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2章

29 僕の王様※

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 僕と王様はじいやさんに二階の客室に案内されました。セフェムの部屋の隣です。

「王、ならびに六月の小人様。この度はセフェム皇子が大変失礼なことを致しました。この老体を斬って溜飲下されば幸いです」

 王様がじいやさんを見下ろします。すごく冷たい冷めた瞳です。

「そのほうを斬り捨てて余の三妃の番いの刻印が無くなればそうしておる。あの狂犬のような皇子は二妃も襲った。三妃が心広く許しているから余は皇子には何も言わぬが、余は妃の尊厳を損なう者には容赦せぬ」

 王様が眼光鋭くじいやさんを睨みます。僕は王様にしがみつきました。王様が動けば二国の問題になります。

「分かっておる、ターク。余は自身の感情で動かぬ。余も日々学んでおるぞ」

 王様は僕の頭を大きな手で撫でました。

「じいやさん、セフェムは読み書きは出来ますが、皇子としての教育を受けていないのではありませんか」

 僕はじいやさんに尋ねました。

「御慧眼鋭く……さすが、六月の小人様。皇子は王宮の兄上様方と気性が合わず、物心ついた頃からこの城壁要塞城に着任し暮らしてきました」

 王族だから何をしてもいいってわけにはいかないだろうけれど、王宮から離れこの城で生きていたんですね。

「六月の小人様には皇子に戦略を授けられたとか。戦闘を見届けていただけたらと思います」

 あとで呼びに参りますとじいやさんが出て行き、僕は王様と二人きりになりました。王様は王様にとっては少し小さいソファに座り僕を横に下ろしました。

「セリアン国の信託とはな……。ターク、そなたはガルド神に寵愛されているのやも知れぬな」

 そんなことより……ああ、今ならソニン様が隷属陣を欲した気持ちが分かります。僕は王様を裏切った気持ちになっているのです。

「あの……王様、僕は……」

「タークがいなければ……ロキの身代わりにそなたが身を差し出さなければ、ロキは死んでいた。その事実は歪みようがない」

 王様の大きな手が僕の頭を撫でます。そして僕を抱き上げて膝に乗せてくれました。僕は膝の上で立ったまま王様の頬に手を当てます。

「タークは何を思い詰めているのだ?」

 本当に王様は分かっていません。僕は王様の頬に頭をくっつけました。

「僕は不貞不義の妃です。王様以外の……セフェムに身を任せ交合しました。それも三日間もです。しかもセフェムには首筋を噛まれました。お互いその意味を知らない状態でしたけれど、今、僕はセフェムの妃でもあります……」

 僕は話している間、王様の顔が見られませんでした。

「タークが悩むのは分かる。タークがセフェムと交合したのが罪だと言うならば、余もそうなるではないか。余は王になる前、商売女と数が数え切れないほど交合した。ソニンやロキとも交合している。それにソニンもロキも余が初めてではない。それは不貞か?」

「それは……」

「そもそもタークの言う不貞不義とはなんだ」

「ふ……不貞不義とは、信念がなく人としての道理から外れていることです。不義が人としての道理から外れているに当たり、不貞は貞操を守らないことから、やはり人としての道理から外れることをさします」

 王様は伏せている僕の顔を片手で上げさせて、僕の目を見ます。

「タークは物知りで賢者だが、少し頑なだ。そして道理を分かっていない。そなたはロキを守るため信念を持ってセフェムの元へ参った。その身を開き差し出した。信念があればそれは不貞不義とは言わぬ」

 そうきっぱり言い放つと、王様はニヤリと笑いました。

「それより、タークが余不足になって倒れてしまわぬかと、早朝早駆けをした余をいたわってはくれぬのか?」

 王様が僕の唇を舐めてきました。僕が唇を開けますと王様の甘い甘い舌が入ってきます。僕は濃厚な甘さと王様の熱い舌を満喫します。身体の中が蕩けそうです。僕は僕を許せそうな気がしました。僕は妃だから、受け入れる側になったから、浮気をしたようで苦しかったのです。でも、王様は僕の気持ちごと汲み取り、僕を甘やかしてくれます。

「悦い顔をしている……余はタークのためにここを溜めて来た」

 王様が僕を床に下ろすと、ズボンの中心に僕の両手を置きました。王様の陰茎は大きく反り立ちはちきれそうです。下履を寛がせると大きくてびっくりしました。

「一の宮以来していない。そなたの可愛らしい小さな唇で慰めてくれないか」

 本当はこの身に入れて差し上げたいけれど、塗り薬もありませんし何より戦闘時です。

 僕は陰茎に唇をつけました。服を着ているので両手で柔らかな亀頭を揉んで解します。舌先を切っ先の鈴口にあたる尿道に差し込むと甘い味が舌に溢れてきます。ちゅうっと吸うと王様が呻きました。王様の亀頭も陰茎も大きすぎて口の中にはいりません。

「少しもどかしいな」

 王様が右手で陰茎の竿の部分を扱きました。僕は亀頭と尿道を刺激しています。王様は僕の口の中に濃厚で甘いフルーツの味がする静液を流し込みました。

「うっ……むぅっ……っ!」

 王様の力を込めた射精の精液量が多すぎて、唇から溢れてしまいそうになるのを堪えて、二度、三度と分けて嚥下します。お腹がいっぱいで胃がぽこんと出てしまいました。

「本当に美味しそうに飲む」

「濃くて甘くて美味しいですよ」

 僕は腰をかがめてズボンを直す王様にキスをしました。舌先にまだ甘い味が残っていますからお裾分けです。大きな舌を左右に舐めて絡めて味を共有します。王様の舌も甘くて……力が抜けそうです。これがソニン様やロキの言う催淫効果なら、僕は今、王様の力に負けて支配されているのですね。王様は本当によい教え甲斐のある生徒です。

「余には苦いが……タークの舌は甘い。このまま寝台に連れて行きたい蕩けた顔だ。ターク、身体は大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

 王様の精を受けて身体がすごく楽になりました。今なら魔法陣を複数展開出来そうです。やっぱり僕の王様は素晴らしいです。

「ギガスとの一戦は、余も傭兵騎士として出ようと思う。ギガスは会ったこともないが兄の仇であるからな」

「王様。王族には王族の戦い方があります。前線に出るのが王族ではありませんよ」

 王様がいるなら、さらにいいです。奇襲作戦の枠が広がります。僕が考えていますと、

「小人、いや、違う。タク。ガリィ、来てくれ」

とセフェムが呼びに来ました。タークとガリウスが長いマズルでは言いにくいのか、変な呼び方です。

 王様が僕を抱き上げて部屋を出ます。前を歩くセフェムが、ボソリと話してきました。

「名前……タクなんだな」

「タークですけど、言いにくそうですね。セフェムから名前を聞かれませんでした」

「そうか……発情期だから……そのせい……悪かった。お前も妃だなんて……」

「言いませんでしたし、僕一人タイタン国の犠牲になってもいいと思いましたから。ロキは大切な友なのです」

「そなたが犠牲になる必要はなかったのだ。胸を張り堂々と余の三妃であると告げればこうはならなかった」

「王様……それは……そうですけど。近辺に狼族がロキしかいなかったら、また、ロキが狙われてしまいます。だから……」

「余が二妃も三妃も守る。だが、タークにとって余が力不足に感じる故、身体を張ったのであろうな。余もまだまだだ」

 王様が僕を抱き直し、僕のゆるく巻く髪を撫でます。

「タークはセフェムと交合したことが、余の妃として不貞に当たると嘆いていた。余の妃であるから、余以外と交わらぬつもりでいたようだ。野合や乱合も致す獣人族には理解し難かろう。巨人族も得てしておおらかだ。身持ちの堅いタークに理解されぬかもしれん」

 巨人族も獣人族も割と性におおらかな国柄です。小人族はそうでもないのですが。

「なんと、身堅い。だ、だが、俺は信託の皇子だ。タクと交合する権利がある」

 王様が少し考えてから言いました。

「実を捥ぐまではそうであろうな。余は落実を好まぬ。余はタークの実ならば大切にする。それに発情期の番いを求める獣の狂おしい本能は、書物にて理解しているつもりだ。余の最大の譲歩を分かってもらいたい」

 それから王様が僕の勤勉さや、愛らしさや真面目さを説き、二人がなんと身持ち堅苦しく貞淑だなどと呟くのを、意識の外で聞いていました。もう、変なことで二人とも意気投合するのはやめてください。セフェムはロキに性格が似ています。とても気安く、会話が歯切れ良いのです。王様も忌憚なく話しているようでした。

 しかし僕は今、完全臨戦態勢です。ギガス国にセリアン国が負ければ、小人の森も危ないのですよ。小人族は戦いを嫌います。小競り合いはしますが、平和を愛する民ですから。





 一階のホールには獅子面の将軍さんがいます。あとはじいやさんです。全ての獣人さんを投入した作戦です。重症な獣人さんは、地下にいます。

「閣下、配置に着きました。ギガス兵の位置は?」

 遠見をするセフェムの肩を僕は触りました。セフェムの見ているものが僕にも王様にも見えます。ギガス兵は王様達と同じ褐色の肌ですが、目が一つなのですね。初めて見ました。少し違和感です。

「第一隊、第二隊、距離近し。投石用意を」

 魔法陣が展開しているセフェムは狼煙を上げさせようとしましたが、僕は止めました。

「気づかれます。現場判断させましょう」

 小隊の自力を信じます。遠見で見ていますと、奇襲作戦は成功しています。前衛のギガス兵を沢に落としました。

「投石でここまで……」

 王様も同じものを見ていますので驚いています。

「投石紐を使って石を飛ばします。かつてロードス島では優秀な投石兵がいましたし、イスラエルの王様になるダビデがゴ……」

 あ、やってしまいました。王様が不思議そうな顔をしています。ロードス島やイスラエルなんてこの世界にはないのです。ピィについ前世の話を話してしまった時のように、頭おかしい宣言されてしまいます。二回目と三回目の人生でも、うっかり喋っていつも変人扱いです。

「本当にタークは物知りだ。さまざまなことを知っておる。さすがガルド神の寵愛を受けた余の智恵の実だ」

 王様は嬉しいそうに目を細めました。

「ガリィ、タクは俺の番いでもある。六月の小人は戦いを終わらせると信託が出ている」

 セフェムが王様に鼻に皺を寄せて唸ります。僕は失言をとりなすようにしてくれた王様に感謝しながら、戦いの引きどころを考えていました。第一、第二小隊で崩せたのは二十名程。あとの八十名は侵攻しています。怪我人に動揺することもありません。

「第一、第二防衛戦突破されました」

 伝令さんが走って部屋に入って来ました。ギガス兵さんは仲間がやられても気にしないで前に進んでいるのです。これは消耗線になりそうで、絶対に不利なのです。

「ギガス兵は撤退を考えない前進あるのみの兵です。閣下、第三、第四小隊に指示を」

「うむ……」

 セフェムも考えあぐねています。二十名が一度に倒れたら足が止まるかと思っていたからでしょう。

「セフェム、第三、第四小隊に継続攻撃を指示してください」

「タク?」

「半数まで行かなくても戦力を削いで下さい。そして犬走りに配置した負傷兵を広間に集めて下さい」

 せっかく王様もいるのですから、ここは王族らしく派手に行きましょう。

「分かった。将軍、タクの言う通り広場に集めろ」

 僕と魔法陣を展開し続けているセフェムと王様も広場に向かいました。
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