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高嶺のDomは、前世で好きだった幼馴染でした。
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ブラック企業に就職してしまい25歳で過労死してしまった俺は、その後異世界で目を覚ます。
伯爵家の息子であった。
第二次性はSub。
「この世界にも、ダイナミクスは存在するのか」
分かった瞬間、落胆した。
前世ではパートナーがおらず、過度のストレスが溜まっていた。
Domは嫌いだ。
Domの上司からも毎日のようにグレアを浴びせられていた。
前世での後悔はただ1つ。
仕事のせいで、幼馴染で親友の葬式に出られなかったこと。
二十二歳という若さで、突然死での別れだった。
転生しても前世の記憶は残っていて、社畜だった頃のトラウマと、幼馴染への想いを胸に秘めたまま暮らしていた。
伯爵家の息子に生まれ変わっても、相変わらずパートナーはいない。
そんなある日、父からDomと出会うパーティーに参加しろと言われる。
転生してからは薬がよく効いていた。
パーティーへの参加は必要ないと一度は断ったが、父から「どうしても」と言われ、断りきれず出向いた。
そこで出会ったのが公爵家嫡男のDom。
お互い、目が合った瞬間から惹かれあった。
Domは誰よりも光り輝いて見えた。
(この人から、命令されたい)
そう思ったのは本能的なものであったが、心の奥底に押し込んだ。
あまりにも身分が違いすぎる。
自分では、パートナーにはなれない。
諦めて会場を後にする。
父には、いい相手に会えなかったと報告するしかない。
それで納得してもらえなければ、こうしてパーティーに出向き、また出会いはなかったと嘘をつけばいいだろう。
だがホテルの外でタチの悪いDomに捕まってしまう。
無理矢理コマンドを使われ、サブドロップを起こし倒れた。
苦しい。息ができない。
視界が朦朧とする中、誰かが助けてくれたような声が聞こえてきた。
(誰? 俺のことなんて、放っておけばいいのに)
そうは思いながらも、気持ちが軽くなり、意識を手放した。
次に目が覚めると、ホテルの部屋だった。
そして、隣には公爵家嫡男のDom。
「まだサブドロップが抜けていない。私とプレイをしないか?」
ハイ・バリトンの声で囁かれては断れない。
ハグ以上はしないという約束で、プレイをする。
直ぐにサブスペースに入った。
この心地良さを知っていると思った。
前世で、幼かった頃に味わった温かさに似ている。
「またプレイをしてくれ」
そう言われたが、頭を横に振った。
「なぜだ?」と聞かれても、身分の差は一目瞭然。
性奴隷として雇ってもらえるなら……と提案したが、それはDomが嫌だと言った。
「君を奴隷のように扱うなど、できるはずがない。プレイをして、とても心が満たされた。パートナー以外、考えられない」
熱烈な申し出ではあったが、それを受け入れる勇気はない。
Domからの申し出を断り、二人の離れ離れの日々が始まる。
どんなに相性が良くとも、この世界で身分の差は致命的だ。
どうしても埋められない壁が二人の間に立ちはだかった。
Domからどんなに求められようと、それに応えるわけにはいかない。
逃げるSub、諦めないDom。
どんなに遣いを送られようと、断固として会わなかった。
数ヶ月が経った頃、遂に自ら伯爵家を訪れた。
Subはパーティーの日のプレイ後から、薬が効かなくなっていた。
「ずっと寝込んでいる」
父が伝えると、二人きりにして欲しいと言ってSubの私室に入るDom。
顔色を失い、痩せ細った自分はDomの夢を見ていた。
眠ったまま魘されているSubが、繰り返し呼んでいたのは幼馴染の名前。
それは、Domの前世の名前だった。
「……お前だったのか」
Subに近寄り抱きしめる。
「会いたかった。私が必ず助けてやる」
頭を撫でられると、次第に呼吸が安定してくる。
「どうして欲しい? Say」
優しいコマンドが響き渡る。
「……ずっと……そ……ばに……いて……」
「Goodboy、やっと言ってくれたね。前世の分まで、一緒にいよう」
そのままプレイが始まる。
「Kiss」
甘いコマンドに、蕩けるSub。
ずっと苦しんでいたのに、たった一度のキスで自我を取り戻す。
「っ!! Dom様、いけません。俺となんて」
「君も気付いているだろう? 私たちは、前世でもずっと一緒に過ごしてきたことを」
「もしかして……思い出して……」
Domは頷いた。
「初めて会った時から、なぜか懐かしい気持ちになった。さっき君が魘されて呼んでいたのは、前世の私の名前だった。それで、全て納得した」
「俺のこと、覚えて……俺は、葬式にも出てやれなかったのに……」
「構わない。あの頃は君の方が大変だったから。そばにいてやれなくて、すまなかった」
やっとあの日のことを謝罪できた。
それだけでも、十分だと思った。
しかし、Domは前世で叶わなかった夢が一つあると言う。
「実は、君のことが好きだったんだ。幼い頃から。困らせたくはなかったから、告白はしないでおこうと諦めていた。でも、まさか異世界で再会するなんて。これはまさに運命としか思えない」
「なんで、前世で言ってくれなかったんだ? 俺だってずっと好きだったんだ。なのに、勝手に一人で旅立っちゃってさ。俺、俺……ずっと寂しかった」
Domはキツく抱きしめ、もう離れずにいようと告白する。
「今度こそ、私のパートナーになってくれるかい?」
「……なります。よろしく、お願いします」
「今すぐ抱きたい」
「命令、して?」
「Strip」
Domのコマンドにゾクゾクする。
もっと欲しい。もっと支配されたい。
震える手で自分の服を脱いでいく。
露わになったSubの身体を見て、Domは「綺麗だ」と、微笑んだ。
肌と肌が絡み合い、離れて過ごした時間埋めるように求めあった。
「サブスペースに入ったね」
「なんだか、頭がふわふわするんだ。もっと溺れていたいような……」
「大丈夫。心配しなくても、ずっと離しはしないから」
その後、みるみる体調は回復し、改めてパートナーとなった。
想いが強すぎて、引き寄せた運命かもしれない。
おしまい。
伯爵家の息子であった。
第二次性はSub。
「この世界にも、ダイナミクスは存在するのか」
分かった瞬間、落胆した。
前世ではパートナーがおらず、過度のストレスが溜まっていた。
Domは嫌いだ。
Domの上司からも毎日のようにグレアを浴びせられていた。
前世での後悔はただ1つ。
仕事のせいで、幼馴染で親友の葬式に出られなかったこと。
二十二歳という若さで、突然死での別れだった。
転生しても前世の記憶は残っていて、社畜だった頃のトラウマと、幼馴染への想いを胸に秘めたまま暮らしていた。
伯爵家の息子に生まれ変わっても、相変わらずパートナーはいない。
そんなある日、父からDomと出会うパーティーに参加しろと言われる。
転生してからは薬がよく効いていた。
パーティーへの参加は必要ないと一度は断ったが、父から「どうしても」と言われ、断りきれず出向いた。
そこで出会ったのが公爵家嫡男のDom。
お互い、目が合った瞬間から惹かれあった。
Domは誰よりも光り輝いて見えた。
(この人から、命令されたい)
そう思ったのは本能的なものであったが、心の奥底に押し込んだ。
あまりにも身分が違いすぎる。
自分では、パートナーにはなれない。
諦めて会場を後にする。
父には、いい相手に会えなかったと報告するしかない。
それで納得してもらえなければ、こうしてパーティーに出向き、また出会いはなかったと嘘をつけばいいだろう。
だがホテルの外でタチの悪いDomに捕まってしまう。
無理矢理コマンドを使われ、サブドロップを起こし倒れた。
苦しい。息ができない。
視界が朦朧とする中、誰かが助けてくれたような声が聞こえてきた。
(誰? 俺のことなんて、放っておけばいいのに)
そうは思いながらも、気持ちが軽くなり、意識を手放した。
次に目が覚めると、ホテルの部屋だった。
そして、隣には公爵家嫡男のDom。
「まだサブドロップが抜けていない。私とプレイをしないか?」
ハイ・バリトンの声で囁かれては断れない。
ハグ以上はしないという約束で、プレイをする。
直ぐにサブスペースに入った。
この心地良さを知っていると思った。
前世で、幼かった頃に味わった温かさに似ている。
「またプレイをしてくれ」
そう言われたが、頭を横に振った。
「なぜだ?」と聞かれても、身分の差は一目瞭然。
性奴隷として雇ってもらえるなら……と提案したが、それはDomが嫌だと言った。
「君を奴隷のように扱うなど、できるはずがない。プレイをして、とても心が満たされた。パートナー以外、考えられない」
熱烈な申し出ではあったが、それを受け入れる勇気はない。
Domからの申し出を断り、二人の離れ離れの日々が始まる。
どんなに相性が良くとも、この世界で身分の差は致命的だ。
どうしても埋められない壁が二人の間に立ちはだかった。
Domからどんなに求められようと、それに応えるわけにはいかない。
逃げるSub、諦めないDom。
どんなに遣いを送られようと、断固として会わなかった。
数ヶ月が経った頃、遂に自ら伯爵家を訪れた。
Subはパーティーの日のプレイ後から、薬が効かなくなっていた。
「ずっと寝込んでいる」
父が伝えると、二人きりにして欲しいと言ってSubの私室に入るDom。
顔色を失い、痩せ細った自分はDomの夢を見ていた。
眠ったまま魘されているSubが、繰り返し呼んでいたのは幼馴染の名前。
それは、Domの前世の名前だった。
「……お前だったのか」
Subに近寄り抱きしめる。
「会いたかった。私が必ず助けてやる」
頭を撫でられると、次第に呼吸が安定してくる。
「どうして欲しい? Say」
優しいコマンドが響き渡る。
「……ずっと……そ……ばに……いて……」
「Goodboy、やっと言ってくれたね。前世の分まで、一緒にいよう」
そのままプレイが始まる。
「Kiss」
甘いコマンドに、蕩けるSub。
ずっと苦しんでいたのに、たった一度のキスで自我を取り戻す。
「っ!! Dom様、いけません。俺となんて」
「君も気付いているだろう? 私たちは、前世でもずっと一緒に過ごしてきたことを」
「もしかして……思い出して……」
Domは頷いた。
「初めて会った時から、なぜか懐かしい気持ちになった。さっき君が魘されて呼んでいたのは、前世の私の名前だった。それで、全て納得した」
「俺のこと、覚えて……俺は、葬式にも出てやれなかったのに……」
「構わない。あの頃は君の方が大変だったから。そばにいてやれなくて、すまなかった」
やっとあの日のことを謝罪できた。
それだけでも、十分だと思った。
しかし、Domは前世で叶わなかった夢が一つあると言う。
「実は、君のことが好きだったんだ。幼い頃から。困らせたくはなかったから、告白はしないでおこうと諦めていた。でも、まさか異世界で再会するなんて。これはまさに運命としか思えない」
「なんで、前世で言ってくれなかったんだ? 俺だってずっと好きだったんだ。なのに、勝手に一人で旅立っちゃってさ。俺、俺……ずっと寂しかった」
Domはキツく抱きしめ、もう離れずにいようと告白する。
「今度こそ、私のパートナーになってくれるかい?」
「……なります。よろしく、お願いします」
「今すぐ抱きたい」
「命令、して?」
「Strip」
Domのコマンドにゾクゾクする。
もっと欲しい。もっと支配されたい。
震える手で自分の服を脱いでいく。
露わになったSubの身体を見て、Domは「綺麗だ」と、微笑んだ。
肌と肌が絡み合い、離れて過ごした時間埋めるように求めあった。
「サブスペースに入ったね」
「なんだか、頭がふわふわするんだ。もっと溺れていたいような……」
「大丈夫。心配しなくても、ずっと離しはしないから」
その後、みるみる体調は回復し、改めてパートナーとなった。
想いが強すぎて、引き寄せた運命かもしれない。
おしまい。
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