6 / 54
5 セシル兄様の内緒の伴侶のハンロックに申し訳ない
しおりを挟む
夜は眠りが浅いから、時には眠らずに離宮の庭を歩き回る。時には夜の警備を担当するアルベルトと一緒にいることもある。太陽が月の光を隠す頃、やっと眠ることが出来る。その繰り返しをしていれば、寝不足にもなるけれど、昼近くに起きる貴族の生活に僕は助けられていた。
「おはよう、サリオン」
朝と昼の光を浴びて寝台に寝そべり、肘をついて書物を読んでいたセシル兄上が僕に笑いかけた。
「おはようございます、セシル兄上」
長い緩い巻き毛が肩から滑り落ち、寝巻きのドレスシャツにキラキラと輝いている。僕は裸のままだった。
「よく寝ていたね。目の下の黒さも少し減っている」
そんなセシル兄上の方が、顔色が悪い。僕が起きそうになるたびに、背中やお腹を触って気持ちいい指で撫でてくれたからだ。特に股の端は気持ち良くて、僕は鼻にかかった声を繰り返したのを思い出して真っ赤になった。
「気持ちよく眠れたんだね。毎日、添い寝をしてあげられればいいのだけれど」
と微笑んだセシル兄様はまるでガルド神殿に彫刻された天使様のようで、僕は眩しくて堪らない。
「だ、駄目です。セシル兄様のお仕事に差し支えます。それにハンロックと……」
ハンロックは成人前からセシル兄様の内緒の同性の伴侶で、僕と父様、離宮勤めの者くらいしか知らなく、王宮の誰にも知らせてない。王宮には『目』や『耳』があるからだとかで。
「サリオンが心配することじゃないよ。ねえ、ハロ」
セシル兄様の向けた視線、寝台の足元にハンロックがいて僕は驚いた。気配が全くなかったからだ。
ハンロックは銀髪に青い瞳を持つ美丈夫で、有事には近衛隊長も務めるセシル兄様の盾であり剣だ。
「そうだ。子供は子供らしくしていればいい。サリオンは気を回し過ぎる」
そう言いながら僕とセシル兄様に服を寄越した。セシル兄様はドレスシャツを脱いで服を着始めてる。え、下着はこれで……一人で着る?
「森の屋敷では、メーテルも忙しいぞ。サリオン一人で着替えて顔を洗わないといけなくなる。今日は着る順番に並べて行こう」
ハンロックが下着とキュロット、シャツにブラウスとベストを順番に揃えてくれ、ストッキングと太腿のベルトに苦しんでいるとセシル兄様が止めてくれた。
「セシル、甘やかして」
「ハロ、サリオンにストッキングベルトは難しいよ」
「しかしだな」
「ちょっと待って、ハロ」
セシル兄様はストッキングベルトが膝だから簡単だとハンロックに反論していて、ハンロックがさらに反論している。そんな僕を挟んでの言い争いに
「あははは」
と僕は思わず笑ってしまった。セシル兄様に言い詰められて苦虫を噛み潰したよう顔をし始めたハンロックが面白くて、でも同時にこんなに仲のいい二人が宿り木に祈りを捧げないのは、多分僕のせいだ。セシル兄様が異性の伴侶を持たないのもそのせいで、僕の秘密を多くに知られてしまわないようにしている。
「また、考え込んでいるね。可愛いサリオン、よく聞いて」
セシル兄様が僕の顔を両手で包み込み、少し顔を上げさせた。セシル兄様の青い瞳に僕が映り込む。
「僕が妃を娶らずにいるのは確かにサリオンの秘密を知る人が少ない方がいいからだ。そしてハロとはずっと前から伴侶の約束をしていたんだ。僕らが宿り実を得られないのは、うん、まあ、別の問題からだよ。ちゃんと祈りは捧げているのだからね」
セシル兄様の真摯な瞳が嘘ではないことを告げていて、僕はほっ……と息を吐いた。
「さあ、テレサが焼きもきしているぞ。自分で扉を開けて、着替えた姿を見せてやれ。食事をしたら森の村に行くからな」
ハンロックの言葉に僕は驚いてセシル兄様を見上げた。セシル兄様も頷いて、僕の背中をトン……と押してくれる。
「二泊だから大事なものだけ持って行くんだよ。書物は禁止だからね。基本はメーテルが準備してくれているから」
僕は扉の前に立つと初めて自分で扉を開いてみた。
「おはよう、テレサ」
椅子に座っていたテレサが驚いて立ち上がる。それなら頭を丁寧に下げていつものように、
「サリオン殿下、おはようございます」
と少し高い声で挨拶をしてくれた。
「ちゃんと服を着られているかな」
「もちろんでございます。さあ、メーテル様がお待ちですよ。王太子様と騎士様はどうされますか?」
それにはハンロックが答えて、
「俺はアルベルトと食べたからいい。セシルと少し話すから後で行かせる」
と扉を閉めたから、僕とテレサは二人で食堂に行った。
※※※※※※※※※※※※
セシルと二人きりになるとハンロックがセシルを壁に追い詰めて、逃げられないように壁に手をつきにやりと笑う。
「なんだい?ハロ」
「サリオンには言わなかっただろ?別の問題」
王家の宿り木には二人でちゃんと祈りを捧げた。互いに伴侶になろうと誓いを立て、ハンロックは護衛騎士として家督を二子である弟に譲り、密かに王位継承権を放棄した時にだ。
「そういや、伴侶になって長いよな」
さらにハンロックがセシルの逃げ道を塞ぐように、もう片手を壁についた。
セシルは逃げる様子もなく肩を竦めて、
「だって君の持ち物は、聖剣クレイモア並なんだもの。大きすぎて怖い」
と下からハンロックの鋭角な顎に唇をつける。そう、成人して伴侶となったものの、身の深くで感じ合えてない二人に宿り実が出来るはずもないのだ。
「だから、怖いなら俺が受け手になると。お前を甘やかして蕩かせてから跨ってやるって」
セシルは首を横に振って、細いながらもしっかりと筋肉のついたハンロックの胸板を押し戻す。
「無理だよ。君のお尻で千切られそうで、これもまた怖い」
ハンロックは小首を傾げ、くすりと笑った。
「その話はまた寝台の中で、だな。さて、ノートン大公が孫を出してくるあたり、現王家に揺さぶりを掛けてきたってことだろう。『あの方』に相談するか?」
セシルは白い光の部屋で頷いた。
「そうだね。ノートン大公には邪魔されたくないからね。では、僕は聖餐に向かうよ。サリオンが待っている」
ーーー
セシルとハンロックは挿入未満伴侶なんです笑
リクがありましたら、そのあたりもw
「おはよう、サリオン」
朝と昼の光を浴びて寝台に寝そべり、肘をついて書物を読んでいたセシル兄上が僕に笑いかけた。
「おはようございます、セシル兄上」
長い緩い巻き毛が肩から滑り落ち、寝巻きのドレスシャツにキラキラと輝いている。僕は裸のままだった。
「よく寝ていたね。目の下の黒さも少し減っている」
そんなセシル兄上の方が、顔色が悪い。僕が起きそうになるたびに、背中やお腹を触って気持ちいい指で撫でてくれたからだ。特に股の端は気持ち良くて、僕は鼻にかかった声を繰り返したのを思い出して真っ赤になった。
「気持ちよく眠れたんだね。毎日、添い寝をしてあげられればいいのだけれど」
と微笑んだセシル兄様はまるでガルド神殿に彫刻された天使様のようで、僕は眩しくて堪らない。
「だ、駄目です。セシル兄様のお仕事に差し支えます。それにハンロックと……」
ハンロックは成人前からセシル兄様の内緒の同性の伴侶で、僕と父様、離宮勤めの者くらいしか知らなく、王宮の誰にも知らせてない。王宮には『目』や『耳』があるからだとかで。
「サリオンが心配することじゃないよ。ねえ、ハロ」
セシル兄様の向けた視線、寝台の足元にハンロックがいて僕は驚いた。気配が全くなかったからだ。
ハンロックは銀髪に青い瞳を持つ美丈夫で、有事には近衛隊長も務めるセシル兄様の盾であり剣だ。
「そうだ。子供は子供らしくしていればいい。サリオンは気を回し過ぎる」
そう言いながら僕とセシル兄様に服を寄越した。セシル兄様はドレスシャツを脱いで服を着始めてる。え、下着はこれで……一人で着る?
「森の屋敷では、メーテルも忙しいぞ。サリオン一人で着替えて顔を洗わないといけなくなる。今日は着る順番に並べて行こう」
ハンロックが下着とキュロット、シャツにブラウスとベストを順番に揃えてくれ、ストッキングと太腿のベルトに苦しんでいるとセシル兄様が止めてくれた。
「セシル、甘やかして」
「ハロ、サリオンにストッキングベルトは難しいよ」
「しかしだな」
「ちょっと待って、ハロ」
セシル兄様はストッキングベルトが膝だから簡単だとハンロックに反論していて、ハンロックがさらに反論している。そんな僕を挟んでの言い争いに
「あははは」
と僕は思わず笑ってしまった。セシル兄様に言い詰められて苦虫を噛み潰したよう顔をし始めたハンロックが面白くて、でも同時にこんなに仲のいい二人が宿り木に祈りを捧げないのは、多分僕のせいだ。セシル兄様が異性の伴侶を持たないのもそのせいで、僕の秘密を多くに知られてしまわないようにしている。
「また、考え込んでいるね。可愛いサリオン、よく聞いて」
セシル兄様が僕の顔を両手で包み込み、少し顔を上げさせた。セシル兄様の青い瞳に僕が映り込む。
「僕が妃を娶らずにいるのは確かにサリオンの秘密を知る人が少ない方がいいからだ。そしてハロとはずっと前から伴侶の約束をしていたんだ。僕らが宿り実を得られないのは、うん、まあ、別の問題からだよ。ちゃんと祈りは捧げているのだからね」
セシル兄様の真摯な瞳が嘘ではないことを告げていて、僕はほっ……と息を吐いた。
「さあ、テレサが焼きもきしているぞ。自分で扉を開けて、着替えた姿を見せてやれ。食事をしたら森の村に行くからな」
ハンロックの言葉に僕は驚いてセシル兄様を見上げた。セシル兄様も頷いて、僕の背中をトン……と押してくれる。
「二泊だから大事なものだけ持って行くんだよ。書物は禁止だからね。基本はメーテルが準備してくれているから」
僕は扉の前に立つと初めて自分で扉を開いてみた。
「おはよう、テレサ」
椅子に座っていたテレサが驚いて立ち上がる。それなら頭を丁寧に下げていつものように、
「サリオン殿下、おはようございます」
と少し高い声で挨拶をしてくれた。
「ちゃんと服を着られているかな」
「もちろんでございます。さあ、メーテル様がお待ちですよ。王太子様と騎士様はどうされますか?」
それにはハンロックが答えて、
「俺はアルベルトと食べたからいい。セシルと少し話すから後で行かせる」
と扉を閉めたから、僕とテレサは二人で食堂に行った。
※※※※※※※※※※※※
セシルと二人きりになるとハンロックがセシルを壁に追い詰めて、逃げられないように壁に手をつきにやりと笑う。
「なんだい?ハロ」
「サリオンには言わなかっただろ?別の問題」
王家の宿り木には二人でちゃんと祈りを捧げた。互いに伴侶になろうと誓いを立て、ハンロックは護衛騎士として家督を二子である弟に譲り、密かに王位継承権を放棄した時にだ。
「そういや、伴侶になって長いよな」
さらにハンロックがセシルの逃げ道を塞ぐように、もう片手を壁についた。
セシルは逃げる様子もなく肩を竦めて、
「だって君の持ち物は、聖剣クレイモア並なんだもの。大きすぎて怖い」
と下からハンロックの鋭角な顎に唇をつける。そう、成人して伴侶となったものの、身の深くで感じ合えてない二人に宿り実が出来るはずもないのだ。
「だから、怖いなら俺が受け手になると。お前を甘やかして蕩かせてから跨ってやるって」
セシルは首を横に振って、細いながらもしっかりと筋肉のついたハンロックの胸板を押し戻す。
「無理だよ。君のお尻で千切られそうで、これもまた怖い」
ハンロックは小首を傾げ、くすりと笑った。
「その話はまた寝台の中で、だな。さて、ノートン大公が孫を出してくるあたり、現王家に揺さぶりを掛けてきたってことだろう。『あの方』に相談するか?」
セシルは白い光の部屋で頷いた。
「そうだね。ノートン大公には邪魔されたくないからね。では、僕は聖餐に向かうよ。サリオンが待っている」
ーーー
セシルとハンロックは挿入未満伴侶なんです笑
リクがありましたら、そのあたりもw
24
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
キスから始まる主従契約
毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。
ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。
しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。
◯
それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。
(全48話・毎日12時に更新)
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる