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βのDKが運命の番に出会ってΩに突然変異しちゃったお話。
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「お前、運命の番だ」
突然声をかけてきたのは学校で一番有名な先輩α。
Ω大好き遊び人。見た目よし家柄よし、成績トップの超絶ハイスペック男子。
「僕はβです」
嘘ではない。発情期なんて経験はないし、甘い香りもしない。
抑制剤も飲んだことがない。
揶揄われているのかと思った。
それでも先輩は引く様子は見せない。
「そんなハズない。お前を見た瞬間、雷に打たれたような衝撃が走った。これは運命以外の何者でもない」
「そんなこと言われても困ります。僕、好きな人いるし」
「恋人?」
「片思いですけど」
「ふっ」
鼻で笑われた。
「僕はバース性だけで人を判断しません」
現に好きな人もαだ。
『βはβと』そんな時代はもう終わった。多分。
先生はバース性に関係なく、公平に接してくれる。そんな所を好きになった。この恋心は自分だけのものだから、大切に育んでいる……のに……。
「で、誰?」
「何がですか?」
「好きな人」
「教えるわけないでしょ」
また鼻で笑う。
こんな人を相手にしても埒が明かない。
どうせ暇つぶしに適当な人を捕まえて遊んでいるだけだ。
「バイトあるんで、失礼します」
立ち上がった瞬間、へたり込んだ。
「へ?何これ」
腰から力が抜けて、立ち上がれない。
顔が逆上せて頭がボーッとする。虚な目で先輩を見た。
先輩がしゃがんで「ほらね」と微笑む。
「違う。僕は本当にβで」
「俺が間違うはずないだろ。細胞レベルで相性がいいやつじゃないと、魂の番は反応しないんだよ」
それくらい知ってるだろ。なんて言いながら担ぎ上げる。
「どこに連れてく気ですか?」
「保健室に決まってんだろ。抑制剤打たねぇと、そこら辺のαに襲われてもいいわけ?」
「い、嫌です」
素直に言うと、得意気に笑って頬にキスをした。
「は? 何ですか、いきなり!?」
「ははっ、おもしれー反応」
完全に遊ばれている。
でも、この先輩が運んでくれいるからか、他のαの生徒は寄ってもこない。
保健室のドアを開けると「兄貴、いる~?」と声をかける。
「兄貴? 保健の先生が?」
「あぁ。お前が好きなのって、俺の兄貴だったんだ」
あっけらかんと言う。
確かに顔が似てると思ったことはある。
年の離れた兄がいると聞いたこともある。
でも、本当に兄弟だなんて思いたくなかった。
「兄貴、番になる人いるよ」
「なんでそんなこと言うんだよ!!」
こっちは突然ヒートを起こして困惑していると言うのに、強制的に失恋までさせられるなんて。
最悪だ。
先生は先輩に注意しながらベッドへと誘導する。
「これはバース性の突然変異だね。運命の力でなるんだよ」
先生が優しい表情で説明する。
「注射打ったから、しばらく休んでね」
同じ血筋なら、先生と運命の番になりたかった。
「こらこら、兄貴の方が良かったって顔に書いてるぞ」
「当たり前です!こんな無理矢理」
「は? お前だけが苦しいわけねぇだろ」
そう言われて、ようやく先輩の顔をまともに見た。
眉根に皺を寄せ、呼吸がどんどん荒くなってる。
先生が先輩にも注射をした。
「お前のフェロモンに当てられたから、気付いたに決まってんだろ」
そりゃそうだ。Ωがヒートを起こすのは、近くに相性のいいαがいるからだ。
それでも先輩は冷静に判断し、対応してくれた。
「ごめんなさい」
「素直に言えんじゃん。兄貴、注射打ったからここにいてもいい?」
「いいけど、刺激を与えると意味なくなるんだけどな」
「学校でしねぇよ。しかも兄貴の前で」
「変な事、言わないで下さい」
「反抗する元気があるなら大丈夫だな。抑制剤効くまで横になってろ」
頭を撫でられる。
なるほど、この人がモテる所以が分かった気がする。
「逆に先輩は、僕みたいなのが運命でいいんですか? 別にバース性だけで決めなくても良いと思いますけど」
「言ってろ。そのうち、俺じゃないと嫌だって言わせてやるから」
「自信満々ですね」
「お前もな。ほら、今は寝ろよ。居てやっから」
少し乱暴だけど、優しさが伝わってくる。
もう間違いなく、心は揺らいでいるけれど……悔しいからまだ言ってやらない。
おしまい。
突然声をかけてきたのは学校で一番有名な先輩α。
Ω大好き遊び人。見た目よし家柄よし、成績トップの超絶ハイスペック男子。
「僕はβです」
嘘ではない。発情期なんて経験はないし、甘い香りもしない。
抑制剤も飲んだことがない。
揶揄われているのかと思った。
それでも先輩は引く様子は見せない。
「そんなハズない。お前を見た瞬間、雷に打たれたような衝撃が走った。これは運命以外の何者でもない」
「そんなこと言われても困ります。僕、好きな人いるし」
「恋人?」
「片思いですけど」
「ふっ」
鼻で笑われた。
「僕はバース性だけで人を判断しません」
現に好きな人もαだ。
『βはβと』そんな時代はもう終わった。多分。
先生はバース性に関係なく、公平に接してくれる。そんな所を好きになった。この恋心は自分だけのものだから、大切に育んでいる……のに……。
「で、誰?」
「何がですか?」
「好きな人」
「教えるわけないでしょ」
また鼻で笑う。
こんな人を相手にしても埒が明かない。
どうせ暇つぶしに適当な人を捕まえて遊んでいるだけだ。
「バイトあるんで、失礼します」
立ち上がった瞬間、へたり込んだ。
「へ?何これ」
腰から力が抜けて、立ち上がれない。
顔が逆上せて頭がボーッとする。虚な目で先輩を見た。
先輩がしゃがんで「ほらね」と微笑む。
「違う。僕は本当にβで」
「俺が間違うはずないだろ。細胞レベルで相性がいいやつじゃないと、魂の番は反応しないんだよ」
それくらい知ってるだろ。なんて言いながら担ぎ上げる。
「どこに連れてく気ですか?」
「保健室に決まってんだろ。抑制剤打たねぇと、そこら辺のαに襲われてもいいわけ?」
「い、嫌です」
素直に言うと、得意気に笑って頬にキスをした。
「は? 何ですか、いきなり!?」
「ははっ、おもしれー反応」
完全に遊ばれている。
でも、この先輩が運んでくれいるからか、他のαの生徒は寄ってもこない。
保健室のドアを開けると「兄貴、いる~?」と声をかける。
「兄貴? 保健の先生が?」
「あぁ。お前が好きなのって、俺の兄貴だったんだ」
あっけらかんと言う。
確かに顔が似てると思ったことはある。
年の離れた兄がいると聞いたこともある。
でも、本当に兄弟だなんて思いたくなかった。
「兄貴、番になる人いるよ」
「なんでそんなこと言うんだよ!!」
こっちは突然ヒートを起こして困惑していると言うのに、強制的に失恋までさせられるなんて。
最悪だ。
先生は先輩に注意しながらベッドへと誘導する。
「これはバース性の突然変異だね。運命の力でなるんだよ」
先生が優しい表情で説明する。
「注射打ったから、しばらく休んでね」
同じ血筋なら、先生と運命の番になりたかった。
「こらこら、兄貴の方が良かったって顔に書いてるぞ」
「当たり前です!こんな無理矢理」
「は? お前だけが苦しいわけねぇだろ」
そう言われて、ようやく先輩の顔をまともに見た。
眉根に皺を寄せ、呼吸がどんどん荒くなってる。
先生が先輩にも注射をした。
「お前のフェロモンに当てられたから、気付いたに決まってんだろ」
そりゃそうだ。Ωがヒートを起こすのは、近くに相性のいいαがいるからだ。
それでも先輩は冷静に判断し、対応してくれた。
「ごめんなさい」
「素直に言えんじゃん。兄貴、注射打ったからここにいてもいい?」
「いいけど、刺激を与えると意味なくなるんだけどな」
「学校でしねぇよ。しかも兄貴の前で」
「変な事、言わないで下さい」
「反抗する元気があるなら大丈夫だな。抑制剤効くまで横になってろ」
頭を撫でられる。
なるほど、この人がモテる所以が分かった気がする。
「逆に先輩は、僕みたいなのが運命でいいんですか? 別にバース性だけで決めなくても良いと思いますけど」
「言ってろ。そのうち、俺じゃないと嫌だって言わせてやるから」
「自信満々ですね」
「お前もな。ほら、今は寝ろよ。居てやっから」
少し乱暴だけど、優しさが伝わってくる。
もう間違いなく、心は揺らいでいるけれど……悔しいからまだ言ってやらない。
おしまい。
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