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4 王の役割※
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五色に分けられた国。
かなりの上空から見下ろすと、よくわかる。直樹の国は黒土が広がり、畑に麦が見えた。直樹の長い黒髪に気づいた人々が、農耕を止めてひざまずく。
「よい国を作ったな。野生の果実も多く、土地は豊かだ。国民は飢えなくて済む」
「……はい」
赤竜と呼ばれるドラコンの背中の上、直樹は明に連れられて隣の黄国を目指していた。
渋顔の文官長を説得すること数時間、それなりの国服を着るのにも数時間。付き従うと言い出した文官と武官を、明が力付くで押さえつけること数分後ののち、やっと騎乗したのだ。
「俺は王をしてからかれこれ百年だ」
「百年……ですか」
「王は不死だからな。黒国はここ五十年ほど、自殺者が神王転生を繰り返している。お前のような事故じゃない者ばかりだ」
事故……あれを事故と呼ぶしかないのだ。直樹は小さく頷いた。
「本来、自殺者は消えてなくなりたくて死んだはずなのに、こちらで転生させられ、場所は違えど自分を蔑まれ馬鹿にされて憎んでいた人間たちとの交合を強制されられ、神王として民のために生かされるのだ。だから、心象は最悪。しかも再び死にたいと望み、周囲を巻き込んで王は消滅する」
消滅という言葉が、そら恐ろしい。直樹は生唾を呑んだ。
「神王として生かされていることの心痛から、行方知れずになった王もいる。空位もやはり国が乱れる」
自殺者……みんな、直樹のようにひどい目に合っていたのだろうか。直樹にとっても生前の時間の方が、地獄のようだったのだ。
王と崇められるのは、まだ抵抗があるが、人間扱いされているだけ、ましかもしれないと思う。
「明さん、心象による国作りが半分と話してくれました。あと半分、王の役割は……あの……」
黄色い地平が見えてくる。
見渡す限りの黄のキャンバスに、緑と青が点々とする鮮やかなコントラスト。
「わ…あ…」
黄土ではなく、砂漠だった。
点在するオアシスには、白い石造りの建物があり、目の前に砂漠の世界が広がっている。
明が降下を赤竜に促した。
「黄王は、多分、その半分の役割を果たしている最中だろうよ」
黄宮の作りが白亜のタージマハルのようで、直樹はぽかんと口を開ける。白亜の宮殿を写す直線状の水路の横に降り立ち、衛士が立つ城を眺める。社会の資料集で見たことがあるタージマハルが目の前にあった。
「砂漠だけどインドの宮殿ですか?」
「アルバートは、馬鹿だからな。知識と経験に基づく心象がこれだったんだろう」
白い石造りの床に南国の花がちりばめられていた。そこに、金髪を短く撫で付けた、痩身に白服を着た青年が出迎えて、両膝を付く。
「黄王様ですか?」
「王は何人にも膝を付きません、黒王。黄国文官長のテアンと申します」
黄茶の瞳と金髪を持つ青年テアンが、明と直に恭しく頭を下げる。
「アルバートは、務め中か?務めを見せてもらいたい。黒王は立ったばかりだからなにも知らぬ」
明がフランクなしゃべり方をやめ、威厳のある王としての姿を見せた。
直樹は目立たなく生き、それでも虐められていた、平凡ないち高校生に過ぎない。だからせめて敬語で話すことにした。
「黄王様のお努めを見せてください」
「……構いませんが、お目汚しになりませんように」
テアンが白亜の王宮に案内をしてくれる。
王宮にはベリーダンサーのような露出の多い衣装の女性ばかりで、ガラベーヤのような長衣のテアン以外の男性は老年の者が多かった。
半地下の熱気のこもる大理石の大きな浴場に籐で出来た寝台の中心で、うごめく金の長い金髪の巻き毛が揺れている。
「あっ……あんっ……もっと深くっ」
左右の乳房を隠すだけの衣装の女性の指が、真っ白な肌に上気した少年の乳首をつまみ上げなぶった。
柔らかそうな金色の下生えに彩られた屹立を別の女性が細い指が扱き、尻の最奥には寝台に半身乗り上がったトウモロコシ色の髪の若い男が穿つ。
「もっと、もっと……あっ、イく!出るっ……ああああんっ」
華奢な足が褐色の男の腰に絡み付き、腰が上がると結合部分が見えてしまい、直樹は一歩後づさりをしてしまった。
男が腰を屈めて絞り出す仕草をしたあと、引き抜く性器の抜けた襞は伸びきり柘榴色の空洞が見える。
「残念ながら、紋様は表れません」
黄王を抱いた裸体の男は黄王をうっとりと眺め、黄王は妖艶な金色の瞳を細める。
「ご苦労だった。褒美に白珠を得るが良い」
直樹よりもやや高めの艶かしい声が、寝台から聞こえた。
「ありがとうございます!」
男が出ていくと女性がノズルのついた注射器を持ち、柔らかくほどけた襞に差し込む。
「んっ…早く入れろ。次が…」
中に入れた液体を左右の女たちが下腹を押して、先程の男が出した精液ごと、無理矢理排出させている。
「次が参りました」
体躯のある全裸の男が両膝を着き、黄王に挨拶をすると、寝台に上がり腰を掴み、油を塗り込んで滑りをよくした剛直を打ち込んだ。
濡れた粘液質の音が蒸れるような熱気の浴場に響き、黄王は腰高に持ち上げられ激しく揺らされている。
「ひいんっ、おっ、おおきっ…!気持ちいい、気持ちいいっ!……イく、すぐ、イっちゃっう!ああああんっ!」
絶叫のような黄色い喘ぎのなか、襞は伸びきり泡立つ精液がだらだらと尻から垂れ続け、まるで娼婦のようだと、直樹は小刻みに震えながら思う。
真っ白な王体が男の下でひいひいと悶え、女たちが王を高ぶらせるために、性感を愛撫し続けていた。
この男との交合でも紋様は表れず『相手』とは違うようで再び洗浄され、違う男が入ってくる。
「黒王様。大なり小なり、王のやることはこれです。神木に神卵を得るために、自国の男と交わり天帝に与えられた『神番い』を探し交合し続けます。そして、万能薬となる妙薬白珠を自国者の手淫により放つのです」
「そんな……」
これを自分もしなくてはならないのか……黒国の男たちの焦がれる瞳はこれを意味していたのか。
浴場の暑さと自分の置かれた立場に、直樹は目眩がして、気を失った。
かなりの上空から見下ろすと、よくわかる。直樹の国は黒土が広がり、畑に麦が見えた。直樹の長い黒髪に気づいた人々が、農耕を止めてひざまずく。
「よい国を作ったな。野生の果実も多く、土地は豊かだ。国民は飢えなくて済む」
「……はい」
赤竜と呼ばれるドラコンの背中の上、直樹は明に連れられて隣の黄国を目指していた。
渋顔の文官長を説得すること数時間、それなりの国服を着るのにも数時間。付き従うと言い出した文官と武官を、明が力付くで押さえつけること数分後ののち、やっと騎乗したのだ。
「俺は王をしてからかれこれ百年だ」
「百年……ですか」
「王は不死だからな。黒国はここ五十年ほど、自殺者が神王転生を繰り返している。お前のような事故じゃない者ばかりだ」
事故……あれを事故と呼ぶしかないのだ。直樹は小さく頷いた。
「本来、自殺者は消えてなくなりたくて死んだはずなのに、こちらで転生させられ、場所は違えど自分を蔑まれ馬鹿にされて憎んでいた人間たちとの交合を強制されられ、神王として民のために生かされるのだ。だから、心象は最悪。しかも再び死にたいと望み、周囲を巻き込んで王は消滅する」
消滅という言葉が、そら恐ろしい。直樹は生唾を呑んだ。
「神王として生かされていることの心痛から、行方知れずになった王もいる。空位もやはり国が乱れる」
自殺者……みんな、直樹のようにひどい目に合っていたのだろうか。直樹にとっても生前の時間の方が、地獄のようだったのだ。
王と崇められるのは、まだ抵抗があるが、人間扱いされているだけ、ましかもしれないと思う。
「明さん、心象による国作りが半分と話してくれました。あと半分、王の役割は……あの……」
黄色い地平が見えてくる。
見渡す限りの黄のキャンバスに、緑と青が点々とする鮮やかなコントラスト。
「わ…あ…」
黄土ではなく、砂漠だった。
点在するオアシスには、白い石造りの建物があり、目の前に砂漠の世界が広がっている。
明が降下を赤竜に促した。
「黄王は、多分、その半分の役割を果たしている最中だろうよ」
黄宮の作りが白亜のタージマハルのようで、直樹はぽかんと口を開ける。白亜の宮殿を写す直線状の水路の横に降り立ち、衛士が立つ城を眺める。社会の資料集で見たことがあるタージマハルが目の前にあった。
「砂漠だけどインドの宮殿ですか?」
「アルバートは、馬鹿だからな。知識と経験に基づく心象がこれだったんだろう」
白い石造りの床に南国の花がちりばめられていた。そこに、金髪を短く撫で付けた、痩身に白服を着た青年が出迎えて、両膝を付く。
「黄王様ですか?」
「王は何人にも膝を付きません、黒王。黄国文官長のテアンと申します」
黄茶の瞳と金髪を持つ青年テアンが、明と直に恭しく頭を下げる。
「アルバートは、務め中か?務めを見せてもらいたい。黒王は立ったばかりだからなにも知らぬ」
明がフランクなしゃべり方をやめ、威厳のある王としての姿を見せた。
直樹は目立たなく生き、それでも虐められていた、平凡ないち高校生に過ぎない。だからせめて敬語で話すことにした。
「黄王様のお努めを見せてください」
「……構いませんが、お目汚しになりませんように」
テアンが白亜の王宮に案内をしてくれる。
王宮にはベリーダンサーのような露出の多い衣装の女性ばかりで、ガラベーヤのような長衣のテアン以外の男性は老年の者が多かった。
半地下の熱気のこもる大理石の大きな浴場に籐で出来た寝台の中心で、うごめく金の長い金髪の巻き毛が揺れている。
「あっ……あんっ……もっと深くっ」
左右の乳房を隠すだけの衣装の女性の指が、真っ白な肌に上気した少年の乳首をつまみ上げなぶった。
柔らかそうな金色の下生えに彩られた屹立を別の女性が細い指が扱き、尻の最奥には寝台に半身乗り上がったトウモロコシ色の髪の若い男が穿つ。
「もっと、もっと……あっ、イく!出るっ……ああああんっ」
華奢な足が褐色の男の腰に絡み付き、腰が上がると結合部分が見えてしまい、直樹は一歩後づさりをしてしまった。
男が腰を屈めて絞り出す仕草をしたあと、引き抜く性器の抜けた襞は伸びきり柘榴色の空洞が見える。
「残念ながら、紋様は表れません」
黄王を抱いた裸体の男は黄王をうっとりと眺め、黄王は妖艶な金色の瞳を細める。
「ご苦労だった。褒美に白珠を得るが良い」
直樹よりもやや高めの艶かしい声が、寝台から聞こえた。
「ありがとうございます!」
男が出ていくと女性がノズルのついた注射器を持ち、柔らかくほどけた襞に差し込む。
「んっ…早く入れろ。次が…」
中に入れた液体を左右の女たちが下腹を押して、先程の男が出した精液ごと、無理矢理排出させている。
「次が参りました」
体躯のある全裸の男が両膝を着き、黄王に挨拶をすると、寝台に上がり腰を掴み、油を塗り込んで滑りをよくした剛直を打ち込んだ。
濡れた粘液質の音が蒸れるような熱気の浴場に響き、黄王は腰高に持ち上げられ激しく揺らされている。
「ひいんっ、おっ、おおきっ…!気持ちいい、気持ちいいっ!……イく、すぐ、イっちゃっう!ああああんっ!」
絶叫のような黄色い喘ぎのなか、襞は伸びきり泡立つ精液がだらだらと尻から垂れ続け、まるで娼婦のようだと、直樹は小刻みに震えながら思う。
真っ白な王体が男の下でひいひいと悶え、女たちが王を高ぶらせるために、性感を愛撫し続けていた。
この男との交合でも紋様は表れず『相手』とは違うようで再び洗浄され、違う男が入ってくる。
「黒王様。大なり小なり、王のやることはこれです。神木に神卵を得るために、自国の男と交わり天帝に与えられた『神番い』を探し交合し続けます。そして、万能薬となる妙薬白珠を自国者の手淫により放つのです」
「そんな……」
これを自分もしなくてはならないのか……黒国の男たちの焦がれる瞳はこれを意味していたのか。
浴場の暑さと自分の置かれた立場に、直樹は目眩がして、気を失った。
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