BLツイノベ短編集

亜沙美多郎

文字の大きさ
上 下
19 / 33

恋人とのエッチ動画配信が同級生にバレたお話。

しおりを挟む
 恋人とのえっち配信してる受けちゃん。
 大学の陽キャ君にバレてしまった。

「なぁ、これお前だろ?首のホクロで分かった」
 動揺する受けちゃん。

「あなたには、関係ないです。放っておいてください」
 でも陽キャ君は引き下がらない。

「放っておけないから声かけたんだろ。お前さ、こんな暴力的なセックスされて、嫌じゃないの?」
 震える受けちゃん。

「そんな動画見てるってことは、あなたもゲイなんですか?」
 精一杯の抵抗のはずだった。
 しかし陽キャ君はあっさりと認める。

「俺、オープンだから」
 太陽のような笑顔を向けられても、どう反応していいか分からない。

 突然受けちゃんの腕を掴んできた陽キャ君。「な、なに?」
「震えてる。なぁ、本当は嫌なんじゃないの? あれはどう見てもDVだよ」

 そうだ、と言い返してやりたかった。
 暴力を振るわれようが、痴態を晒されようが、自分に断る権利はない。

「別に、普通だよ」
 ここで泣けば、自分が惨めになるだけだ。
 必死に強がるが、陽キャ君に通用しなかった。

「そんな男、やめろよ」
「あなたには、関係ない」
 そっとしておいてくれと頼んだが、即答で断られた。

「関係ある。俺、お前が好きなんだ。いつも静かに過ごしてるけど、窓越しに青空を見てる時にちょっと嬉しそうな表情になるの、綺麗だなって思って。それから目で追うようになった」

 陽キャ君は気付いてないんだと思った。
 動画配信は決まって雨の日。
 晴れの日は、えっちしなくていい日だから、無意識的に笑ってしまったのだろう。

 恋人という程で動画配信をしているが、実際は違う。

 中三の時、両親を事故で同時に亡くした受けちゃんは、親戚の家に預けられた。

 そこの息子は五歳上で、受けちゃんが家に来た時から性的嫌がらせが始まった。

 やがて一人暮らしを始めると、受けちゃんも「自分が面倒見る」と言って連れて行かれた。

 そこからはやりたい放題された。
 高校も大学も自分の親がいるから通えている。
 恩を体で払え。そう脅されていた。

「お前は俺の性奴隷だ」そう浴びせられた言葉は受けちゃんの心に深く刻み込まれた。

「兄さんは仕事の関係で雨の日は休み。だから雨の日は配信の日なんだ」
「そんなの、犯罪じゃないか」
 当たり前のように言うなと、怒りが込み上げる陽キャ君。

「俺が助けてやる」
「どうやって?僕は行く所もない。あのアパートから、出られない」
「俺の所に来いよ」

 そんなの、できっこないと断った。

「この動画、お前の体の痣が隠しきれてない。全然気持ちよさそうじゃないし。コメント見たことある? きっと遅かれ早かれ、この男は通報される」
「そんなの困る。本当に、住む所さえ奪われるし、大学も辞めないといけなくなる」
「だから、俺のとこに来いって言ってるだろ。洗脳されてるんだよ。この男に。とりあえず今日だけでも逃げて来い」

 その足で陽キャくんのマンションに向かう。

「こんな広いマンションで一人で住んでるの?」
「海外移住した祖父母が、たまには帰るから住んでて欲しいって言ってな。十分お前も一緒に住めるだろ?」

 今日は泊まっていけと言われ、帰りたくなかったから頷いた。
 夕方から、ひっきりなしに鳴る電話。
 親戚の兄からだった。

「貸して」
 陽キャ君がスマホを取り上げる。

「あんたの動画、通報したからな。もう、こいつは返さない」
 それだけ言うと電源を切った。

「本当に通報したの?」
「したよ。俺だけじゃない。あの動画の視聴者にDMして、それが広まってどれだけの人が通報したかは不明!」
「いつの間に……もう動画撮らなくていいの?」
「勿論だ。あんなこと二度とさせない」

 抱きしめられるのは苦手だった。
 大体その後、ベッドに投げ飛ばされていた。

 でも陽キャ君は大きな手で頭を撫でてくれている。
 声を上げて泣いた。
 泣き止むまでずっとそうしてくれていた。

 その内、眠くなって陽キャ君の腕に包まれて眠る。
 こんなに心地よく眠れたのは、久しぶりだ。

 翌日、親戚に全てを打ち明けた。
 泣いて謝り、これからも支援すると言って、自分の子供を警察に突き出した。

 仲が良いと勘違いしていたと、何度も頭を下げてくれた。

 自分は陽キャ君と一緒に住むと言って、アパートから出て行った。

「僕のことが嫌いになったら、いつでも追い出してくれて良いから」
「そんな未来は来ないから安心しろ」
 髪を悪戯に掻き乱す。

「今夜、改めてお祝いしようぜ。何かしたいことある?行きたいところでもいいし」
「じゃあ、頼みたいことがある」
「何?」
「恋人同士のえっちを教えて欲しい」
 陽キャ君は目を丸くした。

「嫌じゃないのか?」
「多分。分からないけど。全部、あなたの言う通りだったから」

 陽キャ君は受けちゃんを抱きしめる。

「絶対優しくするから、ほんのちょっとでも嫌だって思ったら言って?」
「分かった」

 夜を待ちきれずベッドに寝かせた。
 長いキスの後、時間をかけて愛し合った。
 受けちゃんはあまりの幸せな時間に、何度も泣いて、何度も果てた。

「今までの涙、全部流しておけよ。これからは笑うのに忙しくて、泣く暇もないだろうから」

 受けちゃんの涙を拭うように、キスをした。

 おしまい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

嘘つき純愛アルファはヤンデレ敵アルファが好き過ぎる

カギカッコ「」
BL
さらっと思い付いた短編です。タイトル通り。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

処理中です...