薔薇の寵妃〜女装令嬢は国王陛下代理に溺愛される〜完結

第一章 カーヴァネス編

外伝 親愛なる……（デューク視点）

　私は運命論者ではない。

　しかしこの呪われた髪の色はどうだ。

　女王である母からは捨てられ、地下牢で育ち、存在すら無である私は、ただ死を待つために生きていた。

　不運だと、不遇だと自身に呪いをかけ続けた幼少期、あなたと出会い認められた。

　初めて生きていてもよいと言われた気がしたのだ。

　そしてシロツメクサの中で踊ったあなたは、美しく聡明に育ち、私はあなたに恋をし、あなたは私に、生まれて初めて恋焦がれる感情を教えてくれた。

　私はあなたに出会うまでは、無気力で生きているだけの人間だった。

　私はあなたへの思慕とあなたからの拒絶に板挟みになりながら、あなたに愛されたいと胸を焼くような焦がれを抱えていた。

　あなたの愛が必要だ。

　あなたに愛されない限り、私は私を愛せない。

　あなたは笑うだろう。

　わたくしにそんな価値はございません、と。

　いいや、違う。

　あなたを知れば知るほど、あなたへの愛しさがつのり、あなたなしで生きることすら出来ないのだ。

　理屈や計算ではない、純粋な愛の形を私はあなたに求めた。

　そしてあなたは私に与えてくれた。

　同情と言う薄絹に包んだあなたの心は、まだ、愛ではないのだろうが。

　私を求めて、喘ぎ、達して、身体を弛緩し、委ねる肢体は、私を求めてくれている。

　ああ、親愛なるあなた……あなただけが、私を生かすのだ。