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13 魔法学舎の学友は年齢もばらばらで、身分もばらばら
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教室と呼ばれた学舎の一室には個々に机があり、ターク先生は前の高い机に踏み台を出して立っていた。教壇というのだそうだ。
「サリオンはあたしの右横ー。あたし、委員長だからなんでも聞いてー」
左横はスターといわれていた弟が座っている。なるほど双子だけによく似ていた。
「助かるよ」
「硬いなー、サリオン、あたしたちはまだ子供なんだよー。もっと砕けて打ち解けてさあ、『タメ口』に!」
とはいえ、ミーメの要求は難しい。平民の言葉を真似るということだろう。努力はしようと思う。すると僕の右横のドナムンドが、
「無理をしなくていいよ、君も貴族の子だろう?」
と笑いかけてきた。後半は声を潜めている。
「号令をお願いします」
ターク先生の言葉を合図にミーメが、
「きりーつ」
と声を出した。すると皆が一斉に立ち上がるから、僕も真似をする。
「れーい」
ターク先生に向かっておじきをした。
「ちゃくせきー」
ガタガタと木の椅子を鳴らして座る。座面にクッションもない椅子に長時間座っていられるだろうかと、心配になってしまう。
「では机の中のお道具箱から教科書とノートと鉛筆と練り消しゴムを出してください」
お、お道具箱?あ、机の中に。ドナムンドがお道具箱を開けて、植物紙の薄い書物と白紙の綴りを出して見せてくれる。ペンではなく先が黒い木の棒が鉛筆で、四角い塊が練り消しゴムというものらしかった。
ターク先生は全員が準備するまで待ってから話始める。
「今日は魔法理論のおさらいと、魔力供給について学びましょう。まず歴史について覚えている人」
ターク先生の言葉にミーメが手を挙げた。なぜ手を挙げるのだろうと考えていると、
「挙手するとターク先生が当ててくれるんだよ。逆にいえば挙手しないと当てられない」
とドナムンドが教えてくれる。挙手には発言権があるのだと理解していると、
「ミーメ、どうぞ」
ターク先生がミーメを指名し、ミーメは椅子を後ろに引いて立ち上がった。
「平民にもマナが分け与えられたのは、二十年前のガルド神の奇跡の日でーす。太陽が輝き全ての宿り木にガルド神のマナが降り注ぎ、平民の子供たちも貴族のように高い魔力を持つ者が現れましたー。貴族と違い魔法家庭教師を持たない平民は魔力制御が出来ず、暴走自滅する子供が増えたため、王様が王領に無料で学べる魔法学舎を作りましたー」
言い放ち鼻息荒く椅子に座ったミーメに、スターとザックが拍手をするから、僕も慌てて拍手をした。
「魔法理論についてお願いします」
ターク先生がミーメ以外に促して来て、誰も手を挙げないので僕はおずおず手を挙げる。
「サリオン、お願いします」
ターク先生に当てられた僕は席を立ち、教室の一番後ろに座っているクロルをちらりと見た。クロルは頷いてくれ、僕はターク先生に向き直る。
「魔力はマナ、気力はオドであり、マナはヒト族の心臓の裏にある第二の心臓にためられ、魔法陣を展開するときに使用されます。また家庭魔法具の使用には体内に循環するマナによって使うことができます。が、気をつけなければならないのはマナが尽きればオドを変換してマナ不足を補いますから、気づかぬうちにマナとオドを使い果たしかねません。魔法陣の展開ではーー」
と続けようとしたところターク先生が右手で制し、
「良く学んでいますね。学びはどこから?」
と尋ねてくる。そこで僕は
「クロルが持って来てくれる書物で」
と答えたところ皆が騒ついた。何か失態でもと不安になり立ち尽くしていると、
「字が読めるのー?書けるのー?」
ミーメが掴みかかる勢いで椅子から立ち上がり詰めよって来た。
「読み書きはできる」
するとミーメの弟のスターが近寄って来て、
「マナ文字は?マナ文字も出来るの?」
と聞かれたので、
「で、出来る」
と後退りながら、答えてドナムンドの席にぶつかってしまう。
「あ、すまない」
ドナムンドの肘に背中が当たってしまい、ドナムンドが何故か頬を赤くしながら
「椅子に座った方がいいよ」
と僕をそっと押し返す。
「字の読み書きも出来て、マナ文字も出来るなら、魔法学舎に来る必要ないじゃーん」
椅子に座るとミーメが不機嫌そうに僕に指差した。スターもザックも頷いている。一番窓側のジェスだけは窓の外を向いたまま無関心で、ドナムンドだけは、
「ミーメ、そんな言い方は」
とやんわり擁護してくれる。
「確かにサリオンの知識量は君たちのそれを抜きん出ています。ですが知識で補い無いこともあります。ザックなんだと思いますか?」
ターク先生は踏み台を降りて、ザックの前に来た。雀斑のある鼻の先を掻きながらザックが
「経験だろ?ターク先生がよく言うやつ」
と告げる。そしてチラッと僕を見てにやにやと笑う。
「そう、サリオンは経験が足りません。そして君たちがサリオンより圧倒的に優っていることがあります」
それを聞いて、ジェスを除く皆が一斉にターク先生に視線を集めた。
「午後の学びでそれがわかります」
ターク先生が大きな瞳を弓形にする。
「さあ、続きは書き取りをしますよ。サリオンは僕の助手となり、文字を教えてあげてくださいね」
ミーメとスターを任されてしまった。
ーーー
ドナムンドは明らかにサリオンを意識している様子。
なによりもタークさんがとても楽しそうです。タークさんは『巨人の1/3の花嫁』の主人公です。スピンオフではないですが、20年後のお話になります。
「サリオンはあたしの右横ー。あたし、委員長だからなんでも聞いてー」
左横はスターといわれていた弟が座っている。なるほど双子だけによく似ていた。
「助かるよ」
「硬いなー、サリオン、あたしたちはまだ子供なんだよー。もっと砕けて打ち解けてさあ、『タメ口』に!」
とはいえ、ミーメの要求は難しい。平民の言葉を真似るということだろう。努力はしようと思う。すると僕の右横のドナムンドが、
「無理をしなくていいよ、君も貴族の子だろう?」
と笑いかけてきた。後半は声を潜めている。
「号令をお願いします」
ターク先生の言葉を合図にミーメが、
「きりーつ」
と声を出した。すると皆が一斉に立ち上がるから、僕も真似をする。
「れーい」
ターク先生に向かっておじきをした。
「ちゃくせきー」
ガタガタと木の椅子を鳴らして座る。座面にクッションもない椅子に長時間座っていられるだろうかと、心配になってしまう。
「では机の中のお道具箱から教科書とノートと鉛筆と練り消しゴムを出してください」
お、お道具箱?あ、机の中に。ドナムンドがお道具箱を開けて、植物紙の薄い書物と白紙の綴りを出して見せてくれる。ペンではなく先が黒い木の棒が鉛筆で、四角い塊が練り消しゴムというものらしかった。
ターク先生は全員が準備するまで待ってから話始める。
「今日は魔法理論のおさらいと、魔力供給について学びましょう。まず歴史について覚えている人」
ターク先生の言葉にミーメが手を挙げた。なぜ手を挙げるのだろうと考えていると、
「挙手するとターク先生が当ててくれるんだよ。逆にいえば挙手しないと当てられない」
とドナムンドが教えてくれる。挙手には発言権があるのだと理解していると、
「ミーメ、どうぞ」
ターク先生がミーメを指名し、ミーメは椅子を後ろに引いて立ち上がった。
「平民にもマナが分け与えられたのは、二十年前のガルド神の奇跡の日でーす。太陽が輝き全ての宿り木にガルド神のマナが降り注ぎ、平民の子供たちも貴族のように高い魔力を持つ者が現れましたー。貴族と違い魔法家庭教師を持たない平民は魔力制御が出来ず、暴走自滅する子供が増えたため、王様が王領に無料で学べる魔法学舎を作りましたー」
言い放ち鼻息荒く椅子に座ったミーメに、スターとザックが拍手をするから、僕も慌てて拍手をした。
「魔法理論についてお願いします」
ターク先生がミーメ以外に促して来て、誰も手を挙げないので僕はおずおず手を挙げる。
「サリオン、お願いします」
ターク先生に当てられた僕は席を立ち、教室の一番後ろに座っているクロルをちらりと見た。クロルは頷いてくれ、僕はターク先生に向き直る。
「魔力はマナ、気力はオドであり、マナはヒト族の心臓の裏にある第二の心臓にためられ、魔法陣を展開するときに使用されます。また家庭魔法具の使用には体内に循環するマナによって使うことができます。が、気をつけなければならないのはマナが尽きればオドを変換してマナ不足を補いますから、気づかぬうちにマナとオドを使い果たしかねません。魔法陣の展開ではーー」
と続けようとしたところターク先生が右手で制し、
「良く学んでいますね。学びはどこから?」
と尋ねてくる。そこで僕は
「クロルが持って来てくれる書物で」
と答えたところ皆が騒ついた。何か失態でもと不安になり立ち尽くしていると、
「字が読めるのー?書けるのー?」
ミーメが掴みかかる勢いで椅子から立ち上がり詰めよって来た。
「読み書きはできる」
するとミーメの弟のスターが近寄って来て、
「マナ文字は?マナ文字も出来るの?」
と聞かれたので、
「で、出来る」
と後退りながら、答えてドナムンドの席にぶつかってしまう。
「あ、すまない」
ドナムンドの肘に背中が当たってしまい、ドナムンドが何故か頬を赤くしながら
「椅子に座った方がいいよ」
と僕をそっと押し返す。
「字の読み書きも出来て、マナ文字も出来るなら、魔法学舎に来る必要ないじゃーん」
椅子に座るとミーメが不機嫌そうに僕に指差した。スターもザックも頷いている。一番窓側のジェスだけは窓の外を向いたまま無関心で、ドナムンドだけは、
「ミーメ、そんな言い方は」
とやんわり擁護してくれる。
「確かにサリオンの知識量は君たちのそれを抜きん出ています。ですが知識で補い無いこともあります。ザックなんだと思いますか?」
ターク先生は踏み台を降りて、ザックの前に来た。雀斑のある鼻の先を掻きながらザックが
「経験だろ?ターク先生がよく言うやつ」
と告げる。そしてチラッと僕を見てにやにやと笑う。
「そう、サリオンは経験が足りません。そして君たちがサリオンより圧倒的に優っていることがあります」
それを聞いて、ジェスを除く皆が一斉にターク先生に視線を集めた。
「午後の学びでそれがわかります」
ターク先生が大きな瞳を弓形にする。
「さあ、続きは書き取りをしますよ。サリオンは僕の助手となり、文字を教えてあげてくださいね」
ミーメとスターを任されてしまった。
ーーー
ドナムンドは明らかにサリオンを意識している様子。
なによりもタークさんがとても楽しそうです。タークさんは『巨人の1/3の花嫁』の主人公です。スピンオフではないですが、20年後のお話になります。
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