抱きしめたい〜本当は君が本命〜

クリム

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抱きしめたい〜本当は君が本命〜

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「みんな、声を揃えて。木村さん、半音ずれてるし」

 そしてピアノに向き合い前を見ずに叫ぶ。

「テノール下がり過ぎ!倉地パートリーダー、みんなを上げさせ!もう一度!」

新在家しんざいけ部長!もう無理だし。部活の時間終わり」

北旭きたあかり副部長?」

 何人かの女子がへたへたと崩れ落ちる。

「ん?そんな時間か?解散!」

 各自がその場で挨拶をして、何人かは座り込んでグループを作っていて、新在家拓未は汗だくの柔らかいあかるめの髪をかきあげた。

「パートリーダーは反省会」

 髪をかきあげた瞬間、

「今日も拓未、怖かったし」

と近づいてきた男子に呟かれ、苦笑する。

「新在家部長、北旭副部長さようなら」

「うん、おつかれ。もう、寿々は、女子に甘過ぎだし」

「そっかな?」

「そうだし。今年こそ上いかないと。西尾乃高の名前を全国に」

「うん、ほうだね」

 拓未は寿々と男子更衣室で汗を拭き直し着替えて、髪を直し胸のネクタイを整えながら出ると、一つに肩まである髪を結わえ先に出ていた寿々が待っていた。

「拓未、帰ろ?」

 少し背が高い寿々が小首を傾げて来て、拓未はいつもの彼女がいないのに安堵する。

「お、彼氏待ち?新在家鬼部長」

「つか、北旭が彼女か?」

 柔和な表情の北旭寿々が、

「拓未、男だからだからホモカプ~」

と笑うと男子も大笑いした。

 合唱部の男子が揶揄するが、拓未は首を横に振って

「違う、違う。寿々、彼女いるから様」

と苦笑いする。

「まじ!北旭ちゃんが!」

「うわっ、先を越されたしーー!」

と叫んでいる。

「だろ?俺も先を越されたし」

 髪の長いストレートの小さくて可愛い彼女が告白して、寿々が頷いていたのを見たのだ。

「今日は……いないん?あの子」

「ああ、帰ったのかな?練習遅くまでやったし」

「……嫌味?それは」

「分かった?今日は疲れた~な、と」

 寿々が横で笑っている。

 幼馴染の寿々と話しているのは、気が楽でいい。寿々は昔からおっとり優しいし、小さい頃からお泊まり会を繰り返すような親友だ。

「今日の数学の宿題、一緒にせえへん?僕も厳しい」

 寿々がそう言ってきた。現在高校二年生に進級し、絶賛数学苦手な拓未は、渡りに船とばかりに家の前で寿々の肩掛けを引っ張り頷く。

「うん、助かる」

 ピアノのある自室に案内すると、寿々が扉のところで止まった。

「宿題の前に、キスの練習してもいい?」

 彼女が出来てから、寿々は拓未にキスの練習台を指名して来て、幼馴染の寿々の練習ならと渋々了承していた。

「んっ……」

 抱きとめられて、肩を掴まれ少し唇を塞がれる。少し荒れた唇……そこだけは男子みたいな……のガサつきが寿々らしくて、笑ってしまうと、唇を舐められて驚いて口を開いた。

 柔らかい舌が歯茎を走り、舌で拓未の舌をゆっくり吸いながら絡めてくる。

「んんっ……あっ!」

 耳を触られ髪をかけられるとぞく……と背を痺れが走り、思わず寿々を突き放した。

「み、耳、反則っ」

 寿々が少し驚いた顔をしてから、色っぽい仕草で唇を拭うのにも、どきりと心臓が煽る。

「へぇ……耳、弱いん?」

「~~~!お茶、用意するから、待っとって!」

「はいはい」

 拓未は扉を閉めて、その場でずるずると座り込んだ。

 ……身体が……熱い。

 あんなキス初めてだ。初めは触れるだけのキスだった。なのにエスカレートしている。

「彼女と……こんなキスをするんだ……」

 舌を吸われた感覚が、忘れられない。今日は耳を指で触れられ、立っていられなくなりそうで…。

「お茶……持ってかんと……」

 少しうねる柔らかな髪を左右に振って、学生服を直してから歩き出した。



「拓未……可愛い」

 拓未のベッドにぽふんっ……と転がって、枕の甘い匂いにふ……と笑う。

「拓未、本当に可愛い」

 身長差がないからキスがしやすい。キスして……舌を差し込むと一瞬躊躇して、吸うと無意識だろうが体をすり寄せてくる。

「耳、弱点なんだ……」

 細い身体をぎゅっと抱き締めたら、どんな顔をするんだろう。物心ついた時から、好きだった。

髪を伸ばし女々しい男女となじられていた寿々を、乱暴なピアニストと恐れられていた拓未が、助けてくれた。その、ひどいトイレのバケツ水の思い出すら、甘美でたまらない。

「ん?拓未の携帯?」

 ベッドに放り出された学生鞄から、勝手にスマホを取り出すと、知っている暗証番号で画面を解除してタップする。

 目に入ったのは、前の部長の名前だ。

「なんで……室場むろばさんから……」

 スクロールすると何件か入っていて、今度は一緒にピアノのコンサートに行こう、だのの記載に頭の中が沸騰しそうだった。

「お待たせ……寿々?」

 紅茶とクッキーを持ってきた拓未が入って来て、寿々はベッドから起き上がりスマホを突き出す。

「なに、これ!なんで室場さんからこんなにメール!」

「……なんだ、そんなことか。まあ、連絡しあってるみたいな……あの人音大生だろ?俺もいずれは同じとこだし」

 テーブルにお茶を置いた拓未がくすと笑うので、一蹴されたとばかりに寿々は思わず拓未の手を捕まえ拓未をベッドに組み伏した。

「寿々っ……!」

「なんで笑っているの!」

 力を入れて肩を掴むと、拓未の学生服のボタンが弾け、白いシャツが見える。

「あっ……いや、だ……っ」

 拓未が身を竦めるようにしたのを見て、寿々はさぁ……と血の気が引いた。

「ご……ごめ……帰る!」

 慌ててベッドから降りると、肩掛け鞄を握りしめて出て行く。

「寿々っ!」

 胸を押さえた拓未が後ろに見えたが、そのまま出て行って、横の里親の家の鍵を開けて飛び込んだ。

 まだ親も兄も帰っていなくて、そのままベッドに突っ伏すと枕で頭を叩く。

 白いシャツから乳首が見えた。

「やばい……」

 甘い香りがする髪と、汗ばんだ首すじ。そして胸元のささやかな乳首。……細い体……抱きしめたい。

「拓未……拓未」

 寿々は枕に頭を押し付けたまま、拓未の名前を小さい声で呼び続けた。




「う~ん…」

 数学で当てられ、

「わかりません」

と悔しくも呟いた拓未は弁当の後の昼時のひと気のない屋上に取り残され、フェンスに持たれて座り込んだ。

『北旭くんをもう少し束縛しないで欲しい。私たち会う時間がなくて。お願いします』

 寿々が付き合っている……綺麗なストレートの髪の彼女は、沢山の仲間を連れて拓未を呼び出しその友人らしきに支えられて、拓未にそう言い放ったのだ。

 何も言えず立ちつくした上背のある拓未は、言いたい事をやっと言えた彼女を見下ろし見送る。

「まいったな」

 彼女を間近に見たのは初めてだった。

「ちっちゃくて、可愛いな」

 そのまま丸くなる。寿々と並び合う身長は当たり前だ。男だから。寿々とあの女の子はお似合いだと思う。そこに拓未の居場所はない。

 拓未は食事の後の日だまりに、そのままうとうと…としてしまう。顎を触れ唇に触り、柔らかい感触が唇を包み込み、拓未は少し唇を開いて、探るような舌を無意識に受け入れた。

「ん……寿々……」

 それ以上はなにもなくてしばらくして目を開くと、拓未の横に寿々が座っていた。

「鐘、なるよ。今日は早帰り」

「え?あ……」

 そのまま手を掴まれ立ち上がると教室に引っ張られて、帰宅準備をしている中に入ると、彼女から睨まれてしまい、拓未は俯きながら帰宅準備をする。

「拓未、帰ろ」

「え?あの……か、彼女……」

 寿々は無言で拓未を引っ張り、彼女が女の子に囲まれて泣いているのが見えたが、寿々は脇目も振らず廊下を出て行くのだから、手首を引っ張られている拓未は従うしかなく。

 そして、そのまま無言で家に連れられ、勝手知ったる状態で二階に上がって行く剣幕に、部屋に突き飛ばされ、「わぁっ」とベッドに転がった。

 さすがに拓未も慌てて、起き上がろうとするが、寿々が上からかぶさり抱きしめて来る。

「拓未……拓未……ごめんっ!」

 体温の暑さや寿々の少し低く掠れた声に、ああ……好きだと思い、急に心臓が煽り動揺した。

「やな思いさせた、ごめん」

「寿々、離して。か……彼女……に悪いから」

 あの可愛い小さな……。

「彼女?付き合て欲しいって言われただけだよ。別に付き合ってないし」

「だってキ……キスを」

「そう言わないと、拓未、キスをさせてくれないじゃん。他の子とは、してない」

「嘘ついたのか!」

「付き合ってくれとは、言われた。でも、僕は拓未が好きなんだ」

 余裕なく抱きしめて来た。ぎゅう…抱きしめられたまま、ああ……好きなのか……と、拓未は思う。

 六年生の夏の昼間、二人だけで家の庭で花火をして、お互いに小さな火傷をした。水シャワーを一緒に浴びようと服を脱いだ時、既に浴びていた寿々が動揺して、少しだけ幼馴染の関係が変化したような気がする。その変化についていけない自分がいて、寿々のが少し大人になっていた。

「僕は拓未が好きなんだ」

「……俺は……寿々と親友で……男同士で……」

「拓未は、僕が嫌い?」

 好き、嫌い、と言われれば。

「二者択一か?なら、好きだ」

 ……だから、そう答えた。

「もっと抱きしめていい?」

 寿々が甘えた声で言ってくるから、拓未は寿々の長くなったしっぽを撫でる。

「窒息しない程度に頼む」

 ぎゅ…と抱き締められて、ベッドに押し付けられ、するのかな……と思う。男女ではないけどどうするのかと不思議になった。

「んっ……寿々……まっ……て、待て!」

 何時ものキスより長めの口づけに酔うようにうっとりとしていた拓未は身をよじる。

「待てると思う?」

 ネクタイを抜かれボタンを外されて、白いシャツが見え拓未は涙ぐんだ。

「や……ゃだ……」

 寿々は嬉しそうに笑って、真っ赤になった拓未の額にキスをしながら、ズボン抜いてきた。

「ほんと……可愛い……拓未」

 拓未は下着を脱がされ、どうしていいかわからずに股間を隠そうとして、服を脱いだ寿々が膝の間に入り、思ったより体温の高い寿々の背に腕を回す。

 乳首をかすめるようにに触れられ先を摘ままれると、思わず背をそらす痺れを感じて拓未は息を噛んだ。

「んっ」

 吸われ転がれながら片方は摘ままれ、もう一方の指が柔らかい下生えの中の屹立に触れると、

「あっ!」

と甲高い声を上げた。

 切っ先を指で押されくるくると螺旋をかくように撫でられ、最奥を開かれて指を入れられると、下肢に震えが走る。


 奥の襞はいつのまにか滑りのよい指を受け入れ柔らかく解け拓未は

「ぃや……」

と喘ぎながら呟くが、寿々の指は止まらなかった。

「や……ぃや……あ……ああっ……んっ……」 


襞をやわやわと広げられ剥き出しの痺れにどうにかなりそうで、寿々を腿で絡め取ると、中に入って探っていた指が抜け、熱い切っ先が添えられた。

「拓未……力……抜いて」

「え?」

 ぐっと先が襞を広げ、柔らいだ肉環を割り開き止まる。

「寿々……苦しい」

 心臓が下肢に移動したかのように感じ、重苦しさに涙が出た。

「拓未、ごめん…っ」

 何度か抜き差しして、一気に屹立を奥まで押し込んでくる。

「やっ……いっ~~っ…!」

 ぶつぶつぶつっ…と肉筒から音が響き鈍重い痛みが貫き、拓未は悲鳴を上げた。

「ああっ……やめ……動かないで!痛い……痛い……うっ、んぅっ!」

 寿々の細い体から汗が落ち、組み敷かれた肌に伝う。かなりの抵抗に寿々も辛いようだったが、痛みが拓未を混乱させていて、寿々がじっと我慢しながら、屹立を撫でた瞬間、飛び上がって内筒を締め上げた。

「っ…拓未……動かないから……感じて…」

 屹立を指で撫でるように擦られ、ゆるゆると揺らされ扱かれると、痺れるような陶酔が背を駆け抜ける。

「あっ……ぃや……や、ああ………」


 身悶えしながら感に入る寿々の屹立を無意識に締め付けて、ぞく……と内筒が脈打ち感じた。胸の尖りと屹立を同時に触られ、拓未は腰奥から快楽が駆け上がり、

「や、あっ、ああああっ!」

と、身悶える。

 びくびく……と身体を震わせて感極まると、締め付けていた屹立がゆっくりと動き始めた。

「ご……めん、も、限界」

 寿々が眉を少し寄せて、綺麗な顔を歪め、拓未の尻襞を押し開く。

「あっ……んっ、んっ」

 鈍い痛みはあるが耐えられないものではなく、擦られ達した屹立を腹で潰され、痺れるような感覚が再び全身を駆け巡り、拓未をひどく困惑させた。

「あっ……ぃや……いやだ……こんな……も……やめっ!」

 内筒がわななき痺れが下腹を支配して行き、一点を擦られると髪を振り乱し、寿々の背中に爪を立てる。

「拓未、気持ち……い……っ!」

 ぐ……ん!と奥底を抉られ、拓未は強烈な快楽に背を反らした。

「あああ~~~!」

「んんっ……イく……っ」

 マグマのように重い悦楽が脳天を貫き手足を痺れさせ、拓未は手足をベッドに沈める。

 初めての絶頂に重だるい下肢から寿々が退き、横抱きに抱かれて、額に、頬に、唇に、キスをされた。

「好き、拓未、拓未、好きだ、拓未は?」

「寿々じゃなきゃ……出来ないよ……こんな痛いのは……」

「僕のこと、好き?」

「好きだ……」

 好き……口に出すと甘く恥ずかしくて、拓未が腕から逃げようと身じろぎをすると、

「あ、シャワー浴びる?」

と、寿々が拓未を起こしてくれる。

「ん。あ、いやだな……血……?」

 白濁と染まる出血が、拓未の尻襞から流れ出て、慌てて膝を閉じた拓未を抱きしめて、挿入出による破瓜の出血を寿々に告げられ、拓未は全身を真っ赤にした。

「今度はちゃんと準備をするから」

 寿々が苦笑いした。




 拓未が部屋付きのシャワー室に行っている間に、寿々は学生服のポケットからスマホを出した。

 名前もうろ覚えの髪の長い女生徒のアドレスを消去する。それから拓未の襞から溢れた精液と血液が合わさった鈍朱の染みに指で触れた。

「拓未……可愛かった」

 女生徒はずっと拓未に視線を送ってきたから、寿々から声を掛けてみた。

 少し優しく接したら、寿々に告白してきたから、付き合っている振りをする。そうするといつも拓未は動揺を隠せないでいるのだ。何度となく繰り返してきた中で、やっと宝を手に入れた。

「大切に大切に守らないと」

 また、拓未のスマホが鳴る。先輩からだ。今度はどうやって引き離そうか。なんなら、自分もコンサートに行けばいい。眠くならなければいいけれど、と寿々はなかなか戻らない拓未の後を追い、シャワー室に入った。





「新在家先輩のピアノ。音が変わった……とても素敵」

 昼休みには音楽室でピアノの練習をしている拓未の音を、廊下で聴いている合唱部のメンバーから呟きが聞こえる。その中に寿々もいた。特別に昼休みの音楽室は拓未だけのものだ。

「北旭副部長もそう思いません?」

 パートリーダーに言われて、「ああ、そうかも」と鮮やかに笑う。

 しばらく弾いているのを聞いていると予鈴の鐘が鳴り、外で待っていた寿々が音楽室の扉を開ける。

「拓未、授業、始まるよ」

「ああ」

 拓未が笑った。
 
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