BLツイノベ短編集

亜沙美多郎

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義兄弟オメガバース

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 きっと生涯、この症状に慣れることはないだろう。

 熱っぽさを感じた次の瞬間には、息が上がっている。
 息苦しくて、眩暈がして、立っていられなくなる。周りの見る目が変わる瞬間だけは分かってしまうのが、実に酷だ。

「やばい。始まっちゃった」
 自分にしか聞こえないくらいの声で呟くと、帰宅する足を早めた。
 誰かに襲われる前に部屋に入らなければ……。

 こんな危険と一生付き合わなければいけない自分のバース性を、憎まずにはいられない。
 
 杜和とわが第二次性であるΩの性を発症したのは、十六歳の時。
 高一の夏休み期間中だった。タイミングだけは運が良かったと思う。
 しかし家には一つ年下の弟がいる。名前は琉生りゅうせい

 琉生は杜和に幼い頃からベッタリで、高校生になった今でも暇さえあれば一緒にいる。

 問題は琉生はαだということだ。
 杜和のΩの性は強く、抑制剤を服用していてもヒートを抑えられない。
 薬を飲んでいなければ、発情期中ではなくともフェロモンが出てしまう。

 そのくらい強いものだから、部屋に鍵をかけて篭っていても、廊下までフェロモンは溢れてしまうのだった。

(今日は確か、琉生は部活って言ってたな)

 頭の中で確認すると、おぼつかない足取りで可能な限り走って帰った。

 幸い、人通りの少ない所まで素早く移動できた。
 自分の足元だけに視線を集中させ、家に飛び込む。
 玄関に鍵をかけ、二階の自室へと急ぐ。
 殆ど四つん這いで階段を上がり、這って部屋に入った。

「はぁ……、はっ……」
 ドアに保たれ、そのまま倒れ込む。
 意識を失いそうになるが、どうにか腕を伸ばし、自室の鍵をかけた。

 荒い呼吸のまま制服を脱ぎ捨てると、ベッドの下の引き出しから琉生のTシャツを引っ張り出した。
 勢いよく鼻に押し当て匂いを吸い込む。

「ふ、ん……。りゅうせ……。んん……」
 琉生の香りは杜和の体内に染み渡り、安心させると共に、劣情をそそる。
 腹の奥の疼きを感じると、双丘の割れ目からはΩの分泌液が流れ出た。

 直ぐにこんな状態になってしまうので、服は直ぐに脱いで下着だけになるのだ。
 黒のボクサーパンツは既に濡れて、腿にまでΩの液が滴ってきた。
 ベッドに横になると、そっと窄まりに手を当てる。
 ほんの少しの刺激でも、体はビクンっと反応した。

「琉生……」
 弟を考えながら自慰に励むのは、罪悪感がある。
 それでも恋愛の類の感情を持ったことのない杜和にとって、身近にいるαの琉生が脳内を支配する。

 ぐっしょりと濡れている孔から指をぷつりと挿れると、さらに欲情した。
 昂りからは先走りの透明の液が滴り、乳首はピンと固くなった。
 片方の手で胸の突起を摘む。
「はぁ……。あっ、ん……」
 琉生から実際に触られたことはない。

 一度だけ、杜和のフェロモンに当てられて襲われかけたことがあった。
 去年の話だ。

 ヒートを起こした杜和は、琉生のα性を求めていた。
 琉生はまだバース性が発症したばかりで、強いオメガのフェロモンに抗えなかった。
 杜和を部屋で組み敷いていたところを母親が見つけ、引き剥がした。

「琉生を誘惑しないで!!」
 発狂に近い怒りをぶつけられ、自室で独りぼっちにされた。
 どんなに悲しくてもヒートが収まるわけではない。
 琉生を思い出しては自慰で果てた。

 発情期になるたび、その時のことがフラッシュバックのように再生される。
 何度も琉生の名前を呼びそうになるが、そのあとは唇を噛み締めて耐えた。
(琉生。琉生……助けて)
 声にならない叫びは、杜和の中に閉じ込められていく。

「んぁあっ!!」
 昂った先から、白濁が迸る。この状態が一週間ほど続く。
 普段は大人しい性格の杜和が、この期間は咽び泣き続けるのだ。

『杜和?? 杜和?? 大丈夫? 辛くない?』
 ドアの向こうから琉生の声がした。
 漏れたフェロモンで気付いたのだろう。
 上肢を起こし、ドアを見る。
 直ぐにでも開けて、琉生に抱かれたい。しかしそれが許される関係ではない。
 二人は兄弟なのだから……。


おしまい。
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