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spin-offージェイクと騎士ー
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マヒロが何気に言った一言が、ストンと腑に落ちてしまった。
俺がルイと番になれば、ルイはもっと軽い薬で済むのではないか?
マヒロのくらい軽い薬ならば、もっと騎士団としての任務も集中できるかもしれない。
しかし、自分はルイの恋人でもなんでもない。
ルイへの想いは日に日に膨れ上がるというのに、ルイが自分をどんな感情で見ているのか、全く予想できない。
こんなことは初めてだ。
いつも相手の心を読み判断して、然るべき対応をしている。それが仕事だから。
でもルイの心だけは読めない。
オメガとバレたことで、少し俺を頼ってくれたが、この一件で気まずくなるのだけは避けたい。
マヒロを見送った後、リアム様と医務室を訪れた。
ルイが目を覚ましていれば……と、案内したのだが、気持ちよさそうに寝たままだ。
それでも顔色がすっかり良くなっている。
薬の解毒が進んでいるようだ。
「ジェイクさん、一週間、ウチの団員をよろしくお願いします」
リアム様が頭を下げる。
慌てて頭を上げてもらった。
「また様子を伺いに来ると伝えてください」と言い残し、リアム様もホテルを出た。
ルイの居場所はずっとこの騎士団にあると、絶対に解雇などしないと話ていた。
目覚めたら一番に伝えてあげよう。
先生が点滴の関係もあり、今日は起きないだろうと言っていた。
時間の許す限りは寝顔を見て過ごしていたのだけれど、先生の邪魔になってもいけないので自室へと戻ることにした。
次の日、仕事の合間に医務室に行くと、すっかり元気そうなルイがいた。
気まずそうな表情で出迎えられるのは、想定内だ。
一先ず、昨日リアム様が様子を伺いに来たのを伝えておく。
「ラミレス騎士団長が!?」
また意識を飛ばすんじゃないかと思うくらい盛大に驚いていた。
「絶対に解雇なんてしないから、元気になって帰っておいでって言ってたよ」
「……ラミレス団長……」
ルイはしばらく黙り込んだ。
「何を考えてるの?」
「……本当に、このまま騎士団を続けてもいいのかって……思って……。もし任務中にヒートを起こせば、他の団員に迷惑をかけるし。本当は、このまま辞めるのが正解なのかなって」
「ルイは真面目だから、そう考えてしまうだろうけど、リアム様がそれを聞くと悲しむよ」
「そんなわけ……」
ルイを引き寄せ、そのまま抱きしめた。
「えっ。ジェ、イク……さん……」
戸惑っていたが、気にしない。
自暴自棄になってほしくない。それをしてしまうと、絶対に後悔するから。
「まだ、諦める時じゃないよ」
誰よりも騎士団という仕事が好きなのだ。
バース性だけの理由で辞めてほしくない。
「……辞めたく……ありません……」
ようやく本音を言ってくれた。これだけでも十分俺は嬉しい。
「辞めないで。何があっても俺も、リアム様も、ベルガルドさんだって、ルイの味方だから」
ルイの目からは涙が溢れている。
ずっと隠してきた秘密がバレて、正直ホッとしたと言った。
一人で隠し通すのは、どんなに心苦しいだろうか。
俺の想像の範囲は超えているだろう。
たった一人のオメガが、アルファに混じって仕事をしているのだ。終業後も、同じ宿舎で過ごしている。
この薬の強さが、騎士団のαの強さだろう。
「ルイ、もう俺のものにならない?」
つい口に出してしまった。
昨日から悶々と考えていたから、自分でも言ってから驚いている。
ルイは顔を真っ赤にして絶句していた。
そりゃ当たり前だ。
俺だって告白するなら、もっとロマンティックにしたかった。
本当に、ルイの前だと調子が狂う。
「えっと……あの……、はい……」
…………はい?
「ねぇ、ルイ。今、はいって言った?」
「は……ははは……はい……」
「本当に? 本当に言ってる??」
ルイはさらに赤面した顔から火を噴き出したのかと思うほど真っ赤にした顔で頷いた。
「あぁ!! あの!! 寝ます!!」
枕に勢いよく顔を埋めて固まってしまった。
「ルイ、ねぇルイ!! 起きてよ!」
「きふんがわふいへふ」
「そんなこと言わないで!! 今日、俺の仕事が終わったら食事でも行こうよ。じっくり話がしたい」
ルイは顔も上げずに頷くだけだった。
しかし食事も快諾してくれるなんて!!
自分が今どんな表情をしているのか想像する。
きっと気持ち悪いほど笑っているだろう。だって、こんなの嬉しすぎる。
「もう訂正はできないからね」
うつ伏せになっているルイの後頭部にキスをして、医務室から出ていった。
俺がルイと番になれば、ルイはもっと軽い薬で済むのではないか?
マヒロのくらい軽い薬ならば、もっと騎士団としての任務も集中できるかもしれない。
しかし、自分はルイの恋人でもなんでもない。
ルイへの想いは日に日に膨れ上がるというのに、ルイが自分をどんな感情で見ているのか、全く予想できない。
こんなことは初めてだ。
いつも相手の心を読み判断して、然るべき対応をしている。それが仕事だから。
でもルイの心だけは読めない。
オメガとバレたことで、少し俺を頼ってくれたが、この一件で気まずくなるのだけは避けたい。
マヒロを見送った後、リアム様と医務室を訪れた。
ルイが目を覚ましていれば……と、案内したのだが、気持ちよさそうに寝たままだ。
それでも顔色がすっかり良くなっている。
薬の解毒が進んでいるようだ。
「ジェイクさん、一週間、ウチの団員をよろしくお願いします」
リアム様が頭を下げる。
慌てて頭を上げてもらった。
「また様子を伺いに来ると伝えてください」と言い残し、リアム様もホテルを出た。
ルイの居場所はずっとこの騎士団にあると、絶対に解雇などしないと話ていた。
目覚めたら一番に伝えてあげよう。
先生が点滴の関係もあり、今日は起きないだろうと言っていた。
時間の許す限りは寝顔を見て過ごしていたのだけれど、先生の邪魔になってもいけないので自室へと戻ることにした。
次の日、仕事の合間に医務室に行くと、すっかり元気そうなルイがいた。
気まずそうな表情で出迎えられるのは、想定内だ。
一先ず、昨日リアム様が様子を伺いに来たのを伝えておく。
「ラミレス騎士団長が!?」
また意識を飛ばすんじゃないかと思うくらい盛大に驚いていた。
「絶対に解雇なんてしないから、元気になって帰っておいでって言ってたよ」
「……ラミレス団長……」
ルイはしばらく黙り込んだ。
「何を考えてるの?」
「……本当に、このまま騎士団を続けてもいいのかって……思って……。もし任務中にヒートを起こせば、他の団員に迷惑をかけるし。本当は、このまま辞めるのが正解なのかなって」
「ルイは真面目だから、そう考えてしまうだろうけど、リアム様がそれを聞くと悲しむよ」
「そんなわけ……」
ルイを引き寄せ、そのまま抱きしめた。
「えっ。ジェ、イク……さん……」
戸惑っていたが、気にしない。
自暴自棄になってほしくない。それをしてしまうと、絶対に後悔するから。
「まだ、諦める時じゃないよ」
誰よりも騎士団という仕事が好きなのだ。
バース性だけの理由で辞めてほしくない。
「……辞めたく……ありません……」
ようやく本音を言ってくれた。これだけでも十分俺は嬉しい。
「辞めないで。何があっても俺も、リアム様も、ベルガルドさんだって、ルイの味方だから」
ルイの目からは涙が溢れている。
ずっと隠してきた秘密がバレて、正直ホッとしたと言った。
一人で隠し通すのは、どんなに心苦しいだろうか。
俺の想像の範囲は超えているだろう。
たった一人のオメガが、アルファに混じって仕事をしているのだ。終業後も、同じ宿舎で過ごしている。
この薬の強さが、騎士団のαの強さだろう。
「ルイ、もう俺のものにならない?」
つい口に出してしまった。
昨日から悶々と考えていたから、自分でも言ってから驚いている。
ルイは顔を真っ赤にして絶句していた。
そりゃ当たり前だ。
俺だって告白するなら、もっとロマンティックにしたかった。
本当に、ルイの前だと調子が狂う。
「えっと……あの……、はい……」
…………はい?
「ねぇ、ルイ。今、はいって言った?」
「は……ははは……はい……」
「本当に? 本当に言ってる??」
ルイはさらに赤面した顔から火を噴き出したのかと思うほど真っ赤にした顔で頷いた。
「あぁ!! あの!! 寝ます!!」
枕に勢いよく顔を埋めて固まってしまった。
「ルイ、ねぇルイ!! 起きてよ!」
「きふんがわふいへふ」
「そんなこと言わないで!! 今日、俺の仕事が終わったら食事でも行こうよ。じっくり話がしたい」
ルイは顔も上げずに頷くだけだった。
しかし食事も快諾してくれるなんて!!
自分が今どんな表情をしているのか想像する。
きっと気持ち悪いほど笑っているだろう。だって、こんなの嬉しすぎる。
「もう訂正はできないからね」
うつ伏せになっているルイの後頭部にキスをして、医務室から出ていった。
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