うたかた夢曲

雪原るい

文字の大きさ
上 下
50 / 94
3話「幼い邪悪[前編]~2人のトラブルメーカー~」

16

しおりを挟む
「どうやら…あの、なりそこないは始末されたようだね。どう?君達の計画は順調に進んでいるかな」

フレネ村ではない、どこかにある屋敷の一室…蝋燭一本の明かりが照らしている部屋にまだ幼い子供の声が響いた。
その幼い声の主は7歳くらいの、淡い黄緑色の腰まである長い髪を長めのリボンで結っている少年である。

この7歳くらいの少年は、何やら楽しそうに笑みを浮かべると蝋燭の炎を見つめていた。

「――これでひとつの罪が明らかになるけど、だけど…その時、君達は」
「いいんです、全ては覚悟の上…何があったのかを公にする事さえできれば。それだけで僕達は救われるし、この生命を失うとしても惜しくはありません。それに、貴方が最期まで見ていてくださると言ってくれて嬉しいくらいです」

7歳くらいの少年の言葉に答えたのは16歳くらいの、黒みがかった茶色の髪をした少年である。
蝋燭の明かりに照らし出される16歳くらいの少年が、悲しい笑みを浮かべながら言葉を続けた。

「すべてが計画通り…とは言えませんが、次をきちんと考えていますよ。その為に、色々と下準備をしていたのですから」
「そっか…うん、君の望むようにすればいいよ。ぼくには、君達を止める資格もないからね……」

困ったように微笑んだ7歳くらいの少年は窓の外、高く昇った白い月に視線を向ける。

今宵の月がとても綺麗で澄んだ白い満月なのは全てを明るみにする為だと、7歳くらいの少年は思うのだった。


***


暗闇の中、一人の老人が震えながら自分の向かい側を見ていた。

「待ってくれ…ワシらに、何の咎があるというのだ?」

この老人がいる場所は部屋の中で、寝台などがある事から…おそらく老人の私室なのだろうと思われる。

「ワシらは…この村、フレネ村を守る為にやってきた事だ。隣の村の連中だって、似たような事をしているではないか!何故…ワシらだけを――」
「あら、そんな言い分が通用すると思っているのかしら…?だいたい、他の誰かもやってる~って理由がね……それで、許されると思っているの?」

震えている老人の言葉に答えたのは、まだ幼さを残しているが大人びた雰囲気の少女であった。
長い髪をいじりながら小さく笑った少女が一歩前にでて、腰を抜かしているらしい老人に近づく。

「わたしだけじゃない…たくさんもの想いを、あなた達の勝手な都合で消してきたのよ。隣の村のせいにしないでほしいわね…」

うっすらと光を帯びている少女が満面の笑みを浮かべながら、絶望した表情を浮かべる老人に目を向けた。
青ざめた老人は小刻みに震えながら後退っていくが、少女はまるで意に介さず…また一歩、前に進み出る。

「あー…これは、さっきあなたの言っていた言い訳が使えるわね。、わたしもやっていいわよね?ロウナス村長」

壁際まで追いつめられた老人の目の前に立った少女は、ゆっくり右手を掲げた。
その手には銀色に光るものが握られており、老人・ロウナスは恐怖で目を大きく見開いて見ているしかできなかった。
しおりを挟む
拍手ボタン】【マシュマロ】【質問箱
(コメントしていただけると励みになります)

○個人サイトでも公開中。
(※現在、次話を執筆中ですので公開までしばらくお待ちください)

・本作は『妖煌吸血鬼シリーズ』の1作目になります。
感想 0

あなたにおすすめの小説

惑う霧氷の彼方

雪原るい
ファンタジー
――その日、私は大切なものをふたつ失いました。 ある日、少女が目覚めると見知らぬ場所にいた。 山間の小さな集落… …だが、そこは生者と死者の住まう狭間の世界だった。 ――死者は霧と共に現れる… 小さな集落に伝わる伝承に隠された秘密とは? そして、少女が失った大切なものとは一体…? 小さな集落に死者たちの霧が包み込み… 今、悲しみの鎮魂歌が流れる… それは、悲しく淡い願いのこめられた…失われたものを知る物語―― *** 自サイトにも載せています。更新頻度は不定期、ゆっくりのんびりペースです。 ※R-15は一応…残酷な描写などがあるかもなので設定しています。 ⚠作者独自の設定などがある場合もありますので、予めご了承ください。 本作は『闇空の柩シリーズ』2作目となります。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ある国の王の後悔

黒木メイ
恋愛
ある国の王は後悔していた。 私は彼女を最後まで信じきれなかった。私は彼女を守れなかった。 小説家になろうに過去(2018)投稿した短編。 カクヨムにも掲載中。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

少年少女たちの日々

原口源太郎
恋愛
とある大国が隣国へ武力侵攻した。 世界の人々はその行為を大いに非難したが、争いはその二国間だけで終わると思っていた。 しかし、その数週間後に別の大国が自国の領土を主張する国へと攻め入った。それに対し、列国は武力でその行いを押さえ込もうとした。 世界の二カ所で起こった戦争の火は、やがてあちこちで燻っていた紛争を燃え上がらせ、やがて第三次世界戦争へと突入していった。 戦争は三年目を迎えたが、国連加盟国の半数以上の国で戦闘状態が続いていた。 大海を望み、二つの大国のすぐ近くに位置するとある小国は、激しい戦闘に巻き込まれていた。 その国の六人の少年少女も戦いの中に巻き込まれていく。

処理中です...