BLツイノベ短編集

亜沙美多郎

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全寮制の寮の自室で、ショタになってしまった地味かわ系ベータくんは、無事元の姿に戻れるのか?

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 通販で買った怪しい薬を飲んだところ、10歳くらいのショタになってしまった。

『どんな人でも可愛くなれる』そんな謳い文句に惹かれたのを後悔しても遅い。
 子供の頃は可愛くて、幼稚園では人気者。
 しかしベータと診断されてからは平凡な男に転落。人生のピークは呆気なく終了。

 全寮制の高校に入り、同室の奴は自他ともに認めるイケメンアルファ様。
 勉強もスポーツも出来て、その上性格までいい。

 約一年という時間を一緒に過ごしているが、未だに彼の弱点を見つけたことがない。
 それが余計に、可愛かった頃に戻りたい欲求を駆り立てた。

 僕だってあの頃は……。
 過去の栄光に縋りたくもなる。

 しかしまさか、『可愛くなれる』が子供に戻るなんて!?まさか!?
 いや、そのまさかが現実になっている。
「どうしよう……」
 声まで子供になってるなんて。

 こんなの同室のアルファに見られたら大変だ。
 けれども何も突破口は思いつかない。
 そしてあっさりと見つかってしまう。

「え、誰? ベータ君の弟かな? 来るって言ってたっけ? お名前は?」
 突然現れた子供への対応も完璧だ。
 このまま泣きつきたくなる包容力。

(そうか、僕は今、子供だから甘えてもいいんだ)
「助けて……」
 アルファに泣いて抱きついた。
 さすがのアルファも慌てたが、泣いてる子供をあやす事を優先する。

「大丈夫だよ。泣き止んだらお話できる?」
 膝に乗せて包み込み、泣き止むまで背中を撫でてくれた。

 実は前からアルファに惹かれていたが、今ハッキリと恋心を自覚した。
 こんなに優しくされて、好きにならない奴はいないだろう。

「僕、実は同室のベータなんだ。変な薬でショタ化しちゃって」
「どうりで! 似てると思った」
「似てなんかないよ。今の僕なんて平凡そのもの。可愛かったのは幼稚園までだ」

 アルファはそんな事ないけどな。
 なんて、頬の涙を拭ってくれた。

「それで、飲んだはいいけど戻り方が分からないってこと?」
「うん」

 アルファに薬の箱を渡すと、ググッたりSNSで検索したりして方法を探してくれた。

「……解決策は1つしか無さそうだよ」
「な、なに?」
「大好きな人から愛されること。だって」
「そんな……」

 絶望的だ。
 こんなタイミングでアルファを好きだなんて言えるわけない。

 男子校だから堂々とカミングアウトしてる生徒も少なくないが、その多くはアルファとオメガのカップルで、番の約束をしている。

 ベータはバース性の通り、平凡な日々を送るのみ。

 アルファはオメガのもの。ベータがアルファに恋なんて、そんなのは烏滸がましい。

「好きな人とかいないの?」とアルファに聞かれ、あからさまに動揺してしまった。
「いるけど……でも、報われない恋かな」
「先生とか?」
「そうでは無いけど」
「じゃあ、恋人のいる人とか? 同じ学校? 学年は?」

 ぐいぐい迫るアルファに言葉を失う。
 これが自分に興味を持っての事なら嬉しいけど、あくまで問題を解決するのだけが目的。

 それで「僕が好きなのはあなたです」なんて言おうものなら、より困らせる事になる。
 しかもこれで振られたら、一生元の姿には戻れなくなるのが確定される。

「はぁ……」大きなため息を吐いた。
「凄く人気のある人だから、相手になんてされないよ」
「そんなにカッコイイ人なの?」

 目の前にいるお前だぞ。と思いながら、そうだと言ってやった。
 打ち明けることも叶わないなら、日頃の思いの丈をぶちまけようと思った。

「その人は顔も良いし、性格も優しいし、オシャレだし……」
 こうして、人のピンチに付き合ってくれる。
 あぁ、ダメだ。自覚した途端、好きが溢れてたまらなくなってしまった。

 ショタというのを逆手にとって、今のうちに甘えられるだけ甘えよう。
 アルファの懐に顔を埋め、黙り込んだ。

「そんな良いやつがいるんだ」
 なんて呑気に言ってる。自覚がないのだろうか。

「ベータ君から想われてるなんて、そいつが羨ましいよ」
「は? そんなワケないじゃん。僕から好かれても何もメリットないよ」
 人気者には平凡人間の気持ちなんて分からないのだろう。

「……他の方法も探してみる」
 アルファの膝から降りた。
 アルファには、いずれ番になるオメガが現れる。
 自分は、素敵な平凡ベータと出会うまでは元には戻れないだろう。

 いや、素敵な平凡ベータと出会ったところで愛されなければ意味が無い。

「これってもし、誰からも愛されなければ十歳の自分のままなのかな?」
 それはそれで色々と困ってしまう。
 先行きが不安過ぎて、ため息しか出ない。

 明日が週末という事だけが僅かな救いだ。

「あの、お願いがあるんだけど」
 アルファに部屋に食事を運んで欲しいと頼んだ。

「なんだ、そんな事?」
 何となく落胆した様子を見せる。
 アルファは立ち上がった僕を再び膝に乗せた。

「ねぇ、俺にしない?」
「なにが?」
「ベータ君の好きな人、俺じゃ駄目? そりゃ1年近くも同室だと、幻滅されるような醜態も晒したかもしれないけどさ」
「そんな姿、一度だって見たことない! 君はいつでも完璧なアルファだよ。僕には釣り合わない」
「なんで自分をそんなに否定するの?」

 アルファは、俺なら全身全霊で愛してあげられると言った。
「ベータ君の好きな人の名前、教えてよ。じゃないと諦められない。俺、前からベータ君が好きだったんだ。好きな人が困ってる時に助けられないなんて、辛すぎる」

 アルファは真剣な表情でベータを見つめる。
 誤魔化しは効かない。そう言われているようだった。

「僕のどこに好きになる要素があるんだよ」
「好きになるのに理由なんて必要かな? 優しいやつも、面白いやつも沢山いるけど、優しいベータ君は1人しかいないし、面白いベータ君だって、君1人しかいない。それが唯一無二って事なんじゃないの?」

 ここまで言われてしまうと、もう逃げきれない。
 深呼吸をすると、アルファと改めて向き合い、アルファの名前を呼ぶ。

「僕も、君が好き」
「本当に?」
「嘘なんてつかないよ」
 子供らしく口を尖らせる。

 その唇にアルファの唇が重なった。
「じゃあ、元の姿に戻るまで、いっぱい愛してあげるね」
「へ、あ、そんな……いきなり……」
 子供になった小さな口に、深い口付けが施される。
 呼吸すら、ままならない。
 それでも、こんなにも気持ち良くされると、体の力が抜けて身を委ねるしか出来ない。

「ごめん。嬉しすぎて夢中になってた。苦しい?」
 ふるふると顔を振る。
「もっと、して欲しい」
「子供の顔で言われると、背徳感だな」
「その割には口元が緩んでるけど」

「バレた?」なんてイタズラに笑う。

「変な薬のお陰で両思いになれるなんてね。感謝しないと」
「それは元の姿に戻ってから言ってよ」
「大丈夫。責任もって頑張るから♡」
「ふっ、ん……」

 アルファはキスを続けながら、身体中を愛撫した。
 子供であっても、体の昨日は高校生。
 中心はしっかりと昂っている。

 アルファは大きな手で握ると、扱いてイカせてくれた。
「っんぁ、ごめん。手、汚した」
「いいよ、もっと頂戴。早く元の姿に戻るように」

 アルファはベータが元に戻るまで抱いてくれた。

 身体中に鬱血の痕が付いていく。

 そうして丸一日抱き潰された頃、ようやく元の姿に戻れた。

「わっ、戻った! 良かった……良かったぁ」
「本当にベータくんだったんだね。子供のベータくんも可愛いけど、やっぱりいつものベータくんがいいな」
「ありがとう。付き合ってくれて」
「このくらい、いつでも付き合うよ。でも、今はまだベータくんが足りてないから今度こそ最後まで抱いていい?」
「う、うん……」

 子供の体ではできることに限界がある。
 アルファは改めてベータの孔を解し、一つに繋がった。

「やっと一つになれた」
 アルファは、馴染むまで動かないでいると言い、繋がった状態で最奥をぐりぐりと押す。
 それがずっと前立腺を刺激していて、なんだかムズムズと変な感覚に襲われた。

「え、あ、だめ。出る。一回抜いて」
「感じるんだろ? もういっぱいイったもんね。今が一番感じるんじゃない?」
 アルファは抜くどころか、さらに奥に這入るようベータの体を起こし、自分に跨らせた。
「やら、あっ、くる……ぁぁああああっっ」
 サラサラの水飛沫が盛大にアルファのお腹を目掛けて飛び散る。
 それは吐精よりも長く続いた。

「おしっこ、漏らしちゃった」
「ベータくん、これは潮だよ」
「そうなの? 僕って潮吹いちゃったの?」
「こんなに気持ちよくなってくれて嬉しい。これからもっと気持ちよくなろうね」
「もう、今日は無理……」
「でも俺はイってないから」

 そうだった。自分ばかりが気持ちよくさせてもらっていたことに気付くと、途端に申し訳なくなった。

「イくまで付き合ってね」
「うん」

 こうして、アルファが三回達するまで抱き潰された。

 二人は恋人になり、寮での生活がより楽しくなった。

(実は、薬の効果が切れると元の姿に戻ると箱に書いてあったのは秘密にして、薬の箱をこっそり捨てていたアルファでした)

 おしまい。
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