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3話「幼い邪悪[前編]~2人のトラブルメーカー~」
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「どうやら…あの、なりそこないは始末されたようだね。どう?君達の計画は順調に進んでいるかな」
フレネ村ではない、どこかにある屋敷の一室…蝋燭一本の明かりが照らしている部屋にまだ幼い子供の声が響いた。
その幼い声の主は7歳くらいの、淡い黄緑色の腰まである長い髪を長めのリボンで結っている少年である。
この7歳くらいの少年は、何やら楽しそうに笑みを浮かべると蝋燭の炎を見つめていた。
「――これでひとつの罪が明らかになるけど、だけど…その時、君達は」
「いいんです、全ては覚悟の上…何があったのかを公にする事さえできれば。それだけで僕達は救われるし、この生命を失うとしても惜しくはありません。それに、貴方が最期まで見ていてくださると言ってくれて嬉しいくらいです」
7歳くらいの少年の言葉に答えたのは16歳くらいの、黒みがかった茶色の髪をした少年である。
蝋燭の明かりに照らし出される16歳くらいの少年が、悲しい笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「すべてが計画通り…とは言えませんが、次をきちんと考えていますよ。その為に、色々と下準備をしていたのですから」
「そっか…うん、君の望むようにすればいいよ。ぼくには、君達を止める資格もないからね……」
困ったように微笑んだ7歳くらいの少年は窓の外、高く昇った白い月に視線を向ける。
今宵の月がとても綺麗で澄んだ白い満月なのは全てを明るみにする為だと、7歳くらいの少年は思うのだった。
***
暗闇の中、一人の老人が震えながら自分の向かい側を見ていた。
「待ってくれ…ワシらに、何の咎があるというのだ?」
この老人がいる場所は部屋の中で、寝台などがある事から…おそらく老人の私室なのだろうと思われる。
「ワシらは…この村、フレネ村を守る為にやってきた事だ。隣の村の連中だって、似たような事をしているではないか!何故…ワシらだけを――」
「あら、そんな言い分が通用すると思っているのかしら…?だいたい、他の誰かもやってる~って理由がね……それで、許されると思っているの?」
震えている老人の言葉に答えたのは、まだ幼さを残しているが大人びた雰囲気の少女であった。
長い髪をいじりながら小さく笑った少女が一歩前にでて、腰を抜かしているらしい老人に近づく。
「わたしだけじゃない…たくさんもの想いを、あなた達の勝手な都合で消してきたのよ。隣の村のせいにしないでほしいわね…」
うっすらと光を帯びている少女が満面の笑みを浮かべながら、絶望した表情を浮かべる老人に目を向けた。
青ざめた老人は小刻みに震えながら後退っていくが、少女はまるで意に介さず…また一歩、前に進み出る。
「あー…これは、さっきあなたの言っていた言い訳が使えるわね。あなた達もやっていたのだから、わたしもやっていいわよね?ロウナス村長」
壁際まで追いつめられた老人の目の前に立った少女は、ゆっくり右手を掲げた。
その手には銀色に光るものが握られており、老人・ロウナスは恐怖で目を大きく見開いて見ているしかできなかった。
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「――これでひとつの罪が明らかになるけど、だけど…その時、君達は」
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蝋燭の明かりに照らし出される16歳くらいの少年が、悲しい笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「すべてが計画通り…とは言えませんが、次をきちんと考えていますよ。その為に、色々と下準備をしていたのですから」
「そっか…うん、君の望むようにすればいいよ。ぼくには、君達を止める資格もないからね……」
困ったように微笑んだ7歳くらいの少年は窓の外、高く昇った白い月に視線を向ける。
今宵の月がとても綺麗で澄んだ白い満月なのは全てを明るみにする為だと、7歳くらいの少年は思うのだった。
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「待ってくれ…ワシらに、何の咎があるというのだ?」
この老人がいる場所は部屋の中で、寝台などがある事から…おそらく老人の私室なのだろうと思われる。
「ワシらは…この村、フレネ村を守る為にやってきた事だ。隣の村の連中だって、似たような事をしているではないか!何故…ワシらだけを――」
「あら、そんな言い分が通用すると思っているのかしら…?だいたい、他の誰かもやってる~って理由がね……それで、許されると思っているの?」
震えている老人の言葉に答えたのは、まだ幼さを残しているが大人びた雰囲気の少女であった。
長い髪をいじりながら小さく笑った少女が一歩前にでて、腰を抜かしているらしい老人に近づく。
「わたしだけじゃない…たくさんもの想いを、あなた達の勝手な都合で消してきたのよ。隣の村のせいにしないでほしいわね…」
うっすらと光を帯びている少女が満面の笑みを浮かべながら、絶望した表情を浮かべる老人に目を向けた。
青ざめた老人は小刻みに震えながら後退っていくが、少女はまるで意に介さず…また一歩、前に進み出る。
「あー…これは、さっきあなたの言っていた言い訳が使えるわね。あなた達もやっていたのだから、わたしもやっていいわよね?ロウナス村長」
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その手には銀色に光るものが握られており、老人・ロウナスは恐怖で目を大きく見開いて見ているしかできなかった。
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