17 / 33
番になったばかりのαが、記憶喪失になってしまうお話。
しおりを挟む
スマホの終話ボタンを押さないまま、一心不乱に走り出した。
ナースの声がスピーカーから漏れている。
『○○さんの番のΩさんですか?今、αさんが事故で病院に運ばれまして。総合病院の……』
目の前が真っ暗になった。
先日、番になったばかりのαが意識不明で運ばれたとの電話。
病院に着くと、αは沢山の管を繋いだ状態で眠っていた。
「なんで……」
体に大怪我を負っているものの、顔は綺麗なまま。
眠っているだけにしか見えない。
今朝、仕事に見送った時は変わらぬ笑顔を見せてくれていたのに。
現状を受け入れられない。
ゆっくりと目を開けて「なんて顔してんだよ」って、そんな風に言われる気がして、
一時も離れられず、一睡もできず、αの目覚める瞬間を待った。
Ωの望みは叶わぬまま、時間だけが過ぎていく。
「命に別状はないの。いつ目覚めるかは、本人次第ね」
ナースが言う。
後に知ったのは、暴走した車に撥ねられそうになった子供を助けて、自分が犠牲になったと。
生きているのが奇跡と言えるほど、大きな事故だった。
「なぁ、起きてよ。寂しいよ」
αに話かけても反応はない。
「Ωさんも、ちゃんと食べて休んでください。そんなんじゃ、αさんが目覚めた時に悲しみますよ」
「はい……」
分かっていても、食欲はない。
頸の歯型がΩを慰めるように、ズキズキと痛む。
無情にも変化のないまま三ヶ月が過ぎた。
流石に仕事に復帰せざるを得なかったΩは、病院と仕事の往復に疲弊していた。
それでもαは絶対に目覚めると信じて通い詰める。
その願いがようやく叶えられた。
ある日病室に行くと、αがボヤッと天井を眺めている。
「α?目覚めたの?」
「……あなたは、誰?」
αは記憶を失っていた。
『僕は、番だよ』
その一言は言えなかった。
忘れられていたショックに、言葉を失い立ち尽くす。
後から入室したナースが、慌てて主治医を呼びに行った。
αが言う。
「教えてください。ここは病院ですよね?俺は一体なぜこんな所にいるんですか?」
αは事故をする前の記憶からないようだ。
主治医から全ての説明を受けたαは、ショックで頭を抱えた。
「自分の名前は、分かります。それより、番がいたなんて……」
パートナーのことを何一つ思い出せない自分を悔やんでいるようだ。
主治医がΩを紹介しようとしたが、Ωはそれを制止した。
αは元々はノンケだった。記憶を失って、自分が同性と番になったと知ったら、きっと余計に混乱させる。
主治医はそれでいいのか?と言ったが「運命の番だから、きっと思い出してくれます」と伝え、Ωのことは一先ず友人だと話してもらった。
これなら、側にはいられる。
「友達を忘れるなんて、俺って酷いやつだよな」
「仕方ないよ。生きてて良かった」
本当に、僅かにもΩを覚えていない。
何度も涙を堪え、平然を装う。
「友達だからって、毎日世話しに来なくていいよ」
そんなことを言われるのも悲しかった。
「実は、ルームシェアしてるんだ。だから頼ってよ」
「俺と、君が?」
「そうなんだ。まだ二ヶ月くらいだけど」
「……俺、忘れてる……」
αも記憶を失ったことにショックを受けている。
自分がしっかりしなくちゃ。
きっと、いつかは思い出してくれるはずだから。
「無理に考えると頭痛くなるって先生が言ってたし、徐々に、ね?」
「あぁ、同居人が優しいやつで良かったよ」
「うん」
同居人……言葉の一つ一つに、胸が張り裂けそうになる。
それでもその後なんとか退院し、一緒にマンションに帰った。
「ここで住んでたんだ」
部屋を見渡すα。
「いい所でしょ?αが見つけて来てくれたんだよ」
「俺の部屋は?」
「αはこっちね」
入院している間に個室にしておいた。もう一緒には寝られない。でも、なるべく刺激を与えない方がいいと判断した。
わざわざ買った大きなベッドも意味をなくした。
二人が番になったベッド。見るのも辛くて部屋を出る。
一部屋余っていたのが幸いだったと言い聞かせる。
自室に入って気持ちを落ち着かせていると、αが入ってきた。
「え?Ωの部屋はこんなに狭いの?俺って最低じゃん」
「違うよ。僕が選んだの。ほら、こっちは中から鍵も閉められるし。僕、Ωだから……」
その一言で察したようだ。一瞬、顔を歪ませた気がした。
「あの、もし迷惑かけそうだと思ったら、発情期の間は出ていくから。大丈夫、だから……」
「あ、うん。了解」
番になっているから、発情期にはαにだけフェロモンが届いてしまう。
次の発情期まで期間があるのが助かった。
それからはバタバタとした日が続き、余計なことを考える時間はなくなる。
夜も寝るだけに帰るようになった。
なるべく顔を合わせたくない。別れたくもない。傷つきたくない。
感情が混ざり合って、情緒が乱れやすくなった。
こっそりと持っていたαのタバコを取り出す。
やめると言いながら、結局吸っていたのを知っていた。
αがいないのを確認してから、ベランダで火をつける。
「αの匂いだ」
思い出の香りに、涙腺が緩むともうダメだった。
張り詰めていたものが切れ、蹲って泣きじゃくる。
あの時に戻りたい。
αの名前を繰り返し呼ぶ。
頸の歯型を撫でる。
生きていてくれたから、いいじゃないか。
自分に言い聞かせても、今のαが別人に思えて仕方ない。
信じたいのに……。
でも、αの前では泣けない。
不安にさせるから。
αが帰ってきたら笑うから。
だから、だから、今だけは……。
燻るタバコを消した時、αがベランダに出てきた。
「ねぇ、Ωの番って、俺なんでしょ?」
「えっと、それは……」
「本当のこと教えてよ。そのタバコ、俺のだよね?」
Ωの手から取り上げる。
長年吸っていたタバコは覚えてるんだ。
でもそれより長く、Ωとαは一緒の時間を過ごした。
高校生の頃から憧れの存在だったα。ノンケだと知っていたから望まなかった。
友人の一人。その程度の関係性でも嬉しかった。
Ωは卒業式の後、発情期に入る。助けてくれたのがαだった。
「助けて……」
Ωを救う為αは抱いてくれた。
「ごめん。男なのに、こんなことさせて。ごめん……」
「今だけだ。忘れろ」
使われていない教室で何時間も体を重ねる。
結果的に、それがきっかけとなり付き合う運びになった。
「抱いて分かったんだけど、俺たち、番になる運命だよ。絶対」
それからお互い大学を卒業し、就職してやっと手に入れた幸せだった。
それでも、Ωのことは存在すら忘れられている現実。
「……僕も、前からこれ吸ってて……」
「なんでそんな嘘つくんだ?俺さ、怖いんだよ。断片的にしか思い出せなくて。学生の頃の記憶はなんとなくあるんだけど、近い記憶ほどなくて。こんなマンションでルームシェア?そんなわけないじゃん。ファミリー向けマンションだよ、ここ。その噛み跡誰が付けたんだよ?」
「……」
全てを話していいのかまだ葛藤がある。
「ためらうってことは、そうなんだろ?」
「真実を知ると、きっとαは傷つくから」
「それでもいいから教えてくれ」
「……僕の番はαだよ」
「なんですぐに言わなかった?」
「αは、もとはノンケだった。記憶がないのに男と番になったなんて、ショックだろ?」
αはタバコに火をつけ大きく吸い込むと、ゆっくり煙を吐き出した。
「この味は覚えてる」
そう呟くと、今度はΩを引き寄せ口付けた。
「な、なにして……」
「思い出すかと思って。Ωの味」
「んっ」
泣き始めると、何度でも涙が溢れてしまう。
もう触れることはないと思っていたαの唇。この感覚をずっと覚えている。
αは記憶を失っても、以前と変わらない貪るようなキスをする。
Ωは控えめにαの服を掴み、口付けを受け入れる。
「一緒……だよ」
「何が?」
「君のキス。前と一緒」
「番を泣かせてる自分が不甲斐ない」
Ωは頭を横に振り「そんなことないよ」と言う。
記憶を失っているαの方が、余程生きにくいと、頭では分かっていたはずだ。
それなのに、あれだけ愛し合っていた自分を思いださないことが辛かった。
それが如何に自分本位だったか……と、Ω自身を責めた。
こんなことを言うと、αを困らせてしまう。
分かっていて話したことを、ごめんなさいと謝った。
αはΩを抱き上げ、寝室のベッドに連れて行った。
「俺はどんな風にΩを抱いてた?」
「やさしくて情熱的で、たまにちょっと意地悪だった」
「そう……」
やはり、思い出せないようだった。
「嫌じゃないの? 男と寝るの」
「嫌じゃない。病院で目覚めた時から、なんとなくとても大切な存在のような気がしてた。確信が持てなかったけど、番って言われて、しっくりきた」
αは思い出すまで抱かせてほしいと、Ωを組み敷く。
身体中にキスを落としていく。
それはかつてαもしてくれていた。
やはり、記憶を失っても本能でΩの愛し方を覚えてる。
Ωはそれだけで十分だと思った。
数ヶ月ぶりに体を重ね、Ωは発情した。
周期的にそろそろだった。
「ねぇ、もう一回噛ませて。上書きしたい。新しい自分として」
「噛むのは、思い出してからでいい」
「今がいいんだ。俺はきっと何度でもΩに恋をする」
自分の噛み痕の上から、新しい歯型を刻んだ。
「今度こそ忘れない。Ωが大切な存在だってこと。過去を思い出しても思い出さなくても、俺はΩが好きだよ」
繋がったまま何度も口付けた。
「俺を見捨てないでいてくれて、ありがとね」
αの笑顔は、前にも増して優しくなった。
二人の絆がより深くなった。
おしまい。
ナースの声がスピーカーから漏れている。
『○○さんの番のΩさんですか?今、αさんが事故で病院に運ばれまして。総合病院の……』
目の前が真っ暗になった。
先日、番になったばかりのαが意識不明で運ばれたとの電話。
病院に着くと、αは沢山の管を繋いだ状態で眠っていた。
「なんで……」
体に大怪我を負っているものの、顔は綺麗なまま。
眠っているだけにしか見えない。
今朝、仕事に見送った時は変わらぬ笑顔を見せてくれていたのに。
現状を受け入れられない。
ゆっくりと目を開けて「なんて顔してんだよ」って、そんな風に言われる気がして、
一時も離れられず、一睡もできず、αの目覚める瞬間を待った。
Ωの望みは叶わぬまま、時間だけが過ぎていく。
「命に別状はないの。いつ目覚めるかは、本人次第ね」
ナースが言う。
後に知ったのは、暴走した車に撥ねられそうになった子供を助けて、自分が犠牲になったと。
生きているのが奇跡と言えるほど、大きな事故だった。
「なぁ、起きてよ。寂しいよ」
αに話かけても反応はない。
「Ωさんも、ちゃんと食べて休んでください。そんなんじゃ、αさんが目覚めた時に悲しみますよ」
「はい……」
分かっていても、食欲はない。
頸の歯型がΩを慰めるように、ズキズキと痛む。
無情にも変化のないまま三ヶ月が過ぎた。
流石に仕事に復帰せざるを得なかったΩは、病院と仕事の往復に疲弊していた。
それでもαは絶対に目覚めると信じて通い詰める。
その願いがようやく叶えられた。
ある日病室に行くと、αがボヤッと天井を眺めている。
「α?目覚めたの?」
「……あなたは、誰?」
αは記憶を失っていた。
『僕は、番だよ』
その一言は言えなかった。
忘れられていたショックに、言葉を失い立ち尽くす。
後から入室したナースが、慌てて主治医を呼びに行った。
αが言う。
「教えてください。ここは病院ですよね?俺は一体なぜこんな所にいるんですか?」
αは事故をする前の記憶からないようだ。
主治医から全ての説明を受けたαは、ショックで頭を抱えた。
「自分の名前は、分かります。それより、番がいたなんて……」
パートナーのことを何一つ思い出せない自分を悔やんでいるようだ。
主治医がΩを紹介しようとしたが、Ωはそれを制止した。
αは元々はノンケだった。記憶を失って、自分が同性と番になったと知ったら、きっと余計に混乱させる。
主治医はそれでいいのか?と言ったが「運命の番だから、きっと思い出してくれます」と伝え、Ωのことは一先ず友人だと話してもらった。
これなら、側にはいられる。
「友達を忘れるなんて、俺って酷いやつだよな」
「仕方ないよ。生きてて良かった」
本当に、僅かにもΩを覚えていない。
何度も涙を堪え、平然を装う。
「友達だからって、毎日世話しに来なくていいよ」
そんなことを言われるのも悲しかった。
「実は、ルームシェアしてるんだ。だから頼ってよ」
「俺と、君が?」
「そうなんだ。まだ二ヶ月くらいだけど」
「……俺、忘れてる……」
αも記憶を失ったことにショックを受けている。
自分がしっかりしなくちゃ。
きっと、いつかは思い出してくれるはずだから。
「無理に考えると頭痛くなるって先生が言ってたし、徐々に、ね?」
「あぁ、同居人が優しいやつで良かったよ」
「うん」
同居人……言葉の一つ一つに、胸が張り裂けそうになる。
それでもその後なんとか退院し、一緒にマンションに帰った。
「ここで住んでたんだ」
部屋を見渡すα。
「いい所でしょ?αが見つけて来てくれたんだよ」
「俺の部屋は?」
「αはこっちね」
入院している間に個室にしておいた。もう一緒には寝られない。でも、なるべく刺激を与えない方がいいと判断した。
わざわざ買った大きなベッドも意味をなくした。
二人が番になったベッド。見るのも辛くて部屋を出る。
一部屋余っていたのが幸いだったと言い聞かせる。
自室に入って気持ちを落ち着かせていると、αが入ってきた。
「え?Ωの部屋はこんなに狭いの?俺って最低じゃん」
「違うよ。僕が選んだの。ほら、こっちは中から鍵も閉められるし。僕、Ωだから……」
その一言で察したようだ。一瞬、顔を歪ませた気がした。
「あの、もし迷惑かけそうだと思ったら、発情期の間は出ていくから。大丈夫、だから……」
「あ、うん。了解」
番になっているから、発情期にはαにだけフェロモンが届いてしまう。
次の発情期まで期間があるのが助かった。
それからはバタバタとした日が続き、余計なことを考える時間はなくなる。
夜も寝るだけに帰るようになった。
なるべく顔を合わせたくない。別れたくもない。傷つきたくない。
感情が混ざり合って、情緒が乱れやすくなった。
こっそりと持っていたαのタバコを取り出す。
やめると言いながら、結局吸っていたのを知っていた。
αがいないのを確認してから、ベランダで火をつける。
「αの匂いだ」
思い出の香りに、涙腺が緩むともうダメだった。
張り詰めていたものが切れ、蹲って泣きじゃくる。
あの時に戻りたい。
αの名前を繰り返し呼ぶ。
頸の歯型を撫でる。
生きていてくれたから、いいじゃないか。
自分に言い聞かせても、今のαが別人に思えて仕方ない。
信じたいのに……。
でも、αの前では泣けない。
不安にさせるから。
αが帰ってきたら笑うから。
だから、だから、今だけは……。
燻るタバコを消した時、αがベランダに出てきた。
「ねぇ、Ωの番って、俺なんでしょ?」
「えっと、それは……」
「本当のこと教えてよ。そのタバコ、俺のだよね?」
Ωの手から取り上げる。
長年吸っていたタバコは覚えてるんだ。
でもそれより長く、Ωとαは一緒の時間を過ごした。
高校生の頃から憧れの存在だったα。ノンケだと知っていたから望まなかった。
友人の一人。その程度の関係性でも嬉しかった。
Ωは卒業式の後、発情期に入る。助けてくれたのがαだった。
「助けて……」
Ωを救う為αは抱いてくれた。
「ごめん。男なのに、こんなことさせて。ごめん……」
「今だけだ。忘れろ」
使われていない教室で何時間も体を重ねる。
結果的に、それがきっかけとなり付き合う運びになった。
「抱いて分かったんだけど、俺たち、番になる運命だよ。絶対」
それからお互い大学を卒業し、就職してやっと手に入れた幸せだった。
それでも、Ωのことは存在すら忘れられている現実。
「……僕も、前からこれ吸ってて……」
「なんでそんな嘘つくんだ?俺さ、怖いんだよ。断片的にしか思い出せなくて。学生の頃の記憶はなんとなくあるんだけど、近い記憶ほどなくて。こんなマンションでルームシェア?そんなわけないじゃん。ファミリー向けマンションだよ、ここ。その噛み跡誰が付けたんだよ?」
「……」
全てを話していいのかまだ葛藤がある。
「ためらうってことは、そうなんだろ?」
「真実を知ると、きっとαは傷つくから」
「それでもいいから教えてくれ」
「……僕の番はαだよ」
「なんですぐに言わなかった?」
「αは、もとはノンケだった。記憶がないのに男と番になったなんて、ショックだろ?」
αはタバコに火をつけ大きく吸い込むと、ゆっくり煙を吐き出した。
「この味は覚えてる」
そう呟くと、今度はΩを引き寄せ口付けた。
「な、なにして……」
「思い出すかと思って。Ωの味」
「んっ」
泣き始めると、何度でも涙が溢れてしまう。
もう触れることはないと思っていたαの唇。この感覚をずっと覚えている。
αは記憶を失っても、以前と変わらない貪るようなキスをする。
Ωは控えめにαの服を掴み、口付けを受け入れる。
「一緒……だよ」
「何が?」
「君のキス。前と一緒」
「番を泣かせてる自分が不甲斐ない」
Ωは頭を横に振り「そんなことないよ」と言う。
記憶を失っているαの方が、余程生きにくいと、頭では分かっていたはずだ。
それなのに、あれだけ愛し合っていた自分を思いださないことが辛かった。
それが如何に自分本位だったか……と、Ω自身を責めた。
こんなことを言うと、αを困らせてしまう。
分かっていて話したことを、ごめんなさいと謝った。
αはΩを抱き上げ、寝室のベッドに連れて行った。
「俺はどんな風にΩを抱いてた?」
「やさしくて情熱的で、たまにちょっと意地悪だった」
「そう……」
やはり、思い出せないようだった。
「嫌じゃないの? 男と寝るの」
「嫌じゃない。病院で目覚めた時から、なんとなくとても大切な存在のような気がしてた。確信が持てなかったけど、番って言われて、しっくりきた」
αは思い出すまで抱かせてほしいと、Ωを組み敷く。
身体中にキスを落としていく。
それはかつてαもしてくれていた。
やはり、記憶を失っても本能でΩの愛し方を覚えてる。
Ωはそれだけで十分だと思った。
数ヶ月ぶりに体を重ね、Ωは発情した。
周期的にそろそろだった。
「ねぇ、もう一回噛ませて。上書きしたい。新しい自分として」
「噛むのは、思い出してからでいい」
「今がいいんだ。俺はきっと何度でもΩに恋をする」
自分の噛み痕の上から、新しい歯型を刻んだ。
「今度こそ忘れない。Ωが大切な存在だってこと。過去を思い出しても思い出さなくても、俺はΩが好きだよ」
繋がったまま何度も口付けた。
「俺を見捨てないでいてくれて、ありがとね」
αの笑顔は、前にも増して優しくなった。
二人の絆がより深くなった。
おしまい。
36
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。


僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載


別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる