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4話「幼い邪悪[中編]~弱虫、再び~」
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「話を戻すとして…どのメンバーで行くか、ですが――ミカサは、ここに残ってもらおうかと思います」
「そうだな…後はナルヴァとヴァリスをウィルネス殿に預けるとして、もうひとつ…ヴァリスにはフレネ村の連中が変な動きをせぬよう見張りを頼む」
クリストフの言葉にイアンが同意すると、ナルヴァとヴァリスに指示を出した。
ウィルネスにナルヴァを預けるのは、とりあえず…ナルヴァの再教育の為なんだろうなーとセネトは密かに思う。
ふと、窓辺に目をやったセネトは気づく…外からこちらの方を窺っている何人かの人影がある事に――
同じくそちらの方に目を向けたクリストフが、困ったように呟いた。
「――この村の人々は、フレネ村の人々を毛嫌いしているようでが…一体何があったんでしょうか?」
「それは至極簡単な理由になります…フレネ村の方々は、アーヴィル村の少女を殺したからです。故に、彼らはフレネ村の方々に良い感情を持てないんですよ」
クリストフの呟きに答えたのはセネト達の誰かではなく、広間の少し奥にあるソファーに腰かけた…青い髪に黒い帽子を被り、深緑色のコートを着た怪しげな笑みを浮かべている男である。
一体、いつからそこにいたのだろうか…?
全員がその帽子の男に目を向けると、彼はにっこりと微笑んだ。
「どうも、おはようございます。退魔士の御一行様…本日も良い朝ですね」
「やはり…お前も来ていたのか。こいつは覗きが得意な情報屋だ、フレネ村で起こったすべてを見てやがった……」
ため息混じりにイアンが帽子の男を顎で指すと、首をかしげているセネト達に説明した。
「失礼な言われ方だ…私は覗き見などしておりませんが、フレネ村を見ていたのはそれを望まれましてね。本当は早々に去るつもりでしたが、何やら面白い方がいたもので」
くすくすと笑いながらセネトを見た帽子の男は、言葉を続ける。
「確か、君は墓地や聖堂などをよく破壊して怒られてますよね?ほどほどにしないと、上司の方やお父上がストレスで倒れてしまうよ?」
「うぐっ…何故そんな事を――なんだよ、こいつは!?」
驚きながら帽子の男を見たセネトに、イアンは大きくため息をついた。
「こいつは【すべてを知る者】と異名を持つ情報屋――」
「私の名は、フレデリック・シルヴェリオと申します。以後、お見知りおきを…」
ソファーから立ち上がった帽子の男・フレデリックは、帽子をとると優雅に腰を折り――そして、頭を上げると再び帽子を被り直す。
「それはそうと…皆様は、これからクレリア嬢を助けに行かれるとか。そして、何かお困りのようでしたね?」
「あ、あぁ…そうだった。突然、お前が出てきたせいで忘れるところだった……で、どういう事だよ?アーヴィル村の少女を殺したのがどーとか…」
フレデリックを指差したセネトは、文句を言いつつ訊ねた。
口元を吊り上げ、笑みを浮かべたフレデリックは再びソファーに腰かけると足を組んだ。
「よろしい…いろいろと面白いものを見せていただいたお礼に、今回は特別にお教えしましょう。まずは、簡単な昔話を――」
その昔…フレネ村はアーヴィル村の習慣を見て、その本質を無視して上辺だけを真似た――はじめは純粋に村を護りたい、という思いからであった。
アーヴィル村の習慣――村を守護する存在に村人ひとりを捧げていたのだが…それは、フレネ村の人々の勘違いを引き起こす原因にもなる。
本当は生け贄ではなく、奉公に出されているだけ…それを知っているのは、アーヴィル村の者だけだ。
「まぁ、これは遠い昔に守護者と一人の青年がした約束のおかげではありますが…そして、ある日――」
フレデリックはひと息ついて、再び語りはじめた…――
…ある日、アーヴィル村に住む一人の少女が薬草を探す為にたまたま"祈りの場"付近にやって来たのだ。
そして、偶然目撃てしまったのだ…自分と年の頃が近い少女が惨殺されるところを――
目撃してしまった少女と、それを助けようとしたフレネ村の守人の少年も無残に殺害されてしまう。
フレネ村付近に出現していたなりそこないも、また…フレネ村の人々によって惨殺された犠牲者であった……
「なりそこないが生まれたのは、守護者の元にいる『彼』が助けようと血を与えたからです。まぁ、その真相はこの村の村長にお伝えしましたが…」
「だから、この村の連中はフレネ村の連中を嫌っているんだな…」
納得したように窓の方に目を向けたセネトは、複雑そうに呟いた。
アーヴィル村の村長・ウィルネスが初めて会った時にフレネ村の人々を忌々しげに見ていた理由――それは、一人の少女の死からはじまっていた。
「そう…それに、何も知らない無垢な子供からそれを止めようとした者も含む村の外の――数多の生命を犠牲にして、ね」
小さく頷いたフレデリックは怪しげな、意地の悪そうな笑みを浮かべると右手人差し指をゆっくり口元へと持っていく。
「これが、アーヴィル村とフレネ村の間にある因縁です…ところで、良いのですか?」
「何が…だよ?」
首をかしげたセネトが訊ねると、フレデリックは苦笑しながらクリストフに視線を向けた。
「いえ、ね…アーヴィル村の守護者の屋敷で――あぁ、場所は君がよく知っているので省きますが…そこで、クレリア嬢が守護者と一緒に遊んでいるようですよ?」
「あー…それは、まずいですね」
それが何を意味するのか、すぐに気づいたクリストフは口元をひきつらせて遠い目をした。
クリストフの表情で、何かを察したイアンは大きくため息をつく。
「あのバカは――相手の正体も知らずに、気づかずに挑んだんだろうな。おそらくは…」
何の事かわからずにいるセネトに、クリストフが小さくため息をついて囁くように教えた。
「アーヴィル村の守護者…彼らが住まうあの一帯は『明けない夜』――つまり、もうわかりますよね?」
クリストフの話を聞いて、ようやく状況と…そして、守護者の正体に気づいたセネトは呆れたように呟いた。
「うん…わかった。つまり、クレリアがアーヴィル村の守護者と呼ばれる吸血鬼にケンカを売ったって事だろ」
唖然としている様子を面白そうに眺めたフレデリックはゆっくり立ち上がると頭を軽く下げる。
「では、私はこれで――次の約束がありますので、失礼しますね。また何かありましたら…お会いしましょう」
そう言うとフレデリックは宿屋から去っていく、が何か聞き忘れた事があったらしいセネトは慌てて追いかけた。
しかし、フレデリックが外へ出て数秒と経っていないというのに…セネトはその姿を見失う。
周囲を探しているセネトの肩に手をおいたイアンが、落ち着かせるように声をかけた。
「探しても無駄だ…あいつは神出鬼没、いつどこに現れるかわからん。だが、あいつはリアルタイムで新しい情報を得て伝えてくる――つまり、クレリアはまだ無事だという事だ」
「つまり…急げば、大丈夫だって事か。なら、さっさと行こうぜ!」
多少不安がなくなったらしいセネトは、まだ宿屋の中にいるクリストフに呼びかけ…ナルヴァとヴァリスを渋るウィルネスに預けると守護者の屋敷へ出発した。
――もちろん、少女から渡された手紙を持って…だ。
アーヴィル村の入口付近にある大きな木の枝――そこに立っているのは黒い帽子に深緑のコートを着た男、フレデリック・シルヴェリオだ。
彼はそこから守護者の屋敷へ向かうセネト達を見ながら、笑みを浮かべて囁くように呟いた。
「お節介にも、ついつい余計な事まで言ってしまったかな…これは、後日あの方に叱られてしまいそうだ。だが、これで…あの罪が白日の元にさらされ、彼らの望みが叶う――しかし、それと同時に…」
そこまで言うと、アーヴィル村の集会所の方に目を向けて笑みを消すと小さく息をついた。
「この物語は、本当に残酷なものだね……まったく」
ゆっくりとフレデリックの姿が薄らいでいき…そして、その場に誰もいなくなった――
***
「そうだな…後はナルヴァとヴァリスをウィルネス殿に預けるとして、もうひとつ…ヴァリスにはフレネ村の連中が変な動きをせぬよう見張りを頼む」
クリストフの言葉にイアンが同意すると、ナルヴァとヴァリスに指示を出した。
ウィルネスにナルヴァを預けるのは、とりあえず…ナルヴァの再教育の為なんだろうなーとセネトは密かに思う。
ふと、窓辺に目をやったセネトは気づく…外からこちらの方を窺っている何人かの人影がある事に――
同じくそちらの方に目を向けたクリストフが、困ったように呟いた。
「――この村の人々は、フレネ村の人々を毛嫌いしているようでが…一体何があったんでしょうか?」
「それは至極簡単な理由になります…フレネ村の方々は、アーヴィル村の少女を殺したからです。故に、彼らはフレネ村の方々に良い感情を持てないんですよ」
クリストフの呟きに答えたのはセネト達の誰かではなく、広間の少し奥にあるソファーに腰かけた…青い髪に黒い帽子を被り、深緑色のコートを着た怪しげな笑みを浮かべている男である。
一体、いつからそこにいたのだろうか…?
全員がその帽子の男に目を向けると、彼はにっこりと微笑んだ。
「どうも、おはようございます。退魔士の御一行様…本日も良い朝ですね」
「やはり…お前も来ていたのか。こいつは覗きが得意な情報屋だ、フレネ村で起こったすべてを見てやがった……」
ため息混じりにイアンが帽子の男を顎で指すと、首をかしげているセネト達に説明した。
「失礼な言われ方だ…私は覗き見などしておりませんが、フレネ村を見ていたのはそれを望まれましてね。本当は早々に去るつもりでしたが、何やら面白い方がいたもので」
くすくすと笑いながらセネトを見た帽子の男は、言葉を続ける。
「確か、君は墓地や聖堂などをよく破壊して怒られてますよね?ほどほどにしないと、上司の方やお父上がストレスで倒れてしまうよ?」
「うぐっ…何故そんな事を――なんだよ、こいつは!?」
驚きながら帽子の男を見たセネトに、イアンは大きくため息をついた。
「こいつは【すべてを知る者】と異名を持つ情報屋――」
「私の名は、フレデリック・シルヴェリオと申します。以後、お見知りおきを…」
ソファーから立ち上がった帽子の男・フレデリックは、帽子をとると優雅に腰を折り――そして、頭を上げると再び帽子を被り直す。
「それはそうと…皆様は、これからクレリア嬢を助けに行かれるとか。そして、何かお困りのようでしたね?」
「あ、あぁ…そうだった。突然、お前が出てきたせいで忘れるところだった……で、どういう事だよ?アーヴィル村の少女を殺したのがどーとか…」
フレデリックを指差したセネトは、文句を言いつつ訊ねた。
口元を吊り上げ、笑みを浮かべたフレデリックは再びソファーに腰かけると足を組んだ。
「よろしい…いろいろと面白いものを見せていただいたお礼に、今回は特別にお教えしましょう。まずは、簡単な昔話を――」
その昔…フレネ村はアーヴィル村の習慣を見て、その本質を無視して上辺だけを真似た――はじめは純粋に村を護りたい、という思いからであった。
アーヴィル村の習慣――村を守護する存在に村人ひとりを捧げていたのだが…それは、フレネ村の人々の勘違いを引き起こす原因にもなる。
本当は生け贄ではなく、奉公に出されているだけ…それを知っているのは、アーヴィル村の者だけだ。
「まぁ、これは遠い昔に守護者と一人の青年がした約束のおかげではありますが…そして、ある日――」
フレデリックはひと息ついて、再び語りはじめた…――
…ある日、アーヴィル村に住む一人の少女が薬草を探す為にたまたま"祈りの場"付近にやって来たのだ。
そして、偶然目撃てしまったのだ…自分と年の頃が近い少女が惨殺されるところを――
目撃してしまった少女と、それを助けようとしたフレネ村の守人の少年も無残に殺害されてしまう。
フレネ村付近に出現していたなりそこないも、また…フレネ村の人々によって惨殺された犠牲者であった……
「なりそこないが生まれたのは、守護者の元にいる『彼』が助けようと血を与えたからです。まぁ、その真相はこの村の村長にお伝えしましたが…」
「だから、この村の連中はフレネ村の連中を嫌っているんだな…」
納得したように窓の方に目を向けたセネトは、複雑そうに呟いた。
アーヴィル村の村長・ウィルネスが初めて会った時にフレネ村の人々を忌々しげに見ていた理由――それは、一人の少女の死からはじまっていた。
「そう…それに、何も知らない無垢な子供からそれを止めようとした者も含む村の外の――数多の生命を犠牲にして、ね」
小さく頷いたフレデリックは怪しげな、意地の悪そうな笑みを浮かべると右手人差し指をゆっくり口元へと持っていく。
「これが、アーヴィル村とフレネ村の間にある因縁です…ところで、良いのですか?」
「何が…だよ?」
首をかしげたセネトが訊ねると、フレデリックは苦笑しながらクリストフに視線を向けた。
「いえ、ね…アーヴィル村の守護者の屋敷で――あぁ、場所は君がよく知っているので省きますが…そこで、クレリア嬢が守護者と一緒に遊んでいるようですよ?」
「あー…それは、まずいですね」
それが何を意味するのか、すぐに気づいたクリストフは口元をひきつらせて遠い目をした。
クリストフの表情で、何かを察したイアンは大きくため息をつく。
「あのバカは――相手の正体も知らずに、気づかずに挑んだんだろうな。おそらくは…」
何の事かわからずにいるセネトに、クリストフが小さくため息をついて囁くように教えた。
「アーヴィル村の守護者…彼らが住まうあの一帯は『明けない夜』――つまり、もうわかりますよね?」
クリストフの話を聞いて、ようやく状況と…そして、守護者の正体に気づいたセネトは呆れたように呟いた。
「うん…わかった。つまり、クレリアがアーヴィル村の守護者と呼ばれる吸血鬼にケンカを売ったって事だろ」
唖然としている様子を面白そうに眺めたフレデリックはゆっくり立ち上がると頭を軽く下げる。
「では、私はこれで――次の約束がありますので、失礼しますね。また何かありましたら…お会いしましょう」
そう言うとフレデリックは宿屋から去っていく、が何か聞き忘れた事があったらしいセネトは慌てて追いかけた。
しかし、フレデリックが外へ出て数秒と経っていないというのに…セネトはその姿を見失う。
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「つまり…急げば、大丈夫だって事か。なら、さっさと行こうぜ!」
多少不安がなくなったらしいセネトは、まだ宿屋の中にいるクリストフに呼びかけ…ナルヴァとヴァリスを渋るウィルネスに預けると守護者の屋敷へ出発した。
――もちろん、少女から渡された手紙を持って…だ。
アーヴィル村の入口付近にある大きな木の枝――そこに立っているのは黒い帽子に深緑のコートを着た男、フレデリック・シルヴェリオだ。
彼はそこから守護者の屋敷へ向かうセネト達を見ながら、笑みを浮かべて囁くように呟いた。
「お節介にも、ついつい余計な事まで言ってしまったかな…これは、後日あの方に叱られてしまいそうだ。だが、これで…あの罪が白日の元にさらされ、彼らの望みが叶う――しかし、それと同時に…」
そこまで言うと、アーヴィル村の集会所の方に目を向けて笑みを消すと小さく息をついた。
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