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34 情報量が多すぎて混乱しています
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メーテルを寝台に寝かせると、開け放したまま居間でターク先生がお茶を出してくれた。薄荷茶に気持ち悪さが軽減する。
服はメーテルが倒れてしまったため、僕もジェスも長いバスローブのままだった。そもそも、魔の森の屋敷には子供の服はない。
「情報過多でしたね。少し落ち着きましょうか」
ターク先生とイベールさん、そしてジェスが並んで座っている。僕はジェスの横に座っていて、セシル兄様とハンロックは少し離れたソファに座っていた。
「ハーピー、結界を」
セシル兄様がハーピーに結界を作らせる。ハーピーは夜寝る子なのに、すごく頑張っている。
『再び結界を張ります』
それを見てターク先生は頷いた。僕は気持ち悪くて、薄荷茶をおかわりしていた。
「では、ジェスがオーロで、サリオンがリオンなのは、理解できましたか?」
僕は頷いた。オーロが番いってことは、ジェスと番いってことだ。嬉しくて嬉しくてもうどうかなりそうだった。でもジェスときたら、
「まさか、まさか、成人前かよ……」
と繰り返している。なんのことなんだろう。
「ジェス、どうしたの?」
「あ、いや、あの……」
「はーい、そこの二人、お喋りはやめて下さい。さて、獣化した二人が番いなのは理解できますが、ヒトの姿である二人はどうなのです?」
ターク先生の言葉にイベールさんが、
「無粋だなあ、おかーさんは。だからおとーさんとちちうえが困るんだよ」
と言う。ターク先生はムッとして、
「僕はガリウスもセフェムも大好きですよ」
と言い返す。
「そーじゃなくてねー、おかーさん」
イベールさんは急に気配を変えた。そしてゆったりとした口調から一変、
「君たちは番いだよね。番いは本能的にマナもオドもひっくるめて求め合う。気持ちを確かめ合う前に交合することだってある。抗えないんだ、僕の両親のように」
ときつい口調になる。僕は……
「俺は番いだからってだけでサリオンと一緒になりたいわけじゃない。俺はサリオンが好きだ!」
ジェスに言われて胸が疼く。どうしよう、嬉しい。すごく、嬉しい。胸がどくどくしている。
「どーだか、ジェス。君はセリアン国王になりたくないだけじゃないのー?そーやって、レームから国からずっと逃げていたでしょー」
僕はターク先生とジェスを見た。
「ジェスが、国王?」
ターク先生は頭を掻きながら、
「再び情報過多ですが、ジェスはジェス・セリアン。僕の孫にしてセリアン王国の現王レームの第一王子です」
そう話す。驚きだ。だってセシル兄様と同じ立場だから。セシル兄様もハンロックも知っていたらしく、驚いているのは僕だけだった。
「ジェス、ジェス、お父様と喧嘩してるって、国王様と喧嘩してたの?」
とジェスに聞くと、
「ああ。だって成人前から寝所に伴侶候補を次々と送り込んで来るんだぜ?安眠妨害もいいとこだろ?それにさ、金獅子の弟妹(やつら)は優秀でよぉ。小獣人の俺なんかお呼びじゃねえし。だから婆様の仕事を手伝う名目でこっちにいたんだ。そうしたらすげえ婆様色のかっこいい獅子獣人を見つけるし、番いだし、マナも制御出来る様になるし。サリオンとはマナ供給も出来るんだぜ」
とすごく可愛い顔で僕の顔を見上げて来る。
「ふーん。でぇ、番ってしっかり匂いつけてー、お腹の中に宿み木ってどういうことかなー?」
お腹の中に宿り木?
僕のお腹の中に宿り木は生えているとでもいうのだろうか。
「ちょっと待ってください……うっ……」
気持ち悪くて薄荷茶を吐きそうになる。ジェスが背中をさすってくれて少し楽になる。
「自分とは違うマナがお腹にあるからー、マナ酔いしているんだよー」
イベールさんが僕のお腹の下の方を指差している。ターク先生がすごく神妙な顔をして、ジェスを見た。
「ジェス、あなたはサリオンと番ったのですか?」
「急に発情期が来て、耐えられなくて、獣化したサリオンと離宮の庭で……」
ターク先生は天を仰ぎ、それから僕を見た。
「嫌ではなかったのですね?」
そう言われて僕は何度も頷く。ターク先生は深い溜息をついた。
「サリオン、あなたはジェスと交合したのですよ、セシルより先に。あなたはジェスと身の深い部分で繋がったのです。獣化していてもあなたの身体は一つです。発情期の獣人は必ず実を成します。しかも番いならなおさら、相手の発情期に合わせてあなたも発情したのですよ」
交合……僕は獣化したジェスと交合をしてしまっていた、それも何度も!
僕は真っ赤になってジェスを見下ろした。セシル兄様がソファからずり落ち、ハンロックが驚いたように口を開いている。
セシル兄様、ごめんなさい。順番抜かしをしてしまいました。でも、どうして僕のお腹の中に宿り木?
服はメーテルが倒れてしまったため、僕もジェスも長いバスローブのままだった。そもそも、魔の森の屋敷には子供の服はない。
「情報過多でしたね。少し落ち着きましょうか」
ターク先生とイベールさん、そしてジェスが並んで座っている。僕はジェスの横に座っていて、セシル兄様とハンロックは少し離れたソファに座っていた。
「ハーピー、結界を」
セシル兄様がハーピーに結界を作らせる。ハーピーは夜寝る子なのに、すごく頑張っている。
『再び結界を張ります』
それを見てターク先生は頷いた。僕は気持ち悪くて、薄荷茶をおかわりしていた。
「では、ジェスがオーロで、サリオンがリオンなのは、理解できましたか?」
僕は頷いた。オーロが番いってことは、ジェスと番いってことだ。嬉しくて嬉しくてもうどうかなりそうだった。でもジェスときたら、
「まさか、まさか、成人前かよ……」
と繰り返している。なんのことなんだろう。
「ジェス、どうしたの?」
「あ、いや、あの……」
「はーい、そこの二人、お喋りはやめて下さい。さて、獣化した二人が番いなのは理解できますが、ヒトの姿である二人はどうなのです?」
ターク先生の言葉にイベールさんが、
「無粋だなあ、おかーさんは。だからおとーさんとちちうえが困るんだよ」
と言う。ターク先生はムッとして、
「僕はガリウスもセフェムも大好きですよ」
と言い返す。
「そーじゃなくてねー、おかーさん」
イベールさんは急に気配を変えた。そしてゆったりとした口調から一変、
「君たちは番いだよね。番いは本能的にマナもオドもひっくるめて求め合う。気持ちを確かめ合う前に交合することだってある。抗えないんだ、僕の両親のように」
ときつい口調になる。僕は……
「俺は番いだからってだけでサリオンと一緒になりたいわけじゃない。俺はサリオンが好きだ!」
ジェスに言われて胸が疼く。どうしよう、嬉しい。すごく、嬉しい。胸がどくどくしている。
「どーだか、ジェス。君はセリアン国王になりたくないだけじゃないのー?そーやって、レームから国からずっと逃げていたでしょー」
僕はターク先生とジェスを見た。
「ジェスが、国王?」
ターク先生は頭を掻きながら、
「再び情報過多ですが、ジェスはジェス・セリアン。僕の孫にしてセリアン王国の現王レームの第一王子です」
そう話す。驚きだ。だってセシル兄様と同じ立場だから。セシル兄様もハンロックも知っていたらしく、驚いているのは僕だけだった。
「ジェス、ジェス、お父様と喧嘩してるって、国王様と喧嘩してたの?」
とジェスに聞くと、
「ああ。だって成人前から寝所に伴侶候補を次々と送り込んで来るんだぜ?安眠妨害もいいとこだろ?それにさ、金獅子の弟妹(やつら)は優秀でよぉ。小獣人の俺なんかお呼びじゃねえし。だから婆様の仕事を手伝う名目でこっちにいたんだ。そうしたらすげえ婆様色のかっこいい獅子獣人を見つけるし、番いだし、マナも制御出来る様になるし。サリオンとはマナ供給も出来るんだぜ」
とすごく可愛い顔で僕の顔を見上げて来る。
「ふーん。でぇ、番ってしっかり匂いつけてー、お腹の中に宿み木ってどういうことかなー?」
お腹の中に宿り木?
僕のお腹の中に宿り木は生えているとでもいうのだろうか。
「ちょっと待ってください……うっ……」
気持ち悪くて薄荷茶を吐きそうになる。ジェスが背中をさすってくれて少し楽になる。
「自分とは違うマナがお腹にあるからー、マナ酔いしているんだよー」
イベールさんが僕のお腹の下の方を指差している。ターク先生がすごく神妙な顔をして、ジェスを見た。
「ジェス、あなたはサリオンと番ったのですか?」
「急に発情期が来て、耐えられなくて、獣化したサリオンと離宮の庭で……」
ターク先生は天を仰ぎ、それから僕を見た。
「嫌ではなかったのですね?」
そう言われて僕は何度も頷く。ターク先生は深い溜息をついた。
「サリオン、あなたはジェスと交合したのですよ、セシルより先に。あなたはジェスと身の深い部分で繋がったのです。獣化していてもあなたの身体は一つです。発情期の獣人は必ず実を成します。しかも番いならなおさら、相手の発情期に合わせてあなたも発情したのですよ」
交合……僕は獣化したジェスと交合をしてしまっていた、それも何度も!
僕は真っ赤になってジェスを見下ろした。セシル兄様がソファからずり落ち、ハンロックが驚いたように口を開いている。
セシル兄様、ごめんなさい。順番抜かしをしてしまいました。でも、どうして僕のお腹の中に宿り木?
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