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6話「王女と従者と変わり者と…」
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「いたた…なーんか、デジャヴ的なものを感じるぞ。この状況…」
中庭の花壇の中、横たわっているセネトは呟く。
落下中に『風』の魔法を使用したおかげか、目立った怪我をせず済んだ…が、やはり打撲したらしく全身に痛みが走っていた。
(ったく…急に、おれの背後にまわるなよ)
痛みで表情を歪めながら起き上がり、周囲を見回してため息をつく。
「あのー…大丈夫、ですか?」
突然、背後から声をかけられ驚いたセネトが振り返った。
――そこにはセネトより年上の、青色のワンレンボブで右目が青色に左目が黄色の…いわゆるオッドアイの青年が、手を差し出しながら心配そうに様子を窺っていた。
青年の手をとったセネトは、礼を言うとゆっくり立ち上がる。
「サンキュー…えーっと、見ない顔だけど――ぁ、おれはセネト…お前は?」
「あぁ、ユースミルス家のトラブ…ごほん、すみません。私はルカリオ、ルカリオ・リオリアと申します。一応、協会に籍を置く退魔士でありますけど…その、テセリアハイト王室付き退魔士です…はい」
一瞬、何か言いかけた青年・ルカリオに…初対面なので文句を思い留まったセネトは平然を装いながら訊ねた。
「…王室付きが、協会に来てるのって珍しいよな。普段は連絡係を使っているんだよな、確か?」
「ぁ、はい…そうなんですけど――」
困ったような表情を浮かべるルカリオが、声を潜めるようにして言葉を続ける。
「そのー…姫さまが、私の上司とも言えるダンフォースさんに会いたいと急に申されまして…」
「はぁ?また何で、ダンフォースに!?」
声をあげたセネトに、ルカリオが慌てて口元に人差し指をそえた。
「シィー…声が大きいです!で、姫さまと内密に来たんですけどー…」
ルカリオの話によると…フレネ村での事件についてをダンフォースに聞きたいというので協会に来たまではよかったのだが、彼が目を離した隙に見失ってしまったらしい。
「え゛っ…迷子――ちなみに、何番目の王女様?」
セネトが確認するように訊ねた理由…実をいうと、テセリアハイト王家には5人の王女がいるので誰なのかわからなかったからである。
辺りを見回したルカリオは、セネトの耳元で囁いた。
「第一王女の、ベアトリーチェ様です。もう、一人で探すのはヘトヘトで…こうして会ったのも何かの縁――よければ、一緒に探してくれませんか?」
「ふむふむ、ベアトリーチェ様…ね。まぁ、予定もないし――手伝うよ、ルカリオ…でいいか?」
セネトの言葉に、ルカリオは嬉しそうに…そして、何故か涙ぐみながら頭を下げる。
「ありがとうございます…はい、ルカリオでかまわないです。私もセネトと呼ばせてもらいますし、はい」
こうして、セネトとルカリオの…『王女ベアトリーチェ捜索の旅』がはじめるのだった――
***
中庭の花壇の中、横たわっているセネトは呟く。
落下中に『風』の魔法を使用したおかげか、目立った怪我をせず済んだ…が、やはり打撲したらしく全身に痛みが走っていた。
(ったく…急に、おれの背後にまわるなよ)
痛みで表情を歪めながら起き上がり、周囲を見回してため息をつく。
「あのー…大丈夫、ですか?」
突然、背後から声をかけられ驚いたセネトが振り返った。
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「あぁ、ユースミルス家のトラブ…ごほん、すみません。私はルカリオ、ルカリオ・リオリアと申します。一応、協会に籍を置く退魔士でありますけど…その、テセリアハイト王室付き退魔士です…はい」
一瞬、何か言いかけた青年・ルカリオに…初対面なので文句を思い留まったセネトは平然を装いながら訊ねた。
「…王室付きが、協会に来てるのって珍しいよな。普段は連絡係を使っているんだよな、確か?」
「ぁ、はい…そうなんですけど――」
困ったような表情を浮かべるルカリオが、声を潜めるようにして言葉を続ける。
「そのー…姫さまが、私の上司とも言えるダンフォースさんに会いたいと急に申されまして…」
「はぁ?また何で、ダンフォースに!?」
声をあげたセネトに、ルカリオが慌てて口元に人差し指をそえた。
「シィー…声が大きいです!で、姫さまと内密に来たんですけどー…」
ルカリオの話によると…フレネ村での事件についてをダンフォースに聞きたいというので協会に来たまではよかったのだが、彼が目を離した隙に見失ってしまったらしい。
「え゛っ…迷子――ちなみに、何番目の王女様?」
セネトが確認するように訊ねた理由…実をいうと、テセリアハイト王家には5人の王女がいるので誰なのかわからなかったからである。
辺りを見回したルカリオは、セネトの耳元で囁いた。
「第一王女の、ベアトリーチェ様です。もう、一人で探すのはヘトヘトで…こうして会ったのも何かの縁――よければ、一緒に探してくれませんか?」
「ふむふむ、ベアトリーチェ様…ね。まぁ、予定もないし――手伝うよ、ルカリオ…でいいか?」
セネトの言葉に、ルカリオは嬉しそうに…そして、何故か涙ぐみながら頭を下げる。
「ありがとうございます…はい、ルカリオでかまわないです。私もセネトと呼ばせてもらいますし、はい」
こうして、セネトとルカリオの…『王女ベアトリーチェ捜索の旅』がはじめるのだった――
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