の同行者もいない。
ここは…そうだ、〈隠者の船〉の中だ。
そして、今いる部屋は…白季に割り当てられた部屋だったな。
――今、右穂や白季は部屋にいないようだ。
少しの間、眠っていただけだというのに汗がすごい。
まだ少し頭が痛い。
あんな夢を見たから、だろうか?
いや、あれは夢ではなく……
「失われた記憶の断片…なのか?」
俺は額を押さえながら、ゆっくりと襟元のボタンを外して緩めるが…まだ呼吸が落ち着かない。
ベッドに横になったまま、真っ白な天井に目を向ける。
あぁ、そういえば…あそこの壁や天井も真っ白だったよな。
そんな他愛ない事を思い出しそうになった…が、鈍い頭の痛みでそれ以上は思い出せないでいた。
「…まったく、何故思い出せないんだ?」
不甲斐ない自分に呆れて、何故か笑いたくなってしまった。
――コンコンコン。
突然、ドアをノックする音がした。
誰だろうか…?
返事をするべきか悩んでいると、訪問者は扉を開けて入ってきた。
「…大丈夫か?」
そう言って入室してきた訪問者は、杜詠だった。
――何故、ここにいるのがわかったのだろうか…?
杜詠にそう訊ねると、右穂と白季から俺が体調を崩しているようだから…と頼まれたらしい。
あと…自分も気になっていた、とも言っていたな。
「やはり…熱が出ているな。まぁ、疲労が一番の原因だろう…今は、ゆっくりと休んだ方がいい」
俺の脈や体温を計った後で、杜詠は言う。
記憶を無理に取ろ戻そうとした事も、熱が上がった原因である…と注意を受けた。
確かに…熱がある以上、無理はできないだろう。
だが、このまま寝ているわけにはいかない……
このまま夢明の港に着いたら、訳が分からない状態のまま捕らわれる可能性しかない。
…いや、捕まえなければならないのは……
この飛行艇で目覚める前に見た夢に出てきた、白衣を着たあの男――
「くっ……」
そう思った瞬間、頭が割れそうなほどの痛みに襲われた。
意識が……徐々に遠のいていくのがわかった。
遠くで、杜詠が俺の名前を呼ぶ声がするのだが…返事をするのが、とても億劫だ。
――そして、そのまま…俺の意識は、深い闇に飲まれていった。
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