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第一章 僕と竜くんのえっちな生活

僕からのはじめてのキス※

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 土曜日の市の野球グランドには、市じゅうの高校の野球部が集まっていて、僕ら以外にも応援の人が沢山いた。

 うちの高校の野球部が二回勝ったから、会場に流れてくるCD に合わせて二回校歌の一番を歌った。

 竜くんはすごく声量があって、お客さんから拍手をもらうくらいで、大勢の前で恥ずかしくて声が震えちゃった僕とは大違い。

 応援団と野球部の人達も声を出すんだけど、甲子園に行けたことのない地方の高校生が自分の高校の校歌なんて覚えてないみたいで、僕ら校歌合唱部は目立って目立った。

 竜くんはずっとご機嫌だったからか、こっそり見に来ていた社長がグランドの応援席の端で僕に、

「ゴールデンウィークの中小企業若手懇親会の集まりに、竜と一緒に行ってほしい。もちろんただとは言わない」

と、地方都心のホテルのディナーチケットを二枚出しながら話してきた。

 竜くんに直接言えないからだと思うけど、僕からでもね…。

「田中くん、頼むよ。竜の世話係なんだから、うまく、ね」

「はい……」

 世話係って言うか……家政夫って言うか。竜くんには、肉便器とか言われてるんだけど……。

「田中、こっちだ」

 左右田部長に呼ばれて、社長に頭を下げると慌てて左右田部長のところに移動する。

 竜くんがベンチで他校の女の子たちに囲まれて、かったるそうな笑顔を見せていた。

 かっこよく見えちゃうなあ、足も長いしモデルさんみたいな竜くん。

 いつもは子どもみたいでだらしなくて、しゃべり方もゆっくりなのに、普通に会話をしていて、少しヤな感じがする。

「移動できない、なんとかしてくれないか」

 三矢先輩が竜くんの紫色のリュックを僕に渡して来て、僕は女の子たちの後ろをうろうろした挙げ句、

「田中、行け」

と、左右田先輩に突き飛ばされて女の子の間に入った。

 きゃあ、とか、なによ、とか、女の子達が騒ぐ中で、僕は竜くんの腕を掴んで引っ張る。

「なに、みそらクン」

「竜くん、部活中だよ。来て」

 竜くんは目を真ん丸にして、盛大に吹き出しながら、女の子たちと一緒に座っていたベンチから立ち上がった。

「部活中…部活中ねー、はいはーい」

「竜、久しぶりなのに、なんで行っちゃう?うちらとハメ写メ……」

 ハメ写メってなんだ?

「今ー、女の子禁止だからー。あー、でも、ハメ写メいーかもー」

 竜くんはひらひら手を振って断ると、左右田先輩の後ろをゆったりとした歩幅で追いかける。

「あの子たちねー、中学の同級だよー。みそらクン、やきもちー?」

「左右田部長が、呼んでたから……」

「ふーん…なんだあ。ねー、みそらクン。あの人から何貰ってたの?お給料?あ、違うかー、振り込みだもんねー」

 竜くんがいつもみたいに、気だるそうに喋ってきて、なんだか安心した。

「……これ」

 僕が仕方なく中小企業若手懇親会の要項の入っている封筒を渡すと、竜くんは興味無さそうに見ていて、チケットをを見ると

「ふーん」

と呟いた。

「田中、鈴木、第二グランドに移動」

「あ、はーい……って、竜くんどこ行くの?」

「トイレ。みそらクン、つれションしよー」

 竜くんはグランドの端のトイレに来て、

「みそらクンからキスしてくれたらー、行ってもいーよー」

って言い出した、

 トイレに来たんじゃなくて、わざわざ……人気のないとこ……。

「~~っ!竜くん、少し屈んでよ」

 四十センチ近くも身長の開きがあるんだから、僕が精一杯背伸びをしても、全然たりない。

 僕は、回りに人がいないのを確かめてから、竜くんの横髪を両手で掴んで、必死に首を上げて唇を唇にくっつけた。

「し……したよ。これで……んっ……」

 喋っていると後頭部を掴まれて

「足りない」

と唇を押し付けてくる。

 舌がぬるっ…て口の中に入ってくる。

 上顎を舌先で舐められて、ぞくぞく…って背骨に気持ちいいのが走って…。

「う……っ……ふぁっ……っ」

 舌をきつく噛まれてからキスが深くなり、付け根まで吸われて、立っていられくなって……。

 トイレから出てきた人が、口笛を拭いて来る。

 男同士なのに見られた……どうしよう。

 たっぷりキスを堪能した竜くんは、腰が抜けた僕を小脇に抱えると、

「大丈夫だよー、みそらクン、俺が隠してあげたからー。バレてないよー」

なんて鼻歌混じりにグランドに戻っていった。
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