BLツイノベ短編集

亜沙美多郎

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双子のオメガが運命の番に同時に発情してしまったお話。

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 双子のオメガ。
 高校に入学した頃、共に発情期が始まった。

 弟はオメガ性が強く、薬の効きも悪い。
 すぐに発情期が安定した兄に比べ、周期も不安定だった。

 その頃から二人の性格にも違いが出てくる。
 弟は校内でアルファを食い漁るオメガとして、有名になっていった。
 それでは飽き足らず兄の恋人にまで手を出すようになる。

「兄さん達の愛が本物か、確かめてあげてるんだよ」
 嘲るように笑って言う。

 兄は恋人を取られたことよりも、弟の体が心配だった。
 アルファから抱かれるほどに、弟が崩れていく気がしていた。

 そんな矢先、兄に運命の番が現れる。大学からきた教育実習生。
 抑制剤だけで発情期を管理できていた兄が、初めてヒートに苦しめられた。

 しかし運命の番に反応したのは兄だけでは無かった。
 その対象は、弟にも向けられた。

 同時にヒートを起こした二人は別々の部屋に隔離され、注射を打たれた。

 兄はやがて楽になったが、弟は注射も効かなかった。
 双子だから、どちらでも運命の番になれるのかもしれない。
 自分だけの相手だと思いたかった。

 それでもヒートを起こしたことで、普段、弟がどれだけ苦しめられているかを知ってしまった。

 番を持つことで楽になれるなら、自分が身を引くしかないと諦める。

 彼の実習期間中はリモートで授業を受けた。
 姿を見ただけでヒートを起こしてしまう事番になったかもしれない。

 自分のようなオメガは『運命の番』など望んではいけない。

 今までで一番大きな失恋だった。

 教育実習期間も終わり、また平穏な日々が戻ってくる。

 その後も弟は、実習生と会っているようだった。
 あれ以来、アルファを食い漁る行為もなくなり、これで良かったと自分を慰める。

 兄は運命を諦めた。
 しかし、自宅で勉強していると、突然ヒートに見舞われる。
 何事かと思いきや、あの時の実習生が私室に入ってきたのだ。

「なんで、先生がここに? 弟は?」
「弟くんは、俺の兄貴の所にいる。やっと落ち着いたから、こうして会いにきた」

 兄は理解が追いつかない。
 実習生の兄はオメガ専用病棟の医師をしている。そして、そのに弟を連れて行ったところ、実習生の兄が、弟の『運命の番』だった。

 実習生の兄は、弟の担当医兼恋人して、オメガ性の調節をする治療に当たった。

「あの時、弟がヒート起こしたのは?」
「あれはきっと、君につられたんだろうと兄が言っていたよ。双子らしいね」

 実習生は微笑み「早く会いに来たかった」と言った。

「改めて言わせてほしい。君は俺の『運命の番』だ。恋人になって下さい」
 握った手が温かい。実習生の手を握り返し「お願いします」と泣きながら呟いた。

 二人はそのままベッドに雪崩こみ、ヒートが治るまで抱き合う。

 次の発情期で番になり、同じ頃、弟たちも番になった。

 おしまい。
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