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4話「幼い邪悪[中編]~弱虫、再び~」
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――フレネ村でそれなりに大きな屋敷の前、セネトが手を握り締めて軽く素振りをしながら口を開く。
「とりあえず…あの村長親子をおれが締め上げて、何がどうなっているのかを聞きだすんだよな?魔法で…」
「やめてください、僕はまだクビになりたくありませんよ…」
ため息をついたクリストフが、セネトの首を軽く絞めた。
そして、すぐにセネトの首から手を離してからクリストフはイアンに頼み事をする。
「とりあえず、僕がセネトを捕まえておくので…あとは頼みます!」
「――わかった。さぁ…行くぞ」
頷いたイアンが玄関扉をノックしようとして、すぐに異変に気づいた。
ドアノブが壊れかけており、扉も少し開いている状態だったからだ……
怪訝そうな表情を浮かべたイアンがクリストフに目で合図を送り、ズボンの後ろポケットから銃を取りだすと扉を蹴り破って室内に入った。
「…っ!?何だ、これは……」
思わずといった様子でイアンは呟いている隣でセネトとクリストフも、あまりの光景に息を飲んだ。
3人が驚いたのも無理もない――薄暗い室内は荒らされ、壁や床は血で染まっており…窓際には大きな塊と小さな塊をした何かが転がっていたのだから。
それが何なのかを、魔法で明かりを灯したクリストフとイアンが確認しようと恐る恐る近づいた。
セネトも2人の後ろから様子をうかがってみたので、そこにある何かの正体を知る……
(う゛っ…何でこんな事になってんだ?それに、この部屋の血の量だと…おそらく――)
一人、二人…の量ではないだろう、と考えたセネトは思わず口元に手をあてた。
「酷いやり方ですね…両手足を使えなくし、逃げられないようにした上でメッタ刺して最期に首を…ですか」
何かを調べたクリストフが、ため息混じりに呟いて魔法の灯りを消す。
顎に手をあてたイアンもクリストフの言葉に頷きながら、何かを思い出したかのようにセネトとクリストフに訊ねた。
「刃物で斬りつけて、弱ったところを止めの一撃…か。ずいぶんと手際がいい…それよりも、ナルヴァやヴァリスはどこだ?」
「わかりません…が、もしかすると奥の部屋かもしれません。微かですが…あちらからも、血の匂いがしてきますから」
奥にある歪んで開きそうもない扉を視線で指したクリストフが少し考えた後、セネトに声をかける。
「緊急事態ですから…得意な『破壊魔法』を使いなさい!」
「ちょ…『破壊魔法』って、おれは得意なわけじゃなくて…こうして適当に術式を組むと」
むっとした様子のセネトはクリストフの指した歪な扉に向けて、何かの術式を描くと魔力を込めて放った。
すると、風の塊が扉の前で渦巻いて開きそうにない扉をぶっ飛ばした……
「ごほっごほっ…何故か、大爆発するんだよな」
周囲に砂埃が舞う視界の悪い中、セネトが咽ながら言った。
同じく咽ているイアンは、セネトへ向けて抗議する。
「ごほっ…だいたい、それがおかしいんだ。ごほごほっ…適当という事は、術式に大きな矛盾が――」
そこまで言ってみたものの、何か諦めたように言葉を切った。
何を言おうとしていたのか理解したクリストフだけが、苦笑するしかなかったようだ。
***
「とりあえず…あの村長親子をおれが締め上げて、何がどうなっているのかを聞きだすんだよな?魔法で…」
「やめてください、僕はまだクビになりたくありませんよ…」
ため息をついたクリストフが、セネトの首を軽く絞めた。
そして、すぐにセネトの首から手を離してからクリストフはイアンに頼み事をする。
「とりあえず、僕がセネトを捕まえておくので…あとは頼みます!」
「――わかった。さぁ…行くぞ」
頷いたイアンが玄関扉をノックしようとして、すぐに異変に気づいた。
ドアノブが壊れかけており、扉も少し開いている状態だったからだ……
怪訝そうな表情を浮かべたイアンがクリストフに目で合図を送り、ズボンの後ろポケットから銃を取りだすと扉を蹴り破って室内に入った。
「…っ!?何だ、これは……」
思わずといった様子でイアンは呟いている隣でセネトとクリストフも、あまりの光景に息を飲んだ。
3人が驚いたのも無理もない――薄暗い室内は荒らされ、壁や床は血で染まっており…窓際には大きな塊と小さな塊をした何かが転がっていたのだから。
それが何なのかを、魔法で明かりを灯したクリストフとイアンが確認しようと恐る恐る近づいた。
セネトも2人の後ろから様子をうかがってみたので、そこにある何かの正体を知る……
(う゛っ…何でこんな事になってんだ?それに、この部屋の血の量だと…おそらく――)
一人、二人…の量ではないだろう、と考えたセネトは思わず口元に手をあてた。
「酷いやり方ですね…両手足を使えなくし、逃げられないようにした上でメッタ刺して最期に首を…ですか」
何かを調べたクリストフが、ため息混じりに呟いて魔法の灯りを消す。
顎に手をあてたイアンもクリストフの言葉に頷きながら、何かを思い出したかのようにセネトとクリストフに訊ねた。
「刃物で斬りつけて、弱ったところを止めの一撃…か。ずいぶんと手際がいい…それよりも、ナルヴァやヴァリスはどこだ?」
「わかりません…が、もしかすると奥の部屋かもしれません。微かですが…あちらからも、血の匂いがしてきますから」
奥にある歪んで開きそうもない扉を視線で指したクリストフが少し考えた後、セネトに声をかける。
「緊急事態ですから…得意な『破壊魔法』を使いなさい!」
「ちょ…『破壊魔法』って、おれは得意なわけじゃなくて…こうして適当に術式を組むと」
むっとした様子のセネトはクリストフの指した歪な扉に向けて、何かの術式を描くと魔力を込めて放った。
すると、風の塊が扉の前で渦巻いて開きそうにない扉をぶっ飛ばした……
「ごほっごほっ…何故か、大爆発するんだよな」
周囲に砂埃が舞う視界の悪い中、セネトが咽ながら言った。
同じく咽ているイアンは、セネトへ向けて抗議する。
「ごほっ…だいたい、それがおかしいんだ。ごほごほっ…適当という事は、術式に大きな矛盾が――」
そこまで言ってみたものの、何か諦めたように言葉を切った。
何を言おうとしていたのか理解したクリストフだけが、苦笑するしかなかったようだ。
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