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33 銀色の獣人と変幻
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ターク先生はオーロの頭を撫でながら、
「変幻を解きなさい」
と告げた。変幻?オーロは魔獣でーー
僕の目の前でオーロの姿はまるで闇に溶けるように消えて行き、小さな可愛い金の子供の姿が現れた。
『ジェス……オーロはジェスだったの?』
ジェスが全裸のまま僕の前に立った。全裸のジェスは初めてで、ジェスの下半身に金の陰毛があるのに驚いた。
『えええっ!ジェス、下の毛がある!』
「驚くのそこかよ!小さい小さいってお前言うけど、俺はとっくに成人済みだっ!」
ジェスが地団駄を踏んでいる。
『オーロの時だって、すぐに戯れて来て……』
「顎髭に噛みつくのは愛撫だ。お前だって噛み付きたくなっただろうが。獣人が獣化したときの愛情表現だってーの」
愛撫……あいぶ……最初からそうだったんだ……。
『それって性的な?』
恐る恐る聞くと、
「うん、って、お前、無意識か!うわ、俺、無意識な子供に……」
ジェスが真っ赤になってバタバタしている。真ん中で揺れる、その、ジェスのって、身体の割に大きくないかな?僕のより大きいんだけれど。ハンロックのもこんなかな?
「ジェス、股間をしまえ。サリオンとセシルが見ている」
ハンロックがセシル兄様がぽかんとしているのを見て、ジェスにコートを投げて寄越す。
「んだよ。巨チン長チンは爺様たち譲りだっての」
「ハロより……おっきい……の、初めて見た」
「それはなによりだ。セシル、安心しただろう。世の中には意外性がある」
とハンロックが笑う。話が逸れてるけれど、セシル兄様が落ち着いたので安心した。メーテルは床を掃除したり、ジェスの服を見繕ったりと忙しい。
「サリオンがオーロと名付けてくれたのですね。金の獅子型魔獣はジェスが獣化したときの姿です。ジェスは魔獣ではなく、獣人族です。あなたはヒト族ですが落実(らくじつ)のため、ガルド神より獣化するオドとマナを得ているのですよ」
ターク先生が話すと、
「うん、確かにヒト族だよねー。でも獣人でもあるよー。ねえ、変幻は自在にはならない?」
寝室からゆったりとした喋り方の子供が出てきた。
「鳥の魔獣がやっと結界を解除してくれてさー、僕ね、入るに入れなかったの」
銀色の巻き毛に赤い瞳、大きな立ち耳が付いている。綺麗な顔……。
『ターク先生、そっくり!』
「はい、僕の長子イベールです」
「我が師匠」
とハンロックが礼を取り、
「あ、伯父上」
とジェスが手を挙げたところに、頭の頂点に手刀を叩き込む。
「うぎゃっ!」
「君のおとーさん、なんとかしてくれるー?レームがね、珍しく泣き事言って来たんだよー。もうさあ、レームを泣かすのやめてくれるー?お酒も泣きも長いから、ベクルとのえっちの時間が無くなるよー」
「伯父上、まだ、実をつけるのかよ」
ジェスが痛そうに頭をさすりながら、言い返す。
「だって毎年発情期来るんだもーん……と、とと、この子だねー。変幻をコントロール出来ていないって」
イベール……さんが、僕のところに来た。まつ毛長い。ターク先生より色気があるって言ったら失礼なのかな、すごく、色香が匂い立つ感じだ。
「んー、月を見て変幻するんだよねー」
『はい、でも、今日は真上に上がる前に変幻しました』
「君の中の月のイメージが定着しているんだよー。ジェスも変幻が苦手でねぇ。ジェスは水に映る薄荷をイメージするんだっけー。解除はどうしてるー?」
「水に薄荷が溶けるイメージを持ってる。香りを感じて解けるんた」
「そうなんだ。じゃあ、えーと」
『リオ……サリオンです』
僕はもう隠すことなく、イベールさんに告げた。
「じゃあ、君の中のヒトになるイメージを考えてー、それから眉の真ん中にマナを集中しようねー」
僕の中のイメージ……月明かりが消えて、ああ、だめだな、そうじゃない。朝焼け、太陽、金色、ジェスの瞳。僕はジェスを見た。不意にざあっと毛皮が消える。
「え、」
眉にマナを集めるまでもなく、変幻が解かれた。僕はぽかんと立ち尽くしてしまう。
「ジェスより早い。これで変幻のコツが掴めるよ。君は魔獣じゃない。僕らと同じ獣人のマナとオドを持つヒトだよー」
ターク先生は頷きながら
「それを祝福と呼ぶか、呪いと呼ぶかはサリオン次第です」
と僕に告げた。
イベールさんは僕と同じくらいの背丈でふふんと笑って、僕のお腹を触る。
「あれ、サリオン、まだ、子供だねー。毛かないつるつる……」
「ひゃあっ!」
僕の声にメーテルが無言でバスローブをかけてくれ、加速陣でも用いたかのような高速さで紐を締める。
「ん?あれ?」
イベールさんが僕のお腹を触った手を開いたり閉じたりした。
「違うマナ……おかーさーん、ヒト族はお腹に宿り実があるの?」
ターク先生が
「ないですよ。ガルド神は宿り木に実を成して平等をーー」
と言うと、
「サリオンのお腹に、サリオンと違うマナがあるよー」
そうイベールさんが指を指す。
メーテルが真っ青な顔をしている。僕とお腹を交互に見て震える声で、
「まさか……はらみ……」
と呟き、ふらっとよろめいて倒れて床に頭を打ちそうになるのをハンロックが抱き上げた。
「変幻を解きなさい」
と告げた。変幻?オーロは魔獣でーー
僕の目の前でオーロの姿はまるで闇に溶けるように消えて行き、小さな可愛い金の子供の姿が現れた。
『ジェス……オーロはジェスだったの?』
ジェスが全裸のまま僕の前に立った。全裸のジェスは初めてで、ジェスの下半身に金の陰毛があるのに驚いた。
『えええっ!ジェス、下の毛がある!』
「驚くのそこかよ!小さい小さいってお前言うけど、俺はとっくに成人済みだっ!」
ジェスが地団駄を踏んでいる。
『オーロの時だって、すぐに戯れて来て……』
「顎髭に噛みつくのは愛撫だ。お前だって噛み付きたくなっただろうが。獣人が獣化したときの愛情表現だってーの」
愛撫……あいぶ……最初からそうだったんだ……。
『それって性的な?』
恐る恐る聞くと、
「うん、って、お前、無意識か!うわ、俺、無意識な子供に……」
ジェスが真っ赤になってバタバタしている。真ん中で揺れる、その、ジェスのって、身体の割に大きくないかな?僕のより大きいんだけれど。ハンロックのもこんなかな?
「ジェス、股間をしまえ。サリオンとセシルが見ている」
ハンロックがセシル兄様がぽかんとしているのを見て、ジェスにコートを投げて寄越す。
「んだよ。巨チン長チンは爺様たち譲りだっての」
「ハロより……おっきい……の、初めて見た」
「それはなによりだ。セシル、安心しただろう。世の中には意外性がある」
とハンロックが笑う。話が逸れてるけれど、セシル兄様が落ち着いたので安心した。メーテルは床を掃除したり、ジェスの服を見繕ったりと忙しい。
「サリオンがオーロと名付けてくれたのですね。金の獅子型魔獣はジェスが獣化したときの姿です。ジェスは魔獣ではなく、獣人族です。あなたはヒト族ですが落実(らくじつ)のため、ガルド神より獣化するオドとマナを得ているのですよ」
ターク先生が話すと、
「うん、確かにヒト族だよねー。でも獣人でもあるよー。ねえ、変幻は自在にはならない?」
寝室からゆったりとした喋り方の子供が出てきた。
「鳥の魔獣がやっと結界を解除してくれてさー、僕ね、入るに入れなかったの」
銀色の巻き毛に赤い瞳、大きな立ち耳が付いている。綺麗な顔……。
『ターク先生、そっくり!』
「はい、僕の長子イベールです」
「我が師匠」
とハンロックが礼を取り、
「あ、伯父上」
とジェスが手を挙げたところに、頭の頂点に手刀を叩き込む。
「うぎゃっ!」
「君のおとーさん、なんとかしてくれるー?レームがね、珍しく泣き事言って来たんだよー。もうさあ、レームを泣かすのやめてくれるー?お酒も泣きも長いから、ベクルとのえっちの時間が無くなるよー」
「伯父上、まだ、実をつけるのかよ」
ジェスが痛そうに頭をさすりながら、言い返す。
「だって毎年発情期来るんだもーん……と、とと、この子だねー。変幻をコントロール出来ていないって」
イベール……さんが、僕のところに来た。まつ毛長い。ターク先生より色気があるって言ったら失礼なのかな、すごく、色香が匂い立つ感じだ。
「んー、月を見て変幻するんだよねー」
『はい、でも、今日は真上に上がる前に変幻しました』
「君の中の月のイメージが定着しているんだよー。ジェスも変幻が苦手でねぇ。ジェスは水に映る薄荷をイメージするんだっけー。解除はどうしてるー?」
「水に薄荷が溶けるイメージを持ってる。香りを感じて解けるんた」
「そうなんだ。じゃあ、えーと」
『リオ……サリオンです』
僕はもう隠すことなく、イベールさんに告げた。
「じゃあ、君の中のヒトになるイメージを考えてー、それから眉の真ん中にマナを集中しようねー」
僕の中のイメージ……月明かりが消えて、ああ、だめだな、そうじゃない。朝焼け、太陽、金色、ジェスの瞳。僕はジェスを見た。不意にざあっと毛皮が消える。
「え、」
眉にマナを集めるまでもなく、変幻が解かれた。僕はぽかんと立ち尽くしてしまう。
「ジェスより早い。これで変幻のコツが掴めるよ。君は魔獣じゃない。僕らと同じ獣人のマナとオドを持つヒトだよー」
ターク先生は頷きながら
「それを祝福と呼ぶか、呪いと呼ぶかはサリオン次第です」
と僕に告げた。
イベールさんは僕と同じくらいの背丈でふふんと笑って、僕のお腹を触る。
「あれ、サリオン、まだ、子供だねー。毛かないつるつる……」
「ひゃあっ!」
僕の声にメーテルが無言でバスローブをかけてくれ、加速陣でも用いたかのような高速さで紐を締める。
「ん?あれ?」
イベールさんが僕のお腹を触った手を開いたり閉じたりした。
「違うマナ……おかーさーん、ヒト族はお腹に宿り実があるの?」
ターク先生が
「ないですよ。ガルド神は宿り木に実を成して平等をーー」
と言うと、
「サリオンのお腹に、サリオンと違うマナがあるよー」
そうイベールさんが指を指す。
メーテルが真っ青な顔をしている。僕とお腹を交互に見て震える声で、
「まさか……はらみ……」
と呟き、ふらっとよろめいて倒れて床に頭を打ちそうになるのをハンロックが抱き上げた。
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