27 / 59
28 明の希望
しおりを挟む
「おいっ!直樹が横にいるんだぞ……やめっ……」
寝台が軋んで直樹は目を覚ました。直樹が葡萄酒を少し入れた甘いお茶に喜ぶと、明は何杯も煮出してくれて、早めに深い眠りに入っていた直樹は、急に意識が覚醒する。
「わかっている。手早く済ます」
明の和合相手のレキの声がしてくちゅと濡れた音がする。
「だから、これは……嫌だと、あ……っ」
「お前は挿入したが早い……ほら、ここだ」
「人を早漏扱い……ぐっ!」
薄目を開けるとレキが背後から明の腰を掴み浅く揺らしていて、白い寝間着の割れた裾からレキが擦る明の屹立が、月明かりに濡れているのが見えた。
「あ……あっ……ぅあ……レキ……」
明が息を止めて下肢を何度か震わせ、レキが手の中の小さな瓶に明の精を垂らす。
「も……もう、いいだろ……退け」
明は月明かりにも分かるほど目元を赤くしていて、とても美しく感じた。
「少し足りない。土竜が暴れて、いくつかの家が崩れたのだ。怪我人が多い」
「竜が……くっ……ぁっ……」
ぐちゅぐちゅ……と濡れた挿入出の音が月明かりが差し込むだけの暗い部屋に響き、再び肉のぶつかる微かな音と明の荒い息づかいが聞こえ、
「レキ……手を……ぁああっ……」
寝台が軋み明の悲鳴のような小さな喘ぎの中で、再び小瓶に精を垂らすと衣連れの音がして、直樹は慌てて目を閉じる。
「レキ、お前はいいのか?」
甘く吐息を吐く明の横で、レキが身支度をしているようだ。
「まあ、我慢するさ。それよりも白珠を届けてくる。本格的な冬の前に、外れの村で竜を狩るぞ」
「わかった」
レキが明から離れていく気配がした。レキが出入りして冷たい風が窓から入り、直樹は小さなくしゃみをしてしまった。
「起きているよな、直樹」
「は、はい」
明が乱れた寝間着のまま座り込んで、窓から外を見ている。
寝巻きがはだけ肌が紅潮し、下ろした髪をかきあげる仕草がとても流麗で、直樹は明を見つめた。
「お前にはいっつも恥ずかしいところを見られる」
「明さんは、和合が嫌いなんですか?」
直樹にとって和合者であるシンラとの和合は腰が溶けそうな位気持ちよくて、体も気持ちも嬉しくて堪らないものだ。だから、明もそうだと思ったのだ。
「俺は義務的に白珠を出すのが嫌なんだ。あれを傷に塗る?あれは俺の出したモンだぞ?全くレキの奴、後生大事に持っていきやがって、俺は義務じゃなくてだなあ、ムードとか……前戯とかこう色めきのある……なんだ、直樹」
直樹はふと思い起き上がると、明に向かいそれを口にした。
「クロは……僕は記憶のない二十年間クロと呼ばれて森にいたのですが、クロはどのように生きたのですか?」
直樹の意外な言葉に
「直樹?」
と、明が聞き直す。
直樹は真摯に頷くと、自分の寝巻きの胸元に両手を当てた。
「僕は今、シンラといてとても幸せです。でも、クロと呼ばれた僕がとても辛い思いをしたのなら、僕はクロにどう報いれはいいか……変ですか?」
直樹は直樹なりに真剣なのが分かったのが、明が首を横に振った。
「無理に思い出す必要はないし、知らない方がいい。お前は眼球と共に記憶を失っていた。俺にも分からない。森は不可侵だからな」
明は口に出すことは出来ない。記憶を失う前の直樹は、見ず知らずの男に肌を合わせることが義務であれ嫌がっていた。文官長に犯され、森で野合の中心にいたなど知ったら直樹は再び心が壊れ、無になった不老不死の王が出来上がる。それだけは避けたかった。
「そうですか。明さんくらい立派な王様も嫌ですよね。その替わりの……あ、ジジ様の油薬は?」
明が肩を竦める。
「ありゃあ、王の白珠を少しずつ混ぜたもんだ。まあ、寝ろ。抱っこしてやる」
「明さんまで子供扱いです」
「見た目が可愛いからなあ。諦めろ」
シンラの尻尾はなかったが、明が直樹を抱き締めて来て、その高めの体温に直樹はうとうとした。直樹も明も採取されるのが苦手な白珠を、何かに変えられれば、きっといいと思うのだ。
朝起きると再び露天風呂に入り、雪が降っている中で温かい温泉を満喫してから、明が用意してくれたお茶を飲む。
「こんなに大きな宮なのに、明さん一人なんですか?」
赤の焼き煉瓦の赤宮は黒宮よりも広々としているのに、誰とも出会わないのが直樹には不思議だったのだ。
「あ、いや……。一日皆には暇を出したんだ。直樹は宮の者が怖いだろうと思ってなあ」
直樹は明の気遣いに、やはり白珠を何とかしたいと強く思う。
「んーー、タイムリミットだなあ。よし、帰るか、森に」
クロは赤竜になついてずっとテラスで遊んでおり、摘ままれるまでもなく今度は赤竜に飛び乗った。
「明さんは僕に優しいです。どうしてこんなに優しいのですか?」
雪がちらつく中明のコートを羽織る直樹は、騎竜している明に訪ねる。
「俺はな、死ぬ時四十五だった。岩みたいな顔つきのくせに、結婚願望が強くて。父親…お父さんになりたかったんだ。子どもと一緒に雪合戦や魚釣りをしたかったんだ」
直樹は明の手を掴んで竜に乗る。やはりよろめいた。
「森で拾ったちっこいレキは、息子として育てたのにでっかくなったら和合者となり俺を抱きやがる。だからな直樹、大きくならないお前は永遠に俺の息子だ。たまには俺と遊んでくれ。春には魚釣りをしよう」
明はきっと寂しいのだろう。だから同郷の仲間として、神王同士として直樹を認めてくれる明の気持ちが嬉しかった。
「はい、教えてください」
赤竜が昼の空に飛び上がった。
寝台が軋んで直樹は目を覚ました。直樹が葡萄酒を少し入れた甘いお茶に喜ぶと、明は何杯も煮出してくれて、早めに深い眠りに入っていた直樹は、急に意識が覚醒する。
「わかっている。手早く済ます」
明の和合相手のレキの声がしてくちゅと濡れた音がする。
「だから、これは……嫌だと、あ……っ」
「お前は挿入したが早い……ほら、ここだ」
「人を早漏扱い……ぐっ!」
薄目を開けるとレキが背後から明の腰を掴み浅く揺らしていて、白い寝間着の割れた裾からレキが擦る明の屹立が、月明かりに濡れているのが見えた。
「あ……あっ……ぅあ……レキ……」
明が息を止めて下肢を何度か震わせ、レキが手の中の小さな瓶に明の精を垂らす。
「も……もう、いいだろ……退け」
明は月明かりにも分かるほど目元を赤くしていて、とても美しく感じた。
「少し足りない。土竜が暴れて、いくつかの家が崩れたのだ。怪我人が多い」
「竜が……くっ……ぁっ……」
ぐちゅぐちゅ……と濡れた挿入出の音が月明かりが差し込むだけの暗い部屋に響き、再び肉のぶつかる微かな音と明の荒い息づかいが聞こえ、
「レキ……手を……ぁああっ……」
寝台が軋み明の悲鳴のような小さな喘ぎの中で、再び小瓶に精を垂らすと衣連れの音がして、直樹は慌てて目を閉じる。
「レキ、お前はいいのか?」
甘く吐息を吐く明の横で、レキが身支度をしているようだ。
「まあ、我慢するさ。それよりも白珠を届けてくる。本格的な冬の前に、外れの村で竜を狩るぞ」
「わかった」
レキが明から離れていく気配がした。レキが出入りして冷たい風が窓から入り、直樹は小さなくしゃみをしてしまった。
「起きているよな、直樹」
「は、はい」
明が乱れた寝間着のまま座り込んで、窓から外を見ている。
寝巻きがはだけ肌が紅潮し、下ろした髪をかきあげる仕草がとても流麗で、直樹は明を見つめた。
「お前にはいっつも恥ずかしいところを見られる」
「明さんは、和合が嫌いなんですか?」
直樹にとって和合者であるシンラとの和合は腰が溶けそうな位気持ちよくて、体も気持ちも嬉しくて堪らないものだ。だから、明もそうだと思ったのだ。
「俺は義務的に白珠を出すのが嫌なんだ。あれを傷に塗る?あれは俺の出したモンだぞ?全くレキの奴、後生大事に持っていきやがって、俺は義務じゃなくてだなあ、ムードとか……前戯とかこう色めきのある……なんだ、直樹」
直樹はふと思い起き上がると、明に向かいそれを口にした。
「クロは……僕は記憶のない二十年間クロと呼ばれて森にいたのですが、クロはどのように生きたのですか?」
直樹の意外な言葉に
「直樹?」
と、明が聞き直す。
直樹は真摯に頷くと、自分の寝巻きの胸元に両手を当てた。
「僕は今、シンラといてとても幸せです。でも、クロと呼ばれた僕がとても辛い思いをしたのなら、僕はクロにどう報いれはいいか……変ですか?」
直樹は直樹なりに真剣なのが分かったのが、明が首を横に振った。
「無理に思い出す必要はないし、知らない方がいい。お前は眼球と共に記憶を失っていた。俺にも分からない。森は不可侵だからな」
明は口に出すことは出来ない。記憶を失う前の直樹は、見ず知らずの男に肌を合わせることが義務であれ嫌がっていた。文官長に犯され、森で野合の中心にいたなど知ったら直樹は再び心が壊れ、無になった不老不死の王が出来上がる。それだけは避けたかった。
「そうですか。明さんくらい立派な王様も嫌ですよね。その替わりの……あ、ジジ様の油薬は?」
明が肩を竦める。
「ありゃあ、王の白珠を少しずつ混ぜたもんだ。まあ、寝ろ。抱っこしてやる」
「明さんまで子供扱いです」
「見た目が可愛いからなあ。諦めろ」
シンラの尻尾はなかったが、明が直樹を抱き締めて来て、その高めの体温に直樹はうとうとした。直樹も明も採取されるのが苦手な白珠を、何かに変えられれば、きっといいと思うのだ。
朝起きると再び露天風呂に入り、雪が降っている中で温かい温泉を満喫してから、明が用意してくれたお茶を飲む。
「こんなに大きな宮なのに、明さん一人なんですか?」
赤の焼き煉瓦の赤宮は黒宮よりも広々としているのに、誰とも出会わないのが直樹には不思議だったのだ。
「あ、いや……。一日皆には暇を出したんだ。直樹は宮の者が怖いだろうと思ってなあ」
直樹は明の気遣いに、やはり白珠を何とかしたいと強く思う。
「んーー、タイムリミットだなあ。よし、帰るか、森に」
クロは赤竜になついてずっとテラスで遊んでおり、摘ままれるまでもなく今度は赤竜に飛び乗った。
「明さんは僕に優しいです。どうしてこんなに優しいのですか?」
雪がちらつく中明のコートを羽織る直樹は、騎竜している明に訪ねる。
「俺はな、死ぬ時四十五だった。岩みたいな顔つきのくせに、結婚願望が強くて。父親…お父さんになりたかったんだ。子どもと一緒に雪合戦や魚釣りをしたかったんだ」
直樹は明の手を掴んで竜に乗る。やはりよろめいた。
「森で拾ったちっこいレキは、息子として育てたのにでっかくなったら和合者となり俺を抱きやがる。だからな直樹、大きくならないお前は永遠に俺の息子だ。たまには俺と遊んでくれ。春には魚釣りをしよう」
明はきっと寂しいのだろう。だから同郷の仲間として、神王同士として直樹を認めてくれる明の気持ちが嬉しかった。
「はい、教えてください」
赤竜が昼の空に飛び上がった。
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

カランコエの咲く所で
mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。
しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。
次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。
それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。
だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。
そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

【完結】我が侭公爵は自分を知る事にした。
琉海
BL
不仲な兄の代理で出席した他国のパーティーで愁玲(しゅうれ)はその国の王子であるヴァルガと出会う。弟をバカにされて怒るヴァルガを愁玲は嘲笑う。「兄が弟の事を好きなんて、そんなこと絶対にあり得ないんだよ」そう言う姿に何かを感じたヴァルガは愁玲を自分の番にすると宣言し共に暮らし始めた。自分の国から離れ一人になった愁玲は自分が何も知らない事に生まれて初めて気がついた。そんな愁玲にヴァルガは知識を与え、時には褒めてくれてそんな姿に次第と惹かれていく。
しかしヴァルガが優しくする相手は愁玲だけじゃない事に気づいてしまった。その日から二人の関係は崩れていく。急に変わった愁玲の態度に焦れたヴァルガはとうとう怒りを顕にし愁玲はそんなヴァルガに恐怖した。そんな時、愁玲にかけられていた魔法が発動し実家に戻る事となる。そこで不仲の兄、それから愁玲が無知であるように育てた母と対峙する。
迎えに来たヴァルガに連れられ再び戻った愁玲は前と同じように穏やかな時間を過ごし始める。様々な経験を経た愁玲は『知らない事をもっと知りたい』そう願い、旅に出ることを決意する。一人でもちゃんと立てることを証明したかった。そしていつかヴァルガから離れられるように―――。
異変に気づいたヴァルガが愁玲を止める。「お前は俺の番だ」そう言うヴァルガに愁玲は問う。「番って、なに?」そんな愁玲に深いため息をついたヴァルガはあやすように愁玲の頭を撫でた。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる