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終章〜日常〜

96 イベル式魔法剣術※

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 上級生になりますと、魔法陣を適切に使える訓練をします。一年かけて魔法陣適性を調べ、使える魔法陣を絞り込みました。まあ、ナファやレームみたいになんでも出来てしまう子もいますが、やはり適性は一人数個に止まりました。

 ところがイベールに至っては一つも魔法陣が発動出来ず、イベールは凹んでしまい数日間子供部屋から出てきませんでした。その間ベクルは食事を運んだりしていましたが、すぐに追い出されこちらもまた凹んでしまいます。

 今日の午後の実技もやはり正しく陣を描いているのですが、マナが霧散してしまうのです。上級生も半ばに差し掛かるのにです。

「イベール、無様だな!余の陣を見習うが良い」

 イビリム様が得意げに陣をひけらかします。僕がその行為を諫めようとすると、

「まあまあ、お母さん」

とナファが僕を宥めました。

「母上、今日はセリアンに行きます。何故魔法陣が展開しないか、セフェム父上のじいやに聞いてみます」

 レームが僕の横に来て話してくれます。

「そうですか」

 レームは学舎に行く日はタイタンにそれ以外の日はセリアンの王城にいます。セリアン国のレームの王城は、レームが希望した白亜の代理石をこれまたふんだんに使ったタージマハルみたいな宮殿造りでした。趣味が悪いと僕は思いましたが、レームは

「新緑に白亜のコントラストが素晴らしい」

と自慢気で、ナファは

「うん、そだねー」

と生返事で僕と遠い目をしました。イベールはこの城が気に入ったようで、たまに遊びに行っては狼族の王族の子たちと遊んでいます。

 それにしても……マナはちゃんとベクルから充填されているのですが、どうしたものかと僕は教室の窓から学舎の庭を眺めていますと、女の子たちから悲鳴があがります。

「どうしました?」

 僕が二階の窓から身を乗り出すと、

「上半身裸の男が……っ!」

とまた悲鳴が上がります。僕の真下に黒髪の上半身裸男がいました。

 刺又はありませんが、僕には魔法陣があります!

「そこの不審者、止まりなさーーっ?」

 見上げてくる褐色の上半身裸の細身の不審者は……赤子をスリングに入れたロキでした。

「ロキ!」

「お、いたいた。ターク、探していたんだ」

「ロキ、上半身の肌面積全開です!王立魔法学舎の生徒は王族が多いのですよ」

「あー悪い、悪い。野菜を厨房に届けに来たついでにイベールを探していたんだよ。お袋がイベールに話したいことがあるってさ」

 スリングの中の生まれてひと月のリトは、すうすうと眠っています。

 ロキの発情期も不定期で、少し前にいきなりやってきました。やはり一人ではどうすることも出来なくて僕を頼り、僕はガリウスが肛門を刺激することを許可して、ロキの宮から出て行こうとしたのですが、

「なあ、ターク。いてくれよー」

なんてしがみつかれ、泣きながら

「もうやだー、出したくない。ギャアアン」

と吠える獣化したロキの頭を僕は繰り返し撫で、ロキの横にいるクラリさんに、

「もっと擦って、獣化精液を出してください!」

と陰茎を刺激するよう指示します。発情獣化した時の精を全部だし終わるしか発情期は終わりません。終わらない限り人型に戻れないのです。ロキの背後で陰茎を抽送するガリウスはなるべく前立腺を擦ってもらいました。

「あ、あ、あん、あんっ、あーーーっ!」

 びくっびくっとロキの身体が跳ねて、指先から人へと戻っていきます。

「ふーっ……」

 ガリウスが肛門から陰茎を抜きました。隠毛が汗とロキの腸液でべったりとしています。

「ロキ、よく頑張りましたね。ゆっくり休んでください」

「う、うん。疲れたー」

とロキが手を洗って戻ってきたクラリさんに抱きつきます。

「クラリー、添い寝してくれよ」

 クラリさんが首を横に振り続けていましたが、ロキに首を掴まれて寝台に投げられてその上にロキが跨りました。そしてサルエルからロキが自慢する巨大な陰茎を掴み出し、

「勃ってんじゃん、ちんこ。クラリのちんこで終わりたい」

と言い出します。クラリさんのなんて形容したらいいのでしょう、節くれ立ちごつごつしたような陰茎に跨ります。

「あ、あ、あんっ!ああんっ!ちんこのぼこぼこが気持ちいいっ。んあっ、下、下からちんこで突いて!」

と僕らの目の前で突然交合を始めてしまいました。

 なんなんでしょう、ロキは。赤ちゃんが出来てしまえばいいいです!と僕が両眉を歪めますと、寝台の上からガリウスに抱き上げられました。

 そのままロキの宮から出てすぐ裏の離宮に戻ると、外から温泉に入ります。

「ターク、俺は約束を守ったぞ」

 ガリウスの陰茎は一晩擦り付けで赤くなって熱を持っているようです。ガリウスにお願いしたのは刺激する『治療』で、ロキに感じて精液を出さないで欲しいと僕は涙目で頭を下げたのです。

 僕はガリウスのザボンと湯で洗った陰茎を抱きしめ、亀頭に口をつけました。

「ぐっ……ぐぅ、うっ!」

 唇をつけた途端、煮凝ったような濃厚な精液が飛び出して咥内を満たしていきます。ネクターのような濃い甘さを少しずつ飲み下しました。裏筋も張っていて、僕は指先で裏筋を潰すように擦り残りのねっとりとした精液を口に入れました。

「ターク、口を開けてくれ」

 僕が精液がまだ舌に残る口を開くと、ガリウスが自身の陰茎を扱いて先程よりは滑らかな精液を出しました。それが口に入るはずが、角度が悪く顔に掛けられてしまい、僕は目蓋を閉じてしまいます。

「わ、悪い」

「いえ、大丈夫です。勿体ないから舐めちゃいますね」

 睫毛からぽとぽと落ちる精液を掬って口に入れながら、縮んだ陰茎を撫でました。

「お疲れ様でした」

「俺にではなく、イチモツを労うのか、タークは」

 ガリウスに湯を掛けられて洗われてしまいました。まだ全部精液を掬ってないのにです。

「ガリウスが頑張ったのではなく、陰茎が頑張ったことにしたいのです。僕はやきもち焼きだからで……」

 そう話す口を、ガリウスの唇で塞がれてしまいました。

 そんな後です。神殿の宿り木に実った実は誰のものだろうと、ソニンティアム様と悩んでいたのです。神殿の宿り木にはソニンティアム様とテハナ・マグリタの実が二つ付いていたのです。

 既に六人のお子様がいるソニンティアム様は、子供たちに『母上』と呼ばれ、テハナ・マグリタは『母様』と呼ばれています。不思議に思って聞いてみたところ、テハナが

「ギリア様だけがソニンティアム様を『母上』と呼ぶのではおかしいでしょう」

と、マグリタが、

「タイタンの『父上』はタイタン王だけ」

と告げてきます。よく分からないのですが、二人がいいならよしとしています。

 最終的に実が点滅しロキが触れてやっと分かったものの、ガリウスの実ならガリウスの宿り木に付くはずです。まさかの……と、クラリさんが触れて、熊耳が可愛い男児リトが捥がれました。

「俺もクラリも木に祈りを捧げたことないのになあ」

と首を傾げるロキに、僕は目を合わせられませんでした。だって僕が思ってしまったからです。でも、親子ほど歳の離れたクラリさんは初めての自分のお子さんにすごく喜んでいましたし、ファビも嬉しそうだったから、よしとします。

 そんなロキに連れられて、僕とイベールとセフェムは、コットンフィールドのロキの屋敷へ転移しました。

 イブさんがたわわな胸で抱きしめてくれて、僕たちは屋敷内へ入ります。またまたお子さんが増えていて、すごく賑やかななかでイベールが耳を伏して落ち込んでいるのです。

 家長のリウムさんがお茶を入れてくれ、イブさんが一振りの剣を持って部屋へ戻りました。

「セフェム様もご覧ください。こちらはあたしが王家を離れる時今までの褒章として頂いた魔法剣です」

 イブさんは近衛隊長として狼族の王家を長年守り続けてきたのだそうです。

「あたしはマナが少ないから使えないんだけど、イベール様ならどうかなって思って」

「まだこんな年代物があったんだな。俺も久々に見る。使える奴はいないし」

 コボルト族が造った金鋼の中振りの剣は、魔法陣が柄に組み込まれています。

「獣人族はよく『混ざる』。だからマナが一定しない」

 人と獣の混ざり合いで様々な獣人が生まれます。ロキのようにパッと見小柄な巨人族ですが、完全獣化する者もいます。また、イベールのように耳と尾を持つ人型タイプ、セフェムのように獣面人型もいます。

「そこで王家は魔法剣を作り、分散するマナを剣に集めて展開させることにした。イベル、持ってみろ。術式展開と声を出す。それから抜剣しろ」

 セフェムはイブさんからもらい受け、イベールに手渡します。イベールが手に持つと、

「術式展開、抜剣」

カチンと音を立てて鞘から抜くと、金色のマナをちりばめた刃が煌めきます。

「……使えるか。イブ、こちらを借り受けてもいいか?」

「もちろん。あたしも家族も使えない」

「本当に?イブちゃん、ありがとーございます」

 イベールは魔法陣が輝く柄に唇をつけて契約を果たし、イベールは魔法剣を持つことになりました。ロキも嬉しそうで、泣き出したリトに乳の実を飲ませています。

 後に、イベル式魔法剣術と呼ばれる剣にマナを乗せて戦う術式はガルドバルド全土に広がります。惜しむらくはセフェムの長音の苦手から『イベール』ではなく『イベル』と名付けられたことですかね。当の本人は気にしていないようですが。

「これで最終試験に間に合うね、おとーさん。魔法模擬戦でベクルに勝てるよ!」

 え、聞いていないですよ?
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