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14 黒髪の子供
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シンラは子供の遺体を抱きながら泉の水に浸け、ゆっくり洗い流していく。
腹の血を洗い流し、尻の狭間から白濁が流れていた。何人もと野合した穴は緩み空洞となり、溢れ出す白濁は泉の中に散る。せめても綺麗にして埋めてやりたかったからだ。
「髪が……」
茶色だと思っていたが汚れが落ちると漆黒に変わり、美しいうねりの長い黒髪にシンラはどきりとした。
「……っふっ……」
急に手の中の子供の痩せた胸が上下する。シンラは手の中の子供を抱き締めて、動揺した。先刻まで死体であった無惨な冷たい肉塊は、鼓動と呼吸のある生き物へと変わり、止まりそうな浅い呼吸を繰り返す。
「だめだ」
シンラは子供の唇を開き、抱き抱えながら息を吹き込み、二度、三度と、浅い呼吸に合わせた。
「ふ……っう!げ……げほっ……げぇぇっ」
男たちの出した白濁を胃から繰り返し嘔吐し、子供はシンラの腕の中で眠ってしまう。
シンラは泉から出ると裸の子どもを布で拭いてやり、ジジの薬を内臓が見える腹の刺し傷に塗って、持っていた包帯をした。
それから体を傾けると、男たちの手荒な野合を受け止めた尻の狭間、そして変色しててちぎれかかった小さな性器にも塗ってやる。
真っ赤に腫れ上がった尻襞には血が滲み、まだ男たちの精が溢れ出していた。
「若」
しばらく泉の近くの洞で風に当たっていると、双子の従者が帰ってくる。拐われたという、指を欠けさせられた女は捕まってすぐに死んだらしく、シンラの手の中にいる子供が替わりに野合の相手をさせられていた、と、黙って従う楽なガキだったから野盗たちがもったいないと、口々に話していたらしい。
「今、女の遺体をハトリが村へ運んでいます。それにしても……この子、生きていたんですね」
「ああ」
フルトリがふと、子供のこけた頬を触り、それから指を動かした。
「……若、この子供は目が見えないようです。『欠けたる者』です」
フルトリが子供を触診し終わり、シンラは手の中の子供の顔を改めて見つめる。幼い頃に見た白い腕の人は、この子どもと似ているような気もするのだ。
あの可哀想な人が野合の果てに子供が生まれ、しかし…子供もまた『欠けたる者』だったのかもしれない。あれから二十年は経っているのだ。
「フルトリ、この子を森の宮に連れていきたいのだが」
フルトリと呼ばれた従者は上の方で結わえた長い髪をぶん……と横に振る。
「若」
フルトリがしばらく黙ってから、
「若様は森の王。この世界の『満ちたる者』の長、立派な耳と尾を持っている『最も満ちたる者』です。その子は『欠けたる者』」
森の知恵者のジジの教えでは、身体が欠けた状態であるのは、前の生で『罪』を犯し、この世に生まれてきたからだと言う。
だから、人でありながら耳と尾という余りある『祝福』を持つ森の人との交合は、彼らへの『赦し』となり、和合し子を授かれば『救われる』のだと言う。
「若の情けを受けた者しか宮には受け入れられません。野盗による残酷な野合の後の子に対し、若様は交合出来ますか?若様は森の女を殺した赤頭の、野盗どもに汚された、子供の主になられますか?」
考えるまでもなく
「そのつもりだ。連れていくのに必要ならば、既に、せ、接吻は済ませた」
としどろもどろになりながら、シンラは答えた。
「……呼吸確保程度ですよね、それ。ちゃんとなさいましたか?天帝に申し開きが出来ますか?」
フルトリが弓を持ち洞から出ると、包んでいた粗い皮マントを開いて、傷だらけの子どもの肢体を見つめる。
情けを注がねば、この子供を森の宮に連れては行けないのは分かっている。シンラは唇を噛んでから、子供の腰を掴んで口を塞ぐ。
野合で精液を飲み込んだあと吐き出した口内はぬるつき、シンラを受け入れた舌はシンラの舌に触れ、無意識に絡みつきシンラは低く呻いた。
成人を越えたシンラは交合を知らないわけではないが、行動に移したことはない。王を簡単に野合に誘う者なく、シンラ自体も興味がなかったのだ。だから初めての深い接吻の強烈な快楽に、きつく舌を絡めそうになる。
「あ……ああー、あーあーーっ!」
息苦しさに子供が起き出し、シンラの腕の中でもがき暴れ始めた。その刺激さえ甘美なのだ。
「落ち着いてくれ、お前を守るために必要なのだ。頼むから、じっとしていてくれ」
そんな言葉を繰り返すと、悲鳴のような叫び声が微かになる。
「あ……あ……あ」
と、息を漏らすだけとなり、シンラはフルトリが見守る中、情を交わす口付けを終わらせて、なるべく怖がらせないように子供を抱き上げた。
「拙い情の交し方ですね。本来は精を体内に出す……」
「先程までの野合で尻の穴が裂けている子供をそのような!」
シンラの腕の中で小さくなりじっとしていた子供は、シンラの声にひく…と震える。
「あっ………あぅっ…」
声に驚き息を詰める仕草が可愛らしく、目が合えばどんなにかいいだろうとシンラは思いながら、子供の背中を揺らしてやった。揺らされて子供の尻の狭間から漏れる血混じりの体液が森に染みを作る。
そんな子供を見てフルトリは天を仰いだ。
「天帝が許せば宮か館に入れるでしょう。若、急ぎましょう。夜が来ます」
腹の血を洗い流し、尻の狭間から白濁が流れていた。何人もと野合した穴は緩み空洞となり、溢れ出す白濁は泉の中に散る。せめても綺麗にして埋めてやりたかったからだ。
「髪が……」
茶色だと思っていたが汚れが落ちると漆黒に変わり、美しいうねりの長い黒髪にシンラはどきりとした。
「……っふっ……」
急に手の中の子供の痩せた胸が上下する。シンラは手の中の子供を抱き締めて、動揺した。先刻まで死体であった無惨な冷たい肉塊は、鼓動と呼吸のある生き物へと変わり、止まりそうな浅い呼吸を繰り返す。
「だめだ」
シンラは子供の唇を開き、抱き抱えながら息を吹き込み、二度、三度と、浅い呼吸に合わせた。
「ふ……っう!げ……げほっ……げぇぇっ」
男たちの出した白濁を胃から繰り返し嘔吐し、子供はシンラの腕の中で眠ってしまう。
シンラは泉から出ると裸の子どもを布で拭いてやり、ジジの薬を内臓が見える腹の刺し傷に塗って、持っていた包帯をした。
それから体を傾けると、男たちの手荒な野合を受け止めた尻の狭間、そして変色しててちぎれかかった小さな性器にも塗ってやる。
真っ赤に腫れ上がった尻襞には血が滲み、まだ男たちの精が溢れ出していた。
「若」
しばらく泉の近くの洞で風に当たっていると、双子の従者が帰ってくる。拐われたという、指を欠けさせられた女は捕まってすぐに死んだらしく、シンラの手の中にいる子供が替わりに野合の相手をさせられていた、と、黙って従う楽なガキだったから野盗たちがもったいないと、口々に話していたらしい。
「今、女の遺体をハトリが村へ運んでいます。それにしても……この子、生きていたんですね」
「ああ」
フルトリがふと、子供のこけた頬を触り、それから指を動かした。
「……若、この子供は目が見えないようです。『欠けたる者』です」
フルトリが子供を触診し終わり、シンラは手の中の子供の顔を改めて見つめる。幼い頃に見た白い腕の人は、この子どもと似ているような気もするのだ。
あの可哀想な人が野合の果てに子供が生まれ、しかし…子供もまた『欠けたる者』だったのかもしれない。あれから二十年は経っているのだ。
「フルトリ、この子を森の宮に連れていきたいのだが」
フルトリと呼ばれた従者は上の方で結わえた長い髪をぶん……と横に振る。
「若」
フルトリがしばらく黙ってから、
「若様は森の王。この世界の『満ちたる者』の長、立派な耳と尾を持っている『最も満ちたる者』です。その子は『欠けたる者』」
森の知恵者のジジの教えでは、身体が欠けた状態であるのは、前の生で『罪』を犯し、この世に生まれてきたからだと言う。
だから、人でありながら耳と尾という余りある『祝福』を持つ森の人との交合は、彼らへの『赦し』となり、和合し子を授かれば『救われる』のだと言う。
「若の情けを受けた者しか宮には受け入れられません。野盗による残酷な野合の後の子に対し、若様は交合出来ますか?若様は森の女を殺した赤頭の、野盗どもに汚された、子供の主になられますか?」
考えるまでもなく
「そのつもりだ。連れていくのに必要ならば、既に、せ、接吻は済ませた」
としどろもどろになりながら、シンラは答えた。
「……呼吸確保程度ですよね、それ。ちゃんとなさいましたか?天帝に申し開きが出来ますか?」
フルトリが弓を持ち洞から出ると、包んでいた粗い皮マントを開いて、傷だらけの子どもの肢体を見つめる。
情けを注がねば、この子供を森の宮に連れては行けないのは分かっている。シンラは唇を噛んでから、子供の腰を掴んで口を塞ぐ。
野合で精液を飲み込んだあと吐き出した口内はぬるつき、シンラを受け入れた舌はシンラの舌に触れ、無意識に絡みつきシンラは低く呻いた。
成人を越えたシンラは交合を知らないわけではないが、行動に移したことはない。王を簡単に野合に誘う者なく、シンラ自体も興味がなかったのだ。だから初めての深い接吻の強烈な快楽に、きつく舌を絡めそうになる。
「あ……ああー、あーあーーっ!」
息苦しさに子供が起き出し、シンラの腕の中でもがき暴れ始めた。その刺激さえ甘美なのだ。
「落ち着いてくれ、お前を守るために必要なのだ。頼むから、じっとしていてくれ」
そんな言葉を繰り返すと、悲鳴のような叫び声が微かになる。
「あ……あ……あ」
と、息を漏らすだけとなり、シンラはフルトリが見守る中、情を交わす口付けを終わらせて、なるべく怖がらせないように子供を抱き上げた。
「拙い情の交し方ですね。本来は精を体内に出す……」
「先程までの野合で尻の穴が裂けている子供をそのような!」
シンラの腕の中で小さくなりじっとしていた子供は、シンラの声にひく…と震える。
「あっ………あぅっ…」
声に驚き息を詰める仕草が可愛らしく、目が合えばどんなにかいいだろうとシンラは思いながら、子供の背中を揺らしてやった。揺らされて子供の尻の狭間から漏れる血混じりの体液が森に染みを作る。
そんな子供を見てフルトリは天を仰いだ。
「天帝が許せば宮か館に入れるでしょう。若、急ぎましょう。夜が来ます」
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