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4 セシル兄様の指は気持ちがいい
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「サリオンはアーロンの領地にはいきたくないのか?」
食事を終えた父様が聞いてきた。僕が頷くとセシル兄様が、
「サリオン、アーロンが嫌いなんだ?」
と食後のお茶を飲みながら尋ねてくる。嫌いか好きかと言われても困ってしまう。だから無難に話してみた。
「嫌いではありません。でも、オーベント大公領は遠過ぎます」
僕は少しだけ本心を言わずに告げた。一番問題なのは、移動距離だ。すると父様とセシル兄様が顔を見合わせた。それから僕の方を向き、
「ああ、サリオンはアーロンの領地を知らなかったから心配していたんだね。アーロンは王領地の一部を統治しているんだよ。成人前の王位継承権者の務めなんだ」
セシル兄様が笑顔で話すと、宰相のクロルが仕組みを話してくれた。
「王都の周りの作物地帯は王領になります。その一部を王位継承権を持つ者に貸し出し、統治を学ぶためにまたお小遣い稼ぎ、資産運用をするのです」
「王領地での真似事ではあるが、王としての資質を試されていると言っても過言ではない。宰相や元老院の目が光るからな」
クロルが父様の言葉に、口端で笑った。
「あなたは村民運用は上手でしだが、浪費もなかなかでしたね、ラムダ王」
「そうだな。森の村統治時代よく『あの方』にも怒られていた。『あなたは無能と有能の振れ幅が大きいのです。そもそも統治者と言いますのはーー』」
父様の高い作り声にセシル兄様が吹き出した。
「言い方は似ていますが、声色は似ていません。父上、気持ち悪い作り声です。僕も森の村をちゃんと統治しないと、『あの方』に本気で怒られてしまいそうですね」
初めて聞く人『あの方』、誰だろう。僕は少し置いていかれた気持ちになり、セシル兄様と父様を見上げた。クロルもセシル兄様の隣に座るハンロックも知っているみたいだった。
「今度の休み、森の村に遊びに行こうか。泊まることもできる屋敷もあるよ」
「え、でも……」
離宮を離れるのは初めてで怖かった。
「アーロンの領地の横にあるのが、森の領地だよ。予習にもなる。メーテルを連れて行こう。屋敷には僕とハロとメーテルだけだよ。夜の森をお散歩しようよ」
夜の散歩!僕は心を躍らせた。
「ハンロックも一緒?また剣を教えてくれる?」
「ああ、いいとも。時間が作れればな」
ハンロックが男らしい表情で笑って快諾してくれた。王息である僕には王位継承者が受ける学びは得られないけれど、クロルが持って来てくれる本で知ることが出来る。だから知識は少しばかりある。
剣にマナを載せる剣術は本当に特別で僕には高望みだけれど、王位継承者でもあるハンロックはセシル兄様よしみで付き合ってくれるのだ。
父様がクロルと王宮に帰り、セシル兄様は離宮に泊まるとメーテルに話している。
「ハロ、今日は、サリオンの部屋に泊まるね。メーテル、二人だけにしてくれないか」
「分かりました。湯当たりや水滴の拭き漏らして、サリオン殿下がお風邪などめされませんように。それから……」
メーテルの説明は長々と続いて、
「では、サリオン、明日な」
とハンロックが一礼をして扉を閉める。
「おやすみなさい、ハンロック」
セシル兄様は僕の部屋にお泊まりで、離宮内ではその対応にメーテルとテレサが忙しい。外の警備は家令のアルベルトに任せている。今日はハンロックも手伝うようだったけど、離宮は僕のために三人の使用人しかいないんだ。
僕とセシル兄様は二人で湯に浸かり散湯で頭を洗い合って、タオルで拭き合った。セシル兄上は背が高くて背中を拭くのにしゃがんでもらう。
「ハロとは違うね。ハロはごしごし拭くんだよ。たまに痛い時もあるんだ」
「え、テレサが肌が痛むから、タオルを押し当てるようにして吸わせますって。では、僕がハンロックに教えてさしあげましょう」
シャツドレスに着替えると寝台に入ろうとする。
「サリオン、寝巻きを脱いでおいで」
「でも」
「兄様命令だよ」
膝丈までのドレスシャツを脱ぐと裸体になり、セシル兄様の脇の下に潜り込む。
「ん、いい子、いい子。アーロンには何を感じたの?」
気づかれていた……僕の不安を。
ゆっくり頭を撫でられて指は背骨を伝い、僕は丸くなる。その撫で方は反則です、セシル兄様。
「ん……アーロンといると、僕は不幸な子に感じるのです」
「不幸な?どうして?」
「アーロンは髪色も瞳の色も完璧だと思います」
その撫で方は反則……気持ち良くて……身体が開いてしまう。
「優しいし……ふあっ……男の子らしくて……でも……」
僕はもう降参してお腹を出した。もう駄目だった。喋るより指に感じてしまいたい。
「セシル兄様……もっと……」
セシル兄様は肘をついて寝そべり、僕のお腹を撫でてくれた。ああ、気持ちいい……気持ち良くて、身体が伸びてしまいそう。
「サリオンの生真面目な四角四面さを解き放ってくれる子だと良いんだけれどねえ。サリオンはいい子すぎる」
そうでもないんだけれど……何も考えられないくらい指が気持ち良くて、下肢を撫でられて気持ち良くて意識が無くなっていく僕に、
「ゆっくりお休み、サリオン。起きたらまた撫でてあげようね」
とセシル兄様の呟きが聞こえて来た。
ーーー
セシルはサリオンを撫でているだけで、ふしだらなことはしていませんから※マークはありません💦
食事を終えた父様が聞いてきた。僕が頷くとセシル兄様が、
「サリオン、アーロンが嫌いなんだ?」
と食後のお茶を飲みながら尋ねてくる。嫌いか好きかと言われても困ってしまう。だから無難に話してみた。
「嫌いではありません。でも、オーベント大公領は遠過ぎます」
僕は少しだけ本心を言わずに告げた。一番問題なのは、移動距離だ。すると父様とセシル兄様が顔を見合わせた。それから僕の方を向き、
「ああ、サリオンはアーロンの領地を知らなかったから心配していたんだね。アーロンは王領地の一部を統治しているんだよ。成人前の王位継承権者の務めなんだ」
セシル兄様が笑顔で話すと、宰相のクロルが仕組みを話してくれた。
「王都の周りの作物地帯は王領になります。その一部を王位継承権を持つ者に貸し出し、統治を学ぶためにまたお小遣い稼ぎ、資産運用をするのです」
「王領地での真似事ではあるが、王としての資質を試されていると言っても過言ではない。宰相や元老院の目が光るからな」
クロルが父様の言葉に、口端で笑った。
「あなたは村民運用は上手でしだが、浪費もなかなかでしたね、ラムダ王」
「そうだな。森の村統治時代よく『あの方』にも怒られていた。『あなたは無能と有能の振れ幅が大きいのです。そもそも統治者と言いますのはーー』」
父様の高い作り声にセシル兄様が吹き出した。
「言い方は似ていますが、声色は似ていません。父上、気持ち悪い作り声です。僕も森の村をちゃんと統治しないと、『あの方』に本気で怒られてしまいそうですね」
初めて聞く人『あの方』、誰だろう。僕は少し置いていかれた気持ちになり、セシル兄様と父様を見上げた。クロルもセシル兄様の隣に座るハンロックも知っているみたいだった。
「今度の休み、森の村に遊びに行こうか。泊まることもできる屋敷もあるよ」
「え、でも……」
離宮を離れるのは初めてで怖かった。
「アーロンの領地の横にあるのが、森の領地だよ。予習にもなる。メーテルを連れて行こう。屋敷には僕とハロとメーテルだけだよ。夜の森をお散歩しようよ」
夜の散歩!僕は心を躍らせた。
「ハンロックも一緒?また剣を教えてくれる?」
「ああ、いいとも。時間が作れればな」
ハンロックが男らしい表情で笑って快諾してくれた。王息である僕には王位継承者が受ける学びは得られないけれど、クロルが持って来てくれる本で知ることが出来る。だから知識は少しばかりある。
剣にマナを載せる剣術は本当に特別で僕には高望みだけれど、王位継承者でもあるハンロックはセシル兄様よしみで付き合ってくれるのだ。
父様がクロルと王宮に帰り、セシル兄様は離宮に泊まるとメーテルに話している。
「ハロ、今日は、サリオンの部屋に泊まるね。メーテル、二人だけにしてくれないか」
「分かりました。湯当たりや水滴の拭き漏らして、サリオン殿下がお風邪などめされませんように。それから……」
メーテルの説明は長々と続いて、
「では、サリオン、明日な」
とハンロックが一礼をして扉を閉める。
「おやすみなさい、ハンロック」
セシル兄様は僕の部屋にお泊まりで、離宮内ではその対応にメーテルとテレサが忙しい。外の警備は家令のアルベルトに任せている。今日はハンロックも手伝うようだったけど、離宮は僕のために三人の使用人しかいないんだ。
僕とセシル兄様は二人で湯に浸かり散湯で頭を洗い合って、タオルで拭き合った。セシル兄上は背が高くて背中を拭くのにしゃがんでもらう。
「ハロとは違うね。ハロはごしごし拭くんだよ。たまに痛い時もあるんだ」
「え、テレサが肌が痛むから、タオルを押し当てるようにして吸わせますって。では、僕がハンロックに教えてさしあげましょう」
シャツドレスに着替えると寝台に入ろうとする。
「サリオン、寝巻きを脱いでおいで」
「でも」
「兄様命令だよ」
膝丈までのドレスシャツを脱ぐと裸体になり、セシル兄様の脇の下に潜り込む。
「ん、いい子、いい子。アーロンには何を感じたの?」
気づかれていた……僕の不安を。
ゆっくり頭を撫でられて指は背骨を伝い、僕は丸くなる。その撫で方は反則です、セシル兄様。
「ん……アーロンといると、僕は不幸な子に感じるのです」
「不幸な?どうして?」
「アーロンは髪色も瞳の色も完璧だと思います」
その撫で方は反則……気持ち良くて……身体が開いてしまう。
「優しいし……ふあっ……男の子らしくて……でも……」
僕はもう降参してお腹を出した。もう駄目だった。喋るより指に感じてしまいたい。
「セシル兄様……もっと……」
セシル兄様は肘をついて寝そべり、僕のお腹を撫でてくれた。ああ、気持ちいい……気持ち良くて、身体が伸びてしまいそう。
「サリオンの生真面目な四角四面さを解き放ってくれる子だと良いんだけれどねえ。サリオンはいい子すぎる」
そうでもないんだけれど……何も考えられないくらい指が気持ち良くて、下肢を撫でられて気持ち良くて意識が無くなっていく僕に、
「ゆっくりお休み、サリオン。起きたらまた撫でてあげようね」
とセシル兄様の呟きが聞こえて来た。
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セシルはサリオンを撫でているだけで、ふしだらなことはしていませんから※マークはありません💦
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