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4章

73 泣きはらした朝に

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 早朝、セフェムが迎えに来て小さく丸まって眠っていた僕は抱き上げられ、まだ寝ているロキもクラリさんに担がれて宮に戻ります。ソニン様は先に起きて湯に入られているということでしたのでそのまま外の空気を吸いました。朝はさすがに冴えた空気で僕は深く息を吐きます。

「いっぱい泣いたなあ、タク。目が腫れてる」

 獣面のセフェムが顔を舐めてきます。

「それに、妖精妃の臭いがする。いじめられたか?ん?」

 僕は首を横に振りました。セフェムには僕の機微が分かってしまうので正直に言いました。

「ソニン様にはうっかり亀頭を少し挿入され射精されただけです。大体ガリウスとセフェムが二人がかりで交合するから肛門が縦割れして緩んでいるのですよ」

 セフェムはふふんと笑い、

「妖精妃にうっかり?それは聞きづてならないな、ガリィと一緒にお仕置きだ。その前に風呂だな」

と僕ごと温泉に飛び込みます。

「ふ、服!」

 お湯に濡れた服を浅瀬で慌てて脱ぎますと、セフェムが肛門に指を入れて来ました。

「ひゃぅっ……」

「ほら、精液。タクは無自覚に誘うからなあ。妖精妃さんはタクのこと好きなの、気づかなかったのか?」

 知りませんよ。ソニン様はまだ子供だと思っていました!と僕はセフェムの指がソニン様の精液を掻き出しているのを感じて、ぶるりと背を震わせます。

「主様、おはようございます。タオルとお着替えを置きます」

 ティンの声がして僕はセフェムの手から逃れました。

 タオルで拭いて服を着ると、フェンナが朝食を出してくれるまで、イベールとベクルのお世話をしました。イベールもしっかりして来て、ベクルと一緒に乳の実を両手で持って飲んでいます。飲み終わると二人ともげっぷさせて、おむつを変えます。セフェムはおむつを替えるのは苦手なようですね。

「主様は昨晩お食べになっていないので、スープパンに致しました」

 野菜たっぷりのスープにクルトンみたいな焼きしめのパンが浸されていて、僕はフェンナに礼を言って食事をします。セフェムはスープに焼きたてパンをかじっていました。

「フェンナ殿、食後に王が宮に渡る。お子たちを離れに頼んでいいか?」

 セフェムがフェンナに告げますと、礼をして下がります。

「かしこまりました」

 え、イベールとベクルを連れて行ってしまうのですか?

「タク、話し合いの後はお仕置きだ。子供たちにお前の声、聞かせたいか?」

 う……それが前提ですか。食事を終えて子供たちを見ていると、ガリウスが先触れもなしに、明らかに寝不足の表情でやってきました。

「お子様を離れにお連れします」

 ティンがベクルを連れて行こうとすると、ガリウスが

「いや、すぐに王宮に戻るからよい」

とベクルを膝に乗せました。ベクルはびっくりした表情でガリウスを見上げます。それに習ってかセフェムもイベールを抱っこしました。イベールは首が座ったので抱きやすくなりました。

「ターク、夕方寝込んでいたが大丈夫か?」

 ガリウスに聞かれて僕は

「はい、もう平気です」

と答えます。

「そうか。俺が足りない頃ではないのか?」

 ベクルと同じように渋い顔をしているガリウスが、

「夕刻、ソニンが俺のところに来て、実を捥いだらソルトフィールドに屋敷を構えたいと話したのだ」

と言います。

 ソニン様……本気だったんですね。

「その妖精妃に迫られて犯されたのがタク。大体甘過ぎるんだ、タクは」

 セフェムが僕を指差して来ました。こらこら、指差しは失礼ですよ。

「犯されたなんて失礼な。亀頭の先が肛門にうっかり入っただけです!そもそもセフェムが宮から離れたのが悪いのですよ」

 僕は真っ赤になってセフェムを責めてみましたが、ちらりとガリウスを見上げますと、ガリウスがベクルと同じ不機嫌顔になっています。

「ガリィ、俺たちの想像通りタクは一人で神殿に行って神託を降ろそうとした。その後は妖精妃さんに悪戯されてた」

 セフェムがイベールの頭を撫でながら話していて、

「み、み、見てたのですか!セフェムどうして助けてくれなかったのですかっ!」

 ボクは椅子の足置きから立ち上がりました。

「お前の愛配になりたいとソニンが話して来た。俺は反対をした。そのかわりの意趣返しは許可したが、まさか交合までとはな」

「交合じゃありません」

「じゃあ、なんだ」

 僕はさらに真っ赤になって、もう身体中真っ赤になっている気がします。

「た、た、縦割れの肛門……で」

「聞こえんな」

「ガリウスは意地悪です!縦割れ肛門になっていて緩んでいたため、うっかり亀頭を挿入されました!ソニン様はその刺激で……射精を……っふぐ……ぇ……ぇ……」

 涙がぽろぽろ溢れてきて、チュニックの裾を握りしめました。するとガリウスの片手が僕のお腹を拐い、ベクルの隣に座らせます。不思議そうな顔をしたベクルが、僕の涙を舐めて来ました。

「こらこら、伴侶の涙を吸うのは俺の役目だ」

 そう言いながら僕の目尻にキスをしました。そしてキスを繰り返しながら、

「いじめすぎたか?でも、いい加減、お前はお前の可愛さを自覚しろ。ソニンは交合されるお前を見て自身の『男』を自覚したのだと話していた。俺と対等な男でありたいと話すソニンは、妖精族の王子だったぞ」

と告げてきます。僕はもう頭が回らず脱力してしまいましたが、ガリウスはそんな僕を片手で抱きしめて、

「ターク、そなたはタイタン王と元セリアン王……ああ、あとギガス王の一妃だ。身体中で理解させねばなるまい?なあ、元セリアン王」

と声を掛けます。うとうとするイベールの髪を撫でながら、セフェムのマズルが明らかににやりと笑みを作ります。

「だからお仕置きだ。イベル、ベクル、夜は離れでお利口にしてろよ」

 夜……逃げたいです。




 泣きはらして目元が赤い僕にティンが濡れたタオルをくれ、僕はガリウスと政務室に行きました。物事が立て続けに動き出し、人が足りないくらいです。

「土地持ち貴族への追徴税は順調そうですね。人頭税の取りはぐれは分かりませんか?」

 フィニさんが苦々しい表情をします。僕はあえて話しました。

「そもそもどれだけいたか分からないのでは仕方ありません。今の貴族に人頭税を正しく払わせるためには監察官が必要です。現状、内政省にて、文官は文書官、算盤が得意な人は経理官に分けましたよね?そこに調査が得意な監察官を入れ、貴族が何人領民を抱えているのか、人頭税は適切かを調べるのです」

 監察官が領地へ入ることで調べられると貴族は意識し、領民は貴族とは関係のない監察官に意見することもできます。

「誠実である程度若い文官さんが適任です」

 フィニさんが少し考えた末、

「私ではどうでしょう?」

と切り出しました。僕は首を横に振ります。

「フィニさんは王族ですよね。貴族は警戒しますよ。文官でも下級貴族でお願いします」

「分かりました」

 その後はガリウスの羊皮紙の相談に乗り昼前にひと段落した時、ロキが部屋へ飛び込んで来ました。

「ターク、ワーウルフからレーダー伯屋敷に動きが出たと連絡が来た。どうする?」

 キレンさんが近衛兵を呼びに行きますが、絶対に間に合いません。ロキは口寄せしたワーウルフと意識を同調することが出来るそうです。では……。

「ガリウス、王族の戦い方をしましょう。王城の高いところにセフェムとソニン様を集めてください。ロキも来るのですよ」

「俺、王族じゃないもん」

 ロキがもじもじしていますから、僕は抱っこをお願いしました。

「ロキが一番必要なんですよ。うまく行ったら、今晩、快楽拷問の仕方を教えてあげますから!」

 ロキが僕をぎゅーっと抱きしめてきます。僕はロキの宮に行くことで危機回避しました。お仕置きなんてとんでもありません。僕は小さくガッツポーズを作りました。
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