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執着系妖狐の結婚計画~この度、九尾の狐に嫁入りすることになりました~
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「こんな所に旅館?」
迷い込んだ山奥で、不思議な旅館を発見した。
立派な門を潜ると、待ち構えていたように背の高い男性が頭を下げる。
『お待ちしておりました』
その背後には真っ白な狐の尻尾が見えていた。
(妖怪? まさか、でもあれは……)
とんでもない所に来てしまったと冷や汗を流す。狐の男性は頭を上げると、スッと釣り上がった目を細めてニッコリ笑った。
「あの、僕は道に迷っただけで……」
『変ですね。そろそろ来る筈なのですが』
頭を捻りながら『まぁ、中へ』と、案内される。狐の尻尾は本物だった。
まだ現状を把握できない。狐の男性は、予約表を指で辿り確認している。
『あぁ、やはり貴方様です。名前は……』
「え?」
読み上げた名前は、間違いなく自分のものだった。
「そんなハズはありません」
戸惑う自分に、狐の男性は再び目を細くしてニッコリと微笑み、話し始めた。
狐は、満月の夜に結婚する。
今夜が私が結婚する日。そして……と言った。
『あなたが、私と結婚する人です』
「急に言われても困ります」
『番になれるのですよ?』
狐の男性は、人差し指と中指を揃えて立て、呪文を唱え始めた。
地鳴りと共に旅館ごと揺れる。
人間に化けていた姿を元の妖に戻した。
体が一回り大きくなり、頭には狐の耳、そして九本の尻尾。
『約束をしただろう。大人になったら結婚すると』
そう言われてようやく思い出したことがある。
幼い頃、古い神社の裏で綺麗な顔の男の子とよく遊んでいた。
いつもピカピカのどんぐりをくれるから好きだった。
『ねぇ、私と結婚してくれる?』
「うん、いいよ」
まだ結婚が何かも分かっていない年齢だった。その後引っ越して、その神社にも行かなくなる。
「もしかして、あの時の?」
九尾の狐は満面の笑みを見せた。
今まで、ずっと見守っていたと言った。
そういえば昔、狐の守護霊がいると言われたことがある。
「結婚するよ」
九尾の狐の血が混じった杯を交わし、自分も妖になった。
満月に見守られ初夜を迎える。九尾の狐から、熱い愛を受け取った。
生涯幸せに過ごしましたとさ。
おしまい。
迷い込んだ山奥で、不思議な旅館を発見した。
立派な門を潜ると、待ち構えていたように背の高い男性が頭を下げる。
『お待ちしておりました』
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(妖怪? まさか、でもあれは……)
とんでもない所に来てしまったと冷や汗を流す。狐の男性は頭を上げると、スッと釣り上がった目を細めてニッコリ笑った。
「あの、僕は道に迷っただけで……」
『変ですね。そろそろ来る筈なのですが』
頭を捻りながら『まぁ、中へ』と、案内される。狐の尻尾は本物だった。
まだ現状を把握できない。狐の男性は、予約表を指で辿り確認している。
『あぁ、やはり貴方様です。名前は……』
「え?」
読み上げた名前は、間違いなく自分のものだった。
「そんなハズはありません」
戸惑う自分に、狐の男性は再び目を細くしてニッコリと微笑み、話し始めた。
狐は、満月の夜に結婚する。
今夜が私が結婚する日。そして……と言った。
『あなたが、私と結婚する人です』
「急に言われても困ります」
『番になれるのですよ?』
狐の男性は、人差し指と中指を揃えて立て、呪文を唱え始めた。
地鳴りと共に旅館ごと揺れる。
人間に化けていた姿を元の妖に戻した。
体が一回り大きくなり、頭には狐の耳、そして九本の尻尾。
『約束をしただろう。大人になったら結婚すると』
そう言われてようやく思い出したことがある。
幼い頃、古い神社の裏で綺麗な顔の男の子とよく遊んでいた。
いつもピカピカのどんぐりをくれるから好きだった。
『ねぇ、私と結婚してくれる?』
「うん、いいよ」
まだ結婚が何かも分かっていない年齢だった。その後引っ越して、その神社にも行かなくなる。
「もしかして、あの時の?」
九尾の狐は満面の笑みを見せた。
今まで、ずっと見守っていたと言った。
そういえば昔、狐の守護霊がいると言われたことがある。
「結婚するよ」
九尾の狐の血が混じった杯を交わし、自分も妖になった。
満月に見守られ初夜を迎える。九尾の狐から、熱い愛を受け取った。
生涯幸せに過ごしましたとさ。
おしまい。
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