23 / 105
2章
22 公共事業をします
しおりを挟む「今夜は寝台を使ってください。私は床でも椅子でも構わないので」
「そ、それは身体に悪いだろう」
「殿下を寝台以外で寝させることの方が問題です」
ミアは最もらしく言い募り、風邪を引くと困るので掛けるものは借りたいですと告げる。
そんなミアを前にして、皇子は青かった顔を一変させ赤くなりながら宣言した。
「い、一緒に寝台を使えばいいじゃないか」
ミアは驚きのあまり目を瞬かせ、本気なのか問うように首を傾げた。
「……私は構いませんが、殿下は大丈夫なのですか?」
私は今日会ったばかりの人ですよ、と当たり前のことをミアが丁寧に告げると、頬を赤らめながらも皇子は頷いた。
「だって、何もしないと約束してくれただろう?」
ミアを見る皇子の目は純粋そのものだった。この人はこんなに無垢なのによくぞ今まで頭から喰われてしまわなかったものだと、ミアは感心していた。
一度言い出した手前引けないのか、皇子が積極的に寝台に上がるように勧めてくるのでミアは皇子に気を遣いながら控えめに寝台に腰を下ろした。
「それで寝れるんですか?」
ミアが寝台に上がった途端、皇子は出来るだけ距離を取ろうとしてか寝台の端に身を寄せてしまう。
それだと眠れないのではないかと思ったミアが声を掛けると、皇子はようやくそろそろと足を伸ばし始めたが、依然として体も顔も強張っている。
「……すぐには、眠れないかもしれない」
「そうですか。私も特に疲れていないので、まだ眠くないです」
遠くから今日来たばかりなのに、と驚いて目を瞬かせる皇子にミアは曖昧に微笑んだ。
「あ、そうだ。何か本とかないか?眠くなるまで、読みたいんだが」
「すみません。本は勉学の為なら読むのですが、趣味では読まないので、ここには持ち込んでいません」
あまり後宮に長居するつもりはないので、という言葉は流石に無礼過ぎるだろうと飲み込んだ。
「殿下は本がお好きなのですか?」
「……本は、読むと自由になれるから、好きだ」
遠くを見るように目を細めて寝台に寝転ぶ皇子から距離を保ったまま、ミアはそっと寝台の端に寝転んだ。
「では、眠くなるまで殿下の好きな本のお話を話してくれたら嬉しいです」
それなら暇潰しになるだろうとミアが提案すると、皇子は安心したような笑顔で頷いた。
「ああ、いいぞ」
何の話がいいか、と視線を巡らせる皇子は同じ年回りだというのにやはり庇護欲を煽るほど幼く見えるのだ。
ミアは小さく笑みを零しながら皇子の話に耳を傾けた。
「そ、それは身体に悪いだろう」
「殿下を寝台以外で寝させることの方が問題です」
ミアは最もらしく言い募り、風邪を引くと困るので掛けるものは借りたいですと告げる。
そんなミアを前にして、皇子は青かった顔を一変させ赤くなりながら宣言した。
「い、一緒に寝台を使えばいいじゃないか」
ミアは驚きのあまり目を瞬かせ、本気なのか問うように首を傾げた。
「……私は構いませんが、殿下は大丈夫なのですか?」
私は今日会ったばかりの人ですよ、と当たり前のことをミアが丁寧に告げると、頬を赤らめながらも皇子は頷いた。
「だって、何もしないと約束してくれただろう?」
ミアを見る皇子の目は純粋そのものだった。この人はこんなに無垢なのによくぞ今まで頭から喰われてしまわなかったものだと、ミアは感心していた。
一度言い出した手前引けないのか、皇子が積極的に寝台に上がるように勧めてくるのでミアは皇子に気を遣いながら控えめに寝台に腰を下ろした。
「それで寝れるんですか?」
ミアが寝台に上がった途端、皇子は出来るだけ距離を取ろうとしてか寝台の端に身を寄せてしまう。
それだと眠れないのではないかと思ったミアが声を掛けると、皇子はようやくそろそろと足を伸ばし始めたが、依然として体も顔も強張っている。
「……すぐには、眠れないかもしれない」
「そうですか。私も特に疲れていないので、まだ眠くないです」
遠くから今日来たばかりなのに、と驚いて目を瞬かせる皇子にミアは曖昧に微笑んだ。
「あ、そうだ。何か本とかないか?眠くなるまで、読みたいんだが」
「すみません。本は勉学の為なら読むのですが、趣味では読まないので、ここには持ち込んでいません」
あまり後宮に長居するつもりはないので、という言葉は流石に無礼過ぎるだろうと飲み込んだ。
「殿下は本がお好きなのですか?」
「……本は、読むと自由になれるから、好きだ」
遠くを見るように目を細めて寝台に寝転ぶ皇子から距離を保ったまま、ミアはそっと寝台の端に寝転んだ。
「では、眠くなるまで殿下の好きな本のお話を話してくれたら嬉しいです」
それなら暇潰しになるだろうとミアが提案すると、皇子は安心したような笑顔で頷いた。
「ああ、いいぞ」
何の話がいいか、と視線を巡らせる皇子は同じ年回りだというのにやはり庇護欲を煽るほど幼く見えるのだ。
ミアは小さく笑みを零しながら皇子の話に耳を傾けた。
28
お気に入りに追加
1,184
あなたにおすすめの小説
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~
戸森鈴子 tomori rinco
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。
そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。
そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。
あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。
自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。
エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。
お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!?
無自覚両片思いのほっこりBL。
前半~当て馬女の出現
後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話
予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。
サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。
アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。
完結保証!
このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。
※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる