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3章

50 小さな愛の実※

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 ガリウス様の政務の時間、僕はガリウス様の膝で眠っていました。初めはお役に立てるようにと僕は書類を見ていましたが気力が続かず諦めたのです。

 お昼ご飯を食べた後、ガリウス様に抱かれて外に出ました。小人の宮を見てもよく分かりませんでしたが、僕の荷物があります。僕はタイタン国に本当に嫁いだのですね。

「これがガリウス様の宿り木ですか?」

「そうだ。まだ小さいがしっかり根付いている」

 木の枝には少しばかりの葉がつき、枝には僕の拳二つ分位の実が付いています。ガリウス様が触れると桃色に輝きます。僕も誘われて触りますと桃色に輝きました。

「実もタークが親だと認識している。三人の妃と余の実と、反対の枝には余とタークだけの実が付いている」

「え、僕と二人だけの?……嬉しいです」

 僕とガリウス様の実は実というか、枝に張り付く瘤みたいなのです。僕とガリウス様が触れると桃色に輝きました。小さくて今にも消えそうな実です。

「余はタークに万全を尽くして記憶が戻らないならそれでも良いと思っている。前のタークは人形のように頑な感じがしていた。今は呼吸がしやすそうだ。それならそれで良いではないか」

 僕はガリウス様から口付けを受けました。甘い唾液は僕の身体の中の芯を蕩します。大きな舌が僕の口の中に入り、僕はその舌に翻弄されてしまいます。

「あの……僕は、しょ、しょ、初夜を……ちゃんと行えましたか?」

 ガリウス様は片眉を上げたあと、苦笑いをしました。ふふ……ガリウス様の考えるときの癖みたいですね。それからガリウス様は僕に再び小さな口付けをしたあと、

「余が未熟だった故、そなたに手ほどきを受けた。ターク、そなたと和合し心の底から睦み愛し合ったからこそ、余と二人だけの実があるのだ」

と言いました。

 僕は嬉しくてたまりませんでした。ガリウス様に愛されたい、そう思うと身体の芯が疼くのです。

 僕はまだ歩くまで回復出来ていないので、ガリウス様の左腕に抱かれながら宮を散策し、タイタン国のガルド神殿に連れて行ってもらいました。

 ガリウス様と出会えたことに、ガルド神へ感謝を述べなくてはなりません。ああ、ガルド神様、ガリウス様に会えて、僕は本当に嬉しいのです。ありがとうございます。こんなにも愛してくれて、こんなにも愛しんでくれます。僕の生まれてからずっと乾いていた心に染み渡るくらい。このままガリウス様と一緒にいられますようお祈りをしました。

 ガルド神殿は煉瓦の表面に白い漆喰を塗った白亜神殿造りで、大小は違いますがドワフにもあります。僕は弟が生まれてからはドワフの神殿に通い神官長になるべく学んでいました。

 神殿ではガリウス様を見かけた青服の高級神官さんが慌てて出てきます。

「これは国王様、お待ちしておりました。小人妃様も。神官長がお待ちです」

 神殿内に入りますと、ガルド神への門があります。そこには銀杯が置かれていました。

「お久しぶりでございます、王様、小人妃様」

「トラムか。ターク、こちらはトラム神官長だ」

 僕は青銀の髪の神官長さんに、胸に手を当てて礼をします。

「初めまして、神官長」

 僕の挨拶にトラム神官長さんが不思議そうな顔をします。ああ、ひと月の間に会っているのですね。

「タークはひと月余りの記憶を失っておるのだ」

「なんと。しかし、あれだけのご神託を降ろせば無理はありません」

 ……どういうことですか。

 トラム神官長さんは僕とガリウス様を銀杯のところに案内してくれます。トラム神官長さんが見せてくれた銀杯の外には、ギガスとタイタンの終戦の契約そして制約が書いてあります。

「それよりも、こちらです。虹のご神託と呼ばれています」

 銀杯の中に書いてあるのは、ガルド神の言葉です。

「妃の殉死の禁止……なぜ!」

 僕はガリウス様が薨(みまか)れば、後を追う覚悟の愛でしたのに。

「小人妃様が、ギガス国にて神儀式によりご神託を賜りましたのです。虹が幾重にも掛かり、その後銀杯が虹色に光り七色の星を飛ばしてタイタンにも同様の神託を賜りました」

 僕が……?

 トラム神官長さんは頷き、僕の前に膝をつきました。

「新たなるご神託に感謝致します」

 僕は覚えていなくて曖昧に頷きます。ガリウス様に抱かれて戻る際にも、僕は心の中に引っかかっていて、夜、ガリウス様が何やら書いているのを見た時もそうでした。

 見慣れない薄い色布みたいなものに、ペンではない棒で文字を書いています。

「ガリウス様、それはなんですか?」

 ガリウス様は片眉を上げて僕を抱き上げました。

「紙と鉛筆だと申していた。タークの手作りで、なかなか便利なものだが、植物紙と擦ると消えるペンなので、学びの時だけ使うのだ」

「学びですか?」

 ガリウス様の手元にはいくつかの問いがあり、それに答える形式になっています。

「これを僕が……王礼の問題ですね」

 どうやら僕はひと月余りの記憶と、僕の中の何かに関わる部分が抜けているようなのです。例えば妹たちや弟に文字を教えていたとか、マナが少ないのに魔法陣を扱えることです。

「タークの記憶が戻らなくても、余はタークを捨てはせぬ。余はターク自身を愛しておる」

 僕は前の僕を羨ましく感じはじめていました。ガリウス様はそれに気づいたのでしょう。優しい言葉と、口付けをしてくれました。ガリウス様の口付けは僕の命綱のようです。甘い唾液が僕の手足の強張りを取るかのように身体が軽くなります。

 でも……ガリウス様の全てを受け止め受け入れていた僕はどのようでしたのでしょう。今の僕は小さくて力がなくて弱々しいのです。

「ターク、考えすぎるな。実が太らなくなる。余の言葉を信じぬのか?」

「不安です……。ソニン様もロキ様も美しすぎて眩しくて自信に溢れている妃なのに……。僕ときたら魅力もなく役に立てないばかりか、役立たずなのですから」

 羽織着の下は素肌ですから、ガリウス様の胸に額をつけました。温かい体温と力強く鼓動が不安を少しだけ払拭してくれます。

「ふむ……では、タークや。リリンの如く精を喰むか?余とてまだ若い。愛する妃が始終側にいて兆さぬ訳はないのでな」

 ガリウス様は僕を抱きしめて寝台に座りました。ガリウス様のモノは大きくなっていて、僕はどうしたらいいか分からなくて、ガリウス様を見上げます。

「今のタークでは初めてだな。男を知らぬか?」

 僕は頷きました。ガリウス様は大きなモノの先を指差して、

「ここに口をつけていれば良い。そなたにとって余の精は甘いはずだ」

と僕の頭を撫でました。僕が切っ先に唇をつけると、まるで果実のような甘い液が溢れて来ます。僕は蜜を吸うように張り出した括れの部分に手を置いて吸い込みました。ガリウス様は長く太い部分に自身の手を添えて扱かれます。

 ガリウス様の息を詰める呼吸と、僕の口の中に溢れてる甘い精液が呼応して、僕は嚥下しました。甘く濃厚な果実蜜の味は僕の身体を軽くし、官能的で僕は思わず兆した前を隠しました。

「ターク、いな。舐めてやろう」

 ガリウス様が僕の腰を片手で掴むと、僕のモノを広い大きな舌で舐め上げます。

「んっ……」

 そのまま全てを唇の中にすいこまれ、舌で舐め扱かれて僕はすぐに気をやりました。

「んん~~っ!」

 わずかばかり出た僕の精をガリウス様が飲んでしまわれて僕は息を上げながら謝りたくて仕方ないのに、気持ちよさに手足に力が入りません。

「タークの精は甘いな……リリンの実だからか?甘い味がする……ああ、甘露のようだ」

 僕を抱き寄せて話すので、

「ガリウス様のお出しになった精も甘いのです。精は甘いものなのですか?」

と僕は聞きました。ガリウス様は僕の額に口付けをして、

「少なくとも余とタークの間では、甘く良きものなのだ。愛しているぞ、ターク」

と唇にも口付けをしてくれます。

「ガリウス様、心から愛します……愛してください……僕を愛してください……一人にしないでください」

 ああ、この身で包んで差し上げたいと疼くのですが僕には勇気が無く、ソニン様が戻られる一週間僕はガリウス様に、ただ無償の愛の如く抱きしめられながら過ごしました。
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