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58 はじまりのはじまり
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「直樹、よき宮を得た」
「トトさんとニュト様の宮を真似しちゃいました」
「これ、あげる。直樹」
ニュトの大きな包みからゴロゴロと夜光球が出てくる。
「ありがとうございます、ニュト様」
「敬語、いや。様もいらない。直樹は友達だから」
「う、うん、ニュ、ニュト」
「じゃあ、僕は親友だからね、ほら、最上級の薔薇香油をあげるよ。和合に使うといいよ。薔薇の香りは官能的になる」
「あ、ありがとう。アルバート」
「俺にはないのか、アルバート」
「明なんかには勿体ない。竜の油でも使ったら?」
「このやろー!」
ニュトが物静かなトトに抱かれて天馬に乗り、アルバートが黄虎に跨って、明が赤竜の背に立ち、それぞれの国へ戻っていく。
真新しい黒杉の宮のお目見えのために、全ての王が短い時間であるが集まった。
カナメやティーは突然やってきた神王に腰を抜かしたが、食事をしない神王に振る舞ったのは赤王明の葡萄酒で、杯を出したのみで、あとは神王の無礼講だと明に押し切られて追い出されてしまったのだ。
「直樹様、さあ」
王の部屋の寝台で直樹は着なれた寝間着を着て、少しだけ戸惑っていた。
「そんなに緊張をするな」
新築祝いで先程まで賑やかだった宮は静まりかえり、ティーも宮裏の学びの館に行ってしまい、直樹はシンラと二人、新黒宮にいる。
「うん……」
尻尾をパサパサと揺らして鞄から探し物をしているシンラの後ろ姿を、直樹は見つめた。
黒宮、消失
王の心象が、これほどまではっきりしたものだとは、直樹自身も知らなかった。
黒宮の厳つい黒煉瓦の建物だけが瞬きの程に消えてなくなり、二階にあった全てが1階に降りて混乱していた。
「お、おまっ、やってくれるっ……あっはははは……」
明は大笑いの発作を繰り返し、シンラも苦笑していて、怯えたのは黒宮の官だけだった。官は逃げ出し、村人は手を取り合い喜び、直樹に平伏したが、
「はあ……やってくれましたなあ」
外の喧騒はあっけにとられ終わってしまい、カナメは記録鳥と伝書鳥の籠を見つめ、
「しばらくは野宿ですかな?」
と笑った。そして黒の宮の隅にあった小さな細い、森の黒の低木よりも小さな滑らかな木を掘り返し、カナメが直樹の小さな手に乗せた。
「これが……和木……僕の木?」
「はい、直樹様と国の繋がりの木です」
木の先には小指の爪ほどの小さな桃色の神卵がついていて、少しだけホッとする。
「さあ、どこに宮を造りますか?鳥たちはだけでも移動しないといけませんねえ」
ジジからの伝書鳥がやって来て、その杞憂が払われた。
心象により森と黒国の接する場所まで森の宮含む村すらも動き、黒国に直樹とシンラの居住空間が張り出す形で新しい黒の宮がが動いており黒杉木軸の新しい黒の宮が存在していたのだ。森の部分は森に、黒の部分は黒国に。ジジの知恵の館の横に黒国の学びの館がある。
そして、今日、初めて宮に泊まり、初めて黒宮で和合する。
「直樹、ジジに頼んでおいた稲酒が出来たから持って来た」
稲から酒が出来るから作ってくれと明が懇願するので、知恵者のジジに頼んで稲酒を作ってもらったのだ。
黒国で食べ方が分からなかった稲は雑草扱いされていて、直樹と明が気づき飯の炊き方を教えたところ、一気に広まったのが稲作だ。
ティーの手作りの杯に注がれた稲酒に口をつけると、ふわ……と甘めの味が口に広がり、葡萄酒の濃厚な味に比べ優しい口当たりで、
「おいしい」
と、直樹は一気にこくこくと飲み干してしまう。
「旨いな。葡萄酒より酔いが回るから……直樹?」
直樹はふわりふわりとした気持ちよさに、シンラの膝に頭を乗せて、当たる屹立に気付いて唇を舐め、寝間着をめくるとシンラの反る屹立に口をつけた。
「酔っているな……っ……つ!」
直樹は舌を出して切っ先をぺろりと舐めてから、咥内に入れるとシンラの屹立を舌で扱き、屹立に寄り添う瘤まで飲み込もうとして、喉の奥を突いて吐きそうになり咳をした。
「無理をするな」
「無理じゃないよ。僕がしたかったんだ」
ぞく……と甘く震えながら直樹はシンラの下に組み伏せられ、寝間着の紐をほどかれると、すでに屹立した先を撫でられてから、襞に薔薇香油を纏う指が入りゆっくりと開かれていく。
「ん、シンラ……もう……」
襞がはしたなくも何度もシンラの指を締め付け、直樹はシンラの滴りが溢れ出る屹立を握り懇願した。
指だけで達してしまいそうなほど体が高ぶり、切なくなっているのだ。
「しかし……まだ」
「お、お願いっ!あっ……」
指が感じる核を掠め、腰が浮く。直樹がびく……と震え泣きそうな顔をして見上げると、シンラの瞳とぶつかり頷き直樹の襞を張り出しで広げられると、ぐんっと貫いた。
「あっ……ああああっ……っ」
最奥に入り込んだ屹立を締め付けながら、直樹は勢い達して白い肌に白濁を散らす。
「はっ、はあっ、シンラ……っ……」
「大丈夫か?」
「……何か……おかしい……」
内壁が収斂してシンラの屹立無意識に締め付けながら、直樹はシンラにしがみつき襞を押し付けた。
「んっ……んんっ……」
シンラが直樹の様子を見越して繰り返し核を突いて来て、直樹は背を反らしながらとぷとぷと白濁を溢れさせ、歓喜の涙を流す。
襞を早く擦られその刺激で肉環で感じ、核をやや強引に押され飛沫し、悦さと苦しさがない交ぜになる下腹が疼いて疼いて仕方がない。
「あ……あ……んんっ……もっと……奥……ふあっ……!」
意地悪な屹立は核だけを執拗になぶり、ようやく最奥に重い楔を打ち込まれた瞬間、直樹は全身に火花が散るような絶頂が臍の下から巻き起こり、息が止まった。
「ひっ……んんんっ……っ!」
もう出ないくらい吐露しているのに、直樹は下腹から絞り出すように、透明な体液を胸にぱっ…と散らし、シンラの重い温かみを受け取る。
「あ……あ……あ……」
内壁が咀嚼するようにシンラの屹立を食み、脱力した直樹はシンラの首に絡めていた手を解放する。
まるで夢を見ているみたいだよ……好きな人が出来て、ずっと一緒にいられるなんて……そんな呟きが雫となって寝台に転がり落ちた。
……それから……
木枯らしが吹き始めた朝。
黒杉の中をクロに乗って駆け抜ける黒髪の直樹を見て、村人が手を振る。
「黒王様ー」
森宮と黒宮の回りの道は神王の為に綺麗にされ、村人も歩きやすそうだ。
「今日は宮で取引の日ですよー。行きますから待っといてくださいねー」
直樹の姿に見慣れた村人に叫ぶ。
「黒茸のいいやつが取れましたので、昼から行きますでー」
「はーい」
後方から軽い四つ足の足音がした。
「直樹様ー、ほれ、後ろ。森王様がー」
振り返ると茶銀色の狼に乗ったシンラが、直樹を追いかけてきている。
「シンラ、銀狼」
直樹の血を洗った泉から出現した小さな茶銀の狼は、人神である森王シンラの神獣だ。あの泉は少しの傷なら癒える泉になってしまったから、森には多くの後欠けや傷人がやって来ていた。
「直樹、明から伝書鳥が来た」
赤色の伝書鳥が直樹のところにやってくると、直樹の指に止まり赤王明の声で話し始める。
「シンラ、明さんが稲酒、欲しいそうです。僕に持ってこいって……」
シンラが銀狼から降りて直樹の耳元で頷き、伝書鳥の嘴をトントンとつつき、直樹は話し始めた。
「明さん、僕とシンラで持っていきますから、待っていてくださいね。シンラに露天風呂でお酒を教えてください」
明が直樹に是非やってみようと話していたことを付け加え、直樹は鳥を飛ばす。
鳥は名残惜しそうに直樹の頭の辺りを旋回し、赤国に向かって飛んで行った。
新しい黒宮の横に涌き出た清水で稲酒を造るのは、『欠けたる』者たち。その新しい黒宮特産を、ティーが指揮をしていた。
「それと……森から連れて来た」
銀狼の後ろからひょいと、汚れた短い黒髪の男の子どもを直樹に差し出す。
直樹より少しだけ大きい子どもは、シンラのコートを羽織り泥にまみれ、泣きじゃくっていた。
「通りすがりに野盗に襲われてたのを拾ったのでな。黒の実を塗りつけたが指がこれでは、もう村には戻れまい」
全裸の尻からは精が溢れ出て足を伝っている哀れな子供は、左手の小指が生々しく欠けており、シンラがあちこち警護してはいるがやはり蛮行は繰り返されていた。
「名前、何?」
「ヤガー……」
「ヤガー、僕のところに来ませんか?」
「え……」
直樹はヤガーの目を見つめないように、下から斜めに見上げた。
「僕は生活のあれこれが少し苦手で、手伝っていただけると助かるのです」
ヤガーが自分の左手を見て、直樹を見下ろし小さく頷く。
「どうせ村には帰れない。森は怖いし、あんたが助けてくれるなら。いいや」
「では、ヤガー、直樹を頼むぞ。直樹、夕方に宮に戻る」
「うん、待ってる」
シンラが直樹の唇に唇を合わせて、ゆっくりと離した。
「先程まで一緒だったのに、別れがたいな」
「そうだね……」
直樹は頬に添えられたシンラの手に、自分の小さな手を添える。
昨晩は湯殿で貫かれてそのまま寝台に運ばれ、その振動に直樹は翻弄されてしまい、四つ這いの深さとシンラの手淫で白濁が無くなるまで出されて、透明な液体を飛沫させて意識を失ってしまった程に気持ちよかったのだ。
透明な液体のことが心配で、朝起き抜けにシンラに訪ねると、
「悦が過ぎたる時に、出るものらしい。和合して気持ちが良いという証の一つだ」
と笑われて、直樹は真っ赤になった。
「ヤガー、クロに乗って空から行こう」
野盗に辱しめられたヤガーを道々で見せたくはない直樹は、ヤガーをクロの後ろに乗せて宙へと飛翔させる。
「あんたは……」
ヤガーが直樹に訪ねる。直樹はにっこりと笑って、ヤガーの方を少しだけ向いた。
「僕?黒国の王様をやっている直樹です」
~~本編終~~
「トトさんとニュト様の宮を真似しちゃいました」
「これ、あげる。直樹」
ニュトの大きな包みからゴロゴロと夜光球が出てくる。
「ありがとうございます、ニュト様」
「敬語、いや。様もいらない。直樹は友達だから」
「う、うん、ニュ、ニュト」
「じゃあ、僕は親友だからね、ほら、最上級の薔薇香油をあげるよ。和合に使うといいよ。薔薇の香りは官能的になる」
「あ、ありがとう。アルバート」
「俺にはないのか、アルバート」
「明なんかには勿体ない。竜の油でも使ったら?」
「このやろー!」
ニュトが物静かなトトに抱かれて天馬に乗り、アルバートが黄虎に跨って、明が赤竜の背に立ち、それぞれの国へ戻っていく。
真新しい黒杉の宮のお目見えのために、全ての王が短い時間であるが集まった。
カナメやティーは突然やってきた神王に腰を抜かしたが、食事をしない神王に振る舞ったのは赤王明の葡萄酒で、杯を出したのみで、あとは神王の無礼講だと明に押し切られて追い出されてしまったのだ。
「直樹様、さあ」
王の部屋の寝台で直樹は着なれた寝間着を着て、少しだけ戸惑っていた。
「そんなに緊張をするな」
新築祝いで先程まで賑やかだった宮は静まりかえり、ティーも宮裏の学びの館に行ってしまい、直樹はシンラと二人、新黒宮にいる。
「うん……」
尻尾をパサパサと揺らして鞄から探し物をしているシンラの後ろ姿を、直樹は見つめた。
黒宮、消失
王の心象が、これほどまではっきりしたものだとは、直樹自身も知らなかった。
黒宮の厳つい黒煉瓦の建物だけが瞬きの程に消えてなくなり、二階にあった全てが1階に降りて混乱していた。
「お、おまっ、やってくれるっ……あっはははは……」
明は大笑いの発作を繰り返し、シンラも苦笑していて、怯えたのは黒宮の官だけだった。官は逃げ出し、村人は手を取り合い喜び、直樹に平伏したが、
「はあ……やってくれましたなあ」
外の喧騒はあっけにとられ終わってしまい、カナメは記録鳥と伝書鳥の籠を見つめ、
「しばらくは野宿ですかな?」
と笑った。そして黒の宮の隅にあった小さな細い、森の黒の低木よりも小さな滑らかな木を掘り返し、カナメが直樹の小さな手に乗せた。
「これが……和木……僕の木?」
「はい、直樹様と国の繋がりの木です」
木の先には小指の爪ほどの小さな桃色の神卵がついていて、少しだけホッとする。
「さあ、どこに宮を造りますか?鳥たちはだけでも移動しないといけませんねえ」
ジジからの伝書鳥がやって来て、その杞憂が払われた。
心象により森と黒国の接する場所まで森の宮含む村すらも動き、黒国に直樹とシンラの居住空間が張り出す形で新しい黒の宮がが動いており黒杉木軸の新しい黒の宮が存在していたのだ。森の部分は森に、黒の部分は黒国に。ジジの知恵の館の横に黒国の学びの館がある。
そして、今日、初めて宮に泊まり、初めて黒宮で和合する。
「直樹、ジジに頼んでおいた稲酒が出来たから持って来た」
稲から酒が出来るから作ってくれと明が懇願するので、知恵者のジジに頼んで稲酒を作ってもらったのだ。
黒国で食べ方が分からなかった稲は雑草扱いされていて、直樹と明が気づき飯の炊き方を教えたところ、一気に広まったのが稲作だ。
ティーの手作りの杯に注がれた稲酒に口をつけると、ふわ……と甘めの味が口に広がり、葡萄酒の濃厚な味に比べ優しい口当たりで、
「おいしい」
と、直樹は一気にこくこくと飲み干してしまう。
「旨いな。葡萄酒より酔いが回るから……直樹?」
直樹はふわりふわりとした気持ちよさに、シンラの膝に頭を乗せて、当たる屹立に気付いて唇を舐め、寝間着をめくるとシンラの反る屹立に口をつけた。
「酔っているな……っ……つ!」
直樹は舌を出して切っ先をぺろりと舐めてから、咥内に入れるとシンラの屹立を舌で扱き、屹立に寄り添う瘤まで飲み込もうとして、喉の奥を突いて吐きそうになり咳をした。
「無理をするな」
「無理じゃないよ。僕がしたかったんだ」
ぞく……と甘く震えながら直樹はシンラの下に組み伏せられ、寝間着の紐をほどかれると、すでに屹立した先を撫でられてから、襞に薔薇香油を纏う指が入りゆっくりと開かれていく。
「ん、シンラ……もう……」
襞がはしたなくも何度もシンラの指を締め付け、直樹はシンラの滴りが溢れ出る屹立を握り懇願した。
指だけで達してしまいそうなほど体が高ぶり、切なくなっているのだ。
「しかし……まだ」
「お、お願いっ!あっ……」
指が感じる核を掠め、腰が浮く。直樹がびく……と震え泣きそうな顔をして見上げると、シンラの瞳とぶつかり頷き直樹の襞を張り出しで広げられると、ぐんっと貫いた。
「あっ……ああああっ……っ」
最奥に入り込んだ屹立を締め付けながら、直樹は勢い達して白い肌に白濁を散らす。
「はっ、はあっ、シンラ……っ……」
「大丈夫か?」
「……何か……おかしい……」
内壁が収斂してシンラの屹立無意識に締め付けながら、直樹はシンラにしがみつき襞を押し付けた。
「んっ……んんっ……」
シンラが直樹の様子を見越して繰り返し核を突いて来て、直樹は背を反らしながらとぷとぷと白濁を溢れさせ、歓喜の涙を流す。
襞を早く擦られその刺激で肉環で感じ、核をやや強引に押され飛沫し、悦さと苦しさがない交ぜになる下腹が疼いて疼いて仕方がない。
「あ……あ……んんっ……もっと……奥……ふあっ……!」
意地悪な屹立は核だけを執拗になぶり、ようやく最奥に重い楔を打ち込まれた瞬間、直樹は全身に火花が散るような絶頂が臍の下から巻き起こり、息が止まった。
「ひっ……んんんっ……っ!」
もう出ないくらい吐露しているのに、直樹は下腹から絞り出すように、透明な体液を胸にぱっ…と散らし、シンラの重い温かみを受け取る。
「あ……あ……あ……」
内壁が咀嚼するようにシンラの屹立を食み、脱力した直樹はシンラの首に絡めていた手を解放する。
まるで夢を見ているみたいだよ……好きな人が出来て、ずっと一緒にいられるなんて……そんな呟きが雫となって寝台に転がり落ちた。
……それから……
木枯らしが吹き始めた朝。
黒杉の中をクロに乗って駆け抜ける黒髪の直樹を見て、村人が手を振る。
「黒王様ー」
森宮と黒宮の回りの道は神王の為に綺麗にされ、村人も歩きやすそうだ。
「今日は宮で取引の日ですよー。行きますから待っといてくださいねー」
直樹の姿に見慣れた村人に叫ぶ。
「黒茸のいいやつが取れましたので、昼から行きますでー」
「はーい」
後方から軽い四つ足の足音がした。
「直樹様ー、ほれ、後ろ。森王様がー」
振り返ると茶銀色の狼に乗ったシンラが、直樹を追いかけてきている。
「シンラ、銀狼」
直樹の血を洗った泉から出現した小さな茶銀の狼は、人神である森王シンラの神獣だ。あの泉は少しの傷なら癒える泉になってしまったから、森には多くの後欠けや傷人がやって来ていた。
「直樹、明から伝書鳥が来た」
赤色の伝書鳥が直樹のところにやってくると、直樹の指に止まり赤王明の声で話し始める。
「シンラ、明さんが稲酒、欲しいそうです。僕に持ってこいって……」
シンラが銀狼から降りて直樹の耳元で頷き、伝書鳥の嘴をトントンとつつき、直樹は話し始めた。
「明さん、僕とシンラで持っていきますから、待っていてくださいね。シンラに露天風呂でお酒を教えてください」
明が直樹に是非やってみようと話していたことを付け加え、直樹は鳥を飛ばす。
鳥は名残惜しそうに直樹の頭の辺りを旋回し、赤国に向かって飛んで行った。
新しい黒宮の横に涌き出た清水で稲酒を造るのは、『欠けたる』者たち。その新しい黒宮特産を、ティーが指揮をしていた。
「それと……森から連れて来た」
銀狼の後ろからひょいと、汚れた短い黒髪の男の子どもを直樹に差し出す。
直樹より少しだけ大きい子どもは、シンラのコートを羽織り泥にまみれ、泣きじゃくっていた。
「通りすがりに野盗に襲われてたのを拾ったのでな。黒の実を塗りつけたが指がこれでは、もう村には戻れまい」
全裸の尻からは精が溢れ出て足を伝っている哀れな子供は、左手の小指が生々しく欠けており、シンラがあちこち警護してはいるがやはり蛮行は繰り返されていた。
「名前、何?」
「ヤガー……」
「ヤガー、僕のところに来ませんか?」
「え……」
直樹はヤガーの目を見つめないように、下から斜めに見上げた。
「僕は生活のあれこれが少し苦手で、手伝っていただけると助かるのです」
ヤガーが自分の左手を見て、直樹を見下ろし小さく頷く。
「どうせ村には帰れない。森は怖いし、あんたが助けてくれるなら。いいや」
「では、ヤガー、直樹を頼むぞ。直樹、夕方に宮に戻る」
「うん、待ってる」
シンラが直樹の唇に唇を合わせて、ゆっくりと離した。
「先程まで一緒だったのに、別れがたいな」
「そうだね……」
直樹は頬に添えられたシンラの手に、自分の小さな手を添える。
昨晩は湯殿で貫かれてそのまま寝台に運ばれ、その振動に直樹は翻弄されてしまい、四つ這いの深さとシンラの手淫で白濁が無くなるまで出されて、透明な液体を飛沫させて意識を失ってしまった程に気持ちよかったのだ。
透明な液体のことが心配で、朝起き抜けにシンラに訪ねると、
「悦が過ぎたる時に、出るものらしい。和合して気持ちが良いという証の一つだ」
と笑われて、直樹は真っ赤になった。
「ヤガー、クロに乗って空から行こう」
野盗に辱しめられたヤガーを道々で見せたくはない直樹は、ヤガーをクロの後ろに乗せて宙へと飛翔させる。
「あんたは……」
ヤガーが直樹に訪ねる。直樹はにっこりと笑って、ヤガーの方を少しだけ向いた。
「僕?黒国の王様をやっている直樹です」
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